丸の内地球環境倶楽部

第13回地球大学アドバンス「異常気象と気候変動を予測する ー 変動に強い社会の構築をめざして」

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日時:
2008年12月19日 (金) 18:30〜20:30 ※終了しました

ゲスト:
山形俊男氏(東京大学教授・海洋研究開発機構)

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モデレータよりコメント

干ばつや熱波、集中豪雨など、世界中で頻発する異常気象に対処するには、その母胎となるエルニーニョやダイポールモード(インド洋のエルニーニョ)といった気候変動の的確な分析と予測が欠かせません。人口爆発と都市化により、災害に対してますます脆弱になりつつある人類社会。数十年スパンで進行する地球温暖化などの「気候変化」(Climate Change)以上に、"今年の洪水リスクは?""来年わが国は干ばつになるのか?"といった近未来の気象予測の鍵となる「気候変動」(Climate Variation)にもっと関心が払われてよいはずです。

災害リスクの面だけでなく、たとえば豪州干ばつなど、これは世界の穀倉地帯の作柄と食糧需給バランスに直接影響します。また日本の冷夏でビールの売り上げが下がるなど、気象が消費動向を大きく左右するという点で、あらゆるビジネスにとって無視できない影響をもたらします。

今回は、豪州干ばつや地中海熱波に対して世界で最も精度の高い予測を成し遂げ、その研究が学会のみならず各国政府からも注目される東京大学教授・海洋研究開発気候の山形俊男先生に、その地球シミュレータを駆使した気候変動研究、そして過去の干ばつ予測と気になる来年の動向などを語っていただきます。

プロフィール

山形俊男(やまがた・としお)山形俊男(やまがた・としお)


1971年東京大学理学部卒業、理学博士。

九州大学応用力学研究所助教授 、東京大学理学部助教授を経て、現在、東京大学大学院理学系研究科教授、副研究科長。1997年以来、地球環境フロンティア研究センター(海洋研究開発機構)気候変動予測プログラムディレクターを兼務。

受賞は日本海洋学会岡田賞、学会賞、日本気象学会学会賞、米国気象学会Sverdrup Gold Medal、Thomson Scientific Research Front Award、Techno-Ocean Award、紫綬褒章など。米国海洋学会永年会員、米国気象学会フェロー会員、米国地球物理学連合フェロー会員。
専門分野は海洋物理学、気候力学。


竹村真一(たけむら・しんいち)竹村真一(たけむら・しんいち)
Earth Literacy Program 代表
エコッツェリア・コンテンツプロデューサー

京都造形芸術大学教授。Earth Literacy Program代表。東京大学大学院文化人類学博士課程修了。地球時代の人間学を考究しつつ、ITを活用した独自な地球環境問題への取組みを進める。

Sensorium(97年アルス・エレクトロ二カ・グランプリ受賞)、デジタル地球儀「触れる地球」(05年グッドデザイン賞・金賞)や「100万人のキャンドルナイト」「aqua scape」など、さまざまなプロジェクトを推進。環境セミナー「地球大学」主宰。07年「water」展ではコンセプト・スーパーバイザーとして企画制作に携わる。08年7月の北海道・洞爺湖サミットでは、 国際メディアセンター(IMC)内の環境ショーケースにおける「地球茶室」の総合企画・プロデュースを担当。

新著「地球の目線」(PHP新書)など著書多数。2009年4月26日よりラジオ「GLOBAL SENSOR」がJ-WAVE 81.3にて(偶数月の第4日曜25時〜)放送開始。

