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【レポート】自然エネルギーの活用が、日本の未来を創る

丸の内プラチナ大学 自然エネルギーシフトコース DAY8(11月9日開催)

2016年11月に、第22回国連気候変動枠組条約(COP22)の第1回パリ協定締約国会合がモロッコのマラケシュにおいて開催されました。日本は脱炭素社会を目指すパリ協定には正式に参加できていませんが、「2030年度までに温室効果ガスの排出を26%削減(2013年度比)」し、2050年には、80%を削減するという高い目標を掲げています。このハードルを超えるには、化石燃料依存をやめ、太陽光、風力、バイオマスなどの自然エネルギーへシフトすることが不可欠です。国は近年、自然エネルギーの普及に力を入れており、電力自由化などもきっかけとなって、国内の自然エネルギー市場は盛り上がりを見せつつあります。

丸の内プラチナ大学「自然エネルギーシフトコース」では、全国各地で再生可能な自然エネルギー活用による地域シフトにチャレンジしている企業経営者の現場に学び、実際にビジネスに関わっていけるノウハウやスキルも身に着けてきました。 これまで行われてきた講座の内容は以下の通りです。

●第一回 丸の内プラチナ大学 オリエンテーション
●第二回 <エネルギービジネスの現状と課題解決について> 国内外のエネルギービジネス事情と現在の政策と制度についての共有と課題解決の方向性を探る
●第三回 <地域自立のための、地域によるエネルギー活用>電力自由化における電力業界の動き、コストが安くなる理由と地域での活用方法について
●第四回 <風力・太陽光(地熱)の現状と活用について> 発電技術とマネジメント方法の説明、現在の市場と今後の動きに向けた活用の紹介
●第五回 <森林バイオマスと農畜産バイオマス活用のコツ> 各バイオマスの活かし方、技術概要と特徴、代表的な導入事例、導入を成功させるポイントの紹介
●第六回 <フィールドワーク1> 自然エネルギーの変動をどうコントロールするか、需給管理の現場を見る。風力発電の開発・建築と安定供給の現場を視察
視察先:株式会社ウィンド・パワー・いばらきパワーシェアリング株式会社
●第七回 <フィールドワーク2>森林バイオマス導入の現場を体験。薪ボイラー、間伐材の収集・保管・加工、木材の搬出システムを視察しサプライチェーンを学ぶ
視察先:NPO法人 道志森づくりネットワーク・株式会社リトル・トリー

11月9日、講座は最終回を迎えました。これまでの総評に加え、自然エネルギービジネスに携わるための、ファイナンスや法務、合意形成、組織づくりを学ぶ内容です。また、参加者によるディスカッションも行われました。その様子をレポートしていきます。

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初期投資を効率的に回収する事業スキームをいかに構築するかが鍵

初期投資を効率的に回収する事業スキームをいかに構築するかが鍵

講師を務めたのは、特定非営利活動法人北海道グリーンファンド理事長の鈴木亨氏。また、過去にこの講座で講師を務めた、株式会社森のエネルギー研究所代表取締役の大場龍夫氏、ワタミファーム&エナジー株式会社代表取締役の小出浩平氏もゲストとして最終回に駆けつけてくれました。

講義では、まず鈴木氏が、自然エネルギー事業を立ち上げるうえでのポイントについて解説しました。 「自然エネルギーは、どの分野をやるにも初期投資がかかります。そこからどうやってキャッシュフローを生み出すのかという事業スキームを、しっかり構築しておかねばなりません。また、日本では土地利用に関する規制が非常に多くあります。国立・国定公園や自然環境保護区、保安林といった規制区域のリサーチはもちろん、土地所有権、住民組織に関しても事前調査が必要です。実際に私が今係わっているプロジェクトで、ひとつの土地79人の地権者がいるものがあります。一人ひとりに許可を得るのはとても大変ですが、それがそろわないと銀行からの融資が出てきにくいのが今の日本です。そこは覚悟しておくべきでしょう」

