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【レポート】CSV実践に向けた、各人の「最初の一歩」とは

丸の内プラチナ大学CSV実践コース DAY8(2017年11月2日開催)

「セカンドキャリアで地方創生に関わりたい」「ビジネスを通して社会貢献をしたい」――ビジネス一辺倒だったオフィスワーカーが、ソーシャルアクションのために一歩踏み出すための学びの場。それが丸の内プラチナ大学「CSV実践コース」です。昨年のコースでは、CSV=Creating Shared Valueの概念や実践例を学ぶことが中心でしたが、第2期では具体的な「第一歩」に比重が置かれています。

臼井氏「『何か行動を起こしたい』という、やる気の温度がちゃんとある人。どこで、どのようにはさておき、まずは最初の一歩を踏み出したい人に集まってもらった」 そう話すのは、講師を務める臼井清氏です。大手企業勤務時代から、働きながら社会活動も行う"ソーシャルリーマン"として名を馳せ、その後独立。マルチステークホルダーとの「共創」を進める「志事創業社」を設立しています。丸の内プラチナ大学では一貫して、ソーシャルアクションの「最初の一歩」を踏み出したい人を対象としたカリキュラムを担当しています。

11月2日にはこのCSV実践コースの最終回が開催され、受講生たちが「最初の一歩」を踏み出すためのビジネスプランを発表。またスペシャルゲストとして、ロート製薬・広報・CSV推進部長の河崎保徳氏を迎えての講演もありました。河崎氏は、東日本大震災後、会社に勤務しながら返済不要の奨学金を震災遺児に提供する「みちのく未来基金」を立ち上げた人物で、まさに「CSV実践」の先達の一人です。

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CSVアイデアのラインアップ

CSVアイデアのラインアップ

受講生達のビジネスアイデアの発表は、授業の前半と後半に分けて行いました。受講生は他者の発表に対する感想や意見、コメントを書き出し、授業後の懇親会で手渡す方式を取りました。発表は一人3分。短い時間ですが、思いの丈を込めた、熱量の高いプレゼンとなりました。

(1)キッカケ作りの三陸を食べる観光の会
......震災からの復興は進んでいるものの、勢いが停滞しつつある宮城県石巻市を活性化するためのプラン。牡蠣など「食べる」観光資源を活かした観光ツアーで交流人口を増加させる。また地元では観光資源をきちんと「生業」にできるよう計らっていく。

(2)コシコシの会
......「こども・シニア」「こころ・支援」から「コシコシの会」と命名。多世代交流型のソーシャルアクションで、双方にとって意義のある子どもとシニアの交流を促進する。NPOの設立も視野に、「収益性のめどはないが、年甲斐もなく"挑戦"したい」と意気軒昂。

(3)Voice of 障害者
......障害者やますます増加する高齢者のニーズをすくい上げて、メーカーやサービス会社へつなぐ事業。障害者・高齢者のニーズは「特殊」なものではなく、バリアを下げるという意味で汎用性は極めて高い。その付加価値を生み出す手伝いをする。

(4)迷走の日々を経て、いま。
......長くCSV、ソーシャルアクションに傾倒しており、常に「社内」か「社外」(退職含む)を天秤にかけて活動。現在は社内を選択し、SDGsの浸透のため尽力。今後、事業の評価軸にSDGsを入れるため、さらに活動していきたい考え。

(5)はじめの一歩、これから
......企業、NPO(ソーシャルセクター)、一般家庭をつなぐプラットフォームを構築する。一般家庭の不要物を換金しNPOを支援、NPOを企業につなぐ支援等、さまざまな形の活動を想定。「役に立ちたい」という気持ちを無駄にしないよう、心を大切にする

(6)スクールコンサルタント "財務から教育まで学校まるごとコンサル"
......銀行勤務、支店経営のノウハウを活かし、学校の経営コンサルティングを行う。教育カウンセラー、キャリア教育コーディネーターの資格も取得。学校事務長経験も6.5年あり、財務も学校経営も分かるコンサルトして、学校の中長期に渡る経営を支える。狙いは経営改善ではなく、教育改革。教育の質の向上で、学歴偏重ではない本当の人材教育を実現したい。

