
第16回地球大学アドバンス 「人が作る新しいエネルギー」
日時:
2009年3月27日 (金) 18:30〜20:30 ※終了しました
ゲスト:
速水浩平氏(株式会社音力発電 代表取締役)
モデレータよりコメント
人が歩いたり踊ったりする振動で発電できる、という「振動発電」に注目が集まっています。ある意味で"人間活動の究極のゼロ・エミッション技術"ともいうべき画期的なアイデア。渋谷の交差点やライブ会場、あるいはクルマの振動を生かすべくレインボーブリッジや鉄道・駅などでも応用実験が進められています。
電気信号がスピーカーを振動させて音が出る、ならば逆に振動から電気を起こせないはずはない・・という、天才的なひらめきとその実現力に、今回は光を当ててみたいと思います。
単にエネルギー問題を解決するキーテクノロジーとしてのみならず、あらゆるビジネスやクリエイティブ・デザインにも応用可能な発想の鉱脈がそこにあるはずです。
プロフィール
速水浩平(はやみず・こうへい)
2006(平成18)年慶應義塾大学修士課程入学。2008(平成20)年同大学修士課程卒業。現在、後期博士課程在籍。2006年9月、株式会社音力発電設立と同時に代表取締役に就任。
現在、エコ発電技術の研究開発事業、コンサルティング事業、「発電床」等のレンタル事業やイルミネーション事業を行っている。
人や車がその上を動くことで発電する「発電床(R)」が、2008(平成20)年12月に渋谷区が主催する「渋谷ハチ公前クリーンエネルギー実証実験」でハチ公前広場に設置された。さらに、首都高速道路株式会社からの受託研究として、「振子型振動発電装置」を、五色桜大橋(東京都足立区)に設置し、車の振動エネルギーを利用して発電し、イルミネーションに必要な電力の一部を賄っている。
現在、その他多数の開発案件を実行中。
竹村真一(たけむら・しんいち)
Earth Literacy Program 代表
エコッツェリア・コンテンツプロデューサー
京都造形芸術大学教授。Earth Literacy Program代表。東京大学大学院文化人類学博士課程修了。地球時代の人間学を考究しつつ、ITを活用した独自な地球環境問題への取組みを進める。
Sensorium(97年アルス・エレクトロ二カ・グランプリ受賞)、デジタル地球儀「触れる地球」(05年グッドデザイン賞・金賞)や「100万人のキャンドルナイト」「aqua scape」など、さまざまなプロジェクトを推進。環境セミナー「地球大学」主宰。07年「water」展ではコンセプト・スーパーバイザーとして企画制作に携わる。08年7月の北海道・洞爺湖サミットでは、 国際メディアセンター(IMC)内の環境ショーケースにおける「地球茶室」の総合企画・プロデュースを担当。
新著「地球の目線」(PHP新書)など著書多数。2009年4月26日よりラジオ「GLOBAL SENSOR」がJ-WAVE 81.3にて(偶数月の第4日曜25時〜)放送開始。
竹村真一プロジェクトサイト: http://www.elp.or.jp/
イベントレポート
#竹村さん
太陽のエネルギーや道路に日々捨てているエネルギーを人類が活用できれば、エネルギー問題はなくなるはず。こうした、日々私たちが環境に捨てているエネルギーを今日はテーマにしたい。たとえば、首都高全体に「発電床」を張り巡らせば、原発一基分の発電量になる。そういうポテンシャルが「振動発電」に秘められている。
#速水さん
開発・起業の経緯
2003年、大学2年のときに音力発電の研究を始めた。高校生のころから大学発ベンチャーに興味があった。小学生のころから発明が好きで、ネタをノートにまとめていて、その中に音力発電があった。小学生の頃に、電気でモーターを動かし、その反対にモーターから電気を作る実験があったのがきっかけで、「同じことが音で出来ないのか」と、ずっと気になっていた。それを本格的に研究してみようと思ったのが始まりだった。数年続けるうちに、ビジネスとして立ち上げていけるのではないかということで2006年に起業した。
