丸の内地球環境倶楽部

第22回地球大学アドバンス「日本の森のリデザイン──新たなコモンズを求めて」

日時:
2009年9月14日 (月) 18:30~21:00 ※終了しました

ゲスト:
市瀬慎太郎氏(イーソリューション株式会社 代表取締役)
竹本吉輝氏(株式会社トビムシ 代表取締役)

モデレーター:
竹村真一氏(Earth Literacy Program 代表・エコッツェリア・コンテンツプロデューサー)

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ゲストプロフィール

市瀬慎太郎(いちせ・しんたろう) イーソリューション株式会社 代表取締役 1967年宮城県仙台市生まれ。環境・CSRプランナー。 東京電力と共同開発した『尾瀬の木道エコペーパー』をはじめ、企業独自の印刷用紙の開発を行うなど企業の印刷用紙アドバイザー件コーディネーターとして活動。 2005年9月、森と企業を結ぶ『3.9ペーパーシステム』のビジネスモデルを考案、2007年日本環境経営大賞最優秀賞受賞。 2007年7月企業のCSRプランニングPR業としてイーソリューション(株)を設立。企業のCSRコンサルタント、エコ製品の企画・販売、都市と農山村地域活性化のコーディネートを勤める。これまでにミニストップ(株)の「5円の木づかい」割り箸や「マイ箸」の他、様々な企業の森をコーディネート。イーソリューション(株)代表取締役、合同会社ライツフォーグリーン取締役、NPO法人エコロジーオンライン理事、NPO法人ソーラーシティ・ジャパン専務理事、NPO法人エコツーネットジャパン理事、武蔵野大学 人間関係学部環境アメニティ専攻外部講師を勤める。


竹本吉輝(たけもと・よしてる)
株式会社トビムシ代表取締役
横浜国立大学国際経済法学研究科修了。
アーサーアンダーセン、ERM日本を経て、環境コンサルティング会社を設立、経営。
その後、アミタ株式会社へ合流、同社経営戦略本部戦略統括を経て現職。専門は環境法。国内環境政策立案に多数関与。同時に、財務会計・金融の知見を加味した環境ビジネスの実際的、多面的展開にも実績多数。立法(規制)と起業(市場)で双方の現場を知る元フットボーラー、現ファン。


モデレータよりコメント

日本は国土の7割が森林に覆われた世界有数の「森の国」。しかし、戦後の拡大造林で急増した人工林の多くが放置あるいは放棄され、防災的な面でも国家的なリスクとなっているのは周知の通りです。

外材価格の高騰、炭素吸収源あるいは生物多様性資源としての森林の再評価など、国内の森林整備には追い風が吹き始めているにもかかわらず、残された問題も多い。林地所有者の高齢化、所有形態の複雑さ、そして森林経営の技術的・組織的な後進性などがネックになっているようです。

そこで今回は、森林の「所有」と「経営」を分離することで、日本の林業のパラダイムを根本から変える画期的な試みをご紹介します。そこではさらに「森林ファンド」という新たな仕組みを通じて、都市の企業や生活者が森の保全・再生にコミットしうる回路をデザインしています。

また、炭素吸収源としての森林整備には林野庁などの予算もつき始めている一方で、いまだに打ち捨てられ、地域の抱えるリスクとして顕在化しつつあるのが「里山」です。その里山にも、しっかり都市や企業のお金が循環するような仕組みを考えられないか?

今回は日本の「森」の再生にむけて、こうした都市と山林、森林の経営者と受益者をつなぐ新たな「公共圏」(コモンズ)のデザインについて考えます。

トピックス

● 森林経営の構造改革~アミタ・株トビムシ、速水林業などの事例から
● 都市と山林をつなぐ「共有の森ファンド」~その手法と可能性
●" 3.9ペーパー"(間伐コストを内部化した間伐材ペーパー)から"里山ペーパー"へ
●「 里山物語」~紙や印刷物のユーザーが自然や生物多様性、食などの物語を創造していける仕組み
● 都市と山林、森林生態系の受益者と経営者が「顔」のみえる関係をどのようにデザインするか?

