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【朝大学】朝大学ついに海外へ!「ポートランド朝大学クラス」で学ぶ都市型コミュニティの新しい形

丸の内朝大学がついに海外に飛び出しました。

ポートランドのパール・ディストリクト。 Some rights reserved by LikeWhere

これまでも様々な講座を展開してきた丸の内朝大学がついに海外に飛び出しました。その舞台はアメリカ オレゴン州ポートランド。新しいコミュニティのあり方のモデルとして世界から注目されているポートランドにまちづくりを学びに週末留学へ、そんなカリキュラムを展開する「ポートランドクラス」でその留学直前に行われた講義に潜入してきました!今回の講師は、コーディネーターの宇田川裕喜さんが「このクラスを構想する元になった」と話す本『グリーンネイバーフッド』の著者・吹田良平さん。その講義から「何故いまポートランドに注目するのか?」を紐解いていきます。

都市型コミュニティとは何か

コミュニティという厄介なテーマに決着をつけたいというのが本書を書いたきっかけであり、今日与えられたテーマでもあります。まずはコミュニティの歴史から概観します。日本では戦前まで「農村型コミュニティ」が主流でした。稲作に帰属する共同体で、個よりも村の都合が優先されていました。高度成長期以降「会社型コミュニティ」が 主流となりました。これは地域ではなく会社組織に帰属した共同体です。この時点でコミュニティは地域や場所性から離れました。やがて経済の成熟期、90年以降、今度は「都市型コミュニティ」というのが顕著になってきました。都市型コミュニティとは「インタレスト」に基づくコミュニティで、むしろグループという感覚に近く、完全に場所に紐付かないものと言えます。あくまで都市に限ってですが、私は現代のコミュニティとは場所から離脱せざるを得ないものと決着付けていました。

しかし、2008年に偶然ポートランドに行く機会があり、そこで場所に紐付いた「都市型コミュニティ」を目の当たりにしたんです。そこではどうやら「ネイバーフッド(近隣地区)」という物理的なプラットフォームの上にコミュニティが成立しているようでした。そこで、私なりにそのネイバーフッドを定義してみると、「物理的に範囲が狭い(小学校区程度)」「明確な個性が立っている(色がついている)」「その個性を好む人が集まっている」「複合的な都市機能を備えている」その結果、それらが相互に複雑に連関して「ひとつの生態系が出来上がっている」というものです。場所に紐付いた「都市型コミュニティ」の存在が意外で、それから私のポートランド通いが始まりました。その成果をこれから少し話したいと思います。

ポートランド市には95のネイバーフッドがありますが、私が注目したのは「パールディストリクト」という都市再生によって新たに人工的につくり上げられたネイバーフッドです。大きさはだいたい南北1.5km、東西850mくらい。約100の街区で構成されています。開発前は鉄道操車場で、90年代に本格的な開発がはじまりました。開発手法はPPP。その上で市側はTIFやBIDプログラムを駆使してデベロッパーの描くアート&カルチャーコンシャスなネイバーフッドづくりに加担していったのです。

そもそもポートランドは地元企業を大事にするという気風が色濃いまちです。また全米一自転車通勤者が多い都市とも言われ、中心市街地は路面電車が無料など自動車がなくても不自由しないまちづくりがなされています。その結果、パールにはヤッピー、ファミリーからヒッピーまで、収入も高所得者に偏ることなく、ビジネスはナショナルチェーンからローカルビジネスまで、建物は操車場の名残のロフトから近代的な建築まで、多種多様な性格が混在混和した生態系が出来上がったのです。

パール・ディストリクトの因数分解

かつて都市を論じたジャーナリスト、ジェーン・ジェイコブスは、豊かな都市のための要素として「2つ以上の機能が複合していること」「街区は曲がる機会が頻繁であるため辺長が短いこと」「古い建物と新しい建物が混在していること」「人口が密なこと」を上げましたが、これを実現しているのがポートランドであり、その象徴的な例がパールディストリクトと言えます。

では、私なりにパールに実現した「都市型コミュニティ」の要因を解きほぐしてみると「Urban neighborhood」「Cultural happenings」「Local first」という3つの要素に分解できると思います。1つ目の「Urban neighborhood」は、都市に生まれたご近所感覚という意識。もちろん都市ですから郊外住宅街とは違って新陳代謝が激しく、常に中身は入れ替わるんだけど、ここには共通の価値観を持った人たちが集まっているというコミュニティ感覚が成立している。ではその共通の価値観とは何か、それが2つ目の「Cultural happenings」です。例えばパールでは毎月1回ネイバーフッド中のギャラリーが一斉にオープンギャラリーを行う「ファースト・サーズデイ」というイベントがあります。このアート&カルチャーコンシャスというのがパールというネイバーフッドに宿る個性であり、それに呼応する人たちが積極的に選択してこのまちの一員となっているんです。 3つ目は「Local first」。ここにもポートランド市のユニークさが現れているんですが、市の開発局は産業誘致よりも人材誘致を積極的に行う政策をとっている。その背景には、優秀な人材が集まれば産業は後から勝手に起こってくるという考えがあって、そのためにウォーカブルな都市環境づくりから、積極的な事業融資まで市のリスクで行うことで、人材獲得を図っています。一方移住者の側からすれば、数ある都市の中から積極的に選択してこのまちに移り住んだのですから、地元に対する帰属意識が生まれ、そこからローカルファースト(地元優先)の精神が芽生えるというわけです。

このようなユニークなネイバーフッドが実現するのは、ビジョネアーなデベロッパーと民間企業以上にアグレッシブな行政主体がいるからこそであり、それらがあって初めて、まちの明確な個性は生まれる、というのが実感です。ひとたびネイバーフッドが確立すれば、そこに都市型コミュニティが生まれる可能性は少なからずある、というのが本日の私の結論です。是非、みなさんも実際に現地でそれを感じてきてください。

「都市」と「コミュニティ」という厄介な問題を結びつけるヒントがたくさんある街、それがポートランドであると吹田さんはおっしゃいます。「都市」を匿名的なものとして捉えるのではなく、小さな単位を対象にして、そこに具体的な「色」をつけていく。それが都市で場所に紐付いたコミュニティを作るカギだということなのではないでしょうか。この話を聞き、実際にポートランドに行き、現地で生の声を聞いた受講生たちは、果たしてそれを日本で実現していくためにどんなアイデアを得るのでしょうか。今後もこのクラスからは目が離せませんね!


2012年、丸の内地球環境新聞が丸の内朝大学に潜入取材したのは、今回のポートランド朝大学クラスを含め10クラス。

こうやって改めて振り返ってみると、幅広いフィールドでどん欲に学ぶ朝大生の姿勢には頭が下がります。来年の春学期以降はどんなクラスが登場するのでしょうか!?2013年も楽しみです!

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丸の内朝大学

未来へつながる、あたらしい朝のかたち

大手町・丸の内・有楽町地区全体をキャンパスに、朝7時台~8時台に開校する市民大学。3ヶ月1学期とし、春・夏・秋の3期開講する講座には、年間のべ約2,600人が参加。朝の定期的な学びの場を通して熟成した都市型コミュニティが、世の中にグッドシフトを起こしています。

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