丸の内地球環境倶楽部

第39回地球大学アドバンス〔TOKYO SHIFT シリーズ 総括編回〕       "ジャパンショック"から"ジャパンシフト"へ

日時:2011年2月7日 (月) 18:30~20:30 ※終了しました

ゲスト:
山崎養世氏(成長戦略総合研究所理事長、一般社団法人太陽経済の会代表理事)

モデレーター:
竹村真一氏(Earth Literacy Program 代表・エコッツェリア・コンテンツプロデューサー)

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モデレータよりコメント

人類文明史1万年を総括する名著「銃・病原菌・鉄」(ピューリツァー賞受賞)の著者J.ダイアモンド氏は、その続編「文明崩壊」のなかで、環境破壊や資源枯渇といったリスクを見事に克服し、文明崩壊の危機から立ち直った稀有の成功例として17世紀の日本を取り上げています。 戦国の世が終わり、農業生産も倍増した1600年代、人口爆発にともなう薪炭需要の急増で日本の森はどこも禿げ山となったが、そこから日本人は奇跡的な森の再生とエコライフへの転換を見事に成し遂げた。日本が現在、国土の7割を森に覆われた「緑の国」となり得ているのは決して当たり前ではなく、むしろ当時の危機状況に対して江戸期の人々がクリエイティブに応答した結果であると。

思えば、戦国の世を終わらせた徳川家康の江戸遷都にせよ、世界史上奇跡の無血革命・明治維新にせよ、日本人はほぼ100年毎に社会と文明の大胆な「リセット」(自己解体と再編)を行い、時代の要請のなかで新たな日本をリデザインし続けて、今日まで来たのです。そして同じ大胆さが、いま私たちに求められているのではないでしょうか?

「高速道路無料化」「郵政資金の地方への活用」「年金運用改革」などの政策をはじめ、民主党政権のブレーンとして知られる山崎氏は、日本の国債暴落の危機(ジャパンショック)に警鐘を鳴らすとともに、そこから脱出する起死回生の道として「太陽経済」の推進と、それを包括的に実践するモデル都市構想を提唱されています。もとより食糧・エネルギー・水管理などすべての面で大きな「脆弱性」を抱えた東京と日本が、100年前の都市デザイン、国家デザインのままで行けるわけはありません。

"TOKYOSHIFT"をテーマに展開してきた今年の地球大学アドバンス、シリーズ総括編は、山崎氏とともにこうした日本と東京の「リセット」ビジョンについて縦横に展開します。
"TOKOYOSHIFT"シリーズ総括編として、参加者の皆様からの東京の未来への提言も募りたいと思います。

[Topics]
●"ジャパンショック"の構造分析とその脱出口
●「太陽経済」を軸とした新たなジャパンビジョン~日本の地球貢献の新たな回路
●"経済中心"から"人間中心"の成長戦略へ
●中国大連のエコシティ構想を担う山崎氏が、東京と日本の未来への処方箋として提示する
「環東京湾構想」とは?
●田中角栄「日本列島改造論」の延長にある現在の国土政策を超えるビジョン

モデレーター・プロフィール

竹村真一(たけむら・しんいち)竹村真一(たけむら・しんいち) Earth Literacy Program 代表 エコッツェリア・コンテンツプロデューサー

京都造形芸術大学教授。Earth Literacy Program代表。東京大学大学院文化人類学博士課程修了。地球時代の人間学を考究しつつ、ITを活用した独自な地球環境問題への取組みを進める。

Sensorium(97年アルス・エレクトロ二カ・グランプリ受賞)、デジタル地球儀「触れる地球」(05年グッドデザイン賞・金賞)や「100万人のキャンドルナイト」「aqua scape」など、さまざまなプロジェクトを推進。環境セミナー「地球大学」主宰。07年「water」展ではコンセプト・スーパーバイザーとして企画制作に携わる。08年7月の北海道・洞爺湖サミットでは、 国際メディアセンター(IMC)内の環境ショーケースにおける「地球茶室」の総合企画・プロデュースを担当。

新著「地球の目線」(PHP新書)など著書多数。2009年4月26日よりラジオ「GLOBAL SENSOR」がJ-WAVE 81.3にて(偶数月の第4日曜25時~)放送開始。

