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【レポート】福祉と経営の両立は、夢物語ではない

丸の内プラチナ大学 障がい者雇用コース DAY8(11月5日開催)

世界でも類を見ない少子高齢化が進む日本。一億総活躍社会が叫ばれる中障がい者や高齢者の雇用に対してもニーズの高まりとともに注目が集まっています。 丸の内プラチナ大学「障がい者雇用コース」では、画期的な障がい者雇用を行ってイノベーションを起こしている企業でフィールドワークを行い、その経営者の価値観や雇用に関する極意を学んできました。これまで行われてきた講座の内容は以下の通りです。

●第一回 丸の内プラチナ大学 オリエンテーション
●第二回 <障がい者が当たり前に働く社会へ> ヤマト運輸の故小倉昌男氏の意思を継ぎ、障がい者雇用に革命を起こしたスワンベーカリー元社長に学ぶ
●第三回 <ダイバーシティと障がい者雇用> IT企業が障がい者を始めとした30大雇用を宣言するグループ会社に成長したストーリーを代表から聞く
●第四回 <フィールドワーク1> 30大雇用を掲げながら海外進出も果たす全国から注目の職場で多様な人が働く姿を見学 (アイエスエフネットライフ)
●第五回 <フィールドワーク2> 障がい者が育てた葡萄で、高品質なワインを製造するまでの物語の現場を、美味しいランチを味わいながら見学 (ココ・ファーム・ワイナリー)
●第六回 <障がい者が当たり前に働く社会へ2> スワンベーカリーから広がった、障がい者が当たり前に 働く社会を増やす取り組みを紹介
●第七回 <フィールドワーク3> メディアに数多く紹介されるチョーク会社の大山会長の 話を聞き、ラインの多数が障がい者の製造工場見学 (日本理化学工業)

そして11月7日、講座はついに最終回となりました。これまでの振り返りとともに、障がい者が働くことの本質について、考えを深めていきました。

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事業のノウハウを公開し、「スケーリングアウト」で社会に広げる

事業のノウハウを公開し、「スケーリングアウト」で社会に広げる

講師を務めたのは、ヤマトボックスチャーター株式会社人事部長の海津歩氏。元株式会社スワン代表取締役として、多数の障がい者を雇用するパン屋「スワンベーカリー」の経営に携わり、障がい者雇用と収益性を両立させて障がい者の給料を大きく引き上げることに成功した経歴の持ち主です。

講座はまず、海津氏によるこれまでの総括からスタートしました。自らの経験を交えながら、現代社会で障がい者を雇用するとはどういうことか、それが日本にとってどんな役割を果たすのかについて語りました。 「社会福祉の世界では今まで、あったらいいと思うこと、してほしいことを国に伝え、あとは行政に任せ、待つだけでした。そして出てきたものに、ケチをつけるということをしていた。しかし現代では、社会にいいと思ったら、企業が、個人が、NPOが、地域社会が、自分たちの判断で事業に取り組むことができるようになっています。そうして事業を起こす人を、社会起業家と呼ぶわけです。成功している社会起業家に共通するのは、彼らは決してスペシャリストではなく、たくさんの専門家たちを横断的に取りまとめるコーディネーターであるということです。社会起業家を目指すなら、スタートの段階から行政の支援や控除を当てにしているようではだめなんです。自らの指揮のもと、専門家たちを動かして、その取り組みをアピールして行政を引っ張り出し、最後は法律を変える。そうして行動を重ねたうえで、最後に頼るのが支援や控除、というのが正しい順番です。最初から、国が、制度が、と言ってばかりでは、動き出すことができませんし、いつまでたっても事態は変わりません」

受講生の中にも、社会起業家を目指している人が多くいました。それぞれが、ときにうなずき、メモで手を走らせながら、熱心に話を聞いています。 海津氏が、障がい者雇用が社会により広まっていくための大きなポイントの一つとして挙げたのは「スケーリングアウト」という考え方でした。

