エコッツェリアについてCSRレポート

策定委員から
「大丸有サステイナブルビジョン」に寄せて

サステイナビリティの三本柱を盤石にいくこと

野城 智也

東京大学 生産技術研究所教授
野城 智也(やしろ・ともなり)
人類社会のサステイナビリティは、環境的、社会的、経済的サステイナビリティの三本柱で支えられています。2007年版環境ビジョンは、環境的サステイナビリティへの脅威を最重要視して起草されました。しかしながら、その後世界規模での知識経済の進展によって都市への情報・知識の集積はさらに加速し、イノベーションを持続的に引き起こしていくコミュニティの形成の成否が都市の興廃を益々左右するようになりました。一方、未曾有の大災害は、集積度を高めるほどに現代都市の脆弱性が高まっていることも露呈しました。まさに、環境的サステイナビリティだけではなく、社会的、経済的サステイナビリティにかかわる課題を解決していかなければ、まちの持続はおぼつかなくなっています。環境的、社会的、経済的サステイナビリティの三本柱を盤石にしていくことーそれが2013年版サステイナビリティに込めた私たちの思いです。その場所でしか得られない知識情報(sticky information)に溢れ、さまざまな出会いと結びつきの機会が数多くあり、安心して楽しく暮らせるアメニティの高いまち、そうしたまちは、世界中から才能のある多様な人材を惹きつけ、唯一無二の個性的なコミュニティを形成し、持続的なイノベーションを生み続け、結果としてサステイナビリティの三本柱を強化しています。大丸有がこうしたまちの魅力を醸し出すための十分な基盤があることはいうまでもありません。しかし、世界の諸都市も、イノベーション・コミュニティ形成のための真摯な努力を払っています。大丸有の魅力が衰えれば、多様な人材は国境を越え流れていき、知識情報の集積が失われていく可能性もあるのです。こうした認識にたって、私たちは「人」と「絆」を本ビジョンのキーワードに据えました。大丸有が、人間本位のまちで、人と人、組織と組織の多様な結びつきを促し育成していくまちであり続けるならば、1000年の持続も決して夢ではありません。本ビジョンが、大丸有でのイノベーション・コミュニティの賦活と、サステイナビリティの三本柱の強化に寄与していくことを願ってやみません。

真の意味での出会いと「フォーラム」の場へ

広井 良典

千葉大学法経学部 総合政策学科教授
広井 良典(ひろい・よしのり)
大丸有は、ビジネス街であるとともに、東京と地方を「つなぐ」機能を象徴的にもつ場所でもある。これまで東京と地方の関係性は、「(海外→)東京→地方」という情報の一方向的な流れだったが、むしろ今後は地方で新たな動きや試みが生まれ東京や世界に発信されるというベクトルが活発化していくだろう。そうした中で大丸有は真の意味での出会いと「フォーラム」の場になっていく。今回のビジョンはそうした時代の潮流にふさわしいものと言えるだろう。

次の時代の文化を拓く

加藤 孝明

東京大学 生産技術研究所准教授
加藤 孝明(かとう・たかあき)
人がいてまちがある、そこでの営みの蓄積が歴史である。120年以上の歴史の中で創りだされた多様な価値が現在の大丸有に引き継がれている。サステイナブルビジョンは、環境・防災・健康・文化・自己実現、人が求めるすべての視点を包含している。そして、人と人との出会いにより創発を生み出す環境づくりを志向するこのまちを触媒として、新たな価値観を生み出す営みを喚起し、次の時代の文化を拓くであろう。

魅力的でこれまでにない都心のモデル

小泉 秀樹

東京大学大学院工学系研究科 都市工学専攻教授
小泉 秀樹(こいずみ・ひでき)
多様な人とコミュニティがつながり新しい価値を生みだす、という「大丸有サスティナブルビジョン」の基本コンセプトは、現代的コミュニティ・デザインの考え方そのものだ。つまり、大丸有という世界に名だたるCBD※を舞台として、対話の場をデザインし、さまざまなコミュニティを生み出し、そこからイノベーションを引き起こす。とても魅力的でこれまでにない都心のモデルとなるだろう。ビジョン策定に関わった一員として、今後も協力していきたい。※CBD…Central Business District(中心業務地区)

サステイナブルを知りたければ大丸有へ行け

松田 智生

三菱総合研究所主席研究員
松田 智生(まつだ・ともお)
サステイナブルには環境だけでなく、高齢化、健康、雇用、子育て、観光、災害など多様な要素がある。特に世界一の高齢化は大丸有でも大きな課題になっている。今重要なのはこれをピンチではなくチャンスと捉える発想。大丸有に活力ある多世代が集い、働き、学び、活躍する。将来は「経済のダボス」に並んで「サステイナブルを知りたければ大丸有へ行け」と、世界から注目されるような夢のあるまちづくりになることを期待している。