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「環境未来都市」実現で環境・社会・経済の新しい価値創造を

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1. 地域活性化統合事務局の役割

新成長戦略の国家戦略プロジェクトとして、地域活性化の柱として注目されているのが、「総合特区制度」の創設や、「都市再生」、「環境未来都市構想」などである。選択と集中を進め、従来プロジェクトよりも法改正や規制緩和を大胆に盛り込み、まちづくりの抜本的な改革を目指すというこれらの試みについて、その概要を、内閣官房地域活性化統合事務局の和泉洋人氏をお招きして、ご講演いただいた。また、その内容を受け、エコッツェリア協会の伊藤滋理事長とともに、今後の展望について語り合っていただいた。
* この記事は、エコッツェリア協会会員総会において、ゲストとしてお招きした和泉氏による講演を要約したものです(2011年5月10日開催)

1. 地域活性化統合事務局の役割―新成長戦略が描く未来の都市を実現する

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まず、現在、私が所属する地域活性化統合事務局についてご説明しましょう。「都市再生」「構造改革特区」「地域再生」「中心市街地活性化」など、小泉政権の経済構造改革の一環として始まった取り組みを、とりまとめて統合しようと、2007年(平成19年)にできた組織です。その役割は、地域活性化における(1)総合コンサルティング、(2)政策のボトルネックの解消、(3)政策のすき間の解消であり、すなわち、地域活性化支援のコーディネーター役といえます。その実現のため、2009年4月からは全国8つの地域ブロックごとに組織を再編し、それぞれ担当を決め、事務局で所有しているツールの共有化や各組織との連携を強化するなど、地域の場に立った改革を目指しています。ちなみに、事務局の職員には、中央官庁からは防衛省と外務省以外はすべて、公共団体からは北海道から沖縄まで約40数名、民間からは10名強と、現在、130名が加わっています。

その他の取り組みとしては、地域活性に関連して旧政権、新政権ともに、補正予算でさまざま名前の交付金が設けられていますが、それらを執行するほか、「地域自主戦略交付金」、すなわち都道府県の補助金の一括交付金化、その配分などを手がけています。

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なかでも、現在の重要な任務となっているのが、2010年6月18日に閣議決定された「新成長戦略」の実現です。ご存じのように、新成長戦略には7本の柱として「グリーン・イノベーション」や「ライフ・イノベーション」などがあり、さらに21の国家戦略プロジェクトが策定されています。その一つに「総合特区制度」の創設があり、現在、法案の審議が行われているところです。

また都市再生も大きなテーマの一つ。これまでも、都市再生特別措置法に基づき、都市再生基本方針を策定し取り組んでまいりましたが、新成長戦略では、とくに大都市の再生をテーマに掲げています。これは、「国としての国際的、広域的視点を踏まえた都市戦略がなければ、少子・高齢化もあいまって、東京でさえ活力が失われ、国の成長の足を引っ張ることになりかねない」という危機感から生まれたものです。具体的には、都市再生基本方針の改定に加えて、民間都市開発プロジェクトにかかわる規制緩和・金融措置などの支援を行います。

さらに「環境未来都市」構想の創出。一昨年末に打ち出された基本方針で、「環境・健康・観光に関する集中投資事業を厳選された都市で行い、世界に示すモデルをつくる」という目標が掲げられました。そして現在、環境未来都市構想という名のもとに、日本の21世紀を支えるような技術、仕組み、サービス、まちづくりで世界トップクラスの成功事例を生み出し、国内外への普及展開を図ろうと、環境未来都市の実現を目指しています。

ちなみに、東日本大震災が起こる前は、内閣総理大臣を議長とする「新成長戦略実現会議」の下の、『総合特区制度、「環境未来都市」構想に関する会議』(議長・地域活性化担当大臣)において頻繁に議論が交わされていましたが、いま(2011年5月上旬現在)は大震災を受けて一時休止しています。

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2. 総合特区制度について

2. 総合特区制度について―国際戦略総合特区と地域活性化総合特区

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総合特区制度の概要(クリックでPDFファイルが開きます)

