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【レポート】「月末金曜」から始める ちいさな働き方"意識"改革

「プレミアムフライデーを考える」~時間の使い方をデザインする~ 2018年6月22日(金)開催

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「働き方改革」を進める上で、労働時間の見直しは、多くの企業が抱える課題。その解決策の一つとして、2017年から、政府と民間企業が連携している取り組みが「プレミアムフライデー」です。月末最後の金曜日に15時の退社を推奨し、いつもと違う豊かな週末を過ごすことを提案しています。

取り組みの開始から1年。時間の有効活用にワークライフバランスの改善や、経済効果を期待する声もある一方で、実際に効果はあるのか、定着するのかといった懐疑的な声も。

この日は、プレミアムフライデー発案当時、経済産業省でプロジェクトの立ち上げに関わった住田孝之氏(内閣府 知的財産戦略事務局長)と、プレミアムフライデーのロゴを手掛けた小西利行氏(POOL inc.ファウンダー、コピーライター/クリエイティブ・ディレクター)、さらに新たな時間の使い方として「明るい逆参勤交代」を提唱する松田智生氏(三菱総合研究所 プラチナ社会研究センター 主席研究員)をゲストにトークを実施。 参加者もテーブルを囲み、自身の働き方や時間の使い方について意見を交わしました。

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「早く帰れる金曜日」の一歩先行く"構想力"

「早く帰れる金曜日」の一歩先行く"構想力"

イベントが開催されたのは、翌週に「プレミアムフライデー」を控えた金曜の夜。 有意義な時間の使い方を考えようと多くのビジネスパーソンが集まりました。

ゲストトークがはじまる前に、参加者はまず、テーブルごとに「プレミアムフライデーについてどう思うか?」を書き出してみることに。

ふせんには「明るい時間から遊びにいくぞ!というワクワク感がある」「毎月末、全国的にお祭りのような雰囲気が生まれた気がする」といったポジティブなものもあれば、「業種によっては月末金曜は休みづらい」という意見も並びました。

参加者がそれぞれに思う「プレミアムフライデー」がボードに貼り出され、イメージの共有ができたところで、トークイベントが開始。

一人目は、内閣府 知的財産戦略事務局長の住田孝之氏。「月末金曜にこだわらず、月に一度でも良い。いつもと違った場所に身を置いてみる、楽しいと思えることを満喫する時間を作ってみてほしい」と、当時、経済産業省でプレミアムフライデーの推進に取り組んだ経験から想いを語りました。

景気対策の一つとして発案された側面もあり「お給料が出る月末に、自分にご褒美感覚で楽しく消費をしてもらおう」という意図もありましたが、さらにその先にある狙いは「イノベーティブな人材の創出」だったのだそう。

「あらゆる物で溢れかえる21世紀。消費者のニーズはどんどん複雑化してきています。そこで必要とされるのが、情報とテクノロジーとを組み合わせて、新しいサービスやビジネスモデルをデザインする構想力なのです」と住田氏。

構想力を育てる鍵は「楽しいと思えるかどうか」。住田氏は「自分で考えたり、好奇心を持ったり。楽しいと思えれば自発的に学ぶし、発想もどんどん広がる」とし、「仕事場ではなく、自宅などのプライベートな空間でもない<第三の場所>。仕事モードから解放され、ユーザー視点で物事を体験する<第三の時間>。プレミアムフライデーをきっかけに、そんな場所と時間が生まれることで、一人ひとりの「楽しい」を発見してもらえれば」と期待を込めました。

「話題にしたい」がアイデアを加速させる

続いて登壇したのは、コピーライターの小西利行氏。 プレミアムフライデーの発案からプロジェクトに参加し、ロゴマークをはじめとしたコミュニケーションデザインを手掛けました。

「コミュニケーションのデザインとは『ファンクション(機能)をデザインして、ストーリーで拡散していく』こと。ストーリーは人々が『話題にしたい』と思うことから発想していきます」と、小西氏。

