イベント丸の内プラチナ大学・レポート

【丸の内プラチナ大学】ホールシステムアプローチを体験する

プレ講座 共通講座 DAY2 2015年11月6日(金)

専用サイトとfacebookページを開設した丸の内プラチナ大学

この日は、丸の内プラチナ大学プレ講座の共通講座DAY2。テーマは「組織間コミュニケーションを活性化する」です。講師は株式会社キュムラス・インスティチュート代表取締役の岩井秀樹氏とLife Creator Laboratory代表の輿石範子氏。

開講に先立ってエコッツェリア協会の田口氏からは、丸の内プラチナ大学の専用サイトがエコッツェリア協会のホームページの中に開設されたというアナウンスがありました(同ホームページの「イベント」内)。丸の内プラチナ大学の情報発信の場であり、参加者の情報共有の場として活用されていくことが期待されます。さらに、facebookにも非公開ページとして丸の内プラチナ大学のページが用意されたことも紹介され、参加者を集っていました。Facebookページでは情報共有だけでなく、活発な意見交換が行われることが期待され、田口氏は、「伝え合う、教え合う」場として活用してほしいと期待を込めていました。

田口氏のあいさつに続き、マイクを握ったのは、この日の講座を中心になって進める役を担った岩井氏。いよいよ共通講座DAY2の開講です。

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組織間コミュニケーションを活性化するホールシステムアプローチの考え方

組織間コミュニケーションを活性化するホールシステムアプローチの考え方

セカンドキャリアで大切なのは、新しく出会う人たちとの意思疎通。セカンドキャリアに限らず、ただ一人で突き進むことを選択すれば、新たなコミュニケーション能力など必要ないかもしれません。しかし、セカンドキャリアの道では共に歩む「仲間」が必要で、これまでとは違うコミュニケーション能力が求められるのです。

とはいえ、いま持っているコミュニケーション能力がそのまま他でも通用するかというと、これまで再三言われてきたように疑問が残ります。

岩井氏

例えば、会社勤めで培ってきたコミュニケーション能力は、新しい地域で通用するのでしょうか――「なかなかそうはいかない」と、岩井氏は指摘します。これまで東北復興や地域創成に関わってきた中で、地域にはさまざまな利害関係が存在し、何か課題解決に取り組もうとしてもすんなりとはまとまらないことをこれまでの講座の中で紹介してきました。いかにして意思の疎通をはかり課題解決に向かうかは、復興事業や地域創成事業を推し進めるには実際の事業以上に最重要課題で、そこに新たなコミュニケーション能力が求められることになるのです。

今回、岩井氏が紹介したのは"ホールシステムアプローチ"という手法です。「全体で考えて、課題解決に取り組み、組織改革を行おう」という発想のコミュニケーション手法ですが、岩井氏はこれに「困難な問題を解くためのコミュニケーション手法」と説明します。東北復興や地域創成に携わっている経験から、地域に存在する複雑な課題を解決に導く方法として利用されています。

ホールシステムアプローチにはAI(Appreciative Inquiry)、OST(Open space technology)、Future Search、World Caféという4つの手法があり、それぞれ目的別に用いられます。今回は、4つの手法の中からアイデアの積み上げに向くと言われている新たな対話型手法であるWorld Cafeを取り上げ、ワークとして体験することになりました。課題は「私のキャリアの未来」です。

どのように生きるかが見つかるWorld Cafeを体験!

この日のWorld Cafeは、次の4ステップで進められました。
① 問いの設定
② 1テーブル 4~6名
③ 20~25分の話し合い(×3)
④ 各テーブルにホストを1人残して、ほかの人は他のテーブルに移動

①の「問いの設定」はWorld Cafeを進める上で最も重要と岩井氏は指摘していました。今回は岩井氏が用意し、参加者に示したのは次の3つの質問です。
1.今、どのような社会にいますか? その中でどのような仕事、役割を担っているでしょうか。
2.人生を終わる時に達成していたいことは何ですか?
3.あなたはこれからどのようなキャリアを積みますか?

テーブルの上にはこれらの質問や参加者の発言に対する意見などを書き込める大判の模造紙とポストイット、そして多色のマーカーが用意されています。参加者はここに、対話を進める中で気づいたことやアイデアなどを書き込んでいきます。

3つの質問はワークの進度に応じて順次示され、最初の質問は②の最初のメンバーが決まり、自己紹介が行われたあとに出されました。各テーブルでは、この質問に沿って自由に意見が交わされます。このとき大切なのは、発言を否定しないこと。1つの発言から新たな気づきを得て、どんどん積み上げていく感じで対話は進みます。これを③で示した時間行ったところでメンバー交代(④)を行い、2つ目の質問が参加者に示されます。
2つ目の質問が示されたあとの各テーブルでの対話の進め方は、1つ目の質問のときと同じ。対話の予定時間が経過したらメンバー交代をして3つ目の質問へと移っていきます。

ここで3つの質問を並べてみてください。3つの質問には、岩井氏の深い意図が含まれています。

①「問いの設定」が重要であることは前述しましたが、3つの質問それぞれの性質と順番に注目してください。順番に見てみると、1つ目の質問には、これから考えてほしいことの入り口に立つ質問になっていることがわかります。次の、2つ目の質問は最終的に到達するイメージにつながる質問です。そして、3つ目。この質問は、質問1と質問2の間をつなぐ答えが求められています。つまり、今の状態から目指す状態の間をどのように歩むか――ここに深い気づきが生まれ、課題解決の方法などが得られる仕組みになっていることがわかります。

今回は、さまざまなキャリアの人が受講していること、World Cafeを初めて体験する人が多いことなどを考慮して、質問内容は一般的なものにしたと岩井氏は話しています。そして、実際のWorld Caféでは、もっと目的的な内容になるそうです。

事例紹介「イマジンまつど ~私たちの明るい未来をつくる~」(松戸市)

その後、具体的な事例紹介のスピーカーとして千葉県松戸市の総合政策部政策推進室に勤務する白井宏之氏が登壇しました。松戸市役所では「総合計画基本計画(後期)」の策定に多くの職員や市民の意見を反映したいという思いからホールシステムアプローチを用いたのだといいます。その取り組みは「イマジンまつど」と呼ばれています。

取り組みの最初は、職員への松戸市の強みや将来ビジョンについてインタビューからスタートし、得られた職員の思いや考えは庁舎内で共有。次のステップでは意見共有できた職員が庁舎を出て市民に直接インタビューするという方式で市民の考えや思い、アイデアを収集していったのだといいます。 こうして集められた意見や思いを元に松戸市の未来に対する共有ビジョンを作り上げる活動ができたと紹介していました。

参加者の感想と今後の実践に向けて

ホールシステムアプローチという手法を今回初めて経験するという受講者も多くいました。今回の講習では、その中の1つであるWorld Cafeというアイデア生成に適した手法を体験したわけですが、多くの参加者からは有用性を認める肯定的な意見が多く聞かれました。
「いい方法と思う」「声の大きい人の意見で決まりがちな傾向を改善できる」「面白い方法だ」。しかし中には、「プレ講座で扱う意味が分からない」という懐疑的な意見を付け足す参加者も。

ホールシステムアプローチは、複雑化した現実の地域課題に直接接して初めて理解できる手法です。シンプルにモデル化された1度きりの体験で、手法の有用性の活用できる状況まで理解するのは難しいと思われます。しかし、今回体験した手法を今後の講義や実践の場で繰り返し体験することで、その理解は深まっていくのではないでしょうか。この後の各コースで、この手法が力を発揮するに違いありません。


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