技術のコンセプト
人の話し声や騒音で発電するのが音力発電のコンセプト。話しながら発電する携帯電話や高速道路の遮音壁で発電するようなことを考えている。音力発電を応用させたのが振動発電だ。音は空気中を伝わる振動であって、しかも音よりは振動の方がエネルギーは大きい。であるならば、振動でも発電できるはず、という発想だ。音、振動に共通しているのは、日常生活の中で捨てているエネルギーであるということ。それを有効に活用していきたいと思っている。一つ一つは小さいけれども、塵も積もればで、かなり大きくなると考えている。
発電の仕組み
圧電素子を使って発電している。圧電素子は力を加えると変形し、電圧を生じ発電する。これが基本的な原理だが、このままだと発電効率がよくないため、その対策として振動板を使っている。圧電素子を踏んだ力と、振動板を通じて発電床全体に伝わる振動で、多くの圧力素子で発電できる仕組みだ。体重60キロの人が1秒に2歩足踏みをしたときの発電能力は次のように増えてきた。0.03ワット(05年3月)→0.1ワット(05年8 月)→0.3ワット(06年10月)→0.5ワット(08年)。0.3ワットで携帯電話の充電、0.5ワットでユビキタス電源が視野に入ってくる。
技術の使い道
圧電素子の一つを取り出したものが振力電池。発電床は振力電池がたくさん集まったものということもできる。人がたくさん集まるところは、発電床が効率的だけれども、人が集まらないところで発電床を置いても仕方がない。ということで、発電装置を靴に内蔵することを考えた。そのためには小さくする必要があり、開発したのが振力電池だ。この技術を応用すると、靴だけではなくて携帯電話やベルトにも付けて発電することが出来るようになる。
ボタンを押すたびに発電する振力リモコンというのも考えている。これも振力電池を集めて作ったもので、リモコン基板(ボタン)、振動板、振力電池が三層になっている。リモコンのボタンを押す操作は日常的なもので、意識せずに発電することができる。手回し式の発電機というのもあるが、使う側に負担をかける日用品は普及しないという考えがあった。普及しなければ技術としては意味がないし、発電を意識させないのは重要なコンセプトだと考えている。
他には、ユビキタス・コンピューティング用の電源として使えるのではないかと考えている。ユビキタス・コンピューティングでは、至る所、あらゆるものにコンピュータが内蔵され、それがネットワークでつながれるようになる。至る所にコンピュータがあるということは、至る所に電源が必要ということになる。しかも、そうした装置は小さいので、乾電池は大きさや交換の手間を考えると使いにくいしコンセントも現実的ではない。太陽電池という案もあるが、暗いと機能しないうえに受光部が汚れるとダメ。ということで、ユビキタス電源として音力発電や振動発電は注目を集めている。ユビキタス機器は人がいるときだけ使えればいいものが多く、そういう意味でも人の声や振動で動けば十分だし、消費電力の観点からも振動発電で十分賄えると考えている。
二酸化炭素の排出量は、マイナス6%という目標とは裏腹に、実態は6%増えている。機械の省エネは進んでいるが、電子機器が広く普及するとともに、使用時間も長くなっているなど使い方の問題もあるように思う。こうした時代背景にあって、ユビキタス電源に化石燃料を使うのはマッチしないと考えている。ユビキタス機器はクリーン電力で賄いたい。普段捨てているエネルギーが、ユビキタスの分野では大きな可能性を持っていると思う。
導入事例
1.首都高速道路との取り組み:五色桜大橋のライトアップの電力の一部に、振動発電の技術を使っている。首都高速道路全体に同じ装置を設置すると、火力発電2、3基分の電力を生み出すことができる。発電床を敷き詰めると、東京23区の一般家庭使用量の40〜50%を賄う事ができる試算になっている。