竹村真一プロジェクトサイト: http://www.elp.or.jp/


イベントレポート

≪地球大学モデレータ 竹村真一氏 ≫

■イントロダクション

◆東京オリンピックでやりたかったこと

advance_39_1.jpg山崎さんと私が本格的にお仕事でご一緒したのは、東京オリンピック2016の誘致活動でした。
そのひとつの謳い文句は、1964年の丹下健三さんの体育館など、50年前のオリンピックのレガシーの70パーセントを再利用しようということです。逆に言えば、新しくつくる施設や東京の都市計画は50年後に使われるという意味でもあります。ですから、東京オリンピックが都市のあり方や、東京と日本が今やるべき問題に焦点を当てる良いメディアになる。そういう視点で応援していました。
30年後50年後に石油依存度を低減させていくには? あるいはカトリーナ級の台風や海面が少し上がっても大丈夫でいるためには今どんな手を打たなければいけないのか? ウォーターフロントを中心にデザインした東京オリンピック計画はとてもいいチャンスになると思ったわけです。
あるいは、超高齢化社会です。私は日経新聞でオリンピックとパラリンピックの融合を提案しました。というのは、超高齢者社会は何らかの障害を持ちつつ、それでも健康にクオリティオブライフを保っていくのがマジョリティになる社会です。5年後の首都圏の高齢者人口は約1000万人と推計されていますから、もしかすると20年後は、パラリンピックとオリンピックを区別することに意味のない社会になっている可能性もある。
また、オリンピックは健康に通じることです。医療費の増大を考えても、予防医学、あるは病気を防ぐライフデザインを社会全体で進めていく絶好の機会ではないかと思います。
サステナブルではないたくさんの課題を抱えた東京と日本の都市計画、社会インフラ、道路計画。こうした問題を可視化し、グランドデザインを示す時になってきています。こういう課題はオリンピックがリオに決まった後も変わりませんし、また2020年に東京でオリンピックをやるチャンスがあるのであればそれを利用できるかもしれません。
さらに、ジャパンショックです。山崎さんの最近の論調では、新しい日本を創生する起死回生の手段が、新しい成長産業への投資であるということです。今日は、東京オリンピックを介してやらなければならなかった問題をリブートして、どんな東京をデザインし得るのかということを縦横に議論出来ればと思います。


■山崎養世氏プレゼンテーション「ジャパンショックからジャパンシフトへ」

◆グローバリゼーションの先を見通す

advance_39_2.jpg80年代に、バックミンスター・フラー(Richard Buckminster Fuller)の『クリティカルパス(critical path)』を読んだことがあるんですね。プラトンの『国家』もすごい本ですが、宇宙船地球号というコンセプトを提示した衝撃的な書でした。科学者なのですが、コロンブス以来の人類の歴史から語り出していて、今我々はどこにいるのかということを見事に書いています。
私がもうひとつすごい本だと思うのはカントが書いた『永遠平和のために』です。しかしカントは、人口の爆発が起きた後に何が起きるのか、グローバリゼーションの先に何があるんだろうということは書かなかった。
グローバリゼーションで資本主義のゲームにどの国も参加できるようになった。巨大なゲームが始まっています。それと同時に始まったのは都市化ゲームと長生き出来るゲームです。それ自体を支えきれるんですか? という問題がいま問われています。


◆石油によって繁栄し、石油によって脅かされる

世界の最大の産業はエネルギーと資源産業です。ITよりも車よりも必ず大きい。なぜなら人間も含め、存在というのはエネルギーを必要とし、資源を必要とするからです。
200年以上前、エネルギーは焚き木しかありませんでした。次に太陽エネルギーの過去の蓄積である石炭や石油、天然ガスが本格的に採られ始めた。石油は本格的に商業生産されてわずか100年ですが、もう枯渇ということが言われています。さらに石油の価格はまた100ドルに近づいています。つい11年前の99年は9.9ドル。リーマンショックが終わっても40ドルを切らなかった。これから大きなクライシスが起きます。石油もエネルギーも食料も枯渇していきます。ウランも今のスピードでいくと30年で無くなります。現在は、新興国に労働コストが移っているためインフレが起きない。だから分からないだけです。人間は石油経済によって繁栄をしてきましたが、これが戦争や長寿化など、重要な出来事の原因となっていることも事実です。


◆多次元ネットワークをつなぐ「太陽経済」

それに比べて太陽は圧倒的な量を持っています。1時間の太陽放射で人間の1年間のエネルギー全部を賄うことができる。ユビキタスに存在する。これから50億年は続く。ほぼ無尽蔵である。無料で利用できる。そして何より、この宇宙船地球号に乗っている人間も生物も植物も食べ物も、また雲や海、水の対流ふくめ、すべては太陽エネルギーの駆動力で走っています。
その太陽の光や熱、あるいは風、波、雨、あるいは緑などのバイオマスも含め、現在では、こうしたものからエネルギー、電気を取ることが出来るようになった。そしてそれを蓄えるリチウム電池や鉛などの蓄電技術、さらにそれを送る送電、高温超電導も開発され、それらはハイブリッド車やEVに使われている。更にそれを統合化するスマートグリットもある。
ですから、昔の太陽のエネルギーを掘り出して使うよりは、今ある太陽を使おう。そうやってエネルギーを使いながら生命、食料、水、環境を整備すればいいではないか。
情報はすでにネットワーク化されてインターネットになっています。小学校の女の子が世界中の人たちに自分の夢や写真を送る時代です。地球の裏でつくった太陽光発電がこちら側にきたっていいじゃないか。隣同士融通しようではないか。食料も水も人の行き来も、もちろんお金もだ。こうした多次元ネットワーク社会ができてくるのが21世紀の本質だと思います。