竹村真一プロジェクトサイト: http://www.elp.or.jp/

イベントレポート


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気候変動と気象変化の違い

#竹村さん
異常気象というのは随分前から言われるようになってきた。ヨーロッパは2007〜8年は洪水も熱波も多かった。インドや東アフリカでは洪水、小麦の収量が 60%減った。一件バラバラに起きているようにみえる異常気象が実は地球規模で捉えると相互に関係しているということを世界に先駆けて、研究しているのが山形先生です。特に、インド洋のダイポール現象のパイオニアです。それによる干ばつの予測、熱波の予測では世界で最も進んでいる。オーストラリアの干ばつを唯一当てたのが山形先生の研究室。オーストラリアではもっと山形先生の研究が知られていれば、違ったのではないか、という議論があった。

#山形さん
気候変動のリスクマネジメントも大変重要です。商売で言っても、来年の天気によってビジネスは大きく変わる。異常気象というとビジネスは関係ないと思いがちだが、こう言ったことが社会化されることが重要だ。温暖化の批判本が山のように積まれている。一方で温暖化の議論が盛んに行われている。私はIPCCの議論は100%信じられるとは思っていないし、懐疑派の主張も問題があると思っている。

季候は30年程度の変動が気候変動。IPCCのCはChange、変化。それをほとんど変動と訳している。意味論的な違いではない。温暖化と気候変動現象との間にはものすごく豊かな現象がある。2004年の猛暑と台風は10個。どのくらい台風が生まれるかと言うことが重要。台風は雨、風、土砂崩れ、高潮、など複合的な問題が起きる。が、台風の長期変動、死者数、損害額、は全体的に下がってきている。2005年の大雪の背景にはラニャーニャ現象があった。日本海の高い海水温になり、ポーラーロウ、極域低気圧一種の台風が起きた。それが気候変動。

熱中症の患者の死者数は68年から05年から38年間で5433人。2003年欧州の熱波死者数は凄かった。35度を超えた日が続くと、死者数がうなぎ登り。なぜずっと続いたのか? なぜ気温ががくっと下がるのか。それを世界レベルの構造で見ていく。このとき、何が起きたかというと、赤道直下で実は変化が起きている。また、日本の気象災害では、梅雨明けの豪雨で死者がたくさん出る。どうして梅雨明けに豪雨があるのか、それを見ていくのが我々の仕事です。

93年は冷夏だった。欧州は熱波だったが、エルニーニョ現象と負のダイポールモード現象が起きた。93年の冷夏、94年の猛暑が北朝鮮で起きた。実は、これが体制が崩れてしまった理由。また、1961年には中国で毛沢東の大躍進計画の破綻が起きる。3000万人が死んだと言われる。

インドネシアは、ダイポールモード現象が太平洋でおきても、インド洋で起きても、干ばつや山火事がおきる。これが、政治的に安定しない国で起きると大変なことになる。オーストラリアでは小麦生産量の経年変動でときどきがくっと落ちる。しかしオーストラリアではこういったことに注意が払われていない。

台風の発生数と気候変動要素現象との関係を見ていきましょう。1961年から98年までのデータを観ると、ダイポールとエルニーニョ現象で台風の数がだいぶ違ってくる。エルニーニョのときは台風が減る。ダイポールだと増える。このように、新しい視座を見つかったときに答えが出るんです。今まで分からなかったことが分かるようになる。私はいくつか新しい発見をいくつかしてきたが、いつも同じ頭の細胞を使います。

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気候変動モード

気候変動モードは、異常気象や極端現象の母体です。異常気象を生むのは気候変動、それを産むのが気候の変化。大気と海洋のシステムの外から来るものですね。たとえば太陽風、地軸の長期的な揺れ、太陽のまわりの軌道の微少な揺れ。何万年サイクルなどです。そして、人間が化石燃料を燃やして大気の組成を変える。わずかな変化でも大きな変化が起きる。大気という物理システムの外から来るのが気候変化です。

簡単に地球のシステムを理解するところから始めましょう。太陽からラディエーションを受ける。非常に波長の短い波長の光を受ける。球に平行光線をあてると、赤道付近は暖かい。極はかすめる弱い光。太陽からの短波放射は赤道付近には多く来る。地球は少し暖まります。つまり、差が出る。赤道がどんどん暖まり、極のほうは、どんどん冷えていく・それをかきまぜることが必要。それに対して、地球から外向きの放射は平均的です。大気と海洋が6ペタワットくらい吸収して極向き熱輸送を行っている。1ペタワットは100万キロワットの原発が100万器分です。

