丸の内地球環境倶楽部

第20回地球大学アドバンス「『水の世紀』のリデザイン」

日時:
2009年7月27日 (月) 18:30~21:00 ※終了しました

ゲスト:
久留島豊一氏(INAX総合技術研究所 所長)
村瀬誠氏(東邦大学薬学部客員教授 京都大学防災研究所非常勤 講師)
赤池学氏(株式会社ユニバーサルデザイン総合研究所 所長)

モデレーター:
竹村真一氏(Earth Literacy Program 代表・エコッツェリア・コンテンツプロデューサー)

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ゲストプロフィール


久留島豊一(くるしま・とよかず)
eca20_kurushima_profile.JPG超寿命、節水、健康、環境という4つの価値を軸に、一つの材料、サービスの情報提供を行う。1984年岡山大学大学院理学研究科修了、株式会社INAX入社。1992年基礎研究所技術情報センター長。1993年長岡技術科学大学大学院博士課程修了(工学博士取得)。1997年基礎研究所分析センター長。 1999年再生医療ベンチャーJ-TECの立ち上げに参画(出向)。2002年J-TEC研究開発部長(出向)を経て、2004年INAX環境戦略部長。現在、INAX総合技術研究所所長、執行役員。


村瀬誠(むらせ・まこと)
eca20_murase_profile.JPG東邦大学薬学部客員教授、京都大学防災研究所非常勤講師。薬学博士、NPO法人雨水市民の会事務局長、国際水協会(IWA)SPG副座長。1982年 雨水利用のプロジェクトを開始。1994年及び2005年:雨水利用東京国際会議実行委員会事務局長。2000年バングラデシュでスカイウォータープロジェクト開始。2002年 「革命的雨水利用」でロレックス賞受賞。2007年 「未来を変える世界の人々80人(フランス)」に選ばれる。主な著書に『環境シグナル』、『やってみよう雨水利用』(いずれも北斗出版)、『都市の水循環』(NHKブックス)、『雨を活かす』(岩波アクティブ新書)など多数。未来派宣言(NHKテレビ)、素敵な宇宙船地球号(テレビ朝日)、夢の扉(TBSテレビ)などのテレビ出演をはじめ、国連環境計画、ストックホルム水シンポジウムなど国内外講演多数。

赤池学(あかいけ・まなぶ)
eca20_akaike_profile.JPG株式会社ユニバーサルデザイン総合研究所所長。1958年東京都出身。1980年、筑波大学生物学類卒業。社会システムデザインを行なうシンクタンクを経営し、ユニバーサルデザインに基づく製品、施設、地域開発を手がける。「生命地域主義」「千年持続学」を積極的に提唱し、地域の技術・人材・資源を活かす「ものづくり」プロジェクトの企画、製造業技術、科学哲学分野を中心とした執筆、評論、講演などを行う。また、日本産業デザイン振興会グッドデザイン賞審査委員、キッズデザイン協議会キッズデザイン賞審査委員長等も務める。著書に「昆虫力」(小学館)、「自然に学ぶものづくり」(東洋経済新報社)、他多数。

モデレータよりコメント

地球は宇宙のなかでも極めて稀な、水が「液体」で存在する星。地球号は「水冷式」の宇宙船であり、水に祝福された宇宙のオアシスです。しかし20世紀の人口爆発や急激な都市化により、私たち人類の水消費もこの百年で7倍に膨れ上がり、21世紀は水が石油以上の稀少資源になるとさえ言われています。

「水の世紀」を水戦争の世紀でなく、水文明をデザインする好機へと転ずるために、鍵となるのが節水技術と雨水利用でしょう。水が足りなくなるなら、水を使わない文明を構築すればいい。農業用水(灌漑)の効率化も重要ですが、一方ですでに地球人口の半分が暮らす都市の水循環を考えると、従来の水の多消費から脱却するまったく新たな都市のライフデザインが求められます。そこでたとえばINAXが先駆的に開発してきた超節水型のトイレ・バスなどが大きなヒントとなるでしょう。