プロフィール

竹村真一(たけむら・しんいち)竹村真一(たけむら・しんいち) Earth Literacy Program 代表 エコッツェリア・コンテンツプロデューサー

京都造形芸術大学教授。Earth Literacy Program代表。東京大学大学院文化人類学博士課程修了。地球時代の人間学を考究しつつ、ITを活用した独自な地球環境問題への取組みを進める。

Sensorium(97年アルス・エレクトロ二カ・グランプリ受賞)、デジタル地球儀「触れる地球」(05年グッドデザイン賞・金賞)や「100万人のキャンドルナイト」「aqua scape」など、さまざまなプロジェクトを推進。環境セミナー「地球大学」主宰。07年「water」展ではコンセプト・スーパーバイザーとして企画制作に携わる。08年7月の北海道・洞爺湖サミットでは、 国際メディアセンター(IMC)内の環境ショーケースにおける「地球茶室」の総合企画・プロデュースを担当。

新著「地球の目線」(PHP新書)など著書多数。2009年4月26日よりラジオ「GLOBAL SENSOR」がJ-WAVE 81.3にて(偶数月の第4日曜25時?)放送開始。

竹村真一プロジェクトサイト: http://www.elp.or.jp/

イベントレポート

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<竹村真一氏:モデレータ>

◆国家的なリスクとなっている森林

今日は森がテーマです。日本の森林は、2年~3年前まで、再植林が行われない、あるいは手入れのされない森が荒れて水害が増えたり、九州辺りは禿げ山が増えたり、国産材を使わずにどんどん安い外材を入れて利用されたり、少しネガティブなニュースばかりありました。

・国内の森林に追い風
ところが京都議定書の試行期間が始まる頃から、CO2吸収源としての森林の価値が社会的にもクローズアップされ、林野庁からもお金が回り、クレジットの対象にもなり、また外材の高騰によって国産材に競争力も出て、国内の森林整備に少し追い風が吹いてきた。森をめぐるいい条件が整ってきたように見えます。

・瞬間風速に左右されない森や林業のあり方とは?
しかし、その追い風で日本の森のあり方、森のヴィジョンや林業のあり方をリセットするチャンスが中途半端に流されてしまうのは、長い目でみると逆に大きな損失になるのではないか?
そこで本日は、森をひとつの担保とした国土のデザインを、少し立ち止まって考えてみたいと思います。
第一に、たまたま外材の高騰で国産材が有利になってきた。一時的にCO2の価値が上乗せされるなど、瞬間風速の風見鶏に左右されない、骨太な長期の森のヴィジョンを考えようということ。
第二に、国産材を上手く循環し日本の森を整備していくことが、実は地球の森を救うことになる。そう考えたときに今のまま整備していくだけで国産材の注目度は高められるのか?ということ。
こうしたことを考えていきたいと思います。

◆各業界の視点からみた森のヴィジョン

国産材を使った大規模な都市建築へも道が開かれつつある昨今、都市ビジョンの中で30年後50年後に渡ってずっと循環させていくために、日本の森がどういう森であったらいいのか?住宅建築関係などはCO2の大きな排出源と言われるわけですが、業界の視点からどんな森のビジョンを持つのか?その辺を、林業において新しい林業経営の道を開いているトビムシの竹本さんに、そして、どうしても外国の材に頼らざるを得ない製紙業界の視点から、30年後50年後、日本の森はどうデザインされているのか?を、国内の間伐材を紙に上手く利用する道を開かれた環境・CSRプランナーの市瀬さんにお話しいただきます。
21世紀的な視点から、森林の多面的な機能を新しい産業や地域デザインにどう繋げていくのか?そういうところまで含めて議論していきたいと思います。


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≪竹本吉輝氏:株式会社トビムシ代表取締役 ≫

◆森林経営の不良債権整理と構造改革

トビムシとはアミタという会社の子会社で、グループとして何とか地域を元気にできないかということでこの2月に設立されました。
森林の土壌に棲むトビムシは、森に落ちている葉っぱを噛み砕き、糞等で出し、それをまたバクテリアが噛み砕き、森の物質循環を人知れず支えています。私たちもそういう存在になりたいと思っています。
そして、持続可能な社会を実現したいという思いでグループとしてやっております。森を守っていきたい、里山をきれいで美しいものとして保存していきたいという気持ちでおりますが、いきなり地域にユートピアみたいなものをつくろうと提言しているわけではありません。