◆インキュベーション事業に投資が起きない

「太陽経済」は新しい環境技術でクリーンテック(CleanTech)と言われています。ところがこの動きが日本でまったく起きない。日本のクリーンテックの特許数は圧倒的に多く、太陽電池などはもう50年位前から開発をしているのにです。
私たちも2年前から新しいインキュベーション事業として地域づくりを始めていますが、環境未来都市、エコシティ、スマートシティ、またスマートグリッド、エネルギーシステム、次世代交通などの新しいインフラ、これらに対し年金や郵貯、簡保、公的年金からの投資は見事にゼロです。
かつての日本はメインバンクが成長投資を支えていました。トヨタもホンダもソニーもみんなベンチャーです。戦後、こういう企業に対してメインバンクはお金を貸すだけではなく、株や不動産、インフラ、役員も派遣した。こうやって興していった。お金と技術と、ベンチャーがその社会に結びついていた時代がある。ところが今はまったくストップしている。


◆投資を阻む赤字国債を撲滅せよ

過去20年間、日本経済の中で最も成長したのは国債の発行です。80年代までは赤字国債は悪でした。かつて日本とシンガポールだけは赤字国債を出さない国家だったんです。
ところが昨年の赤字国債は44兆円です。しかし本当は162兆円も出ているのです。とりわけです。また、特殊法人と自治体にお金がいく財投債が15兆円。日本の国はそれを発表しないのです。しかも、いま日本人が貯畜出来るお金は年間10兆円しかない。この人たちが新たに国債を買えるでしょうか?
かつて土光さんは、国家を大変な危機に陥れる赤字国債を撲滅しろとおっしゃった。まさに今そうじゃないですか。政府の借金の穴埋めに国民のお金を使っている。これでいいんでしょうか?


◆財政危機に拍車をかける高齢化が

もうひとつ大きな問題になるのが、日本の戦後経済を支えてきた首都圏の高齢化です。これまで、日本は首都圏に降る雨が全国を潤していた。ところが、今後20年間で首都圏で一番稼いでいた人たちの平均所得が25パーセント減ります。一方、高齢人口が2倍になれば財政支出も倍くらいになる。地方財政と国家財政が同時にメルトダウンを起こすことは、今から分かっています。


◆世界のモデルになる環境未来都市づくり

10年くらい前にこういうことを考えて、高速道路やアクアラインを無料にして木更津から南の房総半島に理想のリタイアメントタウンをつくろうという提案をしています。自然にも恵まれ、海も美しい。魚だって何でもある。中国やインドよりもっと素敵な日本が目の前にある。
例えば木更津の住宅地は、ついこの間まで1坪35000円でした。昔6000円だったアクアラインが800円になって人口は2000人増えた。残念ながら1坪10万円になってしまったのですが、それでも100坪買って1000万円。若い人でも家が買えます。またアクアラインを使ってバスで通える。私は、アクアラインに鉄道をつくり、他にもう1本橋をかけてリングにすることを提案しています。
21世紀最大の成長産業はまちづくりだと思っています。「一点突破全国展開」で、いま淡路島をプロデュースしています。とにかく日本に一個だけでも完全に環境未来地域をつくりたい。大都会の中につくると境界線が分かりません。島の周りは全部海です。そしてここは鉄道もありません。完全な社会実験ができるわけです。
この淡路島で、エネルギー、食、水、街のつくり方、人の暮らし方など、完璧なライフスタイルをつくり、その社会システムを世界に売る。そういうことを再設計する時代が来ているのです。
これは総務省のプロジェクトですが、兵庫県が3つの市42団体、例えばEVの協議会や地域開発、食や農の協議会など全部まとめて私にプロデューサーを依頼しました。人の気持ちが同じ気持ちに向かえるか。これは大事です。


