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金環日食まであと3日!宇宙を体感するため押さえておきたい基礎知識&3つの心得 ーさえずり館『金環日食直前予習セミナー』

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金環日食が近づくとともに、白熱する"宇宙"人気。"よくわかっていないけど、せっかくなので楽しみたい"という方も多いのでは?そこで、さえずり館で開催された『金環日食直前予習セミナー』に潜入、5月21日に向けしっかり予習してきました!

nisshoku_1_2.jpg講師は内藤誠一郎さん。国立天文台の広報普及員であり、天文学普及プロジェクト『天プラ』でも活動中、定期的にさえずり館でもセミナーを開催する内藤先生のお話は、天文学的アプローチだけではなく、文化的な面からの解説も面白いと評判なのだそう。

そもそも日食とは?

nisshoku_2.jpg地上から見て、太陽に新月が重なる現象のこと。太陽と月と地球が一直線に並び、月の陰が地球に落ちる範囲でおこります。
古くは、紀元前の古代バビロニアでその周期が把握されていたことがわかっています。日本書紀では日食に関して11回言及されています。その内、実際に起きたことが特定されている最古の日食は628年。洋の東西を問わず、暦をつくるうえでの重要なファクターとして、日食は観察されてきました。

なぜ珍しいのか?

毎日、月は地球の周りをまわっているのに、なぜ日食は珍しいのでしょう?実は、地球から見て月の軌道面は約5度傾いているのだそう。その軌道が地球とぴったり一致するのが年に2回。このタイミングに新月が重なることが日食の条件となります。さらに日本で見られるという条件を追加すると、なるほど珍しいというのも納得ですね。次回日本で金環日食が見られるのは18年後の2030年、北海道地方です。

そして、月の軌道うんぬんの前に、忘れてはならないポイントが、"太陽と月の大きさの比は約400倍である""地球と月、地球と太陽の天体の距離の差が約400倍である"という事実。この2つの偶然のもと、地球から見た太陽と月の大きさがほぼ同じになるという、日食が起こりうる前提が成立します。日食は、奇跡的な偶然の重なりによってうまれた、天体ショーなのです。

皆既日食、金環日食、部分日食と3種類ある日食。この違いはどうして起こる?

太陽の一部だけが月に隠される部分日食は、月の本影(太陽光の大部分がさえぎられる)の入る地帯の周辺では、太陽の一部だけが月に隠される現象がおこります。これが部分日食。
では、月が太陽を完全に隠す皆既日食と月の縁に太陽が残る金環日食の違いはなにによるのでしょうか?それは月の軌道が楕円形であることに由来します。地球と月の距離は一定ではないのです。

つまり、
月が地球から近い場合、月は大きく見える=皆既日食
月が地球から遠い場合、月は小さく見える=金環日食
ということになります。

ちなみに、5月6日に世界各地で観察され話題になった"スーパームーン現象"(天文学には特にそういう用語はないのだそうですが...)はご存知ですか?最も近くなったタイミングでは、通常の満月に比べて、大きさが14%、明るさが30%増しになったのだそう。

5月21日、間違いなく日食を観測する3つの心得

さて以上の基礎知識を押さえた上で、内藤先生のお話から、21日に金環日食を確実に楽しむための心得を整理してみました。

その1.「時間」「方角」「角度」を確認する

当たり前ですが、時間、方角、角度を間違えると日食に出会えません。晴れた日にでも、事前に確認しておくのが良さそうです。
東京の場合、食が最大になる(太陽に月が97%重なる)のが、7:34:30、方角は真東、角度は35度。この角度の目安については内藤先生よりアドバイスが。こぶしを作って片腕をまっすぐに延ばすと約10度、35度なのでこぶしを3個半重ねた程度と覚えておくと便利ですとのこと。
各地の条件については、国立天文台のサイトで確認できます。
日食各地予報

その2.日食グラスを必ず用意する

古代ギリシャの時代から太陽光線の危険性は知られており、太陽黒点を観測したガリレオ・ガリレイが晩年失明したのは、太陽を見すぎたからだとも言われています。太陽光線には、日食網膜症という病気を引き起こす危険性がありますので、必ず日食グラスを使用しましょう。
下敷きやすすガラスを通して見るなど、昔良いと聞いたような方法も絶対NGとのこと。
×直接見ない
×望遠鏡で見ない(日食グラスを使って望遠鏡を見るのももちろんダメです)
×下敷きで見ない
×フィルムで見ない
×すすガラスで見ない
×サングラスで見ない
そして写真撮影の際は、カメラのファインダーを決してのぞかないように!

その3.日食メガネを用意できないのであれば、ピンホール投影法を試みる

小さな穴のあいたもの(例えば切符、QUOカードなど)を地面にかざし、地面に映った太陽の像を観察します。持ちあわせがなければ、木漏れ日を探しましょう。同じ原理で見ることができるそうですよ。
さて、以上を座学で学び、金環日食をたっぷり予習した後は、参加者の皆さんでビル屋上に上がって星空観察。その移動中にも熱心に先生に質問する皆さんの熱心さには脱帽です。

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参加者募集とほぼ同時に満席になったという今回、小学生のお子さんとお母さんという親子連れから、会社帰りのOLさんや会社員、そして妙齢のマダムまでと、年齢も職業もバラバラな"宇宙"ファンが集まりました。その皆さんが一斉に空を見上げ、熱心に見入る姿に、宇宙の魅力の大きさを改めて感じました。
「地球、太陽、月と動いている宇宙を体感できる貴重な機会。静かだけどダイナミック。日本の多くの場所で、誰もが見られる時間帯に起こる現象なので、多くの人にぜひ見てほしい。あとは晴れることを祈りましょう」との内藤先生のコメントでこの日はお開きに。
すっかり感化された私は、早速日食グラスを手に入れました!
皆さんも3つの心得を参考に、5月21日の金環日食で宇宙を体感してみませんか?

おまけ

内藤先生の本音。「実はこっちこそ本当は見て欲しい!」―『6月6日金星の太陽面通過』

天文現象の当たり年と言われる2012年。『5月21日金環日食』『6月4日部分月食』『6月6日金星の太陽面通過』『8月14日金星食』と夏までの間にイベントが続きます。なかでも『6月6日金星の太陽面通過』は105年毎に2回しか起きない、非常にレアな現象。今世紀最後、というか今を生きる私たちほぼ全員にとって、観測できる最後のチャンスです!
金星の太陽面通過(国立天文台)

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