また気候変動で豪雨と干ばつが常態化し、水の確保と治水が世界共通の大きな問題となりつつありますが、その双方に効果的なのが「雨水利用」の技術です。水不足といっても、世界に降る雨は(陸上に降る雨だけでも)人類の水需要の30倍もある。すべてのビルや家屋の屋根が雨を集める「逆さ傘」として天に向かって開いた未来の地球を、世界的な雨水利用の伝道師・村瀬誠氏とともに構想してみたいと思います。


プロフィール


竹村真一(たけむら・しんいち)竹村真一(たけむら・しんいち)
Earth Literacy Program 代表
エコッツェリア・コンテンツプロデューサー

京都造形芸術大学教授。Earth Literacy Program代表。東京大学大学院文化人類学博士課程修了。地球時代の人間学を考究しつつ、ITを活用した独自な地球環境問題への取組みを進める。

Sensorium(97年アルス・エレクトロ二カ・グランプリ受賞)、デジタル地球儀「触れる地球」(05年グッドデザイン賞・金賞)や「100万人のキャンドルナイト」「aqua scape」など、さまざまなプロジェクトを推進。環境セミナー「地球大学」主宰。07年「water」展ではコンセプト・スーパーバイザーとして企画制作に携わる。08年7月の北海道・洞爺湖サミットでは、 国際メディアセンター(IMC)内の環境ショーケースにおける「地球茶室」の総合企画・プロデュースを担当。

新著「地球の目線」(PHP新書)など著書多数。2009年4月26日よりラジオ「GLOBAL SENSOR」がJ-WAVE 81.3にて(偶数月の第4日曜25時?)放送開始。

竹村真一プロジェクトサイト: http://www.elp.or.jp/


イベントレポート

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■はじめに~水戦争の世紀からエレガントな水利用の世紀へ

「液体の水」に満ち溢れた星、地球。ところが、私たちが使える淡水は0.01%にも満たない。しかし、この貴重な淡水は、地球大の循環によって人類に恩恵をもたらしています。例えば、陸地に降る雨は人類が必要とする淡水資源の約30倍もあります。人類の水需要は20世紀の百年間で7倍に増えましたが、「水戦争の世紀」を「水惑星に生きる祝福を感じられる世紀」にデザインし直す鍵となるのは「雨水利用」と「節水技術」でしょう。

いずれせよ、中国、インド、30億の人々がより利便性のある20世紀型のライフスタイルを追いかけていくならば、水も間違いなく不足します。数千万人の都市で、洪水や渇水を防ぎながら、より高次の利便性を得つつ、美しい都市構造をデザインしていく。なかんずく東京が一つのモデルとして実践していく。水文明をデザインする好機を得た私たちが、どういう発想で次のデェファクト・スタンダードをつくっていくのか、トータルな水循環と新しいライフデザインのあり方を議論していきたいと思います。

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≪ 村瀬誠氏 東邦大学薬学部 客員教授・京都大学防災研究所 非常勤講師 ≫

■小規模分散型で「流すから溜める」

27年前にタイムスリップします。洪水です。下水がビルの飲み水タンクにも逆流し、みんな知らずに飲んでいました。1999年には新宿の地下室で人が亡くなりました。いわゆるゲリラ豪雨です。普通はこれだけ雨が降ると河川が氾濫します。ところが河川が氾濫していない。その前に下水のマンホールが噴いてしまった。コンクリート・アスファルトジャングルのまちは、雨が地下浸透しなくなり、その流出を速め、短時間に下水道に集中するようになったためです。
結果、下水道のアーバンデザインは50ミリですが、しかしそれは雨の半分近くが地下にしみ込むことが条件でした。しかし、今や東京都内の不浸透域率は八割を超えてしまいました。そのために10分、20分の間に2~30ミリを越える雨でも下水が逆流するようになりました。建築家も土木の人たちも、都市の雨は徹底的に排除すべきものと考え、都市が雨の循環に支えられていることに気付かなかったんですね。