◆小規模分散型の都市へ

東京というのは、偉大なるパーツで出来た都市です。かつてあった封建時代の278藩は垣根です。それが明治維新で無くなり、戦後、首都圏は3千万都市になった。丸の内はオフィス、銀座は買い物、杉並区は住宅、蒲田は工場と、単機能でパーツになっていて、トータルでホリスティックではないわけです。分業することが繁栄の元であった時代はこれで良かった。
ところがいま、100万都市が3つしかないドイツの方がサステインできている。世界2位の輸出、素晴らしい企業の競争力がある。ほとんどが3万人から5万人の街にある中小企業です。街は小さいけれども、仕事もある。食事も出来る。そこで一生暮らせる。なぜなら、街にあらゆる機能があるからです。
都市に住む人は食べ物もエネルギーも自分で生産しません。100年位前の都市と農村の人口は2割と8割の関係ではないかと考えます。世界で都市に住む人が半分越えたのですから自分で作るしかないしかし、大都市で農業をやろうとしたらこんなに条件の悪いことはないわけですね。エネルギーつくるにも同様です。
ということは、田園の中にある3万人5万人の街くらいの方がエネルギーも食料も地産地消するのに向いています。ドイツやデンマーク、イタリアのようにそろそろ田舎暮らしの方がビューティフルになっていいんじゃないですかと。ゲーテがいたワイマール共和国は6000人しかいなかった。それであれだけの大文化をつくったわけですね。高村光太郎などは宮沢賢治を訪ねてわざわざ岩手まで行くわけですよね。情報がない、インターネットもなかった時代に。文化に対する感受性や心がなければ街はつくれないのではないでしょうか。


◆進化の法則~エコロジーとエコノミー

advance_39_3.jpg要するに生物と一緒ですね。外部環境の変化に適応するかどうか。カウフマン(Stuart Alan Kauffman)の『自己組織化と進化の論理―宇宙を貫く複雑系の法則』という本に書いてあったのですが、エコロジーとエコノミーというのは、ギリシャ語で語源が一緒で、両方とも「住まい」という意味らしいんですね。要するに、生物の進化の法則と経済の進化の法則はほぼ同じパターンを辿る。
カンブリア大爆発の前に大絶滅が起きているように、狩猟社会が凄まじい勢いで収縮して農耕社会に進化した。
次の農耕社会、封建社会で、戦争をして農地を確保することがビジネスモデルそのものであった。徳川時代も実に精緻によく出来た社会です。ところが黒船が来てしまうと、278の小国に分かれていたのでは1個の軍隊が持てない。結局、明治維新は士農工商の垣根をとっぱらい市民平等、全員兵隊に行けということです。ものすごい規制緩和ですよね。
こうして武士社会も絶滅し、戦後よりももっとすごいベンチャーの時代が始まった。その時に生まれたのが、土佐藩、長崎商会の支配人であった岩崎弥太郎が大阪に移りつくった日本郵船、そこから大三菱グループはほとんどすべての産業を興す。1890年に三菱グループがこの丸の内を買ったことによって、エコノミーとエコロジーを合わせた企業生態系をつくったわけですよね。 
そして1908年にこの東京駅をつくり出した。それによって、そこを利用していく企業群が有機的に結合していった。そこから大発展をしていくわけですよね。これはものすごいことだったなと思うのですよね。

 
◆日本のポテンシャルでSave humanity

日本も世界もひとつの成長の限界に来ていると思います。黒船を見た瞬間、吉田松陰も坂本龍馬も勝海舟も分かるわけですよね。あそこには勝てない。では、あれを全部取り入れてやれ。その後日本は、日露戦争で、世界最強といわれたバルチック艦隊を全部沈めた。自分たちは一艘くらいしか沈められていなかったのに。
昔からそうですよね。種子島に鉄砲がきて、100年経ったら世界一鉄砲つくっていたわけですよね。あるいは終戦の時、このあたりは全部焼け野原ですよね。原爆も落とされた。あの国と戦争してもかなわない。逆にあそこを最大の客にしてやれ。戦後、自動車は作り出して100年くらいで世界一になった。今の日本もそういう新しいものを取り入れたら、また世界一になれるポテンシャルを持っていると思います。
疑似的なクライシスは確かに来ると思います。それは経済から。その怖さは自覚しないとだめだと思うんですよ。自分で変わろうとする努力。私たち『太陽経済の会』の理想はSave humanityです。人類を人間が自分で救っていく人間らしさ、人間性を守っていこうではない。そういう社会、世界をつくりたい。ぜひ私たちの活動にも参加していただきたいと思います。


■ディスカッション

◆「ジャパンショック」でチャンス到来?!

