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【レポート】「金融が取り組みたいCSV」とは会員限定

CSV経営サロン第3回セミナー 11月16日開催

真面目で楽しくハイテンションのサロン

11月16日、第3回CSV経営サロンが開催されました。本サロンは、セミナーとワークショップ中心の座学と、現場に出て実地で体験・見学しながら学ぶフィールドワークが行われています。16日のセミナーは日本政策投資銀行(DBJ)の島裕氏を迎え、DBJが取り組むCSV創発の現状を講演していただくとともに、いつもとは違うテンションのワークショップも行われ、充実した内容となりました。

冒頭、エコッツェリア協会の平本氏が挨拶に立ち、先日リリースされた「大手門タワー・JXビル」の竣工のニュースに触れ、この日の会場となった3×3Laboが、名前を「3×3Lab Future」と変えて、リスタートすることなどが紹介されています。

同じく挨拶に立った、CSV経営サロンの"道場主"小林光氏は、「銀行というのは、良いアイデアにお金を出してくれる(企業や起業への融資や投資の意)すごいところだというのは知っていたが、今はアイデアも一緒に考えてくれるという。今日はどんな話を聞けるか、とても楽しみにしてきた」と話し、本題へと進みました。

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iHub成立の背景

iHub成立の背景

島氏は、「共創型CSVビジネスの創出に向けて―iHubの取り組み―」と題し、DBJが2013年に設置したオープンイノベーションプラットフォーム「iHub」を中心にした取り組みを語りました。

DBJ・島氏最初に、DBJが政府系の金融機関であり、「民業補完の意味もあり、収益性を保ちながら新しいことをやり続けてきたのがDBJ。社会的便益と経済性を両立させることがミッションだった」と、DBJが本来CSV的なものであり、違和感はなかったと説明。そして、iHub成立の背景に近年の経済・経営状況の変化があると解説します。「特に近年の日本は売上営業利益率が低く、それは取りも直さず高付加価値型商品が生み出せていないということで、それにも拘わらず、満足のいく新規事業開発ができていない」と島氏。

また、さらに大きな社会背景として「マスプロダクトからの脱却」という消費行動の変化や、「ICTの技術革新やグローバル化による人と人の関係性の変化」などがありますが、企業側がそれに対応できていないのが現状だと指摘します。「自社の企業活動が社会価値を満たさない」「モノからコトへの価値の変化に対応できない」などの点が挙げられました。
これらを受けて、DBJの「競争力強化に関する研究会」では、「新しいモノ、コトが生まれないのは、突き詰めれば『マインド』の問題と『構想力』の問題」と定義し、「この2つを解決すればイノベーションは起こせる。その場を作ろうとしたのがiHubだった」。

iHubの位置づけ

そしてiHubで取り組んでいるのが「デザインシンキング的にアイデアを発散させるとともに、ロジカルにビジネスモデルを創造する」という発散と集約であると説明。また、ビジネスを創発すると言っても、プレーヤー、ステークホルダーたちと一緒に課題解決の根本から関わっていく「コ・クリエイティング」のやり方で取り組んでいるそうです。しかし、「社会課題をビジネスで解決するコンセプトを創造する場にできればと考えているが、実際は模索しながら試行錯誤しているのが現状」と島氏。イノベーションを起こすために、人材育成を行い、企業が横断的に関わるプラットフォームを作る取り組みが数多く見られるようになりましたが、そう簡単にビジネス創発に行くものではないのはどこも同じことのようです。

また、事業開発ステージにおいて「0~1」がイメージの具象化からアイデア創出までを指し、「1~10」がビジネスモデルの構築、「10~100」が事業化の検討だとしたら、iHubが担うべき役割は「0から10までの情報提供からコンセプト作りを共に行うこと」であると島氏。そして10から始まるビジネスモデルの構築に際しては、「本当の投資が動きにくいところだが、資金が必要なところでもあるため、『ベータ版支援』という新しい形の資金支援も検討している」と、非常に画期的なアイデアを提示してくれました。

そして、iHubの位置付けを「R&Dから社内のイノベーションセンター、そしてフューチャーセンターへと広がってきたオープンイノベーションの潮流の中で、社会との接点でもあり、ビジネスモデルを実証する場所となる『Living Lab(リビングラボ)』」であると解説しています。

また、今後のテーマ領域として「行財政がひっ迫し課題が複雑化していく『地域』」があり、そこには企業が積極的に地方に関与し、行政とともに課題解決ビジネスを共創する必要があるとし、DBJが行っている地方での取り組みを、具体例を挙げて解説しました。

"無責任"がアイデア発散のキーワード

その後、会場からの質疑応答、小林道場主と島氏の対談を経て、各テーブルでの稽古に移りました。テーマは『オープンイノベーションプロジェクトの開発アイデア・セッション』。各テーブルでイノベーションプロジェクトを立案せよ、というお題です。そして稽古が始まる際に、塚本氏は「無責任に考えて」と会場に呼びかけました。「無計画、無謀、そして無理やりでいい。だいたい企業内部では、言い出したら"お前がやれ"と言われるから言わなくなっちゃう。この場はそんなこと言われないので、とにかく無責任に考えて」。

CSV経営サロンは、前身である環境経営サロンの流れを色濃く引き継いでおり、それはつまり、参加者がみなマジメで(一部を除く)責任感が強いということなのですが、テーブルトークでは、時として、そうした性格が災いして盛り上がらないことが往々にしてあります。アイデアを出し合うことを主眼にしたセッションなので、雰囲気を柔らかくする狙いでしょうか。

さらにテーマは「高齢者」「地域(地方)開発」「環境ソリューション」「都市とオフィス」の4つが用意され、各テーブルではこれらからひとつを選んで無責任に考えることになったのでした。

高齢者向けビジネスに注目集まる

さて、無責任にというファシリテーターの指導に基づいた、非常に柔軟なアイデアが多数出されるものとなりました。
(A班)都市と生活を変えるアイデア
(B班)高齢者の健康と活用ビジネス
(C班)高齢者を恋愛で楽しくする
(D班)各社の環境ソリューションを使い、環境課題解決と教育を促進
(E班)孫が行きたくなる都市作り
(F班)都市と地方を近づける
(G班)高齢者の恋愛ビジネス~お墓に入るまで一緒だよ(ハート)
(H班)迫りくる死に備えた就活ビジネス

塚本氏も「こんな無責任になれるとは」と思わず笑いをこぼしたほど、発表もにぎやかに、楽しく行われました。
最後に講評に立った小林道場主は「高齢者がこれほど選ばれるとは思わなかった。しかし逆にいえばビジネスになるチャンスが大きいということだろう。しかし、それにしても高齢者の恋愛だなんて破廉恥なアイデアが出てきて(笑)、素晴らしいことだ。ぜひやれることはやってみてほしい」と高く評価するコメントを残しました。

アイデアの発散は、新規事業開発には欠かせないプロセスと言われていますが、今回のテーブルセッションでは、非常に良い形でアイデアが発散されたと言えるでしょう。今後のCSV経営サロンでは、こうしたセッションを繰り返すことで、参加者のマインドセットを行うとともに、新しい事業を共創していきたい考え。次回、12月3日のフィールドワークでは、DBJに行って「都市」をテーマにしたワークショップを行う予定です。


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環境経営の本質を企業経営者が学びあう

エコッツェリア協会では、2011年からサロン形式のプログラムを提供。2015年度より「CSV経営サロン」と題し、さまざまな分野からCSVに関する最新トレンドや取り組みを学び、コミュニケーションの創出とネットワーク構築を促す場を設けています。

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