また、大気の子午線循環というのがあります。熱帯のほうは暖まり、極が冷えると対流が起きるわけですが、一気に交換はできない。不安定になり、渦巻きが増えていく。システムはある臨海値を越えると、渦巻きがたくさんできる。それが低気圧なんです。

中緯度にいた空気が赤道付近に戻ってくる。そのときに各運動量が小さいと、地球から乗り遅れる。これが貿易風。実際の地球は陸でブロックされている。東から西へ海水を運んでも、ぶつかってしまう。地表近くの温かい水が陸にぶつかってしまう。昔はこういった陸地がない時代には季候も違ったわけです。ウォータープールと呼びますが、それがペルーに行ってしまうこともある。本来なら、西の海が暖かいはずなのに、東が暖まるのが、エルニーニョ現象。風が弱くなったから。基本的には東が気圧が低くて、西が気圧が高い。しかしときおり逆になる。ばたばたする振動現象がある。これが南方震動です。

空の南方震動と海のエルニーニョはひとつのもの。歴史上、エルニーニョの現象を解き明かした人がいた。空の現象を解く人と、海流の現象を解く人がいた。それを一緒にしたのがわたしの仕事。エルニーニョは西から風が吹いて、チリ沖で水温が上がる。その逆に東から風が吹くとラニーニャ。El Ninoはキリストの子どもという意味。男に対して女の子ということでラニーニャになった。エルニーニョ現象の世界各地への影響。エルニーニョのときには日本は冷夏になる。

ところが、最近のエルニーニョがおかしい。西太平洋もペルーも低い。これはエルニーニョもどきなのでは? 違う。El Nino Modoki(エルニーニョモドキ)。日本語ですが、海外でも少しずつ使われ始めている。なぜもどきかと言えば、大和魂です。エルニーニョモドキでは、日付変更線あたりで空気が上昇する。影響がだいぶ違う。モドキは非常に暑い夏をもたらす。また、カリフォルニアでは気温が上がる。

インド洋のダイポールモード現象を見てみましょう。インド洋にはモンスーンがある。北にはユーラシア、南に海。季節によってかなり違う。北が冬になると、海の気圧が下がる。季節変動が大きくて、それ以外の現象が起きにくいと言われてきた。ところがそうではなによる検証によるにsl@l@による検証にyにかった。

1994年は日本は猛暑だったが、その原因を探っていったら、インド洋に不思議な構造があった。それがダイポール構造。ダイポールとエルニーニョが同時に起きることもある。そうすると日本の気象庁は困っちゃう。私たちは、そういうことを研究しているわけです。20世紀初頭は南方震動を見れば、インドの干ばつが分かった。しかし20世紀はダメ。ダイポールが起きると、インドに雨を降らしてしまう。新しいものの見方が必要になってきたんです。

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地球シミュレーターによる検証

今、地球シミュレーターを使って、モデルの検証をしている。結果は、だいたい一致した。IPCCはここまでの精度になっていない。地球シミュレーターにモデルを決め、初期値を入れ、手を離す。それが実際とどう違うか、一致するかを見る。過去のデータはすべてわかっている。94年に大きな変化が起きたとしたら、92年くらいまでのデータをいれ、モデルを決め、手を離す。そして、予想が本来の結果と近いものが、良いモデルということになる。私たちは世界で一番精度が高い。

2006年ではケニアで大雨で100万人以上が影響を受けた。それも予測できた。オーストラリアでは、小麦産業は巨大産業。彼らは収穫する前から先物で小麦を売る。干ばつと農場主の自殺率は相関関係がある。こういった結果を出すことに対して議論を重ねた上、ホームページに掲載したところ、新聞にすっぱ抜かれて、オーストラリア政府が無策だったということで、訴訟問題にまで発展した。