<竹村氏>
今また新しく「ジャパンショック」という大絶滅を機に、新しい体質改善をするチャンスが生まれている。その時に次の成長産業であると同時に次の大きな日本をつくっていく基礎技術や資本というのは全部自分の足元にある。後は資本と技術を展開するトポスとしての東京と淡路島や木更津をチャネルで繋ぎさえすればそれは可能ですよというお話だったと思います。
もし黒船や絶滅がないとリセットが出来ないとするならば、そういうリセットのチャンスが今来ているという風にも言えるわけですね。

<山崎氏>
国債が大暴落をするという「ジャパンショック」が黒船や敗戦の焼け野原と同じだと思うんです。しかし、国債の問題は解決しようと思えば出来る。政府はいわゆる固定金利の国債を出すのをやめて、短期国債か、金利連動国債を出せばいいのです。それを日銀が金融機関や年金から損を出さないように簿価で7割8割は買って、でも現金も渡してあげる。それで投資をはじめれば、成長できる。
日銀は、国債が暴落しようと財政がどうなろうと、いくら損しても関係ない。なぜならお札が刷れるんですから。それでインフレになるとおっしゃるけれども、では1ドル200円で困りますか? 今80円だから苦しいのではないですか? 25年前1ドル250円。どっちが元気ですか?
アメリカでは終戦直後の5年間それをやったんです。それでシリコンバレーなどの大投資が始まった。戦後の日本46年何をやったか? 250倍のインフレを起こして、国民が持っていた戦時国債を紙屑にしてしまった。
その国民の怒りが赤字国債を原則禁止する法律をつくらせた。それがこの20年、いつの間にか、国債は安全確実、不動産や技術に投資するのは危ないからやってはいけないとなった。赤字国債をあと2年やったら綺麗に日本の個人の貯蓄はすべて無くなるでしょう
ですから国の赤字は埋めるけれどもそのお金を成長に使ってみようよと。その上で消費税を上げたり、総合的に資産課税をするなどで成長が始まれば、税収もあがり雇用も生まれる。何よりもみんなの暮らしが安心安全になるではないですか。
消費税、年間9兆円6千億。国債は1千兆円になっているんですよ。国と地方の借金はついに2千兆円超えています。ローンを引いた国民の純貯蓄は1千79兆円、あと77兆円しかないじゃないですか。
国債というのは古いシステムです。森と一緒ですよね。古い巨木が倒れてこそ初めて新しい木が生えてくる。そういう意味でもこれもシステム的な変更が迫られているのではないか。これはある意味では喜ぶべきことです。


◆太陽経済は命の安全保障

<竹村氏>
オバマもこの間、2035年には電力の80パーセントをクリーンエネルギーにして次世代にプレゼントしようと言いましたけれども、エネルギー自給率4パーセントの日本が一番脆弱性を持っている先進国であることは間違いないわけです。食料生産や環境保全を一体のものとしてこういう太陽経済圏をつくっていこうという提案ですから、これはもう人間と命の安全保障制度になりますよね。

<山崎氏>
2007年に、『米中経済同盟を知らない日本人』(徳間書店)という本に書いたのですが、カントは「安全保障は軍事と恐怖によって成立する」と言いました。実際、国連が出来、安保理事会が出来、また大恐慌の時に国家が預金を守る。ですから、世界は戦争とマネーに対する安全保障が一応あるんですね。
しかし、エネルギーと食料と水を地球上のすべての人間に保障するという安全保障はない。しかし太陽は無限ですから、この3つを保障する推進力がある。
また、ひとり当たりにエネルギーが十分に行き渡った状態になると、社会は人口爆発をやめるという統計もあります。
この3つの安全保障を行き渡らせない限り、必ずもう一度巨大な紛争や戦争の時代になってしまうのではないかと思います。

<竹村氏>
太陽エネルギーがまだ世界でメジャーになっていない頃、『クリティカルパス』では、地球の照っている側で太陽エネルギーで発電をして、それを地球の夜の側の消費に超電導ネットワークのようなもので送れば、一番合理的じゃないかと。当時は東西冷戦の時代でしたけれども、その地球の自転に応じて東西間でエネルギーを貸し借りすれば、相互依存こそがお互いに最大の利益になる。そういうグローバルでプラネタリ―な太陽経済のデザインによって、戦争がおのずとなくなっていくというようなビジョンを語っていたわけですよね。

<山崎氏>
彼は言ってます。20世紀の戦争はほとんど石油を奪い合いことで起きた。なぜかというと石油は地球上の限られたところにしかないからだ。太陽は地球上どこだって照っている。それを送るだけの超電導もあるし、言葉こそ違え、すべてナノテクとインターネットで制御できるじゃないか。そこまで言っているわけですよね。30年前の夢物語が今技術的に全部可能になってきている。
もっと大きいのは、日本の海洋面積は世界で6番目なんです。イギリスは10年間で電気の45パーセントを洋上風力発電でつくることに決めています。実は私たちは、この洋上風力発電に使うスーパーカーボンファイバーという素材を産業化しようとしています。10億円があれば産業ができて、世界中のエネルギー問題の相当部分の解決になるのですが、この10億円が出ません。食料とエネルギーと資源を30兆円海外から輸入している日本がそれでいいんだろうか? まずリーダーがそういうことを認識をして、5パーセントの方が変わり、2割の人にそれを伝えていけば変わるのではないかと思っています。


