Insight 2050年へのまなざし

木村俊昭(農林水産省大臣官房政策課企画官)

まちづくりは人づくり――。地方公務員から国家公務員への転身で注目を集めた地域活性化伝道師 木村俊昭が思い描く、未来の大丸有の姿とは。

木村俊昭

地域の強みを活かして、新たな価値をつくり上げる

私は小樽市から内閣官房・内閣府、農林水産省に出向し、この春に小樽に戻りましたが、6月から農林水産省勤務となりました。本業、また、地域活性化伝道師、地域活性学会の理事(広報交流委員長)として、地域活性化のために多くの地域と大学等の連携や活性化策の策定・実現のためのお手伝いをしています。

東京駅周辺には、地域を感じられる場所がたくさんありますね。八重洲には北海道の物産館がある関係で、大丸有地区を訪れる機会は多いのですが、ほかにも、サピアタワーには大学フロアがあり、北大、東北大、東大、立命館大、関西大など全国各地の大学が入居しています。そのたびに感じるのは、ヒト・モノ・カネ、そして機会が集中している東京という都市の強みです。ただ、これまでは経済効率、経済価値をいかに上げるかという視点から機能集積が図られていたように感じます。

これに対して、地域は自らの最も優れているところ、文化や歴史、自然などの強みがある。これを活かして、東京など大都市がもつ効率性や機能軸に対抗する価値を見出し、創造していく必要があると考えています。しかし、単に「わがまちに来てください」と東京で発信すればいい、という姿勢だけでは充分ではありません。

たとえば、地域が東京で発信する手段としての物産展。「物産展でブランド力を高めよう」とよく耳にしますが、そのまちにある企業のうち何社がその物産展に関わっているでしょうか。多くの場合10?15社程度で、しかも毎年同じ企業だったりするわけです。出展する企業は宣伝になるし、ブランド力も高まる。しかし地域の数百、数千社のうちのわずか十数社の宣伝で終わってしまっていては、もったいない。ブランド力のある企業とない企業を組み合わせたり、食のブランド力を観光と結ぶなどにより、大きな効果を生み出し、将来につなげる戦略性をもってこそ、地域力の継続的な向上、進化につながるのです。地域側も、東京に寄りかかるだけでなく、東京をテコに地域の広がりをつくっていこう、というビジョンや企画をどんどん出していくべきだと考えています。

全体最適を実現する事業構想力ある"人財" 育成で連携を

私のところには、さまざまな地域から多くの経済団体や企業の人々が相談に来られますが、全般的な事業構想力が不足している印象があります。企業に限らず行政や商工会議所、農協、漁協、地域金融機関、小中高校の教員などを含め、全体を描くデザイン力のある人財が少ない。企画提案がまち全体に有効に働いていくのか、つまり部分最適ではなく全体最適を実現させていく力が必要なわけです。

実は、地域では行政も商工会も金融機関でも、その職員は外部と交わらなくても、ある程度は、仕事がやっていけるわけです。しかし、本当に地域のみなさんが幸せになるように努力するためには、その分野の専門家と出会う機会や、外部から自分の地域をみる視点が不可欠です。たとえば栃木県小山市の「道の駅による地域活性化」では、百貨店経営のノウハウをもつ人財を市の職員として招き、1年をかけて地元の人々と一緒に設計・準備し、オープン後2年にわたり店長を務めながら周囲を教え込んでいきました。優れた才能と地域スタッフが一緒に汗をかくことでスキルが向上し、高い売上を達成することができたのです。地方自治体や地方企業のリーダー候補が大丸有の企業で、数年間まちづくりやにぎわい創出のプロジェクトを体験できるような人財交流が、あるといいですね。

地域にあっては特に意識的に専門家の話を聞く、相談できる機会をつくり、視野を広げてくれる人とのネットワークが大切で、都市とりわけ東京との連携が重要です。大丸有で、出勤前の時間を利用して学びと人との出会いを提供する「丸の内朝大学」は、すばらしい取り組みだと思います。特に農業クラスや環境・ソーシャルプロデューサークラス、地域プロデューサークラスは地域との関わりが深い分野ですから、地域活性化のための人財の育成と供給という面からも期待しています。

また「地球大学アドバンス」や「丸の内地球環境倶楽部」WG* 等、持続可能な環境共生都市の実現に向けて、大丸有に集う企業等の環境・CSR活動を支援、連携を推進する研究会が開催されています。ここに集まるみなさんの地域の持続可能性に向けた知恵との連携も、地域活性化のために大いに役立つだろうと考えています。東京などの大都市がサステナブルであるためには、食材や水、空気や人財等を供給する地域も、またサステナブルでなければなりません。その意味で、大丸有には持続可能な地域社会の実現のために、東京や日本をリードするチャレンジングな取り組みを率先して行っていただければと、大いに期待しています。
* ワーキンググループ

木村俊昭

子どもや孫に跡を継いでもらいたいと思えるまちに

私は、「まち=人間」と考えています。まちづくりは人づくり。ですから、地域活性化とは、そこで暮らし働く人たちのモチベーションを高めることが大切と確信しています。そんな私が理想とするまちとは、住民のみなさんが安心して暮らすことができ、地域に愛着をもって自分の子ども、孫にも、この地域に住まい、跡を継いでもらいたいと思えるようなところなんです。

愛知と長野の県境に、長野県平谷村という人口500人の村があります。とうもろこし栽培と加工品の販売に加えて、いちごづくりなどで世帯所得を上げるための工夫をして、みなさんいきいきと働いています。大都市で高い年収を稼ぐのも一つの生き方ですが、このような地域で子ども、孫に誇れる仕事に就いて、元気に暮らせるようなまちにも魅力を感じます。この村は消防車や救急車が配備されており、電話1本で4分以内に消防車も救急車も来る。救急の場合、平谷村からは飯田市か名古屋市のどちらにも30分以内に病院へ搬送が可能と聞いています。東京など首都圏では救急搬送でも1時間以内に病院に入れないというケースもあります。こうしたくらしの「安心・安全」も、まちには重要な要素ですね。

魅力ある地域の価値を再発見し、それを客観評価するために、知恵の集まる都心で発信、議論し、成果を地域が共有していく。これからも、そのようなまちづくりに少しでもお役に立てればと考えています。

ポイント
○ 地域は大都市に対応できる価値の創出が重要
○ 地域活性化の人財育成と供給面で東京圏に期待
○ 安心して暮らせ、未来を担う子どもたちが愛着をもてるまちづくりを支援

aiba.jpg 木村俊昭(きむら・としあき)
1960年生まれ。農林水産大臣官房政策課企画官。1984年小樽市入庁後、全国初の歴史的建造物のライトアップや「ガラスの街・小樽」のブランド化などの実績により、2006年より内閣官房・内閣府へ出向、地域活性化に関する調査・研究、政策の立案・推進などを担当。2009年より農林水産省大臣官房企画官として農商工連携、地域と大学との連携などを担当。地域活性化伝道師(国)、北陸先端科学技術大学院大学・東京農業大学ほか非常勤講師。地域活性学会理事(広報交流委員長)


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