丸の内地球環境倶楽部

第19回地球大学アドバンス「日本の『太陽経済』ビジョン」

日時:
2009年6月29日 (月) 18:30~21:00 ※終了しました

ゲスト:
山崎養世氏(社団法人太陽経済の会・代表理事)
永田敏氏(インターネット型分散電源送電システム:VPEC株式会社 代表取締役社長)

モデレーター:
竹村真一氏(Earth Literacy Program 代表・エコッツェリア・コンテンツプロデューサー)

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ゲストプロフィール

山崎養世 (やまざき・やすよ)
eca19_yamasaki_profile.jpg一般社団法人太陽経済の会代表理事。1958年生まれ、福岡市出身。東京大学経済学部卒業。UCLAにてMBA取得。大和証券勤務を経て、ゴールドマン・サックス投信株式会社社長、ゴールドマン・サックス本社パートナー(共同経営者)等を歴任。2002年同社退社後、シンクタンク山?養世事務所を設立。高速道路無料化を提唱するほか、地方から日本を元気にする「田園からの産業革命」や「本当の郵政改革」、日中、日印関係等の金融、財政、国際経済問題等に関する調査・研究・提言活動を行う。2008年5月日本コアパートナー株式会社を設立、2009年2月一般社団法人太陽経済の会を設立。


永田敏(ながた・さとし)
eca19_nagata_profile.JPG1947年名古屋市生まれ
1970、71年 東京大学法学部第1類卒業、第2類卒業(法学士)
1971-1979年( 株)東芝入社、電力部勤務
1979年( 株)三井ハイテック入社
1983年 スタンフォードビジネスSloan修士
1990-1994年 (株)三井ハイテック 代表取締役社長、東証1部上場
1998-2001年 (株)三井ハイテック 代表取締役社長
2002年- IBS(株)およびVPEC(株)代表取締役社長
現状の枠を破る革新的技術開発を指導主導し、技術の分かる経営のプロとして、Who's WhoでInnovative Management Styleが評価された。


モデレータよりコメント

太陽から地球にもたらされる膨大なエネルギーは、現在の"石油メタボ"の浪費体質を前提にしても、全人類のエネルギー需要(石油換算で約90億トン)の1 万5000倍!したがって、その1万分の1でも捕獲できれば、この星には本来エネルギー問題など存在しないはずです。そして、それが机上の空論でなくなりつつあることは、たとえばドイツが20年後の2030年に電力需要の半分近く(45%)を自然エネルギーで賄うという政策目標を掲げていること、またオバマ米大統領がグリーン・ニューディールで15兆円規模の自然エネルギーへの投資を宣言していることなどからも明らかです。太陽の恵みという宇宙船地球号の「好都合な真実」を活かせる文明段階へと、人類はようやく到達しつつあるのです。

一方、多様で自立分散型の発電システムが増えてくると、これまでの大規模送電のグリッドシステムではそぐわない新たな問題も生じてきます。ホスト・クライアントシステムからインターネットへの大転換が起こったIT分野と同様の根源的なパラダイム転換が、送電システムにおいても求められています。発電から蓄電・送電まで含めたトータルな社会インフラのリデザインが展望されねばなりません。

今回の地球大学では、こうした「太陽経済」の日本ビジョン、それへの本格的な移行に必要な条件についての巨視的な展望を試みます。国旗に日の丸を掲げる国として「太陽経済」をいかに先導していくか?大きな技術シーズとともにビジネスチャンスも迎えつつある日本の位置と展望もあわせて整理したいと思います。

トピックス

・世界の自然エネルギーの最新動向 ・日本の太陽経済ビジョン ・インターネット革命に匹敵する送電根ネットワーク革命 ・真の日本型ニューディールとは


プロフィール


竹村真一(たけむら・しんいち)竹村真一(たけむら・しんいち)
Earth Literacy Program 代表
エコッツェリア・コンテンツプロデューサー

京都造形芸術大学教授。Earth Literacy Program代表。東京大学大学院文化人類学博士課程修了。地球時代の人間学を考究しつつ、ITを活用した独自な地球環境問題への取組みを進める。