◆「欠乏は幻想である」~生命の可能性を開花させる文明へ

<竹村氏>
また、バックミンスター・フラーは「欠乏は幻想である」と言っています。つまり、どうしても石油や食料が足りなくなる云々云々。私たちも戦略的に、危機感をあおってシフトを促進しようとはするのですけれども、本音のところで言えば、例えば白熱電球にしても自動車にしても99パーセントのエネルギーを目的以外のところでロスしているわけですよね。
このように、我々のエネルギー文明が未熟であったが故に、空から降る天の蛇口をまったく利用せずに渇水と言い、あるいは山崎さんも気にされている都市鉱山、これもバックミンスター・フラーがすでに30年前に言っていますけれども、日本には金でも銀でもレアメタルでも世界の埋蔵量の1割~2割が都市の中に眠っている。ですから、欠乏の恐怖感によって駆動される文明ではなく、もっと生命の可能性を開花させるような文明にやっと自分たちがジャンプできる。
私は日本にシーズがあるものを総動員していくと、都市がこの地球の中で自然の一器官となり成り得ると考えています[1]。あるいは、我々の細胞の循環のように、車を含めいろいろなものをつくってもまったくゴミが出ないようなCradle to Cradleの考え方。あるいは都市鉱山、そういうものづくりは決して非現実的ではなくなっている。そう考えると、ようやくまっとうに、地球の一レイヤーとして機能し得るような時代を迎えつつあるのだと思います。


◆いまも新鮮な田中角栄の『日本列島改造論』

<山崎氏>
また、田中角栄の『日本列島改造論』もつくづくすごい本で、ものすごく革新的なことが書いてあるけれども、忘れ去られている。田中角栄についは斎藤淳という方が『自民党長期政権の政治経済学―利益誘導政治の自己矛盾』(勁草書房)という本を書いています。非常に明解な分析がされています。

<竹村氏>
まさに私も田中角栄の『日本列島改造論』の真価を山崎さんに教えられて初めて読んだのですが、72年ですから大阪万博の直後、今から40年位前の本ですが、そこで見事に、日本の構造改革ビジョンを書いている。一極集中がかえって非効率になっている。あるいは過密性が大変なマイナス要因になってきている。これをどういう風に分散化していくか。コンパクトシティという考え方もちゃんと出している。あるいは災害に対して非常に脆弱性を持った東京と日本をどうしていくか。
また、この72年の時点で、食料自給をもう一回80パーセントに戻そうというようなこと、それを梃子にして地域の固有性に根差した地域自立の道、地域経済の道を探す。生産や輸出に変調して生活を置き忘れた文明のあり方、あるいは本当に一極集中で首都にどんどん人が移動していくような途上国型のあり方をリセットするときだと言っているわけですね。

<山崎氏>
先日、森嶋通夫先生が昔書かれた『なぜ日本は没落するのか』という本が復刻されました。いま日本に欠けている第1は政治イノベーションだと。田中角栄に匹敵するプロポーザルが今はまだ出ていない。第2は、アジア共同体が出来て、日本がそこに参加しないと没落するだろう。第3は教育の質が悪いと。
経済問題的に落とし込んでいくと、日本には二つの日本があります。大企業の日本、それ以外の日本。大企業の日本は世界中でものを売って現地生産していく日本です。第二の日本というのは世界の中で貿易依存度が178か175位、ほとんど閉じた経済です。
日本の場合、非常に精緻に出来た大企業と下請けの構造がある。あるいは商社が素晴らしい。外国には総合商社はありません。しかし、そのピラミッド構造の上が海外に出ていっちゃった。そうすると、地方企業や中小企業は、ドイツなどに比べると世界で売る力がない。能力がないのではなくそういう教育がされていない。
地方の物産などは宝の山ですね。日本文化は、学術、技術、芸術、全部第一流国家です。特にものづくりは世界に冠たるもので、食の世界を見てもミシュランでフランス以上に星があるわけですよ。ところがこれを売る技術、それを売っていくためのマーケティングがない。「直接売る」ということが大切で、世界に売ることさえ出来れば地域が自立できる。そういう教育をもっと若い時からすることはそんなに難しくないと思います。


◆東京のポテンシャルを活かす道

<竹村氏>
お金の流れをどこに投資するかというときに、なぜ東京なのかというところをどういうロジックで説明されますか? 