ではつぎに、総合特区制度について、具体的に説明したいと思います。

総合特区制度の狙いは、「必然性」と「本気度」があり、実現可能性の高い地域に、国と地域の政策資源を集中させるというものです。裏を返せば、過去のさまざまな地域活性化政策が予算のばらまきになってしまっていたという反省を踏まえ、選択と集中によって、地域の包括的・戦略的なチャレンジを総合的に支援する試みです。これは、たんに補助金をつけるという話ではなく、規制・制度の特例、税制・財政・金融措置まで含めて、フルパッケージで、しかもオーダーメードで支援することを意味しています。さらに、一度指定したら終わりではなくて、総合特区ごとに設置される「国と地方の協議会」において、国と地域の協働プロジェクトとして推進する制度をつくっていきます。

そうしたなかで現在、二つの特区のパターンが検討されています。一つ目は、「国際戦略総合特区」。これは、我が国の経済成長のエンジンとなるような産業や施策の集積拠点です。二つ目は、「地域活性化総合特区」。地域資源を最大限活用した地域活性化の持続的なモデルとして位置づけています。

ちなみに、従来の構造改革特区と総合特区とどう違うのか、という疑問があろうかと思います。たとえば、どぶろく特区に代表されるように、構造改革特区は、「主として個別の規制の特別措置を対象。税制・財政・金融措置は対象としない」というもので、一度認められると、全国に展開することができました。一方、総合特区では、「地域の責任ある戦略を前提として、複数の規制の特別措置に加え、税制・財政・金融上の支援措置等を総合的に実施」するものであり、これが認められるのは、厳しい要件を満たす地域に限定されます。また、前者では、提案者から提出された規制改革について、関係各省が上から目線で個別に回答していましたが、後者では、「国と地方の協議会」において、国と地域が一体となって推進方策を議論します。したがって、提案された規制改革が難しい場合は、その代替案をともにつくるという方向で進めていきます。かなりユニークな規制改革が設けられることになるでしょう。

じつは、この総合特区制度の制度設計に先立ち、地域のニーズを踏まえた制度とするため、昨年7月から9月にかけて、アイディア募集を実施しました。その結果、のべ278団体計450件のご提案をいただきました。このうち、優先的に検討すべき規制・制度改革を抽出し、各省と調整し、そのうちの10項目が、法律で直接規定されている項目の規制緩和措置として織り込まれています。ちなみに、寄せられた提案のテーマの多くは、新成長戦略の重要な柱である「グリーン・イノベーション」「ライフ・イノベーション」に加え、「アジア経済戦略」「観光立国・地域活性化戦略」などとなっています。

事業のイメージ例として、国際戦略総合特区では、たとえば医療関連産業の国際競争拠点の形成を掲げています。これは最先端の医療技術、研究開発能力、医療関係人材の質の高さなど、我が国の強みをフルに活かし、革新的な医薬品・医療機器・先端医療を創出するための拠点を整備し、世界に負けないような拠点づくりを目指すというものです。具体的には、新薬や医療機器承認の遅延の抜本的な解消や、革新的な医薬品、医療機器、先端医療を創出するために、工業地域等における治験専用病院の立地規制緩和、臨床研究を迅速に実施するための特例措置(手続きの簡素化)、治験にかかわる病床規制特例などを検討しています。

izumi_05.jpg新丸ビルに導入されている、[[生グリーン電力]]の供給元。青森県の風力発電所

一方で、地域活性化総合特区のイメージ例としては、森林・林業の再生や地域エネルギーの活用による中山間地域の再生を掲げています。これは、森林・林業の再生を図るとともに、木質バイオマスの利用促進や木造建築の推進などにより、持続可能な地域づくりを目指すというもの。なかでも、大震災や原発事故を受けて、今後ますます自然エネルギーの活用が求められることから、地域にあるエネルギー・資源を徹底的に活用しようということで、小水力発電の設置にともなう水利権許可手続きの簡素化・迅速化、ダム水路主任技術者選定の緩和、太陽光発電設置等にかかわる建築基準確認申請の不要化など、さまざまな手続きの簡素化を検討しています。

なお、これらの総合特区に指定されるための要件としては、(1)包括的・戦略的な政策課題の設定と解決策の提示があること、(2)成長分野の活性化や地域の活性化といった目的に対し、有効で、我が国の成長に資する新しい分野を切り拓くなど先駆的な取り組みであり、一定の熟度を有すること、(3)地域資源等を活用した取り組みの「必然性」があること、(4)今後の地域活性化を進める上で有効な国の規制・制度緩和の提案があること、(5)地域の「本気度」を示す責任ある関与があること、(6)運営母体が明確であること、という6項目を挙げています。すなわち、地域自ら規制緩和の提案を行うなど、自助努力や主体性、責任の明確化などが求められるわけです。