Sensorium(97年アルス・エレクトロ二カ・グランプリ受賞)、デジタル地球儀「触れる地球」(05年グッドデザイン賞・金賞)や「100万人のキャンドルナイト」「aqua scape」など、さまざまなプロジェクトを推進。環境セミナー「地球大学」主宰。07年「water」展ではコンセプト・スーパーバイザーとして企画制作に携わる。08年7月の北海道・洞爺湖サミットでは、 国際メディアセンター(IMC)内の環境ショーケースにおける「地球茶室」の総合企画・プロデュースを担当。

新著「地球の目線」(PHP新書)など著書多数。2009年4月26日よりラジオ「GLOBAL SENSOR」がJ-WAVE 81.3にて(偶数月の第4日曜25時?)放送開始。

竹村真一プロジェクトサイト: http://www.elp.or.jp/

イベントレポート

イベントレポート

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■はじめに

<竹村真一氏>

現在、人類のエネルギー需要は石油換算で約百億トン。この"石油メタボ経済" を前提にしても、太陽エネルギーは約1万5千倍と言われています。したがって、その一万分の一でも捕獲できれば、この惑星には本来エネルギー問題など存在しないはずです。

ドイツでは、2030年に電力需要の約45%を自然エネルギーで賄うという政策目標が見通し可能となり、グリーン・ニューディールで15兆円の投資を宣言したアメリカでも、2025年までに再生可能なエネルギーで約25%をカバーするとしています。
一方、石油を買うだけでも、日本では年間約24兆円、アメリカは約70兆円のお金を使っています。そのような経済が持続可能なはずもなく、資源外交、資源戦争からの人類の解放という意味でもエネルギー問題は人類の最重要課題です。

本日は、「太陽経済の会」を立ち上げられ、日本の流れに骨太な道をつくろうとされている山崎先生、また「送電ネットワークにおけるインターネット革命」とも呼ぶべき新しいシステムを自ら考案、推進されている永田先生のお話を伺います。

無尽蔵に太陽の恵みをいただく「好都合な真実」に満ちた宇宙船地球号、その条件に見合った文明へ進むチャンスを得た私たちが、経済モデルとしてどのようなソーシャルシステムをデザインしていくのか、また発電の部分だけではないトータルな社会インフラをどう構築していくのか、これまでの大規模集中型の発電システムに代わる新しいエネルギー社会のモデルをどうつくっていけるのか。今日はそういうところまで視野に入れて議論をしていきたいと思います。


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≪ 山崎養世氏  社団法人太陽経済の会 代表理事 ≫

■「生存条件の安全保障を構築する21世紀、日本こそリーダに!」

私が人生の中で最も影響を受けた本の1つはバックミンスター・フラーという物理学者が書いた『クリティカル・パス』という本です。ここにもう人類と地球の未来が書いてある。人間は太陽から生命エネルギーを得ている。また太陽のエネルギーが十分あれば、バイオの力によってすべての食べるもの、そして水の循環ができる。ただしそういう社会を生む最大のキーを「政治」と書いています。あるいは経済の枠組みの仕方。また、彼は、大きな技術革新の後、実現までには五十年~六十年かかると言っています。今回、私たちが「太陽経済」と言っている新しい経済環境は、技術的な面から言えば、その可能性が見えてきました。それは太陽の本質によるものだと思います。

第一に、太陽は、あと50億年は持ちます。地球の歴史は45億年ですから、我々のスパンで言えばほぼ無限に続く。これが石油や石炭との違いですね。
二番目はタダだということです。人間が使うエネルギーの一万五千倍ものエネルギーを注ぐ太陽は我々に対して1円もチャージしない存在である。
そして三番目は、太陽はどこにでもある。もちろん太陽光が強いところ、弱いところの差はありますが、基本的に平等です。

この太陽の本質を思うと、やはり、我々人間がいま使っているどのエネルギーオプションも太陽には叶わない。しかし石炭・石油文明によって大成功した人間はなかなかそれから逃れることができない。その欲望や、逆に言えば文明の洗練ということで、もうすでに先進国や途上国という区分けはなく、トップ企業10社のうち5社は中国が占め、トヨタが15位か20位くらい。マネー、企業、そういうものの大きさやランキングも全然違ってしまった。