<山崎氏>
東京は問題が最も巨大なので最も解決をしないといけない。けれどもここの中だけで解決をしようとするのは非常に難しいと思います。ですから、東京というよりは首都圏として見て、分散自立性のあるネットワークをつくり、碁盤の目のような都市体系に変わっていった方がいいのではないかと思います。
そのために一番簡単なのが交通軸ですね。高速道路無料化というのは、無料にすることも大事なのですが、出入り口をアメリカ並に3キロにひとつにするとあと2,000ヵ所つくれます。アメリカのようにインターチェンジを中心に街を形成するか、ドイツのように中心市街地には車は入れないで、誘導する方法もあるわけですね。100年前の鉄道軸に加えて自動車軸という第二軸をつくった方がいい。

<竹村氏>
私もひとことだけ付け加えさせていただくと、それこそ徳川家康が戦国の世を終わらせる為に日本の大構造転換、体質改善をやった。そういうスケールで、2100年の日本を考えるとやはり東京中心であるわけはないんですよね。しかし2050年までのシフトチェンジを考えると、大消費地でもあり大需要地でもある東京のポテンシャルを活かすというのは一番効率的なのではないかと思うのです。
例えば、この新丸ビルの生グリーン電力は、青森の風力と北海道の水力から直でグリーン電力を引いてきているわけですよ。これは鳩山さんのマイナス25パーセントがある意味での黒船になって、新しい実験に踏み出していっていると思うのですが、こういう形で東京が自然エネルギーの需要地として大きな二ーズを発揮していけば、東京に風車が増えなくても日本全体に風車が増える駆動力になる。
また、首都圏を広域関東圏全体で見ると、1000万人の高齢者人口を抱えるようになる。逆に、超高齢社会に見合った都市デザインやインフラづくりなど、いろいろな新しいシステムサービスの開発を集中的にやっていけるポテンシャルがある。そうすると世界中のグローバルエイジングに対してモデルを提供していく実験場になる。


◆海洋環境を活かして新しい文明を!

<山崎氏>
そうですね。例えば館山があるじゃないですか。ここから見ると富士山がものすごくきれいに見えるんですね。これがオスロやコペンハーゲンならば、もうたぶんこの辺はマリーナだらけですよ。湘南だって結構この頃きれいになっているわけですね。
私は日本が本気になれば絶対に世界一になるのはクルーズだと思います。日本の外食産業は世界一でしょう。クルーズは船の上に外食産業やあらゆるエンターテイメントが乗っているわけですから。
しかし、釜山から25カ所の地方空港にコリアンエアが飛んでいる時代に、空港政策が羽田と成田で分かれているのでは繁栄するわけがないわけですよね。なぜJRで東京から品川から5分か10分で羽田に着くようにつくれないのか。なぜそれを命令できないのか。しかもここのアクアラインを通るのについこのあいだまで5000円ですよ。どう考えても不合理ですよね。
この間香港に行きましたが、空港で降りてそのまま歩いてホテルにチェックインできますし、ホテルの中でエアラインのチェックインもできる。日本ももっと国際競争でしのぎを削ればいいと思います。
この海上空港羽田導線エリアと関空。そこからなぜ船がそのまま観光に行って、ここの淡路島からならばそこから瀬戸内海に行かないんだ。なぜそこから素晴らしい伊勢志摩に行かないんだ。こういうことをやれば日本のこの素晴らしい自然景観はものすごい富を生むと思います。

<竹村氏>
クルーズ文化というのは20世紀の文化で、それをさらに延長させた海洋都市の構想もありますしね。海洋を生活空間にしていく。私はいつも地球は水球と呼ぶべきだと言っているのですが、7割が水で覆われているその海域は、エネルギー面でもまた食料資源にしても、ものすごいポテンシャルがまだ未使用ですよね。
水に背を向けた陸上中心主義の文明の延長で日本は成功したものの、水の視点から新しい地球文明をつくっていく。日本はそれが出来る位置にいると思います。


■質疑応答

◆太陽経済を実現するには?

<質問者:A>
太陽経済の考え方を具体化するには誰がいつどういう形でロードマップを書いて、誰に実際にやっていただくのか?そういうところが聞きたいところなのですが。

<山崎氏>
advance_39_4.jpg実現する一番早い方策は、やはり先立つものがないと動きません。日本には全体で800兆円のお金があります。簡保と郵貯と年金だけで430兆円。今年の税収37兆円です。さらに民間の金融機関まで入れれば700兆円くらい。その3パーセント5パーセントを動かしていただくだけで20兆円が出てくる。日本はお金がパワーなんです。世界の国はないですからね。お金の方向転換ということが一番大きいのではないかと思います。
いま、財政危機で、予算関連法案が通らないと大変だと騒がれています。では、実際に大暴落が起きたらどうするか。政府に頼るしかないです。これは政府の担当する方々がシミュレーションを始めるとおっしゃっていますからやってくれると思います。
この環境の問題もそして食料の問題も私は十分に解決が出来ると思っています。問題はそういう情報をみんなで共有して解にたどり着くか。結局まとまらないで何も決められないで終わるということが、本当のクライシスはなのだと思います。


◆淡路島が生み出す富とは?