それから、さきほど少し触れましたが、従来通り、法律で直接規制されてきた項目については、総合特区法によって措置します。たとえば、通訳案内士以外の者による有償ガイドの特例や工場立地にかかわる緑地規制の特例、小水力発電の許可手続きの簡略化など、総合特区法案に10項目の法律改正を盛り込んでいます。また、政省令で規定している規制については、より柔軟に対応すべく、すべて総合特区法施行令・施行規則で改変していくことができるようにしているほか、地方公共団体事務に関して政省令で規定する事項について、総合特区法施行令または施行規制で定めるものについては、特別措置を条例で定めることができるという、かなり大胆な内容も盛り込んでいます。

izumi_06.jpg総合特区に係る税制改正の概要
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さらに税制についても、特別な措置を講じています。国際戦略総合特区では、たとえば、総合特区内で当該特区の戦略に合致する事業の用に供する機械、建物等を取得して、その事業の用に供した場合は、特別償却の場合は取得価格の50%を、税制控除の場合は取得価格の15%を通常の償却の上に加えることができます。また、所得控除であれば、20%を課税所得から控除できます。

一方、地域活性化総合特区では、社会的課題解決に資する事業(ソーシャルビジネス等)を行う中小企業に個人が出資した場合、個人の投資した年分の総所得金額から一定額を控除できる制度を創設。これはエンジェル税制(ベンチャー企業投資促進税制)を大幅に拡充したもので、総合特区の指定3年以内の企業を対象に、その企業がたとえ黒字であっても、それに対して行った(個人の出資金?2000円)分の金額について所得控除が認められるというものです。もちろん細かい条件はついていますが、他の制度には見られない大胆な税制改革といえるでしょう。

さらに、これらの措置でカバーできないものについては、総合特区推進調整費として151億円が、総合特区支援利子補給金として1.5億円の予算がついています。支援額の上限は、国際戦略総合特区は20億円、地域活性化総合特区は5億円ですが、ハード、ソフト両面において柔軟に対応できる仕組みになってします。 この総合特区については、現在、衆議院の審議を経て参議院の審議に入るところで、通常国会中の法案成立を目指しています。スムーズにいけば、今秋には、総合特区の指定が始まることになるでしょう。

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3. 大都市の成長戦略の策定

3. 大都市の成長戦略の策定―都市再生基本方針の全面改訂

次に都市再生についてお話をします。

都市再生制度とは、都市再生基本方針に基づき、大規模な都市を対象とした都市再生緊急整備地域、中小都市を含めた都市再生整備計画、交付金などを活用したまちづくり、民間の都市再生整備に対する金融支援などのスキームから構成されています。現在、都市再生緊急整備地域に65地域、6612haが指定されています。さらにその中で都市再生特別地区が51地区、民間の再生事業計画が41事業、実現しています。

izumi_07.jpg都市再生基本方針改訂概
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そうしたなか、新成長戦略を踏まえて、都市再生基本方針の全面的な改訂を行ってきました。従来はハード面の都市整備に関する事項を中心に、大都市から地方都市までの方針を一体として記述していましたが、改訂後は、状況変化の反映に加え、ハード・ソフトの両面から、とくに産業面に着目して、大都市の都市戦略(成長戦略)を明記、少子・高齢化の進展など近年の経済・社会情勢の変化に対応した都市再生のあり方を提示しました。

ちなみに、従来、都市再生といえば国交省に関わるものがほとんどでしたが、改訂にともない、さまざまな関係省庁が加わることになりました。たとえば、PPPの推進、PFI法の改正については内閣府、高齢者住まい法の一部改正は厚労省・国交省、資産流動化法の一部改正は金融庁、都市未利用熱(工場廃熱)等の活用に関しては環境省、アジア拠点化推進法案の制定では経済産業省といった具合に、ソフト・ハード両面から、国際的な視点を含めて、その実現を目指します。