これからの雨のアーバンデザインのポイントは、「流すから溜める」という発想の転換です。雨をできるだけその場にとどめてゆっくり流してあげればいい。私は、都市型洪水軽減の原点は、一軒一軒のビルや住宅に雨水を溜めておくことだと思っています。小規模で分散した貯留槽や浸透装置ですが、それが集まると、大変なベースカットとピークカットになる。また、東京は一年間に25億トンもの雨が降っていますが、この雨を捨ててきたわけですが、でも考えてみればそれらは貴重な資源なんですね。つまり、「流せば洪水、溜めれば資源」ということになります。

これは、1985年に完成した日本屈指の雨水利用施設の国技館です。墨田区の日本相撲協会への申し入れで実現しました。今、墨田区にはたくさんのビルやマンションに、洪水防止と水の有効利用、節水、防災の観点から、雨水利用が導入されています。地域の方々も頑張っていて、近隣住宅の屋根に降った雨を集水して、地下のタンクに溜めて地域ぐるみで使う「路地尊(ロジソン)」というしくみもあります。これは、打ち水や盆栽、非常時には火を消す、もちろん非常時には飲み水にも使うことができます。

1995年には、国技館に隣接して江戸東京博物館ができました。ここにも雨水利用が導入されました。その周りの両国第一ホテルも両国中学校などにも雨水利用が導入されました。これらをトータルすると4000トンになり、恐らく地区規模では日本最大規模の雨水貯留施設として、洪水防止に一役かっています。また、雨水利用の「墨田ルール」といいますか、一昨年集合住宅の開発に関する条例のなかに雨水利用が位置づけられました。雨水利用の助成も継続して実施しています。


■可視化される生態系~雨水利用の発信地「東京スカイツリー」

2012年春には東京スカイツリーが誕生します。高尾山とほぼ同じ高さで、610メートルあります。展望ロビーは350メートルと450メートル。世界で始めて、展望ロビーの約2000平米の屋根から雨水を集めます。地下には2650トンと個別施設では恐らく都内最大規模の貯水槽があります。雨水で大規模な屋上緑化や打ち水もやり、ヒートアイランド防止や都市型洪水防止のモデルにしようと考えています。

350メートルからは東京圏全体が見降ろせます。一見コンクリートジャングルですが、足元の墨田区には、私たちが「小さなダム」と呼ぶ、雨水タンクのネットワークが広がっています。また、川や池など、都内の水系の軸線やスポットが見えるでしょう。広大な武蔵野台地に降った雨水が、地下に浸透して湧き出てくるのが井の頭池、石神井池、そして善福寺池です。最終的には皇居と不忍池に湧き出てくる。井の頭池は神田川となり、石神井池は石神井川となりますが、これらは隅田川に合流します。このように、実は我々がタワーからスポットで見える池や川が、東京のダイナミックな水循環のネットワクの産物にほかならないのです。

450メーターからは首都圏全体が見えるかもしれません。はるか180キロ離れた東京の水源池に降った雨が、すみだや丸の内の水道水の水源になるということを実感できるのではないでしょうか。いずれにしても、東京スカイツリーから都市が大地と空の間にあり、その間を循環する水循環によって支えられていることが学べるに違いありません。

また、すみだでビルの屋上緑化や雨のオープンスペースを増やしていくと、皇居や丸の内などからトンボや鳥がやってきます。いま、たぬきが荒川の上流から江東区まで来ているそうです。そしてなんと、このコンクリートだらけの墨田区の親水河川のビオトープに絶滅危惧のさまざまなトンボがやって来ているんです。つまり、街の中に水と緑のスポットをネットワークしていくと、都内に、首都圏に生き物の道ができて、生き物がやってくるんですね。それは、人間にとっても住みやすいまちを意味するのではないでしょうか。