1999年1バレル9.9ドルだった石油が去年のピーク時は147ドルです。ところが石油が15倍になったのに世界の成長は止まらなかった。なぜなら、労働の価格がものすごく下がったから。先進国におけるGDP、物価を決めるとき、アメリカでは七割が人件費、日本では六割です。それが中国の安い人民元で、40分の1、30分の1になる。そのため世界の物価は下がり続けた。七十年代はオイルショックがきてくれたから、世界の経済は成長を止め、先進国は省エネに走った。その筆頭が日本だったんですね。

中国はいま何をやっているのか? COP15いろいろな枠組みで中国のトップ層は非常に努力しています。けれどもプライオリティナンバーワンは成長です。インドもそうです。太陽使用も絶対量では頻繁にやっていると思いますが、国民の消費レベルはすでにもっと上がっている。そうすると1ドルのGDPを作りだすのに中国人は日本人の8倍のエネルギーを使い、インド人は8.5倍、ロシア人は17倍、アブダビやサウジの人はもっと高いと思います。そうやって資源国、新興国に経済の重点が移るにつれて、さらに資源とエネルギーの加速度的な消費が進んでいる。

恐らく温暖化はもっと早い速度でやってくるでしょう。10年か20年でアジアの30億人を支えているヒマラヤの氷は溶けて、川、井戸、全部枯れて農作物はできないだろうと予想されています。ですから、これは人類が生きられるかどうかの戦いなのです。「地球を救う」という言葉は立派です。しかし、地球は人間がいなくたって生きていける。人類こそが自分で自分を救わないと滅びるポイントに来ているのです。

そんなことを考えていたら、「太陽経済」と「Sun-Based Economy」という言葉が両方ドンときまして、あ、人間それで生きていけるのじゃないかと。我々は太陽からエネルギーをもらって生きています。風力、水力、光、熱、波、植物など太陽がもたらすあらゆるものからエネルギーを変換できるますし、それを溜め、超電導で送ることもできる。そのエネルギーがあればリサイクルもできるし、農業もできる、漁業の船も動く、飛行機だって飛ぶわけです。食料や水を我々が頂けるのもやはり太陽が雨を降らし、雪を降らし、循環をしているからです。
ですから、太陽が命の根元、文明の根源であるというのも当たり前の話。それを我々日本が言ってもいいのではないか。しかも我々はそれを言うだけの資格がある。やはり緑を守ってきた。漁民が山に行って木を植えてきた。そんな伝統があるのは日本とドイツしかないらしいです。他の大文明は砂漠になって滅びた。日本はそうでなかったから今だって超一流国家で存続している。

そしてもうひとつ、人間はやはり経済活動をおこしている。いま、500年か1000年位の産業革命が起きようとしている。そこをリードしていこうじゃないか。それは限られた土地を武器で占拠するものではなく、助け合い、ネットワークの中にできるだけ多くの人を入れてあげる。そういう産業革命が我々は起こせるのではないか。それを英語で言えば「Sun-Based Economy」。そういう運動を始めまして、いろいろな方に入っていただきました。鳩山由紀夫さんは、太陽経済は「友愛」の実現なんだとおっしゃいました。私もそう思います。

カントはすごい予言をしました。人類は大戦争をおこして殺し合いをやった挙句、ついに平和を手に入れるだろう。その時、国際的な連合をつくり新しい共和国がそのリーダになるだろう。まるで二十世紀、カントが予言したとおり殺し合いをやって、やっと軍事の安全保障ができ、先進国間は戦わないとなった。マネーの安全保障も、リーマンショックが起きましたが、大恐慌にはなりませんでした。けれども人類はまだエネルギーと食糧と水、あるいは環境という生存のための重要な条件の安全保障がない。だから何十億人が飢えたり、あるいは殺し合ったりしている。

したがって、いよいよこの21世紀というのは、人間の生存条件の安全保障をシステムとして管理しようという時代になるでしょう。それに適合した形に世界の政治や外交、経済、社会のシステムが組み直され、やっとその基礎条件が揃う。全部が揃うのに三十年はかかるでしょう。ただリーダーシップは今年か来年で決まると思います。いま、日本は少なくとも最短距離にいる国のひとつです。我々が自分の実力を協力しあえば、日本は十分に活躍ができると思っています。


