丸の内地球環境倶楽部

第18回地球大学アドバンス「生命都市TOKYOの再生にむけて」

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日時:
2009年5月25日 (月) 18:30〜21:00 ※終了しました

ゲスト:
石橋知博氏(株式会社ウェザーニューズ SoLive24"企画制作リーダー)
朝田志郎氏(株式会社日建設計)
平賀達也氏(株式会社ランドスケープ・プラス)

モデレーター:
竹村真一氏(Earth Literacy Program 代表・エコッツェリア・コンテンツプロデューサー)

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モデレータよりコメント

膨大な人口と経済活動で"熱の島"(ヒートアイランド)と化した東京----。ゲリラ豪雨や都市型洪水のリスク、新型感染症や地震などに対する脆弱さも増しています。都はCO2排出削減や都心部の自動車交通の低減など先駆的な対策を進めていますが、東京のサステナビリティは対症療法的な施策だけで担保しうるものでは到底ありません。東京湾から関東平野まで視野に入れた「風の道」「水の道」の設計など、陸のTOKYOと海のTOKYOを再結合し、"21世紀の生命都市TOKYO"をリデザインする抜本的なビジョンがいま必要です。


思えば400年前の徳川家康による江戸開幕に始まり、明治維新後のモダン・ビジネス街「丸の内」の創生、1964年の東京五輪での「水の都」から「陸の近代都市」への転換など、東京ほどドラマティックな変貌を遂げてきた都市は世界でも稀でしょう。そして、これらに匹敵する大きな変革をTOKYOはいま必要としているのです。

こうしたTOKYOの抜本的なリセットにむけて、いま懸案の東京オリンピック2016は千載一遇のチャンスかもしれません。これを機に緑と水の東京を再生し、また広大なゼロメートル地帯を抱える都市として近未来の洪水や海面上昇のリスクまで十分考慮した"災害や気候変動にロバストな都市"に生まれ変わることが出来れば、それは次世代への大きなプレゼントとなるのではないでしょうか?また世界最大級の経済集積と人口密度をもつTOKYOが新たなサステナブル・モデルを提示しえたなら、それは今後の急激な人口集中と経済成長によって"人類の時限爆弾"となりつつある特にアジアの大都市に大きな希望を与える「地球都市革命」となるでしょう。

今回の地球大学では、江戸/東京の歴史的・生態学的な成立ちから紐解き、いわばTOKYOという身体の経絡や経穴(ツボ)を探るごとく、生命都市 TOKYOの再生プランを具体的かつビジュアルに提示します。またエコシティの本質は、物理的な緑や水の豊かさだけでなく、環境に対する人々の意識や感性の豊かさにあらわれるもの。今回はTOKYOに暮らす私たちの"環境感度"を増幅する新たな試みを紹介しながら、「人」という要素まで含みこんだエコ都市 TOKYOの再生プランを探ります。

トピックス

・ 陸のTOKYO、海のTOKYO----東京の生態学的な成立ち、都市の経絡を可視化する
・二つの東京オリンピック----1964の正と負の遺産、2016オリンピックの地政学的「意味」
・TOKYOの未来への投資----真の"経済効果"は気候変動にロバストな都市の設計!
・参加型"環境センスウエア"のデザイン----ウェザーニュース社"SoLive 24"の試み
・「都市」という人類的リスク・マネジメント----50年後、100年後の環境変動への応答

プロフィール

竹村真一(たけむら・しんいち)竹村真一(たけむら・しんいち) Earth Literacy Program 代表 エコッツェリア・コンテンツプロデューサー

京都造形芸術大学教授。Earth Literacy Program代表。東京大学大学院文化人類学博士課程修了。地球時代の人間学を考究しつつ、ITを活用した独自な地球環境問題への取組みを進める。

Sensorium(97年アルス・エレクトロ二カ・グランプリ受賞)、デジタル地球儀「触れる地球」(05年グッドデザイン賞・金賞)や「100万人のキャンドルナイト」「aqua scape」など、さまざまなプロジェクトを推進。環境セミナー「地球大学」主宰。07年「water」展ではコンセプト・スーパーバイザーとして企画制作に携わる。08年7月の北海道・洞爺湖サミットでは、 国際メディアセンター(IMC)内の環境ショーケースにおける「地球茶室」の総合企画・プロデュースを担当。

