Insight 2050年へのまなざし

生瀬 勝久(俳優)

生瀬勝久

  • 「省かず」「気概を持って」楽しむことで活力が生まれる
  • 一見、無茶なアイディアの中にブレイクスルーがある
  • 仕事のチャレンジとともに人生を楽しめるエリアに

仕事以外の振り幅が大きくなれば活力が生まれる!

6シーズン目を迎えた「サラリーマンNEO」のキャッチコピーは「サラリーマンは、カッコいい」です。ところが巷では、男性サラリーマンは格好よくない、疲れている、そんな声が聞こえてきます。僕はサラリーマンではないのでその内情はわかりませんが、舞 台をやっていて感じることがあります。それは、お客さまは女性が圧倒的に多く、サラリーマンらしい方をほとんど見かけないこと。サラリーマン向けの作品が少ないのもあるでしょうが、おそらく、舞台や演劇を楽しむ、鑑賞する余裕がないんだろうなと思いま す。女性は楽しむことにどん欲ですが、男性ももっと人生を豊かにするため、堂々と「楽しむ気概」を持って、アクションすべきでしょう。

いまのサラリーマンは、いろんなことを省いていると感じます。おしゃれとか、新橋や神田でお酒を飲んで気勢をあげるとか、週末に外出がてら、競馬に興じるといった仕事の後のガス抜きさえも省いてしまっているように感じます。勤務時間の一生懸命さだけでなく、勤務時間外の行動を盛り上げるようなものが、何かできないかと思います。

たとえば海外のカジノのような場所。ギャンブルに、劇場などのエンタテインメントやレストラン、バーもそろっています。実現するのは簡単ではないでしょうが、ただ飲食だけの場所ではなくて、サラリーマンを惹きつけるアミューズメントとセットになったものをつくる。それによって活力が生まれ、公私両面にわたって「カッコいい」につながれば、素敵だと思いますよ。

無茶なアイディアの中にヒントがある

人が活き活きと働ける、楽しめるまちにするには、どうすればいいのか。それには、常識をとっぱらって、ありえない理想を考えてみることです。僕は沖縄の「美ら海水館」を持ってきたい。あれだけのものを東京や大丸有につくったら凄いじゃないですか。ジンベイザメたちが泳ぐ「黒潮の海」があったら、理屈じゃなく圧倒的に楽しい。

たとえば皇居のお濠を徹底的にキレイにして、清流の中で泳ぐ魚たちを横から、下から眺められないでしょうか。誰もが無理だと言うでしょう。でも本当に無理なのか。NHK 大河ドラマ「江」で、利休が『無理というのは人の心がつくり出すものちゃいますやろか』と語ります。無茶なことにチャレンジすることは、夢がある。夢があるから、見る人が感動するのだと思います。

僕のような役者にまちづくりに関して意見を聞くのは、おそらく初めてで、普通はしない。それをしてみるという時点で、新しいヒントを一生懸命探そうとしている姿勢が感じられます。せっかくなので勝手なことを言いますと、たとえば、クルマや電車、お酒が好きな男性のための「男まち」、おしゃれやグルメが好きな女性のための「女まち」をつくるというのはどうでしょう。

このような、常識では却下されるようなアイディアは、いろんな人の意見を聞くことから生まれる。そして、意見を選ぶ側もバラエティが必要です。決まったメンバーで選んでいては似たような結論になり、ブレイクスルーは生まれません。就業者に公募して、普段なら選ばれないような人に思い切って任せてみればいいんですよ。

オンではチャレンジ、オフでも楽しめる大丸有に

企業側でもサラリーマンをもっと元気にする取り組みが必要です。たとえば仕事の目的が会社や自分のためだけでなく、環境や地域、あるいは今回の震災復興に寄与できると感じられることは重要です。僕もいま演劇をやっていいのかと疑問に感じることもありますが、公演売上の何%かが被災地支援に回ると聞くと、よし頑張ろうという気持ちになります。貢献できる人が見えると、働く喜びやモチベーションになるんです。

あるいは会社の海外保養地に必ず1週間行けるとか、社食はすべて無料で、必ず有名ラーメン店のメニューがあるとかでもいい。社員はそんな単純なことで一日頑張れる。それなら企業はやらない手はないですよ。

先にお話ししたとおり、仕事が終わった後をどう楽しめるかは「カッコいい」に大いに関係しています。ですから、新橋や六本木、赤坂にくり出すのも悪くありませんが、このエリア内でオフを楽しめる場がほしいです。

昔、京都にいたとき、「北白川バッティングセンター」によく行きました。そこは野球だけでなく卓球に麻雀や囲碁将棋もできるし、近隣に食事どころも多い。とりあえずそこに行ってから何をするか考える場所でした。大丸有にもそんなものがあるといいですね。皇居ランニングの拠点となるジムに行くとプールやゴルフ、カラオケ、飲み食いしながらいろんな人が自由に交流できる。お店はどんどん競わせて、人気順で入れ替えをしていく。結果で評価するところがカギですね。

役者の立場から言うと、演劇を楽しめる場もほしい。国際フォーラムはありますが、渋谷や下北沢のような小演劇を楽しめる空間がない。そして芝居が終わった後は、芝居談義や打ち上げができる飲み屋も必要です。そんな場があれば、芝居好きなサラリーマンも集まるし、サラリーマン向けの芝居も増えてくるかもしれない。音楽好きな人にはライブハウスですね。サラリーマンを対象にしたライブハウスがあってもいい。吉田拓郎やイーグルスのコピーバンドが毎日演奏していたら、ファンのコミュニティも自然に広がるで しょう。

ドキドキ感は生活に絶対に必要だと思うんですよ。そこには意外性も欠かせない。僕はいま東京駅のラーメンストリートに興味があります。こんなふうに自分や周囲の琴線に触れるものを探していけば、きっとヒントが見つかると思います。

大丸有は日本経済を引っ張ってきました。ここにある企業のトップは案外、無茶した人なんじゃないか。できないと諦めずにチャレンジしてきたんじゃないか。大丸有はこれからもチャレンジの舞台であってほしいし、いちサラリーマンにとっても、それぞれのライフスタイルを楽しめるエリアとなって、日本全体を元気にしてもらいたいと思います。



生瀬勝久 生瀬勝久(なませ・かつひさ)

1960年兵庫県西宮市生まれ。同志社大学文学部社会学科産業関係学専攻卒業。所属事務所はキューブ。学生時代に劇団に参加し、座長を務めた。退団後はドラマ、映画、舞台と幅広く活躍。主な出演作品は「トリック」「ごくせん」「警部補矢部健三」など。現在、NHK「サラリーマンNEO Season 6」に出演中。主演する映画「劇場版 サラリーマンNEO」が11 月3 日より公開予定。このほか、出演映画「カイジ2」「はやぶさ」も秋よ り公開を控える。


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