・持続可能な社会とは地域が元気になること!
私たちはグローバリゼーションに巻き込まれた地域が自立し、その地域で余剰となるものや地域外の人にとって価値があるものを他の地域やコミュニティと上手く分かち合える仕組みをつくろうとしています。それによって地域が豊かになれば、そこに人が住み、生まれ、そしてまた森や里山をしっかり管理していく流れができるのではないかと思っています。

・ローカルコミュニティの再生
そして、地域の眠れる資産を顕在化し、森への期待を喚起し、人々の連綿たる想いをつないで、世の流れを創造していくというミッションを掲げています。ローカルコミュニティを再生するには、その地域を応援したいと思ってくれる地域外の人達の協力を得て、希薄化し、崩壊している地域の新しいコミュニティ、コモンズ、共有意識を構築することが大切です。そのために、バーチャルとリアルを上手く使うコミュニケーションが重要だと考えています。

・価値を転換する「森林酪農・山地酪農」
私たちは、地域を持続可能にしていくためのひとつの仕組みとして、「森林酪農」を行なっています。京丹後という、丹後半島の端にある雑木林です。そこに牛を放し、牛が下草を食べて土を踏んで開墾していくことで、真っ暗な森がどんどん明るくなった。
また、この牛の牛乳を通常の約6倍の価格で2年近く販売していますが、ほぼ午前中で完売するという状況です。最近、那須でもこういったものをオープンしました。これは山地酪農というひとつの方法論です。
ジャージー牛を入れて価値を転換させ、皆さんに喜んでいただき、人が集まり消費をしてもらう。その結果、地域にしっかりお金が落ちて雇用が生まれる。すると、その周りの雑木林まで手が入っていくという状況ができるわけです。


◆新しいコミュニティづくり「共有の森事業」
私たちのひとつの事業として、「共有の森事業」というものを行っております。
今の日本の森は暗い。しかし、三重県の速水林業さんの例にもあるように、間伐をきっちりやっていくと100年以上の森は曇りでも明るくなります。空間が広いのでそこに下草が生えてくる。自然に広葉樹も戻って、本当に自然や生物多様性も豊かになります。

・日本の森の新しい仕組みづくり
日本の森は以前、入会(いりあい)と言ってみんなで管理していましたが、今は小口分散所有形態といって、ほとんどが小口で所有されています。しかし、収益性が悪いため、山主からも期待されず、雇用も設備投資もできない。山主さん達の気持は折れ、ますます悪くなるという負のスパイラルがある。私たちは「再びの共有化」を旗印に長期で包括管理し、みんなでもう一度、入会のような状態に戻そうという仕組みづくりをしています。

・民営化で可能にする持続可能な森のビジョン
原木の世界でも、一定の量と質を担保しサプライチェーン、バリューチェーンに乗せることでコストダウンや売上げアップが図れます。そして、こういった仕組みを民営化することで、森や林業は持続して成り立っていけるのを見せていきたい。
私たちは今、西粟倉村というところで「長期包括管理」というものを、村長にリーダーシップを取っていただき、速水林業さんと資本提携をして行なっています。また、大手企業さんと事業計画を立ててチャネル改革をしています。

・ずさんな投資対効果の現状ファイナンス
森や林業に関するファイナンスにはいろいろなものが用意されています。例えば中山間地域の自治体にとっての過疎辺地債は、8割相当分、辺地債8割、過疎債7割が公金で負担されます。1億円借金したら返すのは2000万円~3000万円でいい、7割8割は借金を返さないでいいことになる。しかし、その2~3割さえ効果を求めなくなる。何故なら、そもそも撤退しようとしている。やる気がない。心が折れてるという状態だからです。したがって地域は着実に2~3割は借金を増やし、資産を増やしてこなかったのです。