<竹村氏>

ありがとうございます。大変なグランドビジョンを語っていただきました。途上国、中国、インド、その他ブリックスと言われるところの何十億という人々がどっと高度な生活レベルに移行していこうとする時に、エネルギー需要が必迫してくるのは間違いないわけです。資源戦争という目に見えるリスクよりも、もっと大きな潜在的なリスクをソフトランディングさせていくのが「太陽経済」であると。そうした時にまったくこれまでと違うパラダイムが必要になってくる。そういう可能性を秘めた新しいエネルギーの社会インフラのイメージをこれから永田先生にお話頂きたいと思います。

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≪ 永田敏氏  インターネット型分散電源送電システム・VPEC株式会社 代表取締役社長 ≫

■「再生可能エネルギーで子孫に引き継ぐ。ストック文明からフロー文明へ。」

80年代、コンピューターネットワーク革命の時には部品屋として、90年代の通信ネットワーク革命においては、テクノロジードライバーとして私なりにいろんな努力をしました。次は、新エネ電力ネットワーク革命が起らざるを得ないというか、起こそうと思って、VPECという会社をつくりました。今日聞いていただきますのは、Electric Cluster Oriented Network(エレクトリック・クラスター・オリエンテッド・ネットワーク)、通称ECOネットワーク(エコ・ネットワーク)と称するシステムです。低炭素社会への電力構造のグローバル・ソリューションとして日本発で提案したいと思っています。

日本は2002年にRPS法で、電力に自然エネルギーを5%入れなさいということを法律で決めています。しかし、実際には1.数パーセントしか入っていない。というのも、現在は、ソーラーパネルなどによって新エネルギー導入を各家ごと "点"で入れて、余ったら電力系統に逆潮流、というしくみですが、「発電端」から「需要端」に一方通行で流す今の電力系統からすると、この逆潮流を電力需要のピークの時に起こされると、系統の周波数が大暴れして大停電のリスクが非常に高いのです。それならば、この"点"を"クラスター"に変えてその中で上手く制御し、既存の電力系統からは一方通行で単なる需要のひとつとして足らない時だけもらう。それもITを使って事前予告しておいてもらおうというのが私どもの提案です。

具体的には、各家に発電機、バッテリー、コントロールする電力ルーター、消費機器、これをミニマル・クラスターと言っておりますが、これらを設置し、こういうものを持った最小の単位が過不足を融通し合うイメージです。これを一軒だけで成り立たせようとすると、大変な発電能力とバッテリー能力がいりますが、ローカルなクラスターで、数軒、さらには数十軒の単位でやり取りしていきますと、動かす電力の量が非常に少なくて済みます。自律的に、近いところで過不足を融通することで外に出入りする量をぐっと少なくする、地産地消の新エネ主体のシステムです。

一方、従来の電力系統の方は「発電端」と「需要端」が分かれていますが、ECOネットワークでは「電力需給家」としてくっつけてしまい、過不足を需給家とその群間で融通しあい、どうしても足らない時だけ一方通行で電力系統からもらう。私自身、今のグリッド、電力系統の品質を高めたうちのひとりと自負しておりますので、その良さは山ほど知っています。でも、インターネットと携帯電話が拓いたグローバル。ニーズにそれだけでは対応できません。ですから組み合わせようと提案しているわけです。

また、最初にボーンとつくるのではなく、パソコンが繋がっていくように、最初は隣どうしでどんどん繋いで、ある程度拡張性のある足し算型のシステム設計でいきたい。そしてトータルの全体最適を図りたいというのが私どもの提案です。

もうひとつは、電気自動車を非常用電源としてエコ・ネットワークの枠組みの中で使おうというものです。このトータルシステムは、逆潮流なしのソリューションです。ピークの時には、従来の電力系統からもらわざるを得ないわけですが、非常用電源としてネットワ-クの中で行えば非常にスムーズな流れになる。改良特許の第一弾の中に非常用の発電池、蓄電池を謳いこんでありまして、特許事務所の方では、必ず特許になりますと言って下さっています。

こういうトータルシステムで日本の技術を集約して攻めたいと活動しています。ぜひとも日本の皆さんの力を結集して、私どものエコ・ネットワークの発想と、ベースになる基本の特許などを上手く使って、世界に打って出ましょう。この次グリーン・ニューディールでアメリカの政権が世界を制覇しようとしているのを、何とか頑張って日本に、という風に思っております。