「例えばあなたたちの誰かがビジネスで成功したとき、それを自分で抱え込んで事業をスケールアップしていくのではなく、そのノウハウを公開、共有して同じような企業を増やすようスケーリングアウトすることにより、障がい者を幸せにしようと思う仲間がどんどん出てきます。それが広がっていけば行政も動かざるを得ず、社会が変わってきます。そうして各自がスケーリングアウトして行動することでしか事態は動きません。最初はへたくそでも、無様でもいい。批判があっても、とにかくやり続けていってほしい」 海津氏の熱い言葉に、受講生みなが無言で一斉に大きくうなずき、その感動が伝わってきました。

きれいごとばかりではなく、現実を見据えたうえでのアプローチが大切

続いては、海津氏も出演したドキュメンタリー番組『ガイアの夜明け 金儲けで福祉を変えろ!』を視聴しました。番組中では、福祉をビジネスにするむずかしさについて語られ、実際に事業から撤退した人も紹介。その元社長が漏らした「ビジネスと福祉の両立は非常に難しい」という言葉は、受講生にとっても重いものだったはずです。また、番組中では、海津氏がいかにスワンベーカリーの経営を立て直したかが描かれました。海津氏は「障がい者の店だからといって、いつも同じ商品では飽きられてしまう」と、毎月新商品を投入。インターネットによる通信販売を開始して販路を拡大するとともに、併設するカフェで利幅の大きいアルコール飲料を売ったり、パンの実演販売を取り入れたりとさまざまな手を打つことで、売り上げを前年度比マイナスからプラスへと転換させました。福祉と経営の両立は夢物語ではないことを証明したのです。

視聴後には、障がい者の給与に関する話がありました。 「当時のスワンベーカリーで働く、障がい者一人当たりの年収は直営店で約130万円、月給にすると11万円ほどです。日本の障がい者の給与はだいたい月1万2000円ですが、私の会社では、障がい者に対して月10万円以上払いたいと思いました。そうすると、7万円ほど出る補助金などと合わせればぎりぎり経済的自立ができる計算です。経験からいうと、障がい者は月の給料が2万円になると休まなくなる。5万円になると仕事を工夫するようになる。そして7万円になると、生活を変えて人生に積極的になります」 かなり具体的な内容で、受講生たちもメモに余念がありませんでした。

最後に、障がい者雇用において大切な三つの心得という話がありました。 「ひとつは、意識を変えること。障がい者への支援は、与えるものではなく、彼らを生かすことであると考えなければいけません。次は、活動を普及させること。例え事業が儲からなくとも、連携して普及させていく努力をしてほしい。そして最後は、実際に使ってもらうこと。仕事がなければやっていけませんから、消費者が進んでお金を支払ってくれるように、マーケティングやセリングを行っていくことです。きれいごとばかりではなく、現実を見据えたうえでのアプローチが大切なのです」

自分に何ができるのか、具体的に考える機会になった

講義の最後を飾るのは、受講生による発表です。実際に障がい者雇用のプロジェクトを進めている人から、職場にいる障がい者を少しでも理解したいので受講した人まで、さまざまな立場から、障がい者雇用のアイデアや、自分がやるべきことについて語られました。 その中で、「障がい者の派遣事業」や「発達障がい者のキャリア育成事業」など、具体的なビジネスプランも飛び出しました。それに対して海津氏は「障がい者側だけではなく、ビジネスの相手となる企業の立場に立っても発想するべき」「プロジェクトのボードメンバーにとって、儲かる、ブランディングにつながる、といった彼らにとってのメリットを提示して納得させられるかがポイントになる」など、かなり実践的なアドバイスを贈っていました。その他の受講生からも、質問や意見が飛び交い、活発な議論が行われました。

講座を終えた受講生からは、次のような感想を聞くことができました。 「フィールドワークで現場に行けたのが良い経験になりました。私たちにとって働くのは当たり前のことですが、それが難しい人々がいる。彼らにチャンスを作ることができるよう、事業を展開したいと強く思いました」 「この講座で得た知識を生かして、これから具体的に行動を起こすことが大切だと感じています。」

これまでの講義や議論を通じ、受講生それぞれが、自分に何ができるのか、自分は何をすべきかを明確化してきました。いずれこのメンバーから、福祉の将来を変えるような画期的な事業やプロジェクトが生み出されるかもしれない。そんな期待感が漂う中で、講義は終了となりました。


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