またこれらの動きにともない、都市再生特別措置法の改正も行いました。先述のように都市再生緊急整備地域に指定されている65地域のうち、とくに、国際競争力強化の観点から必要と思われる大都市の拠点を切り分け、「特定都市再生緊急整備地域(仮称)」と名づけて、税制面を含めて国際拠点としての環境整備を行います。具体的には、協議会に民間にも加わっていただき、事業の内容、実施主体、実施スケジュールなどについて、官民連携による包括的な整備計画をつくります。このように民間とともに計画をつくることで、民間都市開発プロジェクトの許認可等の手続きのワンストップ化や民間都市開発プロジェクトの実施に必要な都市計画決定の迅速化、下水の未利用エネルギーを民間利用するための規制緩和など、官民一体となった動きを狙っています。また、民間都市開発プロジェクトの認定についても迅速化し、現在、3カ月かかるところを45日に半減するとともに、道路の上空における建築物の建築許可も可能にします。

一方、地方都市については、にぎわい・交流の創出のための道路占用許可の特例を設け、オープンカフェや広告板等の占拠許可基準を緩和するほか、民間のまちづくり協定を法的に位置づけるための、民間協定制度を創設するなど、地方都市再生のための制度を拡充します。

ちなみに、先述の国際戦略総合特区と特定都市再生緊急整備地域(仮称)との違いは何か。前者は産業面・ソフト面すべてをカバーするものであり、これをインフラ整備の面から支えるのが後者の役割、ということになります。つまり、国際戦略総合特区において、官民連携を通じて都市の国際競争力の強化と魅力の向上を図り、都市の再生をハード面から推進していくのが特定都市再生緊急整備地域という位置づけです。

なお、この都市再生特別措置法はすでに国会の審議を通過し、成立しています。そして現在、地域活性化統合事務局と国交省の都市地域整備局が共同で、全国の65の都市再生緊急整備地域がある公共団体に、進捗状況やご意見などをヒアリングし、これらを踏まえて、都市再生基本方針を再改訂する予定です。都市再生特別措置法の改訂を踏まえ、特定都市再生緊急整備地域としてどこを指定していくのか、また、東日本大震災を経て、[[防災(安心・安全)]]面での視点をどう都市再生の中に組み入れていくのか、という二つの視点から、都市再生基本方針の再度の改訂を近々スタートさせるというわけです。

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4. 「環境未来都市」構想について

4. 「環境未来都市」構想について―日本独自の視点を生かしたまちづくり

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最後は「環境未来都市」構想についてお話します。

さきほどお話しましたように、一昨年末に打ち出された基本方針では、「環境・健康・観光に関する集中投資事業を厳選された都市で行って、世界に示すモデルをつくる」という目標が掲げられました。いわゆる3K構想です。実はこれに先駆けて、福田政権のときに、「環境モデル都市」構想が打ち立てられ、全国13都市(含む千代田区)を指定して、推進してきた経緯があります。この取り組みを、新政権でさらに進めていきたいと考えております。

そこで新成長戦略に基づき、10数名の有識者で構成される委員会によって、2010年(平成22年)より「環境未来都市」構想の基本コンセプトづくりに着手、現在、中間取りまとめ案が打ち出されたところです。その概要は、「特定の都市・地域において、未来に向けた技術、社会経済システム、サービス、ビジネスモデル、まちづくりで世界に類のない成功事例を創出」し、「成功事例を国内外に普及展開」するというもので、結果として、「社会経済システムイノベーション実現による地域活性化」を促し、「国民一人ひとり誰もが豊かで快適に、元気に暮らすことができる持続可能な経済社会の実現」を目指します。

そうしたなか、日本の都市・地域をめぐる状況としては、?人口減少・少子化、?超高齢化、?環境・エネルギーなどの課題を抱えております。一方すでに、環境・エネルギー技術では先進的な取り組みが始まっていますし、そのほかの課題についても、積極的に課題解決していくことで、今後、同様の問題を抱える東アジア地域の先駆的な存在になれると思います。

ちなみに、現在、韓国は日本よりも出生率が低いうえ、65歳以上の人の平均で、収入に占める公的年金の割合はわずか1割程度。4割が自分の資金、4割が子どもからの支援に頼っているといいます。日本では7割が公的年金で、韓国でも高齢化が進むと、年金も社会問題として浮上していくる可能性が高い。日本でも年金問題は喫緊の課題の一つですが、このソリューションを導き出せば、そのソフトウエアは、将来、東アジア諸国に必ず貢献できることになるでしょう。