中緯度の気温は予測精度は高くないが、熱帯に関しては2年前からほとんど予測できるようになった。今やろうとしているのは2年先までの予測。かなり可能性が高い。気候変動のデリバティブ現象の予測をしていこう。台風とか梅雨前線などの予測に落とし込んでやってみている。

目指しているのは、気候の予測システムをつくる。あたらしい現象の発見というサイエンティフィックな喜びがあるから、数人の科学者で100人でやっているやつらに勝てる。気候変動の予測を評価した結果のデリバリーは非常に慎重にしなければならない。農業、災害予測。言った方がいいのか、言わない方がいいのか、非常に難しい。目指しているのは、社会とともに、イノベーションを起こしていくこと。全地球の観測システムを作っていきたいと考えている。

2009年度、季候会議の第3回目が行われる。天気予報から気候変化までをしっかりやっていこうという会だ。その背景として温暖化現象がある。気候変化の研究と気候変動の研究はクルマの両輪だ。どちらかだけではだめ。実は、歴史にも興味がある。ダイポール現象により、アフリカでは洪水が起きたはずだ。それが旧約聖書の記述と一致する。地質学者にそれを見てもらったが、地層を見ればわかる。聖書を科学するということも可能かもしれない。

#竹村
世界でバラバラで起きていることが、地球的な変動というトータルで見ることができる。いままでの気象データをパターンとして見ていき、シミュレーションとして未来の状態を可視化することができている。これは革命的なこと。もっともっと、ビジネスの最前線にいる方が、こういう問題と可能性をもっと知っていただきたい。政治の世界にも浸透していっていただきたい。中でも何点か重要なポイントがあった。ひとつは、100年前にはエルニーニョだけで説明できた。それが今では無理、という点だ。

#山形
危険な言い方だけど、季候も発展・変化していく。地球が暖まっている、という変化が起きている。

#竹村
海で0.6°C上昇というのは大変大きい。実は、地球のことを考えるときに陸上中心主義があるんですね。

#山形
日本の場合は、海洋基本法ができて、すこしずつですが海に目を向けていこうという動きがある。教育も変わってきている。海というのは比熱が大きい。たとえば海が0.037度上がったとすると大気に変換すると1000倍。37度上がったことになる。海の温度上昇は、じわじわとボディブローのようにおきてくる温暖化。それにもっと注目した方がいい。海洋というのは日本の経済のように単年度会計ではない。ずるずると次の年に引き継がれる。インド洋にダイポールが起きてきたというのは悲鳴。元に戻そうという動きだ。

#竹村
人類の動きが地球の自浄作用だと捉えられれば、本当に地球と共生できるようになるかもしれない。平穏な地球が正常だというのは、未熟だ。

#山形
エルニーニョが起きると言うことは、自分を殺すためなんですね。つまり安定するために起きるのです。実は、船の会社と共同で行うプロジェクトを行っています。気象の情報を使って、効率よく風と海流にうまくのって、燃料消費を削減するプロジェクトをやった。結果、9%の燃料削減になった。そこでフォーカスオーシャンパートナーシップという会社を立ち上げました。これは三方よしの精神で始めたが、石油を掘削したい石油会社からも引き合いがあります。うーんと悩みましたが、なにしろ、人生というのは矛盾に満ちているわけですね。

私は、最終的には人類は滅びると考えています。サステナビリティを考えるときに、いつも不満なのが、時間スケールはどうなっているのか、ということです。サステナビリティと言ったときに、どういったスパンでサステナビリティを考えるのか。時間スケールという概念をどう折りあいをつけるか、と思うわけです。日本人にとって1000年というのは充分に想像できるサステナビリティ。アメリカにはない。中国にはあるかもしれないわけですね。

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