新著「地球の目線」(PHP新書)など著書多数。2009年4月26日よりラジオ「GLOBAL SENSOR」がJ-WAVE 81.3にて(偶数月の第4日曜25時〜)放送開始。

竹村真一プロジェクトサイト: http://www.elp.or.jp/

イベントレポート

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■「生命都市」のあり方を問う

本日のタイトル、「生命都市」には三つの意味を込めています。第一に、水と緑に満ち溢れ、生命感に溢れる都市。第二に、そこに生きる人々が水と緑、都市の生命感に対してセンシティブであること。第三に、生命の本質のごとく、自らをつくり変える適応性とダイナミズムを持っていること。

今日はパネルや模型も置いていただいていて、朝田さんと平賀さんに、第一のポイントを、参加型の気象予測をプロモートされているウエザーニュースさんに第二のポイントをプレゼンテーションいただきながら、第三のポイントを考えていきたいと思います。

東京は、"太平洋の子宮"ともいうべき豊かな海を真ん中に抱えつつ、「風の道」、「水の道」に満ち溢れた豊かな生態系を持っています。これから気候変動の時代が来るという未来予測の中で、それらを再生しながら、東京オリンピックを触媒として、どのような東京をデザインしうるか。みなさんとヴィジョンを共有していきたいと思います。

<竹村氏>

■リ・デザインした東京を21世紀のエコシティに!

五千年前の縄文海進の頃、皇居より東側はすべて海でした。それがだんだん乾いて湿地となった。もともと利根川は東京湾に流れ込んでいましたが、氾濫が多く、東京の東半分は常に冠水しているような状態でした。四百年前、これを見た家康は、江戸開府と共に、この暴れ川を銚子に付け替える東遷工事を行い、江戸、つまり今の東京の繁栄の基礎をつくってくれました。けれども、六十年前、カスリーン台風によって元の利根川の流れを再現するかのように大洪水が起ってしまった。江東区、墨田区、埼玉県幸手市や栗橋なども長期間に渡って冠水しました。

もしまた同じ様な台風が襲ってくれば同じ様なリスクがあります。のみならず、これから先、気候変動による海面上昇も予想されます。そうすると東京低地地帯には、これまで経験したことのない未曾有の冠水、洪水リスクが表れてくるわけです。

国土交通省の防災会議のデータによると、いま、カスリーン台風級の台風に襲われた場合の災害規模は約三十四兆円、ハリケーンカトリーナの三倍の被害額です。同時に、浸水被害の人口が二百三十二万人です。このような被害が想定されている都市に私たちは暮らしている。

今日は何もネガティブな警告をするために来たのではありません。しかし、治水安全度は三分の一以下に落ち込んでいます。まだ経済力があるうちに、私たちも家康のように、未来への投資として東京を設計する義務があると思います。

東京オリンピックを契機に水と緑の生命都市、災害にもロバストな都市のリ・デザインに成功し、一千万人級、あるいは首都圏全体を合わせて三千万人級の人口密度を持つ東京が、21世紀のエコシティのモデルを示すことができたならば、アジアと地球への大変なプレゼントです。万が一、十月にオリンピックが来なくても、「そんな東京ができるならオリンピックに関係なくつくっていこうよ」というムーブメントを、本日を出発点に広げていきたいと思っています。

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≪株式会社ランドスケープ・プラス 平賀達也氏≫

■東京の力強さを活かす都市構造

関東平野は、南側に東京湾、相模湾に代表される海の冷源を持っています。北西部には山が控えており、日中は海からの風が吹き、夜には山間の冷えた空気が河川やヒダのような地形を介して呼吸していました。それが都市の高密度化により呼吸困難に陥っていった。これがヒートアイランド現象の根幹にあります。

東京は、アスファルトやコンクリートを一皮めくると、豊かな土壌とともに細やかな地形が今も色濃く残っています。東京が目指すこれからの都市構造とは、東京自身が数十万年前から持っている大地の骨格を、風や水の流れと合わせて再生していくというものです。