2.渋谷区ハチ公前広場:2008年12月に渋谷区役所からの依頼で、ハチ公前広場で実証実験を行った。路面に発電床を埋め込み、通勤・通学の人に踏んでもらった。実際に動いているものを見せると、人々の印象が大きく変わってくる。これからの技術は、一般の人から応援される技術であるべきだと考えているし、実証実験をすることで、技術力のアップにも、技術のPRにもなっているので、実証実験には積極的に取り組んでいきたい。
3.藤沢市役所新館入口:入口に発電床を使ったLEDの装飾を設置しているとともに、電子ペーパーで発電量を掲示している。電子ペーパーは、表示を切り替えるときにしか電力を食わない非常に電力消費量が少ない機器で、50人通るとペーパーの切り替えが出来る計算だ。
4.ECO EDO日本橋イルミネーション:イルミネーションは、街の活性化とか、いろんな役割がある一方で、電力の無駄遣いという批判もある。イルミネーションを見に来る人が発電すれば、電力の無駄遣いにはならない。
5.オフィスフロアに使う:踏むと電気がついてトイレの場所を示すような、フロアの案内灯として使っている。これを非常用階段に応用したい。アメリカでは同時多発テロのあと、建物の非常用階段で蓄光板の非常灯の設置が義務付けられたが、非常口は普段暗いので発光しない欠点があった。その代替として注目している。
開発目標
2段階で考えている。まずは発電量を10倍にするとともに小型化したい。今の状況だと1年半から2年後に10倍にできそうな見込みだ。その時点で家庭用機器の開発に取り組みたい。そして、5年後に100倍を達成したい。10倍したものをさらに10倍するイメージだ。100倍規模になると道路や自動車に応用するなど、社会のインフラになりうると考えている。
経産省の2050年研究会では、2050年にはエコ発電だけで賄おうという話が出ている。今のエコ発電の主力は太陽光や風力だが、それだけだと100%賄えない目算が強い。そこで、太陽光、風力に次ぐものとして、振動が有力だと考えている。風力発電の巨大なものを都心に置くことはできないし、ビルの屋上にはいろんな設備が載っていて、太陽光発電パネルを載せるスペースも限られている。発電床は道路など、都心でも設置がしやすいと考えている。もちろん課題はある。発電床の寿命は10〜15年なのに対し、高速道路では2年に一度くらいの頻度でアスファルトをはがす工事が発生する。その時に発電床が壊れないような作りや導入の仕方を考える必要があるし、他にも配線や防水性などの課題もあるが何とかクリアしていきたい。
会社について
会社のスローガンとして、「『世界初』のものを創造していきます」「新たな価値を提案していきます」「『究極のエコ』を実現していきます」という3つを掲げている。また、ミッションとして「私たち株式会社音力発電は『発電床(R)』、『振動力電池(R)』を通じてエネルギー環境を変えていきます。そして地球の将来・子供たちの未来をより明るいものにしていきます」を謳っている。
#竹村
私たちは、大規模な発電所で発電し、それを使う集中型の発電に慣れきっているが、今ここで使う電気はここで作ろうという分散型の発想が素晴らしい。自分で賄える分は自分で賄って、どうにも足りない部分を外から調達することを考えればいい、捨てているものを再利用しようという微小循環のライフデザインになっている。
加えて、インタラクティビティというか、電気がどう生まれているか直観的に分かることも重要なポイントだと思う。私たちはブラックボックスの社会で生きていて、電気がどこから来ているのか、捨てたものがどこへ行っているのかが把握しづらくなっている。蓋を開けてみれば、石油を買うために年間24兆円も使うようなソーシャル・デザインになっている。教えられなくても、直観的に分かるようになっていくのが健康的だと思う。
また、今日の話を聞いて、電気自動車も究極のエコカーではない、ということが分かった。太陽光で発電した電力をリチウムイオン電池に貯めて走れば確かにこれまでと比べればエコだが、振動エネルギーを捨てていることになる。
#速水
