イベント丸の内井戸端会議・レポート

【レポート】丸の内井戸端会議 第3回 ~20代女子の本音『嗚呼!自己実現』~

2015年2月19日開催

20代女子がリアルに語る自己実現

異なるバックグランドやライフスタイルを持つ人たちが集う場で、自由闊達な本音トークが繰り広げる「丸の内井戸端会議」。結論を出すことを目的にしたものではありませんが、第1回、2回と回を重ね、いずれも参加者一人ひとりが思考を発展させることができ、ヒントとなる"宝物"を持ち帰ることができたようでした。

2月19日に開催された第3回のテーマは『20代女子の本音 「嗚呼!自己実現」』。今回のゲストは、一般社団法人 企業間フューチャーセンターの代表理事を務める20代の若松悠夏氏。3×3Labo運営事務局のスタッフも兼任する同氏のトークセッションを皮切りに、今回も大いに盛り上がり、參加者にとって実りある時間となりました。

今回のゲストトークは「ストーリーテリング」という手法で行われます。これは台本なし、スライドもなし。思うがまま語るに任せるというもの。そのため語り手の"素"の姿が出てきます。また、トークセッション中、ゲストが話す内容を絵に描く"グラフィックファシリテーション(GF)"が行われることも紹介されました。これはトークのビジュアル化により、参加者の認識を深め、想像力を喚起するファシリテーション手法。今回は、GFのエキスパートであるジョニー氏を迎え、2台の大きなホワイトボードで話の内容を描き出していきます。

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若松さんの話

迷って選んで断って......若松さんの話その1

登壇して数分と経たないうちに、「マイクなしで話してもいいですか?」と若松悠夏氏。社会人5年目、20代半ばの女性とは思えない、落ち着いた佇まいは春風のように美しく凛としています。そんな同氏を前に参加者たちの中にも和やかな空気が流れていました。

自己紹介のあと、トークは学生時代から始まりました。社会問題に興味があったものの主題をひとつに絞り込みたくなくて、選んだ学部・講座は「生活科学部 人間生活学科 生活社会科学講座」。家政経済学の授業で、「あなたたちの世代が親世代と同じ経済条件で暮らしていくには、2倍の収入が必要だ」と言われ、専業主婦志望だったのに、就職を考えるようになったこと。学祭の実行委員長を務めていたために、遅れてスタートした就職活動......。

ジョニー氏のGFより若松氏のまわりでは、"卒業したら大手企業に就職する"という流れが当たり前とされていたようですが、「正直、そういう考え方がよく分からないまま、とにかく就活していた状態だったんですね。一度方向転換をしようと思い、ベンチャー企業を受けてみたら、SEOを専門に行う会社から内々定をいただいたんです」。

しかし、卒業間際の2月末に、なんと内々定を辞退。「インターンを経験しましたが、元々ITが好きな人と当時の自分とでは、まったく熱量が違っていました。彼らはこれまで自分が培ってきたスキルをいかに社会に提供するかと考えている人たちで、これから仕事をしながら学ぼうと思っていた自分は甘かった、そう痛感しました」。

複雑な気持ちで大学の卒業式を迎え、4月から6月の3ヶ月間は、「まさにニート状態でしたね。自分で食べていけるようにしないといけないと思いつつ、実家に住んでいたので困ることがない。それが余計につらくて」。とはいえ、立ち止まるわけにもいかず、暗中模索で動いているうちに、企業間フューチャーセンターの発起人である田口氏と出会います。

「私、何がやりたいか分からないんです。今、ニートなんですとお話ししたら、企業間フューチャーセンターのイベントにお誘いいただきました。続けて参加していくうちに、気づいたら、運営側に巻き込んでいただいていて。企画やファシリテーションのサポートをしているうちに、秋ごろからスタッフとして業務に携わるようになりました」と若松氏。企業人の集まる団体なら、企業の文化や言語みたいなものが理解できるのではないかと思ったのが参画を決めた理由だったと話します。ちょうどそのころ、活動規模も広がり、企業間フューチャーセンターを法人化しようという話になり、専任でできる状態だった若松氏に代表理事の白羽の矢が立ちました。「せっかくいただいたチャンスなのでがんばろうと思い、お受けすることにしました」。2013年4月、23歳の時のことでした。

つまずいて、とまって、また走り出す......若松さんの話その2

企業間フューチャーセンターが法人化した1年目は、組織自体がまだ固まらない中で、プライベートでもいろいろとあり、「目標を定めることができない中、コントロールできないいろんな要素があることを身をもって感じた一年でした」。2年目は3×3Laboができ、運営事務局として常駐するスタイルに。「それまでは自宅で仕事をしていたのが、オフィスができたことで、1日100人近い人たちとお会いする生活に切り替わりました。NPOやNGOの方、大学に勤めている方、学生さん......本当にいろんな方たちが入れ代わり立ち代わり来られるので、座って仕事をしている暇がないほどです」と語る若松氏。

「私みたいな働き方をしているから将来が描きにくいというわけでも多分ないと思うんですね。企業に勤めている友人たちと話していても、先が全然見えないし、いつ結婚していいか分からない、いつ子どもを産んでいいか分からないといったことは共通しています。ただ、それぞれの状況が違いすぎることは事実で......。悩みながらでも、迷いながらでも、とにかく前に進んでいくしかないと思って、一つずつ自分で決めて進んできましたし、私はこういう働き方、生き方を選んでここまで来たので、ロールモデルを探すという感覚は正直ないんです。おこがましいかもしれませんが、自分自身が新しい働き方になれたらいいなと。とはいえ、後輩に相談されたら、自分みたいな働き方よりも、まずは企業に就職することをおすすめするとは思うのですが」