その他にも、メガソーラーにおける収支計画のモデルや、補助金、金融機関融資、資本金などのファイナンスをいかに組み合わせて総事業費を積み上げるかなど、ファイナンス面での踏み込んだ話が数多く出ました。いずれの内容も経営に直結するだけに、参加者全員が真剣な表情で聞き入り、忙しくメモをとっていました。

「資本金以外でどれだけの額を積めるかが銀行の融資を引き出す鍵になります。しかし、例えば本来地域主導でやるべきプロジェクトであっても、自然エネルギー関連では初期投資のリスクを嫌ってなかなか投資が集まらないことが多くあります。事業化においては、誰がお金を負担するのかということをしっかりと固めたうえで臨む必要があります」

事業のリスクヘッジは、最初の契約ですべて決まる

続いては、契約に関するノウハウについての解説がありました。講義も山場に差し掛かり、受講生の表情もより引き締まっていました。

「事業のリスクヘッジというのは、最初の契約ですべて決まってしまいます。いわば、契約こそが、事業の成立と継続性に関する攻防の最大のポイントのひとつといえます。太陽光や風力発電などでよく用いられる契約形態としてEPC契約があります。これは、設計(engineering)、調達(procurement)、建設(construction)を含む、プロジェクトの建設工事をまとめて請負う契約形態のことです。自然エネルギー事業においては、建設期間中から支払いがなされるのが一般的であることもあり、建設中のリスクについてはあらかじめ検討が必要になります。したがってEPC契約の時点で、設計、調達、建設において考えられるリスクについて詳細に検討し、回避するための約束事を盛り込んでおく必要があるのです。納期に関してもEPC契約における重要な論点となります。EPC業者が期日までに完成できないことも想定し、1日当たりの遅延金を設定して予定損害賠償金を規定しておくべきです。また、瑕疵担保責任や性能、稼働率などの保証条件も明確に。責任の起点はECP契約上の引き渡し日、保証期間は2年程度というのが一般的ですが、最近は長期間の保証サービスのケースも出てきました。契約における交渉力がポイントです。」

経済性を付与し、事業を継続していくことが社会のためになる

こうして最後の講義が終わった後は、いよいよ受講生の発表です。5名の受講生がプレゼンテーションを行い、ゲストの大場氏と小出氏がそれぞれに対しコメントを述べていきました。また、受講生からも質問が飛び交い、ディスカッションは白熱しました。発表した受講生のうち3人は、フィールドワークの経験を生かしてバイオマス発電についてのプランを提案していました。また、「自然エネルギーと自給自足で、お金がなくても暮らせる村を作る」など、ユニークな発表もありました。

「木材から取り出した分子化合物を耐熱性樹脂に加工する工場を作り、高付加価値の商品を作ってはどうか」という提案に対しては、大場氏から「目の付け所はすばらしい。ただ、工場のハイテク化というのは地方林業の課題でもあり、いかに初期投資を行えるかが鍵となる」という意見が述べられました。全体の議論としてもっとも多かったのも、「どうビジネスにしていくか」ということ。全員が「明日から事業をやるにはどうしたらいいか」という視点で考えていました。やや厳しい意見もあがりましたが、互いに遠慮せず、胸襟を開いて語り合っている様子が印象的でした。

議論が大いに盛り上がった結果、時間を20分オーバーして、講義はすべて終了。学びを終えた受講生からは「これまで講座を受けてきて、やはり経済性をどう持たせるかが課題であると感じた。末永く事業を行い、社会貢献するためにも、高付加価値を念頭にビジネスを考えなければいけない」「自然エネルギー市場は2030年までは確実に伸びるはず。そこにどのようにアプローチしていくか、選択肢が広がった」という感想が聞かれました。最後に丸の内プラチナ大学事務局側から「このつながりを生かして、ぜひ自然エネルギー関連のコミュニティを作っていければ」との言葉があり、受講生は互いにうなずき合っていました。

地球環境を守っていくうえで、自然エネルギーへのシフトというのは、人類全体で考えるべき課題です。この講座に係わった人々は、お題目ではなく本気で自然エネルギーの普及を目指し、活動しています。こうして"本気"が輪となってつながっていけば、きっと未来を変えることができる。そう信じることができた、熱意あふれる最終講義でした。


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