■スカイウォータープロジェクト~11億の命を救う空の蛇口「雨水」

私が雨水利用のプロジェクトを、なぜ、レインウオータープロジェクトではなくスカイウォータープロジェクトと呼ぶかというと、世界の空がつながっているからです。北半球では、夏になるとインド洋で雲が次々に発生し、ヒマラヤに向かいますがチベット高原を超えることができず、そこでたくさん雨を降らします。そうしてできた川が、ガンジス川、インダス川そしてメコン川です。また一部はジェット気流にのって日本にもやってきて恵みの雨をもたらします。私たち日本人は、この雲のおかげでハッピーな暮らしをしている。ですから、同じ空の下で水に困っている人たちがいれば、同じモンスーン人として、スカイウォーター人として力を貸したい。それが私の思いです。  

実は昨夜、バングラディッシュから戻ったばかりですが、向こうでかなりショックを受けた光景がありました。温暖化で海水面の水位が上がり、飲み水の水源である池に海水が入って飲めなくなりつつあるのです。また、普通11月に来るサイクロンが5月に来て、沿岸部の多くの家が流されて未だに復興していない。池の水をポンド・サンド・フィルターで処理して飲んでいたのですが、池が塩水化し放棄されていました。

しかも今年は、雨季に入ったのに雨が降らない。海老の養殖場もサイクロンで破壊され、生活の糧がない。加えて、砒素で地下水が汚染されダブルパンチです。4千万人が飲料水基準に適さないヒ素で汚染された地下水を飲んでいるといわれています。東京の人口が1千3百万、その3倍ですよ。それでがんが子どもにも広がっている。ならば、空には安全な飲み水の蛇口が無数にあることにみんなが気づき雨水を溜めて飲めばいいではないか。それで、11億のいのちを救えるかもしれない。これが私のスカイウゥータープロジェクトの狙いです。

プロジェクトで竹の樋をつくりました。最初勢い勇んでプラスチックのパイプを持って行ったのですが、現地ではポリエチレンの樋は高いんですね。地元の素材でつくるのが基本だと学びました。また、雨水タンクをつけました。雨水利用の設置と管理のマニュアル(英語とベンガル語)もつくって、職人を育てるトレーニングセンターもできました。私たちは、自分たちの力でマイクロファイナンスを立ち上げ、地域住民やNGOの参加のもとで雨水利用の普及に取り組んでいます。雨水利用の取り組みを持続可能な形にしていく、これが大事ですよね。

これまでの国連や、海外の大きなドナーのやり方は、たいして金のかからないものを、適正でない価格で雨水利用システムをモデル設置してきました。でも、それはせいぜい3年で、持続していません。お金の切れ目がプロジェクトの切れ目で、プラント自体もうまく管理されていない。サスティナブルではないんです。金をばらまいて、自立をかえって駄目にしちゃうんですね。

いま、アフリカでも、水戦争が起きるかもしれないという話が現実のものとして出てきています。気候変動が拍車をかけています。"No more Tanks for War, Tanks for Peace!"これは私がロレックス賞をいただいた時のキーメッセージです。今でもそう思っています。No More Hiroshima, No More Nagasaki.を私は強く訴えたいわけです。イラク戦争って石油でしょう。これから水、食料の危機がやってくるといわれています。次代に平和を伝えたい。スカイウォータプロジェクトのファイナル・ゴールはMake a peace.です。


<竹村氏>

■水戦争の渇水対策と気候変動での洪水対策、求められる美しきソリューション

非常に感動的です。傘を逆さに差せば、天からは花が咲いているように見えます。そういう雨を溜める逆さの花が、どのビルにもいっぱい花開くエスティック都市を実現したい。ぜひ、援護射撃をしたいと思います。

墨田区はゼロメートル地帯ですから、全部の水が集まって洪水になる。こうした都市の洪水のリスクと水不足のバングラディシュが表裏なのはお気づきですよね。一言で言うと、ファスト・ウォータということです。コンクリートジャングルで、ファストに下水道に流して、海に流す。そういう構造でなんとかなるのが20世紀の雨の降り方だったんですね。今の雨の降り方では、これまでの戦略は成り立たない。