一方で、海外ではすでにさまざまな取り組みも始まっています。たとえば、スウェーデンやデンマークでは、都市改良の技術・手法を国を挙げてパッケージで輸出していますし、天津(中国)、マスダール(UAE)など環境・エネルギー技術導入を核とした新たな都市づくりも急進展しています。そうしたなかで、日本独自の取り組みを進めていく必要があります。たとえば、先進国のほとんどは寒冷地にありますが、蒸暑気候を有する日本の省エネ技術は、同様の気候にあるアジア地域に貢献できるはず。このような日本独自の視点が重要だと考えています。

そこで打ち出された基本コンセプトが、「生活基盤の向上のため、環境・社会・経済という三つの価値が創造されるまち」というもの。環境を制約と捉えるのではなく、新たに環境価値を創造するとともに、健康やソーシャルキャピタルなどの社会的価値を創造し、安定的な雇用や所得、新産業などの経済的価値を創造するまち、それこそが環境未来都市なのです。

これを実現するためには、プロジェクトマネジメントをきちんと行う必要があります。そこで、なるべく早く官民共同のコンソーシアムをつくり、国内外のベストプラクティスの融合の場としての国際的な知のプラットフォームをつくりたいと考えています。なお、現在の進捗状況としては、提案募集を行い、100弱のアイディアが集まったところです。こうしたものをベースに、環境未来都市の公募を行い、選定し、必要に応じて新たな法制度も検討していきたいと考えております。

ここまで述べてきた内容は、震災前につくられた計画であり、震災を受けて、現在、新たな議論が起こっています。たとえば、総合特区制度を復興に転用、活用できないかという意見があります。一方で、平時につくった計画をそのまま微修正して復興計画に当てはめるというのは、あまりに乱暴ではないかという声も多くあがっています。そうしたことから、復興についてはやはり、被災地の状況を踏まえた、まったく新しい新制度を立ち上げるべきだろうという議論が主流です。今後の第二次補正予算では、そうした議論がまちづくりのなかに間違いなく織り込まれていくことになると思います。

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5. 新成長戦略の都市づくりを受けて

5. 新成長戦略の都市づくりを受けて
―和泉洋人氏×伊藤滋氏(エコッツェリア協会理事長・早稲田大学特命教授)対談

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伊藤: 今回の新成長戦略では触れられていませんでしたが、中心市街地活性化については、現在どうなっているのですか?

和泉: 1998年(平成10年)に成立した中心市街地活性化法によって、市街地整備と商店街の振興とともに、その後の法改正で都心居住をつけ加え、現在も進行中です。最近の大きな動きとしては、中心市街地において、まちの主要な公益施設が取り壊されてきたことを反省して、とくに病院などの再開発においては、これをコアに再生を進め、きちんと地域に残すということができるようになってきました。一度落ち込んだ中心市街地を、ただ化粧直ししても活性化にはつながりません。公益施設を活用することで、人がちゃんと都心に住めるような抜本的な改革が進められているところです。従来の省庁縦割りもかなり解消され、さまざまな連携ができるようになってきた点も大きな動きだと思います。

伊藤: そうした事例は、県庁所在地の次に大きいくらいの、人口10万程度の都市で行われているということですか?

和泉: そうですね、10?30万人程度でしょうか。たとえば、山形県酒田市は人口約11万の都市ですが、現在、病院や公的施設を核にしたまちづくりを行っており、注目を集めています。

伊藤: 今後はますます、病院の再生が重要になってきますので、病院を核に、さらに高齢者の介護施設なども併設するなどして、街の拠点にしていくことが求められるでしょうね。すでにそうした事例が動き出しているのでしょうか?