昨年9月にスマート・グリッド・タスクフォースのアメリカのDOEのディレクターが、日米で共同研究を申し入れると言ったのがいま実現してきておりますが、ぜひ、社会的な声をみなさんに上げていただいて、少なくとも日本を舞台にして共同研究をやろうとういうことをアメリカがなぜ言ってきているか。私はこのエコ・ネットワークのシステムが欲しいんだと自信を持っております。そういう面でみなさんのご支援をよろしくお願いしまして、私のプレゼンを締めさせていただきたいと思います。


<竹村氏>

まさに、スマートグリッドと呼ばれている考え方がいくべき方向が示されたご提案でした。ひとつだけ、いま、風力発電などはテキサスでも大規模化が進み、メガソーラー、メガ・ウィンドファームみたいなものがどうしても取り上げられるわけですが、いくら規模が大きく発電容量が大きくても、本質的には既存の火力発電その他に応じてつくられてきた周波数同期型のグリッドにはなかなか馴染まないし、容量だけで出来るものでもないよと、やはりメガであってもやはりこういうようなシステムでやっていくべきだというのが永田さんのお考えでしょうか?


<永田氏>

電力系統というトータルデザインの中で考えた時には同じです。そういう面で電源ミックスの周波数、電圧制御をどうやってやるのか? もちろん、周波数に無関係な直流になってしまえば今の議論は関係ありませんけれども、交流という十九世紀以来のテクノロジーを土台にしている限り、周波数の問題、電圧の問題というのは永遠に抜けられない。ところが直流というやつは、高電圧では化け物みたいな遮断機が必要になります。非常に金がかかる。それよりも低電圧の方のテクノロジーは半導体技術で随分できるようになってきました。
そういう面で、私どものエコ・ネットワークでは、最後の究極は先ほど申しましたように、家ないし、事務所ないし、小さなマンションないし、このミニマム・クラスターの中の直流で、そして隣とのやりとりも直流で、というのが最後の究極の姿だと思います。逆に砂漠で、メガ・ウィンド、メガメガ・ソーラーをやってそれを超伝導、直流送電をやるというテクノロジーができればそれはそれで意味があります。けれどもそれが唯一のソリューションかというと、そこに誰かが一発テロをやったらどうなるかっていうことですね。

<竹村氏>

そういう意味ではエネルギー安全保障というのはやはり地産地消に限りなく近づいてくる。それがベースにあってリージョナルなメガ、そして広域ユースというところも出てくるというところがまったく基本だと思います。山崎先生、永田プレゼンテーションをお聞きになって、感想を含めていかがでしょうか?

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<山崎氏>

実は私たちも、直流と交流の問題は非常に大きいものですから、「直流交流会」という皮肉な名前の勉強会をやりました(笑)。最終的な解決策が何で、そのためにはどうやって何を解決しなければいけないのか、何を犠牲にしなければいけないのかということになると、当面の調和という意味では、私もエコ・ネットワークの発想になると思います。あるいは、長期的なスパンで言えば、全部を直流に変えてしまうとかですね、そういうまったく違う発想をしなきゃならないのではないか。それはものすごくお金がかかる話です。


<竹村氏>

その辺は、永田先生いかがですか? 例えばインドあたりのまだグリッドがない、発電装置もない、電気が足りないというところの方が案外エコ・ネットワークのような新しいシステムは相性がいいのではないかと思いますが、両系統がどういう風に共存できるのか、その辺のビジョンはいかがですか?


<永田氏>

いま言われたインドやアジアの無電化村では、まさしく太陽パネルやLEDのランプがODAなどで入っていて、直流直流なんです。バッテリーで溜めてそのバッテリーをネットワークしている。
いま、日本でも環境省が非常にお金をかけて、「直流の家」というのをやっておられます。ちょっと批判的に申し上げさせていただきますと、家の中に3本も違う電気を流そうとされている。100ボルトに相当する500ボルトの線と、それからデジタル家電向けの64から32くらいの線と、もうちょっと小さい6キロから12ボルトくらい。家の中はやはり一種類の配線でいいはずです。しかもその配線はエネルギーと情報を両方持てるような。いまこれは業界の壁です。合理的な設計を本当にするなら家の中は情報系もエネルギー系も1本で賄えるようにする。そうすると、直流の家になったときに非常に配線コストが下がります。


<竹村氏>

この小さなクラスター化のネットワークで電力を融通するというのは、東京電力や関西電力のグリッドとはまったく別でやるというのが永田さんの考えですか?