そうした時にオルタナティヴは何か? 村瀬先生がおっしゃったように、小さな、スローな水のシステムがあるタンクを分散型でつくって、それで溜めていくしかないわけです。水田も、緑を増やしていくことも、屋上緑化もそうです。洪水対策と渇水対策、水戦争の時代の水対策と気候変動の豪雨対策は全部表裏で、その結節点に両方に有効なソリューションがある。まさに、天に蛇口がいっぱい開いている。その蛇口を利用しようじゃないかという発想になりますね。

さて、そういうかたちで担保された水をいかに使うのか。非常に美しいソリューションを先駆的に出されているINAXさんから節水型の都市のあり方をお話をしていただきたいと思います。


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≪ 久留島豊一氏 INAX総合技術研究所 所長 ≫

■「水」を守り、「土」を活かす、INAX節水の歴史

「水を守り土を活かす」。セラミックスの原料となる土を使い、水回りの商品をつくるINAXの環境活動方針です。我々が地球上で使える水は0.007%、日本人1人あたり1日約400リットルの水を使っていると言われていますが、弊社の商品であるトイレ、お風呂、キッチンはこの4分の3に関係していますので、節水は非常に大きな任務であると考えています。
現在の水洗トイレのかたちは1967年に誕生しました。当時の水量は16リットル。79年に13リットル、98年に10リットル、2001年で8リットル、2006年に6リットル、現在は5リットルと節水の歴史が続いています。この8月にTOTOさんが4.8リットルのトイレを出す予定のようです。

実は、弊社では1974年に5リットルの洗浄トイレを発売しています。しかし、下水道が発達し、逆に10リットル以上流さないとダメだということで売れませんでした。また、先ほど村瀬先生からお話のあった雨水利用のシステムも実は98年に出しています。
1日約200リットルの節水ができ、賞もいただいたのですが、結局こちらも、大腸菌を1ミリリットル中に10個以下に押えるという水道の規制を受け、そのために電解で殺したり、薬剤を入れて滅菌するしくみでは、節水しても経済的にはメリットがなく、廃盤になりました。


■INAXの節水テクノロジー

さて、そもそもトイレにはなぜ水が必要なのか。一つは、鉢の中を洗う機能、二つ目は中の汚物を外に運ぶ機能、三つめは下から臭いがあがってこないように遮断する機能があります。

これらの機能を満たしつつ節水をする技術として、我々は、独自の「エア・ドライブ洗浄方式」に取り組んでいます。これは、水道の水圧を利用して空気を引き、無電源でサイフォンを起りやすくするしくみです。最近は、無水の小便器を出しました。下に油性のカートリッジがあり、シールをして臭いがあがってこないしくみです。また、汚れない処理を施しているのも特徴です。汚れなければ水を使わないで済むというところに着目しました。
通常、人がトイレをするたびに約4リットルの水を流していますので、東京駅など、公共の場ではかなりの節水になっています。これは、赤池先生の『カタツムリに学ぶ』からヒントを得て、カタツムリのカラはなぜいつもきれいなの? というところから開発を進めてきました。

他にも、キッチンのステンレスの上にセラミクスの膜を施し、その上にできる水膜の上に汚れが付くようにして水で一緒に流すしくみや、表面に親水基を付けた外装タイルでは、雨と一緒に水の上に付いた汚れを流すしくみなどに活かされています。

カタツムリの視点ではありませんが、汚れを防止するという観点では、便器の表面に水垢などがつかないように有機系の表面処理を施す、キッチンの天板にバリアコートを施す、ユニットバスの床に撥水、撥油の機能を施すなど、洗剤や水の使用を押える開発もしています。