「自己実現って何だろう?それぞれの思いや経験がある中で、女性が活躍する社会って何だ? 活躍って何だ?って、ずっと思っていました。これから皆さんと一緒に考えていきたいです。」とトークセッションを締めくくる若松氏にライスシャワーのような拍手が送られ、次なるアジェンダ、ワークショップへと移りました。

心の叫びに素直に。揺れながら、生きる

後半からは会場を模様変えし、全員が大きな輪を描き、向き合って座る形になりました。冒頭近くの席でシェアした感想を全体でシェアしましたが、若松氏の生き方、考え方に強く共感する声が多く聞かれました。

小崎氏モデレーターのひとり、小崎氏は次のように語りました。 「最初に就職したのは金融系企業では、"金融界で深夜まで働く女性はかっこいい!"と勝手に思っていて、実際そのように働いていたのですが、正直、全然楽しくなかったんですね。でも、その楽しくないということに気づくのにすごく時間がかかりました。"これは正しい道だ!"と思い込んでいたので。きっかけは夫のアメリカ留学が決まった時。今の仕事を続けてもいいし、辞めてもいいよと言われて、"これからもこのスタイルで仕事を続けていきたいか?"と考えた時、答えが出ました。初めて自分に素直になれましたね」

「大学時代、私も若松さんと同じように、大企業に就職するのが当たり前という環境で育ってきて"それって、ちょっとおかしいんじゃないかな?"と思ったこともありましたが、当時は見て見ぬフリをしていました。それをきちんと受け止めて、自分の中で消化している若松さんはすごい。自己実現って、きっと日々の一歩一歩を自分が納得する形で選択していって、その先に見えてくるものではないかなとお話を聞いて思いました」

魂が喜ぶことが、活躍に繋がる

この後、若松氏のトークで出た言葉のひとつ『ロールモデル』の議論をはさんで、もうひとつのキーワード『活躍』について話し合いました。政府も掲げる女性の「活躍」ですが、その真意・実像は分かるようで分からない、というのが本音ではないでしょうか。「活躍とは、自分をちゃんと生かせていること。自分の持っているものを最大限に活かすこと。ひいてはそれが幸せに繋がると思う」と言う人もいれば、「何かについてできるかぎりがんばった時、その人自身は満足感で満たされていて、生き生きしていると思う。そこに他者からの評価が高まった時、自分の中では活躍できている状態なのかなと」など、参加者からは次々と積極的な発言が飛び出しました。

司会・田口氏の興味深い意見をご紹介しておきましょう。「いわゆる経済的な成功を収めている人や何かの分野で有名になった人を"あの人は活躍している"と一般的には表現するのかもしれませんが、みんなが活躍を目指しているのかといったら、活躍自体に疑念を抱いているのではないかと思うんですね。人は迷うし山あり谷ありで大変ではありますが、人生はネタ作りじゃないですけど、しゃべるとけっこうウケるよっていう部分があるのではないかと。要は捉え方の問題で、上に行ったり、下に行ったりしている人を"活躍"や"成長"という言葉で定義付けられないだけで、"輝いている" や"人間らしい"、あるいは"かっこいい"というような他の言葉で形容される人は、きっとたくさんいるんですよね」

いつかは大木に育つ。生命力の偉大さを知ろう

白熱の議論が繰り広げられた2時間。またたく間に時は過ぎ、全員がひとことずつ感想を述べていよいよ最後のまとめへ。井上氏はメキシコのゲリラ集団『サパティスタ』のモットーが「尋ねながら、道を歩く」であると紹介。彼らの考えを尊敬していると話し、「これは、"決めない。人に聞きながら、自分たちが進むべき道を歩き続ける"という意味を含んでいます。今日のディスカッションからはこの言葉が思い浮かびました」。

「最後に皆さんにご覧いただきたい写真があります」と言って、同氏がスライドに映し出したのは、『つくば科学万博85』で展示された「巨大トマトの木」。「一株のトマトの生命力を完璧に発現させるとこれだけ大きな木に育つということは、私たちの生命にもこれくらいの可能性があるということを教えてくれます。 "魂に正直に生きる"という言葉がディスカッションの中でありましたが、魂が喜ぶようにしていれば、揺れ続けながらでも、いつかは大木になるのかなと、みなさんの話を聞いていて思いました」と締めくくりました。

異なるバックグランドやライフスタイルを持つ多種多様な参加者たち。彼らとのディスカッションの中で浮かび上がってくるさまざまなテーマを、流れる水のごとく自然に取り上げ、皆で考え、意見を交わし合う。ひとつの答えを見出すための議論ではない、そんな独自のスタイルが心地良い井戸端会議。懇親会もほんわかしたムードで大いに盛り上がり、今回も無事終了となったのでした。


関連リンク

丸の内井戸端会議

「女性の働き方」について考える

丸の内井戸端会議では、女性が企業で活躍していくための課題とそれをクリアしていくための知恵を、参加者が共有する講座を提供しています。女性がリアルに語る"自己実現"についての講演をもとに、ライフステージを意識した時の働き方について、さまざまな観点から議論をしています。

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