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和泉: はい、多数そういった動きがあります。2004年(平成16年)に創設された「まちづくり交付金」の最大のメリットは、そうした再開発に国交省の予算をつけることができるようになった点だと思います。一方、厚労省では、ハードに対する予算がどんどん削られてしまった経緯があるため、医療機関の疲弊を防ぐためにも、国交省のまちづくり関連の予算が、交付金というかたちで病院等に投入できるのは好ましいと思います。もっとも、まちづくり交付金は、咋年に社会資本整備総合交付金に統合されましたが、内容自体は変わっていません。

伊藤: なるほど。そこで一つお願いしたいのは、総合特区制度のなかに、高齢者の雇用など、その存在の活用を位置づけていただきたいという点です。というのも、65歳以上の高齢者の8割以上もの人が元気だというのに、多くの人が社会的な活動を何もしていないのはもったいない。これだけ労働力が不足している時代に、高齢者の労働力を活用しない手はありません。多少、賃金が安くてもかまわないので、高齢者の労働力を、先ほどの中心市街地活性化における病院の役割と併せて考えていくと、新しい動きが出てくるのではないかと思います。

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和泉: おっしゃる通り、今後の日本の成長のためには、高齢者の労働力を上げる、女性の社会参加率を上げる、出生率を上げる、外国人労働者をさら受け入れる、より生産性を上げる、という5つの選択肢しかないんですね。当然、生産性を上げることは必須ですが、さらに実現性が高いのが高齢者と女性のさらなる社会進出だと思います。

一方、総合特区制度のなかで、「健康地域づくり」が一つの大きなテーマになっています。高齢者が積極的に社会参加でき、健康的な活動ができるような地域づくりを目指すというもので、これに先駆けて、全国十数か所ですでにさまざまな取り組みが始まっています。たとえば、新潟県見附市では、4年間の継続的な運動推進により、一人当たりの医療費が年間10万円も差が出るという調査結果を得ており、市をあげて健康づくりに取り組んでいます。介護保険の地方負担分を減らすという意味でも、自治体による健康まちづくりは重要な要素でしょう。

伊藤: 地域医療先進エリアである長野県佐久市の取り組みも有名ですね。たとえば、長野県内に健康と高齢者の雇用を結びつけたようなモデル都市をつくって、特区として展開していく手もあるでしょうね。

和泉: 総合特区の中では、そういった事例もいくつか出てくるだろうと思います。

伊藤: それから復興については、先ほどおっしゃったように、やはり総合特区のスキームとはまったく別に考える必要があると思います。復興に10年もかかれば、現在、東北の漁業や農業を支えている人たちが高齢化してしまい、衰退してしまう可能性が非常に高い。したがって、東北がもっている農林水産業の潜在的な力を、高齢者が多い既存の地域リーダーだけでなく農業集団などのプロフェッショナルに開放していくような、大胆なスキームを取り入れていく必要があるのではないかと思います。

和泉: 農林水産省も同様の危機感をもっていて、すでに漁港については集約案を打ち出しています。ちなみに阪神淡路大震災後、10年ほどして、兵庫県弁護士会が復興に関する施策について検証を行っているのですが、そこで指摘されたのが、(1)施策がバラバラと出てきてわかりにくかった、(2)復旧は明確だったが、復興という概念がきちんと提案されなかった、(3)既存の制度の延長線上でしか復興が行われなかった、というものでした。

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そこで今回は、復興についてはワンストップで、すなわち一つの法体系でカバーし、従来の制度にとらわれることなく、新しい発想でまちを復興していきたいと考えています。というのも今回の被災地は壊滅的な被害を受けていますから、農地を宅地に、宅地を農地、山林を宅地に、漁港を公園にといった具合に、さまざまな組み換えを行う必要があります。そうした際に、現行法で対応していたのでは、とてもじゃないけれど煩瑣になってしまう。現場の負担軽減のためにも、ワンストップ化が非常に重要なカギになってくると思います。

伊藤: ところで先ほどの、都市再生特別措置法改正の中で、民間都市開発プロジェクトの認定を迅速化するというお話がありましたが、実際には、自治体への事前の根回しなど、非常に時間がとられることが多く、難しい面があります。この点で何か名案はないでしょうか?

和泉: 一番いいのはプロセスの「見える化」でしょうね。

伊藤: 確かに、見える化というのは名案ですね! 