(7)So・du・tor(ソデュトル)
......Social、Educational、Vectorからなる造語。労働法と社会貢献活動を教える「ソデュトルプログラム」を考案、臨床心理カウンセラーとして、社会教育を実践する。目指すは「CSV実践家」の育成。「みんなで楽しく漕いでいく」と謳う臼井流CSV教育を普及、実践していきたい考え。

(8)こころが満足する仕事
......福島県会津若松市、会津地方をモチーフに、地場の伝統産業・工芸と、地元大学に通う大学生をつなぐマッチングビジネスを立ち上げる。経済合理性とは違った視点からの就職活動支援となり、地方にとっては新産業創出や雇用促進などにつながる。

東北の子どもたちのリアルな姿とは

スペシャルゲスト・河崎氏の講演のタイトルは『CSVを通じた社会インパクト創出と組織変革の歩み』です。氏が「みちのく未来基金」を立ち上げ、運営してきた中で得た気づきと、それを企業に持ち帰って、どのように活かそうとしているのか。その経緯を語ります。

河崎氏は発災後、社命を受けて震災復興支援室室長に就任。東北の復興に従事します。「阪神大震災では道路はきれいになったが、人が元気に、幸せになる本当の復興ができなかったという忸怩たる思いがあって、神戸でできなかったことをやろう、社長からやってくれ、と言われた」(河崎氏)

氏が取り組んだのは、震災遺児をはじめとする子どもたちの支援でした。
「親を失った子どもたちの目は、宙に浮いているんですよ。おそらく戦争でも起きない限り、忘れることのできない惨事が起きていたということなんです」(同)
震災復興、まちづくりが長期的に持続していくためには、若い人たちが、医師や美容師、技術者、エンジニアなど、まちに必要な職業人になってもらわなくてはなりません。しかし、親を失った子どもたちにはその手がかりすらない状態。
「学校によって授業料は違うのに、国の公金でできる支援は一律で、でも夢の重さは一緒のはずじゃないですか。だから合格通知だけ持ってきなさい、お金はおっちゃんたちが出すから、と返金不要の奨学金を出す基金を発足させた」(同)

無謀とも言われる中、高校生たちが進路を決めるリミットが9月であったため、わずか2カ月で協力者を募り基金を設立。家を離れてしまうと幼い弟や妹の面倒を見る人がいなくなってしまうという理由から進学を諦めてしまいそうな子たちには、学校の先生たちにも手伝ってもらいながら励まし、未来のため、まちのために進学するよう促したこともあったそうです。
「家族のためにウソをついて夢を諦める子たちがいっぱいいた。でも、弟や妹が大きくなったときに、自分たちのためにお兄ちゃんが夢を諦めたと知ったら、一生重荷を背負うことになるんだよ、と背中を押してあげられるのは、近くにいる愛を持った大人たち、先生だけだった」(同)

2017年8月までに、みちのく未来基金6期で638名の子たちが奨学金の給付を受け、夢に向かって励んでいます。基金は、発災時にはお腹にいた子たちが、大人になるまでの25年間継続する予定です。

「この奨学金を受ける子たちは、みな2つの事を言う」と河崎氏。
「一つは『復興のために役立ちたい』ということ。もうひとつは『人のために役立ちたい』。17、18歳の子どもたちがですよ。 50過ぎたおっちゃんたちは自社の売上のことしか気にしないのに、この子たちのほうがよっぽど大人じゃないか、そう思いました」(同)

企業活動は何のため?