■こまめな技術で節水対策

また、電気と同様、こまめなオンオフによって約20%の節水できるというデータがあり、様々な小手先の開発をしています(笑)。例えば、ユニットバスの水栓を「捻る」から「押す」に変える。シャワーも足で押して止める、手元にスイッチを付けて止めやすくする。汚れた手で触りにくいので、つい出しっぱなしにしてしまうキッチンの水栓には、手をかざすと水が出たり、温度が変わったりする電子水栓にする。シャワーの出を微細な粒子にすることで、水量は少ないにもかかわらずよく洗える水栓も開発しました。これを自動水栓にすると70%~80%の節水になります。
他にも、一度少ない水量で止まり、もっと出したい時はもう一回出す2段式ハンドルや、自分の好きな水量に調節できるエコダイヤル、さらに、発電する水栓では、91年に最初の省エネ大賞をいただきました。

いま改良開発中なのが泡のお風呂です。泡をつくる技術はあるのですが、最初の開発で、通常180リットルのお風呂を4リットルのお湯にするという大幅な減らし方をしたため、少々寒い、身体が浮かないなどの難点が出ました。もう少し待っていただくと商品化できるところまで来ています。


■INAXの社会貢献

トイレもだんだん土に還すというイメージを持っていただくといいと思うのですが、都会では、水で集めて一発処理する水洗トイレが効果的だと思います。しかし、田舎で下水道をつくるのは本当に馬鹿げていますので、コンポスト化を進めていこうとしています。東南アジアの方で試験をしながら、現在も開発を進めているところです。
また、弊社は住生活グループというグループの中におりますので、最後は電気や発電も入れたエコハウスを目指して行きたいと思っています。

いま節水ESCO のしくみを取り入れ、大きなビルなどでは、古くてたくさん水を使うトイレをオーナーさんに初期投資なしで回収してもらい、削減された水のコスト分をINAXがいただき、もとがとれた時点でオーナーさんにお渡しするという活動も地道に広がっているところです。

東南アジアと申しましたが、水の保全を中心にベトナムの方で環境活動を開始しています。当然、国内でも地元の小学校やショールーム、ワークショップ等を進めながら皆さんにわかっていただこうということで、エコロジーの活動も進めているというところです。
 

<竹村氏>

■エコ・エステティックをデェファクト・スタンダードに。

水と安全は決してタダではない。膨大な税金を投じて、我々はタダという幻想を持ちながら水を買っています。ところが、トイレの水を8リットルベースから4リットルベースに変えるだけで、年間3千億円もの節水になる。エコロジーとエコノミーを両立できるわけです。チリも積もれば山となる。小さいところから始めて、それを全体で見た時に経済的にも環境的にもサスティナブルな都市デザインが実現できていく。日本が都市デザインの新しいデェファクト・スタンダードを確立し、それをアジアに広げていくことは、地球の大きなソリューションになると思います。

もはやエネルギーを使ってきれいにするばかりではない。むしろ本当にエレガントなエコ・エスティックな発想では、エネルギーやお金を使わずにきれいにできると。それは智恵次第ですよ、ということでたくさんの事例が出てきました。エネルギーを使わずに自然や生命の原理に学ぶ。バイオ・ミミクリーと言いますか、生命模倣技術といった発想からINAXの技術を取り上げて、新しいビジョンを示してこられた赤池先生にそのあたりの全体像のお話をお願いします。


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≪ 赤池学氏 株式会社ユニバーサルデザイン総合研究所 所長 ≫

■必要は発明の母、大観の「生々流転」につながる日本の技術

天水の利用やINAXさんの技術の話は、正しく「必要は発明の母」であり、そのソリューションのつくりかたも、天水をちゃんと使う、比重の高いおしっこを臭いの出ない油の下に沈める、カタツムリに学んだセラミック建材も、親水基と水だけをうまく利用するなど、単純な「発明の母」でした。そろそろ、20世紀型の「発明が必要の母」といった、科学技術ありきのものづくりは卒業して、ローテクやスモールサイエンスに着目した科学技術開発やデザインの方向に向かうべきだと思っています。