・いま、森に必要なものとは?
木には齢級というものがあります。1齢級5年です。通常50歳以上で評価され柱等々に使われますが、戦後の拡大造林で植えてきた木がその直前で止まっています。この1年~2年、若干その高齢級の木にも補助金が出るようになりましたが、以前は出なかった。材木価格などの値下がりで、11齢級まで自分で投資してきた立派な木があまり売れないような状況だったからです。
また、間伐した木を何かに使うためには、もう5年10年、材積を太らせないと木材として売れません。そこで、個々の山主達が追加投資できないという状態であれば誰かが第三者に売る、この5年10年投資が必要だろうと考えたわけです。


◆時間と空間を超えたコモンズ「共有の森ファンド」

「共有の森事業」や、その森、その先にある地域のために、私たちは「共有の森ファンド」というものを行なっています。単なる資金調達ではなく、今までは地縁でしかなかった森と、森を活性化させようとしている人の営みを、他地域の人達(現在4割が東京、首都圏で6割強、大都市圏、大阪、京都、名古屋合わせて8割強)が応援する手段、社会的な関係性をつくるための出資です。

・投資家とは、リスクではなく価値をシェアする人
ITや金融が発展した今だからこそ、時間や空間を超えて、新たなコモンズの形成が可能です。共有の森ファンドの投資家は、自分の10年後のリターンのためではなく、子や孫のために、その地域を一緒につくっていく、そしてそこから出てくる素晴らしい価値を優先的に分かち合う方々です。その一環として、投資家様限定ツアーなども行なっています。

◆地域商社「森の学校プロジェクト」西粟倉木の家販売

また、西粟倉村にある総ヒノキで出来ている廃校を使い、地域商社「森の学校プロジェクト」という事業も行なっています。
これは地域資源の活用及び、村の顧客創造、販売機能を自前化する事業です。例えば、木をよく理解している腕のいい大工さんと製材屋さんできっちり議論をしてつくった木材で、お客さまのニーズに合わせた家づくりをする「西粟倉の木の家」という販売事業や、地域メディア事業などを進めています。また、都市の単なる仕入れ先というポジションから脱却して、地域が地域としてその価値を表彰し、地域のために顧客をつくっていく機能が地域に必要であると考えています。

・希望の未来の構図づくり
私たちは、自治体と組合と営利法人が森を管理する「基本合意」という国内でも初めての契約をしました。トビムシがそこで将来得るであろう利益を背景に、投資家の方々からお金を集め、そのお金を林業経営基盤整備費用に充ててきっちり回していく。それによって地域が活性化し森が豊かになる。そして周辺の森が豊かになって人が増えてくれば、そこで消費されるお米や野菜も増えてくる。そうすれば自然に今までの里山の風景が維持される。そういったことをこの西粟倉というところを起点に始めています。

・守られてきた100年の森
1900年に八幡製鉄所が出来て"たたら製鉄"に使われる薪を切り出す必要がなくなりました。その時に投資されたのがこのスギやヒノキです。日本はヨーロッパに比べ近代化が遅れ、それに連れて製鉄技術の進歩も遅れましたが、こういう森が実は守られ育てられて、中世以来、緑の量としては一番多い時代を迎えています。幸運にもこのような森が残されている。そこを何とかまた未来に繋げていきたいという思いがあります。

・ソーシャルウエアとしての森の仕組み
森を集団で管理すると逆に山主さん達はその管理をする必要がなくなり、森を管理する経験する場や機会が無くなってしまう。しかし、自分の山や森の状態を常に見ていて欲しいので、切り捨て間伐材という放置されている木を、いま、地元の方々に森に入って持って帰ってきてもらい、無垢の床材をつくっています。そして、そこで培われた経験的な部分を周辺の人達や子や孫に語ってもらう。するともうすでに森に入ってない今の若い人達もこのメカニズムでまた森に入る。それが上手く機能すると、森がまた綺麗になっていきます。

