丸の内地球環境倶楽部

第3回地球大学クリエイティブ「旅の経験をデザインする」

日時:
2008年11月21日 (金) 18:30〜20:30 (終了しました)

ゲスト:
水戸岡鋭治氏(工業デザイナー)

モデレータ:
竹村真一氏(エコッツェリア・コンテンツプロデューサー)


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モデレータよりコメント

車両全体がおもちゃ売り場のような和歌山電鉄の「おもちゃ電車」。従来の機能的な列車のイメージから大きく飛び出し、電車に乗ること自体がワクワクするような非日常の時間に変貌。----こんな画期的なデザインを仕掛けたのが水戸岡さん。大人も子供も夢中になるこの破格の列車デザインで、廃線寸前だった路線は見事に復活しました。

元々は正統的な列車のデザイナーで、話題になった九州新幹線「つばめ」など数々の受賞歴もお持ちですが、一貫していたのはたぶん列車に乗って移動するという"経験のデザイン"へのこだわりではないでしょうか?その発想はきっと鉄道だけでなく、街の景観や地域ブランディングにも大きなヒントになるはずです。今回は「おもちゃ電車」「いちご電車」をはじめ、数々の画期的な実践をビジュアルで紹介いただきながら、その発想の秘密に迫りたいと思います。

プロフィール

水戸岡鋭治(みとおか・えいじ)


1947年、岡山市生まれ。大阪やイタリアのデザイン事務所で勤務後、ドーンデザイン研究所設立。国際鉄道デザインコンテストのブルネル賞・優秀賞4回ほか、ブルーリボン賞、グッドデザイン賞など受賞多数。現在は鉄道の車両デザインから駅舎や地域の景観デザインまで仕事の領域を広げる。

竹村真一(たけむら・しんいち)竹村真一(たけむら・しんいち)
Earth Literacy Program 代表
エコッツェリア・コンテンツプロデューサー

京都造形芸術大学教授。Earth Literacy Program代表。東京大学大学院文化人類学博士課程修了。地球時代の人間学を考究しつつ、ITを活用した独自な地球環境問題への取組みを進める。

Sensorium(97年アルス・エレクトロ二カ・グランプリ受賞)、デジタル地球儀「触れる地球」(05年グッドデザイン賞・金賞)や「100万人のキャンドルナイト」「aqua scape」など、さまざまなプロジェクトを推進。環境セミナー「地球大学」主宰。07年「water」展ではコンセプト・スーパーバイザーとして企画制作に携わる。08年7月の北海道・洞爺湖サミットでは、 国際メディアセンター(IMC)内の環境ショーケースにおける「地球茶室」の総合企画・プロデュースを担当。

新著「地球の目線」(PHP新書)など著書多数。2009年4月26日よりラジオ「GLOBAL SENSOR」がJ-WAVE 81.3にて(偶数月の第4日曜25時〜)放送開始。

竹村真一プロジェクトサイト: http://www.elp.or.jp/

イベントレポート



「模型をまったくつくらない」という方法

特急「つばめ」や「ゆふいんの森」など、JR九州で走る九割の車両のデザインを担当している工業デザイナー水戸岡鋭治氏。驚いたのは、「模型をまったくつくらない」ということです。「ホントは全部平面でつくれるはず、頭の中で完成させるのです。たくさん絵があればそこからイメージできるんです。」と水戸岡氏は言いますが、しっかりとプロセスを経た思考の厚みが、車両のデザインにしっかりとにじみ出ています。そこに子ども達が覚えやすそうな列車の顔の表情や、夜行列車の寂しさを和らげる派手なソファーといったディテールが重なり成って、旅のさまざまなシチュエーションを彩るデザインに結実しています。

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廃線を救った地域のチカラ

また、お金をあまりかけずに廃線寸前だった路線が復活したのが和歌山電鉄の事例。1年目は「いちご電車」、2年目は「おもちゃ電車」と毎年コンセプトを変えるユニークな取組で、いつのまにか全国的にも知られる路線になりました。パーティのできるサービスカウンター、おもちゃのガチャガチャ、みんなで見守ることが出来るベビーサークルなど、今までの列車には不思議と縁がなかった楽しくて意外性のある仕掛けは、世代を超えて住民を惹きつけます。車内にはお金を出してくれたサポーターの名前を全部掲載しているようですが、デザインの力で積極的な住民参加を呼びおこし、まちの誇りを作ることが出来た恒例と言えるでしょう。

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ホンモノを取り入れる

「人間って贅沢でもいいんですね。人間への信頼を回復する力がデザインにはあるんだ、と水戸岡さんの仕事から感じる。」と竹村さんはコメントしましたが、水戸岡氏は文化的な豊かさについて妥協しません。JR九州では音の反響を出すためのむくの木、特産であるい草を使った暖簾といった素材へのこだわり、あるいは和歌山電鉄で取り入れる超一流の家具デザイン。それは体が心地よいだけの人間工学ではなく、心が心地よいと感じられるものをつくらなければいけないという、デザイナーの使命感とも言うべきものです。

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経験をデザインできる日本人の豊かな感覚

ものづくりに関わる人間が聞いておくべき、貴重な言葉がまだまだたくさん溢れたセミナーでしたが、ひとつはっきりしたのは経験をデザインできる豊かな感覚が、日本人にはあるということです。「日本人は質の高い、戦いをしない、平和と質素を持った民族なんですよね。それを世界中の新しい文化と組み合わせていくのは日本人の義務なんじゃないかと。その話を聞いていたときに、デザインってのが生きるために本当に大事な手だてだって思いました。」と水戸岡氏は言いますが、経済性ではなく文化性において日本人がイニシアチブを取ることが、今の非対称な世界において求められているのでしょう。

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