もう一つ、村瀬先生と久留島先生のお話が結節するところは、横山大観の「生々流転」ではないかと思います。この墨絵は、空から降ってきた雨が山岳を通じ河川を巡りながら、里山や大海に注いでいく姿を、生き物をキーワードに描き出しています。明治の段階で、日本人のサスティナブルな世界感は、横山大観がしっかり提示している。しかも彼は、日本の熟練職人をフランスで連れて行って、ジャパン・アート展のパビリオンをあえて日本住宅でプレゼンテーションしました。

大観が描いた農村の川の流れる風景を過去のように保全することも重要です。しかし、さらに先を行けば、植物工場のしくみやオプトアグリの栽培制御の技術、海の上で農業をするための造船やプラント技術など、日本には、温暖化で課題になっていく食料リスクに対して、世界に供給できるだけの技術力があるんですね。ですからデェファクト・スタンダードは十分つくれる。

私は東京オリンピックの招致委員会のプロデューサーとして、サスティナブルデザインをテーマにした施設や交通計画を策定しました。その中で強調したのは、水上交通の復元です。もともと江戸は水の都です。ここでやはり、日本が誇る最先端の水素エンジンで走る水上交通を海外の人々に見せつけるべきですし、また、その水素エンジンに調達している水素が、原子力発電の余熱や余剰電力を利用して水からつくられ、その実証実験が東京で行われているんだと、そういうことを見せるべきだと思っています。


■技術のアライアンスでエコ・チャーミングを実現。

昨年、トステム住宅研究所さんの依頼で「家+庭生活」という商品をつくらせていただきました。このコンセプトは「家庭それは家+庭」です。菜園やハーブ園、貯水用の水のタンクのついた池をあしらった坪庭などがシステム化されている商品住宅です。溜めた水は菜園に使っていくだけでなく、LEDの技術でキッチンでハーブやミニトマトを栽培することもできます。これは非常にエコ・チャーミングだと思うんですよ。そして食育にも広がっていくはずです。

この住宅には、INAXさんの商品で常滑焼きの露天風呂が標準仕様で入っています。かけがえのない水だからこそもっとチャーミングに楽しむ。燃料電池や自家発電もできるという機能面だけではなく、そういう生活提案が必要だと思っています。オプションでは、お湯の中に中空糸膜を入れてCO2を溶かし込み、炭酸の温泉をつくることもできます。
また、ソーラーなどの安い深夜電力をガレージに停まっている電気自動車のバッテリーに蓄電して、車側から住宅が電気を供給してもらうしくみも取り入れています。他にも、リビングがかつての農家のたたきの土間なっており、蓄熱壁も採用しています。冬の間は、土間や蓄熱壁に採光が当って熱を溜め、調湿もしてくれるので暖房をかけなくても暖かい。このように、家づくりもエネルギー事業者や緑に関わる企業とアライアンスを組んでサスティナブル・スタンダードをつくるべきだと思っています。

最後に、私は、先ほど久留島先生のお話にあった泡の無水風呂を見たとき、これは正しいと直感しました。なぜなら、泡のシェルターの中で幼虫を育てているアワフキムシという生物がいるんですね。この泡風呂ならば、子どもが過って落ちてもすぐに溺死しませんし、非常にユニバーサル性を持つお風呂です。また、泡は破裂する時に超音波を出しますので、超音波洗浄力が効いてくるはずです。まさに虫が採用した、自然に優しく、機能性の素晴らしいエコ・チャーミングな新しい入浴のライフスタイルが提案されると思っています。

<竹村氏>

■水をテーマに都市をホロニックにデザインする。

まさに横山大観ですね。今日は「水の世紀のリ・デザイン」と銘打っているように、水の循環を考えるにあたり、もう一度人間の人工システムを自然のシステムの中に返していくかたちでデザインしなおそうという発想でした。ズームアウトして遠景で見ると、単に川を治水するという狭い意味ではなく、生物多様性を増幅し、さらには洪水も許容して川とその流域の健康を再生していく、そういうホロニックな有機系の考え方まで視野に入れた水循環ですね。