・森の恩恵、川の流域価値
西粟倉村というのは吉井川の源流域にあり、下流は岡山県倉敷市児島湾に注いでいます。
児島というのは世界中のあらゆるブランドのジーンズをOEMでつくっているところです。
そこに藍を植えて育ててその色から抽出して藍染めをしてジーンズをつくっている会社があり、未来に残したいものという文脈で私たちは森を、彼らは伝統工芸を、そしてそれが吉井川で結ばれているということで、一緒にプロモーションを行なっています。また、川の流域沿いに出てくる農産物や天然の鰻など、河口域と繋げて川の流域価値を可視化することを行なっています。
私どもの取り組みは、おかげさまで様々なところからご依頼を受けていますが、まずは西粟倉村がきちんと動くこと示し、世の中が、あるいはその森の地域のお子さんやお孫さんがそれに関心を持ちその土地に帰ってきてくれる。そういう構図づくりをしていきたいと思っております。


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≪市瀬慎太郎氏:イーソリューション株式会社 代表取締役≫

◆日本の紙は9割が輸入の広葉樹?

私は紙屋を経て企業のCSRとして、プランナーやコンサルタントをおこなっています。
現在、日本の紙市場は、コピー用紙や雑誌などの印刷用紙が紙全体の半分近く、うち半分が古紙で、残り半分の9割は輸入の広葉樹を原料としています。約4000万㎥ぐらいでしょうか。針葉樹は繊維が長く広葉樹は繊維が短い。したがって包装紙やセメント袋など、丈夫なものをつくるときには針葉樹を、めくりやすく書きやすいなどのクオリティを求めると広葉樹になります。

・紙のクオリティを重視するから輸入材の広葉樹
日本人は紙のクオリティを求めていきますが、ヨーロッパでは黒い紙が当たり前です。
実際に今のクオリティを求めて大量生産という形になると、安定供給、安定した品質を保てるということや貿易の自由化により、輸入の広葉樹を使っているのが現状です。
最近では製紙会社も、安価でもグレーゾーンに掛かるようなもの、違法伐採などのものには手をつけず、FSC商材 やPEFC材 という持続可能な材料を使っているようです。

・高ければ買わない、だからつくらない
国内のいろいろな品種の広葉樹や間伐材を紙にする技術はあり、実際に東海パルプさんでも間伐材が30%入っている紙をつくっています。ソニーさんは、雑誌古紙100%でネズミ色の紙をつくり、今は平和紙業さんで売っています。すごくいい紙ですが、「高ければ買わないよ、環境に良くても」という世の中なのがまだまだ残念なところです。


◆間伐コストを内部化した3.9ペーパー

3年位前、林野庁さんが国産材を普及していく為に、国民運動の「3.9 GREEN STYLE」をおこないました。そこで、京都議定書のCO2削減率6%の3.9%位は森林吸収源ということ、またThank youにかけて、「3.9ペーパー」(サンキューペーパー)をデザインしました。
これは、放置されていた国内の間伐材を使用し、輸送するコストを紙代の中に上乗せする形で、都市が紙を使えば使うほど森の整備、間伐が上手く進んでいく仕組みです。都市と山村、山林を結びながら紙を使うことで森の整備を進める新しい概念です。

・クレジット制の導入
3.9ペーパーにはクレジット制を取り入れました。クレジット制とは「みなし」です。国内の針葉樹の間伐材を混ぜるといい紙ができないので、実際には3.9ペーパーに間伐材は入っていません。入ってきた間伐材は別の包装紙などになり、付加価値という形でその間伐材を活用します。つまり、「工場へ10トンの材が入ったら、10トンの紙と見なしましょう」というのがクレジットの考えです。
これによって、生産的なハードルは低くなり、安価に安定的供給ができます。また、工場の中に入る材を増やしていけば、余分な材料を買わなくて済み、必然的にその配合率は高くなる。
誤解を受けやすいのですが、クレジット制とは「国産材の間伐材が入ったのはあなたのおかげです」という証明書みたいなもので、結局、国産材の紙を入れたものが欲しいのか、森を守る為にこの紙を買うのか、ということだと思います。