会場より: 何か認定を受けようとすると、必ず自治体にお伺いを立てる必要が出てきて、結局、時間がかかってしまいます。そうしたことから、まちづくり会社を公的に認定して、そこに予算がつけられるような仕組みをつくることができれば、スピードや実行力がかなり変わってくるのではないでしょうか。民間組織の公定化ですね。フランスではそうした取り組みが始まっていると聞いています。

和泉: 現状、総合特区の指定申請ができるのは地方公共団体だけですが、民間から地方公共団体に指定申請の提案を行うことが可能です。それが見える化の第一歩だと考えています。ただ、その民間団体に役人が天下ってしまったりしたら、かつてのリゾート開発と同じになってしまいますね(笑)。起こりうることを想定したうえで、合意形成が得られるのであれば、民間組織の公定化ということも充分に可能だと思います。

伊藤: 先ほどの見える化の話で言えば、民間のまちづくり会社などが、いつから仕事を始めたのか、きちんと自治体に申告して、書類を残すだけでも随分と違ってくるでしょうね。

和泉: そのあたりは、だいぶ改善されてきています。ただ、民間側がすべてをオープンにしたくないということもあったり、そこまでどうフォローするか等が課題でしょう。

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伊藤: それからもう一つ、特定都市再生緊急整備の中で、下水の未利用エネルギーの民間利用をするための規制緩和、という話が出てきていましたが、下水は、確かに非常に重要なエネルギー回収源だと思います。ただし、たとえば三河島水再生センターの下水を日本橋までもってくるとしたら、隅田川を縦に通すような下水管の敷設が必要になります。ところが、それは河川法で規制を受けてしまう。今後、道路上空だけでなく、新しいエネルギー開発という観点から、河川や運河の縦断といった新たな視点を考慮に入れていただきたいと思います。

和泉: そういった意味では、従来は不可侵域だったところでも、省庁をまたいで高度利用をしていくような事例が出てきていますので、必要があり、安全性が確保されるなら、法整備を進めていくことが可能だと思います。小水力発電なども、従来は河川法等の規制を受けるため、非常に煩瑣な手続きが必要だったのですが、今回の総合特区でワンストップ化を可能にしています。

伊藤: 河川の縦断というのは、東京だけでなく、大阪の淀川等でも活用できると思いますので、ぜひ、近々、勉強会などを開きたいと思います。

会場より: 官民協議会に話を上げる際に、事前に自治体との協議を済ませてからということになるかと思うのですが、国に先に話をあげて、受け付けをしてもらってから自治体と協議するようなルールづくりはできないでしょうか。それから震災を契機に、首都機能の分散化や移転といった話が持ち上がっていますが、そのテーマで具体的な議論はなされているのでしょうか?

和泉: まず前者の話は、実態的に国に持ち込まれているケースが多くなっていますね。とくに特別なプロジェクトについては、国家的に推進していく必要がありますから、積極的に進めていきたいと思います。

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また2番目のご質問ですが、首都機能移転という大げさな議論にまでは発展していませんが、今回の原発事故を受けて、東京一極集中の現状ではリスクヘッジができないため、バックアップ機能が必要だという議論はなされています。国土計画全体をどうするのか、きちんと議論していく必要があると思っています。

伊藤: とくに福島原発の跡地・周辺地域の土地利用をどうするかという点については、数十年スパンでの長期的なビジョンが必要です。また日本は火山列島でもありますし、今回の震災でもより鮮明になったように、東京は周辺の地殻プレートによって大きな影響を受ける場所に位置しています。そうしたなかで、相対的に見て地震にも津波にも台風にも比較的強い地域はどこか。

注目されているのが瀬戸内海です。そうなってくると、今後、大阪の役割がまた大きくなってくる。まさにそういうことを考えるのは、国土計画なんですね。たとえば、被災地エリアでのバイオマス利用を考える際にも、かつて薪と炭の一大産地であった北上山地と阿武隈山地の、潜在的な価値が浮かび上がってくる。そうしたことを総合的に見渡して、今こそ国土計画を組み立てるときではないかと思っています。

和泉: まさに同感です。ぜひ今後とも、お知恵を拝借できればと思います。

―本日はどうもありがとうございました。

【編集部から】
瓦礫の撤去しかり、仮設住宅の建設しかり、義捐金の配分しかり、震災後の復興がなかなか進まない背景には、被害が甚大だというだけでなく、従来の縦割り行政やさまざまな規制による弊害があるようだ。総合特区制度に見られる手続きのワンストップ化のように、復興ではぜひ、こうした新しい手法が生かされることを切に願う。

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