2016年の東京オリンピックでは、約七割の既存施設をフル活用します。代々木公園など施設がまとまっているエリアを私たちは『森のクラスター』と名付け、東京湾から吹いてくる生命の風を、クラスターの森や緑の葉脈を通じて都市の内陸部に送りこんでいこうと考えています。

これらのクラスター群を半径約8㎞の円で囲み、『HERITAGE ZONE(ヘリテッジゾーン)』と呼ぶ歴史エリアと、『TOKYO BAY ZONE(東京ベイゾーン)』という新しい都市構造のエリアに分けています。安藤忠夫先生が「海の中に新しい森をつくろう」とおっしゃっていますが、海の上に新しい東京を象徴する都市をつくっていくわけです。この『HERITAGE ZONE』と、『TOKYO BAY ZONE』の境に逆S字型の線を引くと、東洋の古代思想のタオマークになり、その中心に、『結びのクラスター』があります。ここは、単にオリンピックの中心地というだけでなく、東京の新しいもの、古いものが交差する場として、強いメッセージ性を出していける場所になればと考えています。


■「水の道」「風の道」を考慮したプランニング

では、どういうふうに緑を配置し、どういうふうに地形をつくることで、東京湾から吹いてくる風を冷やし届けられるかという事例をご紹介します。

東京には、神田川、渋谷川、古川、目黒川という昔からあった川が海と繋がって存在しており、内陸部と海をつなぐこれらの谷地形構造に着目した計画を行っています。事例は2007年に竣工した大崎西口です。従来通りの開発であれば、なるべく平坦な土地を確保して、容積率を最大限確保した建物を建てます。しかしここでは、背後にある丘陵地を計画地の中に引き込み、さらに目黒川流域の谷地形の支流を新たな開発で構築し、背後にある広大な水の流域と海からの流れをつなげることで、海からの冷気を計画地に呼び込むようにしました。この新たな地形は将来に渡って樹木を生育できる都市基盤でもあります。

また、舗装を一皮めくれば、浸透管(水が徐々に湧き出ていく管)が人間の血流のように配置されており、降雨が敷地全体をまんべんなく湿らせるデザインになっています。

■ユビキタスに機能するプランニング~『グリーンミスト』

次にご紹介するのは、住宅レベルにおいても自然の力を使って快適に暮らせないかという試みです。神田川の風を取り込めるように、「風の道」を家の中につくり、川沿いにある生垣にミストを仕込んでいます。『グリーンミスト』と名付けました。システムとしては、上水にタイマーをつけて、ある温度を超えると温度センサーが反応してミストが自動的に出るしくみです。昨年、ひと夏場を経験しましたが、クーラーが無くとも外部環境を取り込みながら快適に暮らしていけるということを実践しています。

やってみて面白かったのは、白い煙がシューっと出るので、何か面白いことをやってるぞと近所の人が集まってきてコミュニケーションが始まることです。こうした事例をふまえて、ひとり一人が東京の持っている自然の力を信じ、社会全体が環境に対して自分ごととして関わっていくということが大事なのではないかと考えています。ありがとうございました。

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≪株式会社日建設計  朝田志郎氏≫

■「ある」を活かし、あわせ、つなげ、つけたす都市づくり。

東京の電車、バス、首都高、環状線、これらの地図を重ね合わせると、すでにこれだけの基盤を東京は持っています。また、2016年のオリンピックの前に東京三環状ができあがります。さらに注目していただきたいのが水運です。例えば、後楽園、国技館、結びのクラスターまで繋がっている川もありますし、都内には、防災のための船着場が数多くあります。災害時に確実に活用するためにも、この水運を日常的に活かすべきだと思っています。また、神田橋や箱埼ジャンクションなどは地下鉄、首都高、バス、川などのすべてが揃っていますので、少し手を入れれば非常に良いターミナルになります。

というように、いまある基盤を重ねあわせ、その上にBRTやレンタルサイクル、ミニバスなどを追加したり、緑を増やしたり、クラスターどうしの緑をリンゲージさせたり、多層のレイヤーを重ねていけば、東京は非常に魅力的に生まれ変わります。