・800万トンの眠っている間伐材
3.9ペーパーをつくった当時、間伐作業や集材所に運ぶまでの費用の7割が林野庁さんの負担でしたが、残り3割で木材を売ると必ず赤字が出てきてしまうのが林業の生計でした。
最近では、間伐作業は国の急務ということで、1000億円近くが間伐作業などの費用に補助されています。いま、間伐材は推定で800万トン切り捨てられていると言われています。
間伐材は有効な資源です。3.9ペーパーをつくった3年前は、ほとんど誰もこうした現状を知りませんでしたが、いま少しずつみなさんに分かっていただいているような気がします。


◆国から補助金の出ない里山

日本の4割は人工林、残りの6割が二次林や天然林です。国から補助が出るのが4割の人工林、6割になる二次林、天然林にお金が入っていかない。特に二次林、俗にいう里山に対してお金が全然流れていない状況です。

・里山の現状「里山・里地・里海」
里山は農業で生活を支える為に、人間が自然に手を加え、田んぼや溜め池、雑木林などをつくり循環の中で保たれていました。しかし昭和30年代以降、薪短材が石油や石炭、ガスに切り替わり雑木林が役目を終えた。人工肥料ができて葉っぱを使わなくなり、または都市やゴルフ場に姿を変え、人から遠い存在になってしまいました。
しかし、いまからでも里山は再生できます。里山・里地・里海と最近よく言われますが、生物多様性の観点から、また、山から雨水や地下水が田んぼに入り川に流れ、海でいい漁場をつくるという生態系の視点からも、いま里山を守っていかなければ、地盤や水など今まで森が育んできた全てを失うことになってしまいます。

・再生した里山、栃木県渡良瀬「そよ風の里」
2年半前、栃木県の渡良瀬で予算3000万の里山再生事業をおこないました。
休耕田の荒れ地を村の人たちと再生整備し、里山体験やエコツーリズムの受け入れを行っています。
里山保全をしている団体は2000近くありますが、国からの補助金が出ないため、市町村単位の補助金で賄っているのが現状です。そこでこの度、このような里山に少しでも経済が回っていくような印刷用紙を開発中です。


◆今後の紙業界のソーシャルデザイン

私ができることは、皆さんに国産材の紙を知ってもらい、需要を増やすことです。また、クレジットの紙が増えれば、工場に間伐材が沢山入ってきて使わざるを得なくなり、輸入材が減り国産材が増えていくという構造ができます。製紙メーカーは国産材の市場が高まっていけば、国産材を欲しがります。ですから市場をつくる。まずそのムーブメントをつくっていかなければならないと思います。しかし、里山を守っている人達も高齢化が進んでいます。これから材が出てきたときにどう売るかというところです。


◆地球の森への負荷を減らすライフスタイルとは?

インドネシアの製紙メーカーさんから安いコピー用紙が大量に入っていますが、真っ白で異常に安いコピー用紙は、間違いなく違法伐採だと思ってください。再生紙配合の高いものや古紙配合の入っているものをなるべく使う。次にFSC、マークがついているものを使う。何もマークが無いものは手に取らないでいただきたいと思っています。

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<竹村氏>

◆森の国日本の再生と地球の森の再生

日本人は江戸時代から本当の資産は森という形でついていくという感覚があったんだと思います。しかし、戦後の日本は拡大造林はしたものの、貿易立国、工業立国としてやっていく中で、かなり国のヴィジョンとして打ち捨ててきたところがある。
私達が考えなければいけないのは、20年後30年後どんな国土、どんな地球にしていくのかというトータルなヴィジョンです。その中での森や森と都市の関係、私たちがどのような形で森の資源を循環的に使っていくのかというトータルなサイクルのデザインだと思います。

日本列島改造論の田中角栄さんの書いたシナリオに従ってこの30年40年、いい面も悪い面も含め、あらゆるものが出来てきました。それに提起する森の国のヴィジョンをそろそろつくらなければならない。CO2吸収や生物多様性、それぞれ流行に振り回されず、それを活かすだけの骨太な長期ヴィジョンを私たち自身がちゃんと持っていないといけない。
それを改めて今日は確認したかったし、その上でこれだけいい形でのソーシャルウエアが始まっている、何よりも私たちが実は宝の山を持ってるということを改めて確認して、森の国日本の再生、地球の森の再生というところへ、是非歩んでいきたいと思います。
ありがとうございました。


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