その上で、プレミアムフライデーを「メディアでは消費の側面がクローズアップされた」と振り返り、「結果的にものすごく拡散された。『あんな施策、終わってるよ』なんていわれながらも、インターネットの検索ワードは常に上位。みんな関心はあるんです」と分析します。

取り組みが開始してから1年が経過し、その認知度は97%ともいわれているプレミアムフライデー。じつは、当初は「イノベーションフライデー」というネーミング候補も検討されていたのだとか。 小西氏は「もしそのまま決定していたら、こんなに話題にならなかったかもしれません。最初はプレミアムくらいざっくりした名前のほうが、経済界も賛同してくれるだろうと思った」と明かしました。

一方で「プレミアムフライデーを有効に活用している企業や人はたくさんいるけれど、なかなか表には出てきにくい」と今後の課題も提起。「だからこそ<第三の場所><第三の時間>の次に育てるべきは、組織の枠を越え、人と人とをつなぐことでイノベーションを起こす<サードパーソン(第三の人)>」と、その必要性を説きます。

「今日、3×3lab Futureに来られたみなさんも、次回は他の誰かを呼んで参加する、といったアクションからでもいいんです。誰かと誰かをつなぐという役割を意識する人が増えることで、個々の能力がどんどん紐付き、広がり、新しい発想を生み出していってほしい」と呼びかけました。

人生の幅を広げる サステナブルな働きかたとは

ここまで「プレミアムフライデー」の立ち上げに関わった二人のトークから、自由な時間や場を活用したイノベーティブな思考について考えてきた参加者。

最後に登壇した三菱総合研究所の松田智生氏は、地域活性化を専門にした企業や自治体のアドバイザーを務める、40〜50代を中心としたビジネスパーソンを対象にしたキャリア講座「丸の内プラチナ大学」の副学長。自らが提唱する『明るい逆参勤交代』という「期間限定で都市部から地方に写ってテレワークをする」新しい働き方を紹介しました。

「江戸時代の参勤交代では、地方と江戸を結ぶ街道や宿場町を通じてヒトや金、モノの流れが生まれました。逆参勤交代が広がれば、サテライトオフィスや住宅などの投資が増え、滞在者は生活や余暇のために消費もします。週に数日は地方のために働けば、地方創生にもつながるはず」と、その展望を語ります。

さらに、松田氏は「パソコンやスマホがあれば、どこでも仕事ができる時代。ゆとりを持てる環境で集中できれば、育児や介護との両立も考えやすい。地方活動は副業やセカンドキャリア、定年後の生活を考えるきっかけにもなる」と続け、「会社員、企業、地方にとって『三方一両得』を目指せると思う」とアピールしました。

今後の具体的な取り組みとしては「丸の内プラチナ大学」の講座で、3泊4日の逆参勤交代トライアルを実施。地域活動もあわせて体験する予定で、岩手県八幡平市では高齢化対策や別荘地活用、茨城県笠間市では芸術の街づくり、熊本県南阿蘇村では健康増進をテーマに、それぞれ課題解決を考えます。

「できない理由や抵抗感はあると思う。関心があっても、職場に『出る杭は打たれる』の雰囲気があれば躊躇するのも分かる」と、松田氏。「住んでいる場所や出身地以外に、愛着のある町ができることは、働き方だけでなく生き方の改革にもなるはず」と取り組みに参加する意義を語り、トークを締めくくりました。

トークの後は、質疑応答のコーナーに。参加者からは「投資対効果をどう捉えるべきか」という経営者視点の問いかけもあれば、「上司が働いていると休みにくいので、管理職のためのプレミアムフライデーがあったらいいな」といったアイデアも飛び出しました。

最後には交流会も行われ、彩り豊かなデリを食べながらの和やかな雰囲気の中、多くの参加者とゲストが意見を交わす姿も見受けられ、自身の働き方を考える上でたくさんのヒントを得ることができたイベントとなったようです。


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