■みんながハッピーになる都市づくり。

競技場の近くには人が住んでいますが、オリンピックが来てみんながハッピーなるという観点で考えると、生活の営みの中に車を入れないなどの提案も考えねばなりません。例えば、渋谷公会堂と区役所付近の既にある大駐車場に加えて1964年オリンピックの記念館のような拠点を設け、来訪者にはそこで車を降りてもらい、そこから先はミニバスやレンタサイクルを利用してもらうなどが提案できます。

また、国技館、2016年に完成予定の新東京タワー、東京国際フォーラムなども様々な拠点にし、今回のオリンピックを機にもっとみんなに活用してもらうようになればいいのではないかと思います。


■意識を変える都市づくり。~未来像は目の前に~

先ほど話のありました「海の森」は『結びのクラスター』の臨海部開発にあたります。実は海面の下は縄文海進の高積層大地が存在しています。陸との違いは、どこに水位があるかだけの問題です。この上に我々は、丹念に丹念に江戸時代から埋め立てを積み上げてきました。埋め立てという概念を肯定的に受け止めてつくっているのは世界的に見ても日本だけです。

また、我々が"ゴミの山"と教わってきた埋立地ですが、ゴミで埋められている埋立地は以外に少なく、それ以外は浚渫土と呼ばれる土で埋められています。この浚渫土は近年では周辺の他県の土が使われています。これを乱開発だと言われてしまってはもともこもないわけです。このことを肯定的に見るような思考を我々が持っていなければ、『海の森』は後世に残せません。

夢の島は海抜約30メートルです。もし、海面上昇が起きたとしても『海の森』は残ります。そのことも頭に入れておいてください。

大事なことは、オリンピックは二週間で終わってしまうのです。その後に、都市に何を寄与してくれるのか? ここにこそ夢があるということです。大きなものを大きくつくっていくということではなく、いまあるもので発想の転換をし、少し変えるだけで、我々が目指すべき東京オリンピックの未来像、東京の未来像がもうすぐ目の前にあるのではないか、ということで締めくくりさせていただきます。

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≪株式会社ウエザーニュース 大木氏≫

■"観測"を"感測"にかえてみんなで減災を。

我々が『SOLiVE24(ソライブ24)』『ソラマド』を始めた背景には、昨年度にゲリラ雷雨の予測をおこなったことがあります。募集した "ゲリラ雷雨防衛隊"1万人の方々に雲の様子などをメールで報告していただき、我々は皆さんから寄せられたレポートや位置と、数値予報の計算モデルを合わせて予報をしていきました。それをベースに開発したのが、『ソラマド』というデスクトップのアプリケーションです。

機能としては四つ程あります。一つは文字通り『ソラマド』です。北海道から沖縄までの地方を七ブロックごとに分け、それぞれのウエザーリポートが七つの窓を通じてリアルタイムに変わっていくしくみです。いま、約四万人のウエザーリポーターの方々が登録しています。一日平均約三千通の情報が寄せられますが、ゲリラ雷雨や台風の時には、五千、一万といった数になります。

二つ目は『ソラチャット』というPCならではの機能です。感じたこと思ったことを、チャットを使って皆さんが自由に書き込み、コミュニケーションをとっていただくしくみです。

もうひとつが『SOLiVE24』。24時間生放送の動画を配信しています。朝日でも夕日でも、同じ時間を同じ形で誰かと共有する。それによって共感、共鳴を起こす。ライブですからそういう意味があります。    

また、地震についても "Yureステーション(ユレステーション)"という簡易な地震計をお配りしているので、チャットの中に情報がすぐに来ます。


≪ここで、モニターにリアルタイムで地震報道が映る!≫

今ちょうど地震があったようですね。ちょっと興奮してしまいましたが(笑)、これが本当に生のライブ放送の醍醐味であり、新しい価値ではないかと思います。我々はいわゆる オブザベーション(observation)の"観測"に対して、アイザベーション(eye-servation)の"感測"という造語を使っています。人が感じる五感というものは、コンピューターの計算に勝る力を生む。それをもっとロバストに鍛え、集合値化することによって、減災というものをみんなで出来るのではないか。それが『SOLiVE24』『ソラマド』のひとつのポイントになっています。

