
第3回東大リレーセミナー「東京の川と水と世界の水」
日時:
2008年3月31日 (木) 18:30〜20:30 (終了しました)
ゲスト:
沖大幹氏(東京大学 生産技術研究所 人間社会系部門 教授)
テーマ
・東京の水の自給率はどれくらいか?・飲み水、水道水だけではなく、食料生産に必要な水の量は?
・都市化に伴い東京の川がいかにして失われてしまったのか?
・その再生は果たして可能なのか?
トピックス
当地区においても、水に関わる様々な課題を抱えています。 夏になると水が不足し、富栄養化 の影響でアオコが大発生してしまう皇居のお堀や日本橋川。逆に、集中豪雨になると日比谷通りが水浸しになってしまうこともあります。 雨水や中水について、建物単位では利用が進んでいますが、通常は建物内で需給が完結してしまうので大量に貯留してお堀などに供給するほどの量はありません。一方で、地下水位の上昇によって、湧水が建築物を浮上させてしまうということもおきています。足らない水と余っている水。うまく間をつないであげれば、もっと合理的な水利用が出来そうな気がします。ところが、せっかくの恵みである水は、様々な規制や水質(塩分濃 度がやや高い)等のために十分に活用されずにいるのが現状です。
また、防災の側面からも水の適切な備蓄が重要です。地区として、飲料水の備蓄に取り組んで いますが、阪神大震災の教訓でもあるトイレを数日間止めないための水がめとしては十分な大きさとはいえません。
さらに、今回のセミナーで沖大幹先生が提唱されている水の考え方、目に見えている水だけなく、私たちがモノを食べたり、排泄したりといった人の営みのむこうがわにある大きな水の循環 (バーチャルウォーター)も視野に入れると、毎日20万人が働く都市であるこの地区の持つ意味はまた違ったものになろうかと思います。例えば、私たちの食べている肉や野菜などの農産物は大量の水を消費して作られています。つまり、私たちが何かを消費するときには、その生産に使われた水も含めて消費していると考えられます。
都市の持つ役割を再認識しつつ、今後の都市再開発において、安全・安心も含めたサステイナブルなまちづくりを目指すために、より大きな循環の考え方をもって、より適切な水資源利活用 の方向性を、みなさんと一緒に見出して行くきっかけになればと考えています。
プロフィール
沖 大幹 (おき たいかん)
現職:
東京大学 生産技術研究所 人間社会系部門 教授
略歴:
1987年 東京大学工学部土木工学科卒業
1989年 東京大学 生産技術研究所 助手
1993年 東京大学 博士(工学)
2006年 より現職
その間、日本学術振興会特別研究員としてアメリカ航空宇宙局NASAゴッダード研究所に、また助教授として大学共同利用機関総合地球環境学研究所に、上席政策調査員として内閣府総合科学技 術会議事務局にも勤務。
専門分野:
地球水循環システムを専門とし、気候変動がかグローバルな水循環に及ぼす影響やヴァーチャルウォーターを考慮した世界の水資源アセスメントなどを研究対象としている。気象予報士。
委員等:
気候変動に関わる政府間パネル(IPCC)第4次報告書主要執筆者
国土審議会や社会資本整備審議会などの専門委員など
主な表彰:
日本学士院学術奨励賞
日本学術振興会賞
文部科学大臣表彰科学技術賞(2008年)
土木学会環境賞(2005年)
日本水大賞奨励賞(2004年)
国際水文科学会(IAHS)Tison Award(2003年)
ほか多数
主な著作等:
監訳:「水の世界地図」(丸善出版、2006年)
共著:「国土の未来」(森地茂編著、日本経済新聞社、2005年)、「水をめぐる人と自然─日本と世界の現場から─」(嘉田由紀子編著、有斐閣選書、2003年)、 「千年持続社会」((社)資源協会編, 日本地域社会研究所発行、2003年)
論文:「地球規模の水循環と世界の水資源」(米国科学雑誌「Science」誌、2006年)
ほか多数
イベントレポート
(1)東京の川の実態
高度成長期における都市河川廃止論により都市整備されてきた東京都の実態の中で、渋谷川に焦点を当てて説明。渋谷側に関する管理区分の変遷をたどることにより、川と下水道が曖昧模糊になっていた時代があったことが判明。下水か川かは、人間が決める時代であったことが浮き彫りになった。

(2)渋谷川と36答申
東京都市計画河川下水道調査特別委員会によって昭和36年に作られた36答申の中身を解明。下水道における問題点をはじめとする当時の様子を検証することによって、「河川にフタをして、下水道にしなさい」いう当時の河川に対する認識について説明した。
(3)人間が使用する水は自然循環の一部
東京全体では山水、噴水、病院などでの水の使用がほとんどであり、人間の生活に落としこんでみると、風呂、炊事、トイレ、洗濯などは全部洗浄用であるというところから、「水を使う」ということは、汚れたものをきれいにする、水に汚れを運んでもらうといったことがわかる。「きれいに水を使いましょう」というのは間違いだと述べた。

(4)日本と世界のバーチャルウォーターの投入水量
農業畜産製品や工業製品を作る際に使用された水源量をバーチャルウォーターとして、農産物、畜産物それぞれの水量を算出。また、日本が輸入している食料の生産過程の必要水量を算出。これにより、日本は、トウモロコシや大豆、小麦、米など海外から飼料を輸入するためにバーチャルウォーターを使用しているということが明確になった。世界から見てみると、大国となっているのは、バーチャルウォーターを他国に輸出している国だけであり、豊かな国というのは、水不足でも、バーチャルウォーターを買って潤わしているとした。
(5)ウォーターフットプリント
生活を支えている食料などの生産に使用した水を表すウォーターフットプリントと併せてカーボンフットプリント、エコロジカルフットプリントを紹介。

(6)地球温暖化への淡水資源への影響
地球温暖化が呼び起こす可能性のある影響を、直接、間接別に説明。今すでに水を巡る問題が顕在化している中、温暖化を抑制したのは、現状に満足している先進国の一部にすぎなく、変化を恐れることもない国々では温暖化対策に関心がうすいとした。
(7)まとめ
持続可能な社会のためには、水のことだけ考えるのではなく、食料とエネルギーと三位一体で考えるべきであり、その際には、土地と時間の制約を含んで考えるべきだとした。



















