Insight 2050年へのまなざし

小林 光 環境省総合環境政策局長

エコハウスに住まい、自らもエコな暮らしを実践する環境省総合環境政策局長・小林 光が考える、家やまちからはじめる地球の「サステナビリティ(持続可能性)」とは、2050年のまちに必要なものとは──。

小林 光

エコハウスに住まうということ

私は10年近くエコハウスで暮らしています。自宅を建て替えし、太陽熱利用、太陽光発電[[、気密や断熱、自然素材の使用、[[雨水や風呂場の排水を利用するシステムなどを取り入れました。もちろんサステナビリティを家のエコ化だけで実現することは不可能です。しかし、自宅で排出されるCO2は年々増えていますし、家のCO2低減について考えることが、地球全体の「サステナブル」をつくるきっかけになったらいい、と考えたんです。
ただ、人は与えられた環境に慣れると、要求を高めてしまうものです。最初はエコ暖房で満足していても、そのうちそれでもあたりまえで、もっと快適にと思うようになってしまう。家庭環境でいかに意識を持続させるかが課題です。また、子どもやお年寄りは、エコへの知識や意識、身体能力の差からどうしてもエネルギーのロスが起きやすいもの。未来に向けて、世代間の差を埋めるようにハードが進化するといいですね。たとえば、暖房の効きが悪ければ「窓が開いていませんか」と機械が注意してくれるなど、人間の間違いやくせを先読みして助けてくれるようなものです。

国や自治体による支援

小林 光省エネの技術が進み、現在はエコハウスへの改修の補助制度や支援制度が増加しています。環境省の地域協議会民生用機器導入促進事業や、経済産業省の高効率エネルギーシステム導入促進事業といった助成制度のほか、省エネ改修後5年間のローン減税制度など、国や自治体が実施しているこれらの制度をぜひ利用してもらいたい。制度を利用して家のエコ化を進めてもらうためには、エコ住宅を希望する施主と環境性能について詳しい建築家をマッチングするなどの制度ができると、より良いでしょう。
環境性能に関しては、目安とそれをサポートする仕組みをつくるといいと思います。やってはいけないことの禁止はできますが、良いことを強要するのは難しいものです。日当たりや風通しは家によって異なるので、一律に強制するわけにもいきません。平米あたりの総合的なCO2排出量やエネルギー負荷、あるいは平均的な家族がそこで暮らした場合の年間光熱水費のランキングなどについての目安をつくり、それに合わせて専門家の指導を受けられるといいですね。

サステナブルなまちづくり

環境省では、2007年に省内のすべての窓に樹脂サッシの内窓を設置し、二重窓にしました。これによって、月曜の午前に暖房を入れれば、あとの1週間は無暖房で過ごせるほどの断熱効果が得られ、空調費が大きく削減できました。また、職員のタクシー利用に関しても乗り合いを増やすよう呼びかけたり、利用前のシステム申請や後払い方式などの制度を取り入れることで、省内のタクシー利用を以前の半分以下に減らすことができました。ただ、このような個々のビルや企業での設備的なCO2削減には限界があります。街区ごとに廃熱を利用する、さらに広い地域を巻き込んで設備をシェアするなど、エリアを超えたソリューションが今後出てくるとおもしろいですね。
時代が進むにつれて難しくなる課題に、私たちは常にチャレンジしていく必要があります。今までの環境法は、設備の環境性能規制などの細かな事柄が中心で、建築物やまちづくりが重視されていませんでした。しかし、CO2を削減してサステナブルなまちを実現していくためには、まちをコンパクトにする、交通公共機関を使いやすくするなど、まちという大きな単位での改造の要素を環境法に組み入れる必要があります。急激に技術が進歩している自動車の分野でも、燃費規制だけでは十分な解決はできません。都市計画や建築が環境を取り入れるという方向が、今後は増えていくでしょう。

地球全体が変わっていくことも、可能

まちは小さな地球です。地球の縮図として、未来のまちはオフィス街といえども事務所だけでなく、商店や学校、公園など人が行き交い生活する場が組み込まれると、もっとおもしろくなると思います。地球のさらなる縮図は、人、経済、生活、緑などすべてが凝縮されている、家ですから。大丸有は、街区のビルオーナーや働く人々がまちづくりの議論に参加しているところが良いですね。エリアマネジメントという言葉は教科書的には語られますが、実行するのは難しい。そういったものが自発的に生まれて運営されている点が興味深い。地域を周回する丸の内シャトル(ハイブリッドバス)や打ち水プロジェクトなどのイベントの開催、「オフィス町内会」によるごみ削減など、まち全体で考えているからこそ得られる成果も挙がっていますね。
需要が変われば、供給も変わるもの。エコな需要が増えれば、それに合わせてエコな供給は発達し、世の中の仕組みが変わっていきます。まずは家やまちなど身近なところから、行動を起こしてみることですね。そのアクションから地球全体が変わっていくことも、きっと可能ですよ。

小林光
小林光(こばやし・ひかる)
1949年東京生まれ。環境省総合環境政策局長。73年慶応義塾大学経済学部卒業後、環境庁(当時)入庁。同庁地球環境部環境保全対策課長として気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)の日本への誘致、同条約の京都議定書の国際交渉、わが国初の地球温暖化防止法制(地球温暖化対策推進法)の国会提出などを担当。環境管理局長、地球環境局長、大臣官房長を経て、08年より現職。著書に『日本の公害経験』、『エコハウス私論』(木楽舎)など。

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