いま東京には、東京湾という太平洋の子宮が、いかに生命に満ち溢れた豊かな世界かを可視化してくれる窓が一つもないんですね。ぜひ、東京湾の桟橋は、垂直なガラスのトンネルになっていて水の中が見えるようにしたい。そういうところまで含めて、東京が新しい広域水循環のモデル都市になるということを私たちは考えたいし、その結節になる話を今日3人の先生にしていただいたと思っています。

最後の泡風呂もまさに生命の技術を応用して、エコ・エステティックスですよね。人間が入浴するという行為も雨カエルの泡と同じように、自然の一器官として機能するようなビジョンを考えて行きたい。その何十年もかかるであろうプロセスの最初のとば口に私たちはいるんだと思います。

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<村瀬氏>

■スカイウォーターハーベスティングな都市づくり

雨水利用という言葉は皆さん英語でどう言うと思います? rain water harvesting。ハーベストは感謝していただく、当然水循環という考え方があります。今日はお話しなかったのですが、もう一つの都市のサスティナビリティのシンボルとして、地下水の利用の復権を考えて行きたいと思うんです。雨をハーベストして、都市全体がスカイ・エネルギーやスカイ・ウォータ・ハーべスティングな都市にすることが21世紀のあり方だと思います。
墨田は、東京大空襲、関東大震災と、2度も焼け尽くされたまちです。広島や長崎もそうですが、都市を再生したのは、水や緑の循環が生き物の道をつくったからなのです。東京のまちは確かにコンクリートジャングルに見えます。しかし、大地と空の間で都市がサスティナビリティに生かされている。そういうことを再認識できる仕掛けをたくさんしていきたいと思います。オリンピックも、都市のプランナーの人たちはじめ、みんなが智恵を絞って、そういうことを考えるきっかけになればおもしろいと思います。


<久留島氏>

■製品でエコ文化をつくることが企業としての責任。

水はなくなるものではないと。ただしうまく使っていくことが重要です。その中で特にお湯ですね。節水もそうですが、やはりエネルギーを使いCO2を出すお湯を減らしていかなければと思います。

また、今後はアジアの方にもどんどん出て行く予定です。そこをどういう文化にしていくのか、できるだけお湯を使わない文化はできるのか。やはり企業ですので、しっかり製品にして、ユーザーさんに使っていただいて、自然にエコロジーに向かうというかたちを目指していきたいと思います。


<赤池氏>

■ライフスタイルをサスティナブルにする社会基盤整備を。

たぶん、2011年ぐらいまでに神田川と日本橋川に水上バスが走ると思います。そうすると、エコ・チャーミングなビジネスマンは、スカイツリーやお台場あたりから大手町まで船で通うようになる、というように、ライフスタイルからサスティナブルな社会を見なければならないと思っているんですね。そうやって東京の川から、水の大切さを見つめていく社会システムやライフスタイルをつくっていきたいと思います。


<竹村氏>

■人間と社会をつなぐコズミックな技術

スカイツリーはまさに天を貫く宇宙樹ですね。もともと樹木は天と地をつなぐ存在です。地中から水を吸い上げて、蒸散作用によって天に水を送り、まさに雨を呼ぶ。そういう水循環の見えない垂直軸の水道(みずみち)をつくっていく存在です。実は人間も歩く水袋なのですが、20世紀は水によって構成される水球の本質を忘れた人工システムのデザインをつくってきた。21世紀は、もう一度水循環を軸にした、都市も自然の一器官として呼吸するような、技術や製品の個々の要素を組み合わせたトータルなシステムが求められます。そういう役割を日本人全体が必ず果たせる。

まさにスカイツリーは、単なるタワーの名前に終わらず、本当に天水を受け止めて、それをスローに循環させ、また天に送り返す新しいシステムの象徴となりますね。スカイウォータ・ハーベスティングと、それをやっていくシンボルとしてのスカイツリー。今日は、コズミックなシンボリックなイメージを抱いて帰りたいと思います。


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