子どもたちはもちろんのこと、東北復興で活躍する大人たちもまた、「生き生きと、目がキラキラしていた」と河崎氏は振り返ります。
「みな素晴らしい活動をしながらも、お金はなくて、でもキラキラしている。共通しているのは、人を見て、未来を考えていること。だから失敗しても諦めない。いつも意識は外に向いて、誰かのために生きようとしている。感謝と尊厳を持った人たちだった」(河崎氏)

一方、4年経って会社に戻り、周りの人たちを見て「愕然とした」。
「みな忙しがって、まずは四半期の売上のことしか考えない。常に自分が主語で、誰かのため、という意識がまったく失われてしまっていた」(同)
河崎氏自身、かつては売上を出すことのみに邁進し、それに疑問を抱くことはなかったそう。しかし時代は変わり、右肩上がりに成長していく資本主義経済はすでに成り立たなくなっている。
「かつてのように毎年プラス5%の成長をしていくことはできなくなった。逆に人口は減少し、毎年2%ずつ経済はシュリンクしていく。この減少分は『創意工夫で』、『イノベーションで』なんていうが、そんなことできるわけがない。この7%のギャップが日本社会が疲れていく原因になっていることに、気づかなければいけない」(同)

河崎氏は、この閉塞した状況を打破する答えが、東北の子どもたちから教えられた「人のため」「社会のため」という言葉から見出すことができたと話し、企業が実践しようとしたら、それは一言でいえば「CSV」ではないかとしています。
「CSRだと余剰な利益がなければできないが、CSVならビジネスとして実践することができる。お金以外の価値を、ビジネスを通して実践し実現すること、それがCSVではないか」(同)

そして、企業がCSVを実践するうえで重要なポイントを、「自社の社会的価値を理解すること」と指摘し、そのために外部との強力も必要であるとしています。
「地方では自分たちの地域の魅力に気づいてないなんて言うが、実は企業も一緒。どんな社会的価値があるのか、本当に理解している社員はとても少ない。自社の何が『人の役に立つ』のか? これは自社内部だけで考えても分からない」(同)

そして、見出した自社の価値を社会課題解決へうまく落とし込みますが、ここでも他社との協業が必須です。河崎氏はロート製薬が交通会社と協業して健康データセンシングと分析を行い、まちづくりに活用している例などを紹介。「技術を囲い込むんじゃなくて、それっておもろいやん!というつながりが、イノベーションを起こしていくことにつながるんじゃないか」と、協業・共創の大切さを指摘しています。

「よく業界の2位と3位が合併して1位になった!とか言うじゃないですか。でもそれになんの意味があるのか。日本の製薬会社全部合わせても、世界1位の会社と同じくらいの規模しかない。これからは違う軸で行かないとダメじゃないのか。50年後に何を残すのか。未来への希望をどうやってつないでいくのか、考えなければならない時代に来ていると思う」(同)

河崎氏はそう話し、ロート製薬が今取り組んでいる新しい価値を創出する事業の例を紹介し、締めくくりました。

未来に向けて「最初の一歩」から

カリキュラムを終えての懇親会では、発表の感想や意見を交換しあう受講生たちの姿が見られました。お互いの思いを聞いての交流は、この後の「最初の一歩」を踏み出すための良い刺激になるに違いありません。

講師の臼井氏は、今期を終えての手応えを「一歩進む温度が生まれていたのでは」と見ています。
「こういうコースでは、集まって学んでよかったね、で終わってしまうことが多い。しかし、今期はアクションを意識した講義も行い、一歩への温度が高まっていたと感じた」(臼井氏)
実は、最終回に各自の発表を行ったのも「最初の小さな一歩は『人に言うこと』」(臼井氏)だから。思いを密かに持ち続けることも大切かもしれませんが、公言することで実現に近づくこともまた事実でしょう。
「言うことで、共感が得られれば仲間も増える。逆に共感から仲間が得られないようでは、実現にはまだまだ距離があるということでもある」(臼井氏)

丸の内プラチナ大学の構想が立ち上がったのは2014年頃のこと。当時からすると、熱い思いをもって「ビジネスで社会貢献しよう」と考える人がこんなにもいるとは、まさに隔世の感があるといったところでしょうか。時代が進むのは早い。この流れに遅れないよう、みなさんも「最初の一歩」をぜひ踏み出してください。


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