<永田氏>

電力会社は電力会社で、電源端は原子力をどんどん磨けばいいと思うのですが、原子力を大量につくるということは水力発電の調整電力がいるんです。ところが日本ではここ十数年、もうダムができていない。そういう面ではどんどん磨いていくべきです。特に大産業向けの電気を不安定な自然エネルギーだけで賄えと言われたら、工場の経営者なんてやってられないですよね。ただ、インターネットと携帯が拓いたグローバル・エコノミーで、ものすごい資源ニーズが高まっていますし、中国やインド、ブリックスを中心にネクストイレブンという人たちが経済成長してきた時に、山崎先生が先ほど言われたGDPあたりエネルギー効率はものすごく悪いですから、あっと言う間に石油が払底して、この前1バレル147ドルなら今度は200ドルいくかもしれないですね。


<山崎氏>

だから非常に難しいのは、この壁の越え方がちょっと並ではないといいますかね。石炭から石油に移ったときというのは、掘ったら出てきちゃったのでほとんどコストがかからなかった。一方、この新エネルギーというのは、長期的に見れば、全部直流化して、全部ネットワークができれば、必ず機械のコストは下がっていく。しかし初期投資がいる。だからそこが非常に工夫が必要なんです。電力会社も、いまは少なくとも十分動いている交流を変えることなどバカバカしくてやりたくない。そうすると日本のように非常に整ったところは、当面は困らない状況のままでこのまま進み、しかし日本の外はバンバン石油もすべての資源も使いつくし、かつそういう国はどんどん新エネルギーにも投資をしてやっていく。そういうことが日本の外側で進行していけば、日本の置かれる条件は毎年悪くなるというのが非常に大きなジレンマです。


<竹村氏>

その辺で「太陽経済」を推進していくアクターというのはどの辺に置いておられるのですか?


<山崎氏>

片面でいうと、電力会社を含めても、今後の「太陽経済」というのは「電気経済」といっていいと思うんですよ。そういう時にやはり業態のモデルチェンジをしていかなければならない。例えば石油企業でも、エネルギー企業にアイデンティティを変えていっているんですよね。自動車も、電気自動車が走れば必ず電気企業が参入するでしょう。そうすると低価格化が進み、世界中の車は恐らく30万から50万になるでしょう。そういう地殻変動が五年から10年のスパンで確実に起きるのではないでしょうか。そういう意味では、新しい世界に現実適応していくということにつきるのではないですか。


<竹村氏>

まさに山崎さんもよく引かれるように、「最も生き残れる生物というのは最も強い生物ではなくて変化に適応しうる生物である」という、ダーウィンの言ですね。
ただそれにしても、非常に根本的にこれだけしっかりグリッド・システムが確立したが故のハードルの高さ、その辺をもう一回きちんと可視化して、我々が抱えている課題の大きさをこの1年~2年で共有化し、何とかみんなでソリューションの絵を描いていかなければいけないですね。


<山崎氏>

これから我々の会もメディア活動をしていこうとしています。そういうところでもっとオープンディスカッションしていく必要がありますね。


<竹村氏>

こういう新しいシステムを中国、インドを中心に、世界中に広げていくことが「希望の地球」の非常に大きな鍵になる、これは間違いないと思います。今日は三人が一堂に揃った初めての機会でもありますけれども、今日を出発点に議論を深めて、世界に提示できるモデルに是非していきたいと思います。

また、「太陽経済」、「希望の地球」というビジョンは、太陽エネルギーがものすごいインフォメーションを生んでいる生態系の地球の魔法、これを我々の経済の根幹にどうやってビルトインしていくかという、もっともっと大きく深いテーマだと思います。そういうところまで遠望しながらエネルギーの問題に突っ込んだということで、当然食料問題や、新しいバイオミメティックな物づくりというところに繋がっていくであろう今のようなテーマを、これからさらにいろんなところで展開していきたいと思います。今日はどうもありがとうございました。

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