≪株式会社ウエザーニュース 西氏≫

■気象リテラシーを高め減災につながるモデルを。

いま、まさに地震が起きて、実力を発揮したような気がしますが(笑)、普段はこの時間帯ですとお天気バラエティのような少々柔らかい番組をやっております。ところが一旦こういう地震や大雨があった時に、みんなが心配し合ってくれる。「あなたのところ大丈夫ですか?」「大丈夫です」といった新しいコミュニティが生まれる。これもまたこのアプリケーションのひとつのパワーかなと思っています。これは実際始めてから分かったことです。

もうひとつ、その人間のコミュニケーションのパワーに加えて、計算のパワーというものも共有していきませんか、という、いわゆるグリッドコンピューティングの世界をご紹介します。要するに、皆さんのコンピューターでこのアプリケーションを起動している時に、少しだけ我々の用意する計算プログラムを実行して頂いて、その計算結果をみんなで共有しましょうというものです。ちょうどその第一回目として桜の開花シミュレーションを行っています。

IPCC (Intergovernmental Panel on Climate Change・気候変動に関する政府間パネル)が、地球の気候変動のモデルを計算しておられますが、そちらのデータを基礎データとして、毎日の気温がどのように変化するのか、百年分を計算してみました。それを見ますと、場合によっては東京で桜が見られなくなってしまうかもしれない。しかし逆に、そういうことが起きないようにみんなで考えていくきっかけにもできます。

例えば、都市型水害という言葉は、ここ数年の言葉だと思うのですが、設計されているキャパシティを超えてしまうと、人の力ではどうしようもなくなってしまう。しかしそれは設計した人が悪いわけではなく、昔の想定と今とが違っている、ということだと思います。これは、インフラにとって想定外の事態が発生する可能性があり、そのような事態に対応し克服していくということが求められているといえます。その意味で、人間の感覚を研ぎ澄ましていくことができることなのではないか。これが私どもの考える天気予報のあり方です。

これまでの天気予報というのは、気象庁が予めインフラ開発をし、ほぼ唯一無二の気象予測という形で市民が受け取っていました。これはある意味一方的な情報伝達なのです。もちろん、それはそれでひとつの歴史ですし、素晴らしいことだと思います。しかし残念ながら、災害で人が死んだり、事故に遭われたり、財産を失ったりされているわけです。そこを防ぐことはなかなかできない。これからは新しい考え方で、一人ひとりに気象リテラシーを高めて頂き、お互いに情報共有をしていくということを通して、新しい気象予報をつくり上げていきたいというのが当社の考えるモデルです。

≪竹村氏≫

■一人ひとりの人間のあり方まで含んだ生命都市へ。

よく人間というのは巨象の上に乗ったノミのような小さな存在に例えられます。そのノミが象の体温の変化や体調の変化を計り始めている。地球温暖化というのは言ってみればそういう状態です。

東京は確かに豊かな生態系があります。それを活かして家康がデザインを始めて以来、様々な歴史の集積の上に、ポテンシャルの高い都市として東京はあります。しかし、それでも設計では及びのつかない災害や、気候変動に伴う、あるいはヒートアイランド現象に伴う予測不可能な変動があります。そうした変動に巨象の上のノミがいち早くセンシングして適応できるような生命都市。実は人間社会も都市に対する生命力を持った存在であるということです。

本日は、都市設計というハード面、気象予報というソフト面からお話いただきましたが、みなさんのプレゼンテーションの中心にはやはり人間がありました。その人間社会のあり方、あるいは一人ひとりの人間のあり方までを含めて、21世紀型の都市を提起すべきではないか。今日は生命都市やエコといった概念をもう一歩超えるような、新しい次元の問題提起をいただいたと思います。

東京オリンピックという大きなお祭、ターゲットがなければ、こんなに思いきって東京への未来の投資はできないでしょう。少なくとも、もし2016年に東京オリンピックを行ったとして、何が成果かといえば、おそらくそこに出来たスタジアムでも賑わいでも商業的な経済効果でもなく、こういう形で東京の歴史が再編集され、それが未来に向かってプロジェクトされた、投げかけられたということでしょう。今まさに、ひとつの見えない生態系がデザインされているのです。本日は東京全体をもう一回意識の中でリ・デザインしていくためのひとりひとりの思考の触媒をいただいたと思います。ありがとうございました。では揺れながら帰りましょう(笑)。

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