車はどれだけ性能がよくても振動や音が出る。捨てているものを再利用するだけでなく、振動や音を電気エネルギーに変えているので、理論的には電気に変えた振動や音が消失するはずで、騒音や振動問題の解決にもなるはずだ。
#竹村
音と振動ということで思い出したのがグラハム・ベルのエピソード。ベルは電話を作ろうと思っていた訳ではない。彼の家族に聴覚障害者がいた。聴覚障害者のコミュニケーションの補助手段として、振動を使えないかと考えていたところ、音声を電気信号に変換する電話が生まれた。音声と振動は昔から関連が深い。
#速水
人が介在する場所には音や振動は必ずあるので、応用範囲は広いと考えている。医療分野だとメタボ対策のやる気支援のケースがある。万歩計の代わりに運動時発電するような機器を考えている。万歩計だと面白みがない上に、階段を上がる一歩と平坦な道の一歩は違うし、歩くのと走るのでは消費エネルギーが違う。それを発電量にも相関づけられるのではないかと思う。自分が頑張って運動すれば携帯の充電に使えるということになれば、運動のモチベーションにもつながると考えている。防犯用途での使い方も考えている。プロの泥棒はセンサーの大元の電源を切ってから入ってくるが、窓ガラスを割った振動で発電して異常を通知すれば、そうした事態を防げる。また、似たような発想で、地震の被害調査にも使えると考えている。
#竹村
地震と言えば、地震から電気エネルギーを得ようという研究が始まっている。波や風のエネルギーも電力に変えることができるはず。地震や台風が電力になる街は美しいと思う。ところで、自動車メーカーとのつながりはどうか?
#速水
自動車メーカーとはこれから始める段階にある。技術の最初の段階は、何に使われるかが非常に重要だと思っている。この技術をどう育てるか、というところも踏まえてプロデュースも一緒に取り組んでいる。
#竹村
プロデュースまで含めて大切に技術を育てていきたいからベンチャーでやっていると理解しているが、もともとベンチャー志向があったのはなぜか?
#速水
仕事もスポーツも何でも出来てしまう人が、子供ながらにすごいと思っていて、自分も何でも出来る人になりたいと思っていた。高校時代の予備校の先生から、これからは大学発ベンチャーが面白い、ということを聞いた。社長は何でも出来る人だと思っていたから、面白そうだと思った。もちろん、今は自分が何でもやっているわけではないけれど、それがベンチャーに興味を持ったきっかけだ。
#竹村
技術を育てていくに際して、この企業となら組んでいけばやっていける、というのはないのか?
#速水
10倍までは自社でできると思っている。次の10倍は自社だけだと時間もお金もかかると思っていて、組む必要があると思っている。その際どこと組むかは非常に重要だ。技術力があるのは前提だが、企業文化や仕事のやり方など、相性が大事だと思っている。まずは、この技術をきちんと理解してほしい。それから、私たちは一般の方に応援される技術ということを重視しているが、その思いを理解してくれるところとやりたいと思っている。
#竹村
JRの改札に発電床を設置する実験をされた実績がある。鉄道会社はレールや車両そのものがエネルギーの宝庫だと思うが、JRは熱くないのか?
#速水
2006年、慶応大学とJR東日本の産学連携プロジェクトの一環で音力発電が採用された。東京駅など、人が集まるところは発電床に適しているし、電車、レール、枕木にも応用できるから可能性は大きいと思う。ただ一般論として、大企業で安定しているところは、CSRの意識こそあれ、わざわざ発電ビジネスをやる必要はない。エレクトロニクス業界におけるユビキタス電源は喫緊の課題でもあるので本気度は高い。JRが本気になってくれると嬉しいが...。
#竹村
JRとすれば自社の電気料金を大きく抑えられるようになるわけで、ユーザーから声を届けていく必要があるかもしれない。地方の小さな鉄道会社と組んで、電気料金を削減するモデルを一つ作ると広がりが出てくるのではないか。
















