Insight 2050年へのまなざし

和泉洋人(内閣官房地域活性化統合事務局長)

日本繁栄の源となるまち――。未来を見据えて地域活性化のグランドデザインを描く和泉洋人が思い描く、未来の大丸有の姿とは。

和泉洋人

「新成長戦略」がまちづくりを変える

今や、しっかりとした都市戦略がなければ、東京や大阪といった大都市といえども競争力を失ってしまう時代です。今般発表した新成長戦略を「都市」「国際競争力」「環境」のキーワードでひもとくと、適合する施策は次の3つです。第1は「大都市圏の成長戦略の策定」。都市再生基本方針において定性的な記述にとどまっていた「コンパクトシティ」や「新しい都市機能の導入」を具体化することを目論んでいます。

第2は「総合特区」の導入。規制緩和、権限委譲、税財政上の支援といったことを総合的な政策パッケージとして提供し、特定エリアの活性化を後押しします。想定する特区の形は2つあります。一つは「国際戦略総合特区」です。これは日本に数ヵ所、国際レベルで競争優位をもちうる限定的な地域を対象として想定しています。もう一つは「地域活性化総合特区」です。地域の特色ある産業の育成や地域的・社会的課題解決に向け、地域の自然、文化、伝統、資源、人材を活用して活性化を図ります。

第3は「環境未来都市」構想です。個々の都市の低炭素化だけではなく、そこで取り組まれる環境技術を産業化し、輸出することで競争力をつけ、成長につなげる、という発想が根底にあります。このような構想を進めていく上で、「環境」「健康」「観光」を相互に関連付けていくことが重要です。建物を例に取ると、断熱性を高めることで高齢者のヒートショック事故を減らす、都市では歩いて楽しいまちづくりを進めることで市民の健康を向上させる、観光客を増加させる等です。

都市、大丸有での「新しい公共」に注目

戦後の高度成長期以降、私たち日本人は物質的豊かさを「幸せ」としてきました。こんにち人口減少、高齢化社会を迎え、経済成長を追求するだけでは「麗しい未来」など望むべくもありません。経済成長だけでは世界からも尊敬されません。つまり多様な価値観を受容する社会に生まれ変わる必要があります。大丸有でがむしゃらに働いて高い収入を手に入れるもよし、地方で豊かな自然、食材を活かして観光に携わる、林業や農業に従事するもよし。情報化の進展で今では地方の取り組みが直接海外につながったりするので、やりがいもあります。たとえば地方観光も特色を活かしつつ、長期滞在者向けには食事の提供等で「世話を焼きすぎない」といった工夫で、海外客の反応は変わります。地道な改善の積み重ねで、海外からの観光客を呼び込む余地は大いにあります。

今回の成長戦略のなかで打ち出した「新しい公共」という概念を実現するには、従来とは違った価値観をもつ人や組織の存在が不可欠です。それは町内会から大丸有のような任意団体、NPO、BID組織(地域活性化のため、地権者等が資金を出し合って独自のサービスを提供する組織)にいたる多様な組織が想定されますが、経済性よりは社会性、公共的視点が 求められます。

高齢化社会を迎え、社会保障ではカバーしきれない社会ニーズが数多くでてきたときに、従来の" 官民二分法"では対応しきれない部分を、「新しい公共」的な組織が下支えする社会構造をイメージしています。財政的に社会保障等の国費でカバーできない領域を、企業CSRや個人のボランティアが埋めていく。税制改正により個人の寄付を制度的に支援する仕組みも検討しますが、やはり「新しい公共」を支えるために、従来とは異なる価値感をもった人材の育成が不可欠になるのです。

一方で、グローバルな視点から日本を牽引する力を生み出すまちも、日本には不可欠です。東京そして大丸有は経済の中心として、牽引力を発揮する都市であり続けてほしい。さいわいにも最近の大丸有は、環境、観光面で魅力が増しています。昔は休日ともなると人通りがなく閑散としていましたが、今では仲通り沿いにブランドショップが並び、歩行者空間も整備され、歩いて楽しいまちになっています。

三菱一号館美術館の完成も非常にタイムリーでした。海外では、市長のリーダーシップにより中心部から半ば強引に車を締め出したクリチバ(ブラジル)の例が有名ですが、当初は強硬に反対した地元商店街組織も、歩行者専用道にあふれる人の流れを体感し、賛成に転じたそうです。歩いて楽しいまちは健康増進にもなり、同時に観光名所にもなるので、ぜひとも仲通りのような象徴的な場所で検討してみてはどうでしょうか。

和泉洋人

繁栄の源であり、つながりを生むまちへ

東京の強みの中で注目しているのは、発達した公共交通です。電車・地下鉄網が張り巡らされ、しかも電子マネーが連動して利便性が非常に高い。郊外の私鉄が中心部の地下鉄に接続し、さらに郊外の私鉄に接続する路線が10以上もある都市は世界でも他に類例がありません。そして大丸有地区は東京駅に隣接しており、いわば「日本の玄関口」に位置した地の利があります。現に地方の物産アンテナショップや観光案内所、自治体事務所や大学の東京オフィスが、東京駅周辺に集中しています。この利点を活かせば地方や他都市と「つながり」を生むまちにすることも可能なはずです。そこから得られた情報を東京、首都圏、日本全体そして世界に発信することも大丸有であれば可能でしょう。

また、この地区で働く人材を地方と結びつけることで地域活性化に役立てることも可能です。青森県や北海道の再生可能エネルギーを直接調達する「生グリーン電力」はエネルギーを介した都市・地方連携ですが、この関係を発展させ、地方の環境産業育成や雇用創出へつなげる、食文化や観光に展開する、大丸有はその起点となるに相応しい場所と言えます。

2050年に向けて、都市は活力を生み出しながら環境面でも寄与するコンパクトシティの実現に向け、着実に歩を進めなければなりません。CASBEE-まちづくり(建築物の環境性能を評価するCASBEEをまちに適用した評価ツール)のような評価ツールを使いながら、環境都市を拡充していく。そして、多様な価値観を認め合い、それぞれの人が幸せを追求できる社会であってほしい。そのなかで大丸有は、日本の活力の拠点であり続けることを期待します。

ポイント
○ 「新成長戦略」で地域の活性化を実現
○ 多様な価値観が生み出す「新しい公共」が今後のまちづくりを支える
○ 大丸有は、都市と地域の連携を通じた日本の活力向上の拠点に

aiba.jpg 和泉洋人(いずみ・ひろと)
1953 年生まれ。内閣官房地域活性化統合事務局長。前国土交通省住宅局長。慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科特別招聘教授、同大学理工学部特別研究教授、政策研究大学院大学客員教授を兼任。専門は住宅・建築・都市政策。1976年東京大学工学部都市工学科卒業、同年旧建設省入省。博士(工学)。著書に『容積率緩和型都市計画論』など


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