<質問者:B>
淡路島が海外に出れば日本の環境が売れると同時に、莫大な資産も生みそうですし、ものすごく面白いことになりそうだなと思うのですが、どれぐらい今進んでいるのか? あるいはどのくらいのお金を何年後かに生みそうかなど、そういう夢のあるお話を聞かせていただければと思います。

<山崎氏>
淡路島はシンガポールと同じ大きさで、人口はシンガポール400万人、淡路島14万人です。淡路島にはすぐ使える公共用地が800ヘクタールあります。1坪1万円や3万円です。北京や上海より安い。鉄道はありません。しかし神戸から淡路島に渡る橋の料金が2300円もします。一方、関門海峡にある関門橋という橋は350円で通れます。食料自給率が250パーセント。新エネルギー比率は約10パーセントで全国的に最も高いところのひとつです。いくらでも太陽光発電でもバイオマスでも風力発電でもつくることができる。四国からは鳴門大橋、神戸まで明石大橋、関空は船で30分です。最後もう1本橋をかければリングになるわけですね。
ここはやはり高齢社会対応の完全なコンプリートなコンパクトシティをつくりたい。シンガポールのGDPは人口400万人で1人当たり5万ドルですから、ひとり頭で日本は抜かれてしまいました。最終的にシンガポールをモデルにすると、100万でも200万でも暮らせるようになるであろう。そうすると神戸や大阪よりもっと素敵な街がつくれる。完全に今のテクノロジーを使って、安心で安全で医療もすべてあるようなところで、LRTもつくる。しかも外国人の投資をいくらでも受け入れる。そういう街をつくれば、今の都市より住宅地の価値は上がるでしょう。
また、いっそこの島を日本の深圳(しんせん)にしてしまおう。そして大学村をつくり、世界にものを売れる人材を教育し、外国人を教育する。中国の鄧小平(とうしょうへい)に倣うと、深圳(しんせん)の開発には中国のお金はほとんど使っていません。ほとんど外国企業の外国の技術と外国のお金です。
淡路島もいくらでも世界中のお金とトップクラスの頭脳と人材、企業に来てもらう。これからの大きな課題ではないかと思います。そういうことを事業化しようと企業の参加を募っているところです。
加えて言えば、ここは歴史的にも面白い。伊弉諾神宮(いざなぎじんぐう)というのがありましてね。春分秋分の日はこっちへ行くと伊勢神宮、対馬の一宮、夏至か冬至だと出雲大社、那智の大滝大社、そして、冬至が諏訪大社から霧島、この真ん中に伊弉諾神宮がある。これオノゴロ島、これは日本、国生みの島ですから、ポタポタとここから生まれたということになります。ですから、私たちのスローガンは「国生みの島から日本を再生しよう、新しい日本をつくろう」すから、ご興味のある方はぜひご参加ください。


■まとめ

◆地球史の進化としてのTOKYO SHIFT

<竹村氏>
そういう東、西、日をよく知っていることを聖(ひじり/日知り)と言うんですよね。今日は日をちゃんと活かしていこうという太陽経済の話から始まったわけですが、では地球が100億になって生きていけるの? あるいは100歳まで人間が生きるようになっても大丈夫なの? そういうことに対する解が切実に求められているわけですよね。その解の結論から言えばイエスなわけです。それが実際に可能なエネルギー文明、食料生産文明、またそういう寿命も含めた人間の暮らしぶりの文明とはどういう姿なのか。そこを見える化していこうという話が今日の太陽経済であり、環東京湾構想圏であったということですね。
また、人類が100歳まで生きられる新しい段階というのは、地球にとっても新しい段階です。そういう地球史の大きな流れ、進化史の中に位置づけて今の新しい文明を捉える。そういうスケールで経済を語る初めての世代だと思うんです。
私は太陽経済というのを宇宙史、地球史の進化の中で捉え直したいと思いますし、そういう新しいブロードバンド化された経済の概念を鍛え直していく最初の世代、そういう実験をもし日本や東京でやるとしたら、こんなにやりがいのあることはない。そういう形で私はTOKYO SHIFTをもう一回捉え直したいと思います。

*脚注*

[*1]自然エネルギーをはじめ、自動車がエネルギー貯蔵機能を備えて都市のエネルギー機関として動き始める。あるいはワイパーの動きによって都市の降雨状況や、ゲリラ豪雨のセンシングをする。

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