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【レポート】ごみと私たちの20年後

ごみじゃぱん×エコッツェリア協会「20年後の暮らしからごみを考えるWS」 5月30日(月)

ごみゼロを目指して

5月30日は人類にとって重要な日です。――それは「ごみゼロ(530)の日」。

何をおおげさな、と思われるかもしれません。しかし、ごみの問題は単なる環境問題に留まるものではありません。社会の静脈であるごみ問題解決の成否は、実は人類存亡に直接的に関わるといっても過言ではないのではないか――そんなことをまざまざと考えさせてくれたのが、まさに"5月30日"に3×3Lab Futureで開催された「20年後の暮らしからごみを考えるWS」でした。

主催は、神戸大学の経済学部の石川ゼミから発生したNPO「ごみじゃぱん」(エコッツェリア共催)。タイトルどおり、20年後のリアルな未来を通して、ごみゼロを目指す方法を考えるワークショップを行いました。

この日は12名のNPOのメンバー(神戸大学学生)、同NPOとエコッツェリアの呼びかけで集まった20名あまりの企業人、環境問題に取り組む人々などが参加。前半はワークのためにインプットトークを実施。神戸大学大学院経済学研究科教授、NPOごみじゃぱんの代表理事を務める石川雅紀教授、同NPOの11期生幹事・神戸I大学経済学部3回生の森川桃子氏、三菱UFJリサーチ&コンサルティング研究員の松岡夏子氏の3氏が登壇しました。

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未来はリデュースにかかっている

未来はリデュースにかかっている

最初に登壇した石川教授は、今回のワークショップの背景と全体的な概要を紹介しました。もともとごみじゃぱんは商品のパッケージ・包装を減らすこと=減装(へらそう)の社会実験を通して、新しい社会のフレームワークを構築することを目指す活動をしています。「リサイクルやリユースではなく、リデュース」と石川教授。2006年に発足し、大学のゼミ生が中心になって活動してきました。メンバーが学生なので毎年半分ずつ入れ替わる団体であるにも関わらず、減装への参画企業の増加、減装ショッピングの推進など大きな成果を上げています。

そんなごみじゃぱんが今回東京でワークショップを開催したのは「ごみの発生抑制に10年取り組んできたが、次のステップに行くために、新しいインプットを希望」しているためです。3×3Lab Future、エコッツェリア協会が連携する企業人、団体メンバーなどのリソースに期待してのワークショップ。ごみを減らす、つまり「ごみを出さないようにする」ためのアイデアを、ワークショップから拾い上げるのが今回の狙いのひとつです。

石川教授そのアイデア創発のための「基本的なクエスチョン」は「"20年後を考える"」なのが今回の設定です。それは、20年後に「日本のごみ処理能力に限界が来る」からです。「リサイクル法の施行などによって、ごみ収集量は減ることは減っているが、その一方で出ることは出ており、20年でごみ処理場(埋立地)は飽和することが分かっている。国土の狭い日本では、新たな処理施設を作るのが難しいため、"ごみを出さない"ことがまず何よりも重要」なのです。
また、石川教授は、Nature 31 October 2013の記事を引用して、世界的にもごみが急激に増えていることを示し、「生活の質の向上と都市化によってごみが掛け算で増えていく」状況を示しました。

「ごみ処理が飽和しない20年後」の生活を考えるのが今回のワークの要諦です。しかし、「いきなり20年後を考えるのは難しい」ので、「過去を振り返ることで未来を考えるヒントにしてほしい」と60年前、40年前、20年前の「買い物行動」におけるポイントの解説がありました。
例えば、スーパーがなく、市場へ買い物カゴを持って出掛けていた1960年代。かつてコロッケは肉屋で販売されていましたが、包み紙は新聞紙ではなかったでしょうか。スーパーと自動販売機は1960年以降「ものすごい勢いで」増加し、1970年に初めて登場したコンビニも追従するように爆発的に増加、人々の生活を一変させました。

「20年でこれほど大きく人々の生活は変わる。だから次の20年を考えるときも、現在の延長線上で考えては面白いものは出てこない。あらゆることが起こりうると思ってアイデアを考えてほしい」と石川教授。「実現性や現実性、妥当であるとかには縛られず、柔らかい頭で自由に考えて」と会場に呼びかけました。また、前提としての制約条件として「埋立地はゼロにする」「行政などの規制に頼らない」ことを挙げました。「法律的に禁止するのは簡単な話で、アイデアにはならない」からです。体制や制度ではなく、自分たちが参加できる社会システムとしての減装の仕組みを考えてほしいということなのでしょう。

20年で社会は大きく変わる

次いで登壇した、ごみじゃぱん11期生の幹事を務める森川氏(3回生)は、石川教授のインプットを受けて、20年後を考えるための「過去」についてのデータを提示しました。

森川氏石川ゼミ、ごみじゃぱんでは容器包装ごみに関したデータを収集しており、その種類は12ジャンル100項目にも及んでいます。人口動態、家族構成などの変化、企業活動の変化・推移、娯楽の変遷。食生活、消費食材の変動、人々の働き方等々、一見ごみと関係ないかのようにも思える項目にまで及んでいます。これを見て気付かされるのは、およそ人の活動に関して、ごみに結びつかないものは何もない、ということ。ごみの姿とは、社会の姿の裏返しでもあるのです。特に現代社会においては。これらのデータはディスクに収録されて、参加者全員に配布もされました。

森川氏は、こうしたデータの中から、象徴的な事例の幾つかを紹介しています。例えば供給される純食料(直接消費可能な食材)の量変化で、1960年に15kg/年/人だった肉類が、2015年には82kgに上昇、魚類と逆転した事例を示し、「肉のほうが生ごみの量が少なく済む」という利点があることを説明。にも関わらず「家庭ごみが増加の一途をたどっているのは、冷凍食品の消費量が増加しているかもしれない」ためで、これは取りも直さず「自炊が減って、家庭での容器ごみが増加している」ことを示しているのだそう。

また、食料支出における外食比率が、1960年代の7%から2015年の17%に上昇していることともに、「食品ロス」が3360万トン/年にも及んでいること、また、神戸市を例にとって、一人あたりのごみ収集量が、1950年代の0.5kg/年から、2000年代には1.7kg/年に登っていることを指して、収集量ベースでごみが減っていない現状を説明しました。

そして、「コンビニの数は20年で倍になった。テレホンカードはなくなり、携帯電話の普及率が高くなった。20年で想像もできなかったようなことが起こりうる。この先の20年でごみが増えるか減るかは、一人ひとりの選択によって変わるのではないか」と締めくくりました。

世界的に進行するごみ問題

最後のインプットトークは三菱UFJ R&C研究員の松岡氏。氏は「戦後日本のごみの変遷 容器包装や食品ロスがどのように変化してきたか」と題し、日本、世界のごみ問題の現況をレポートしました。氏は葉っぱビジネスの徳島県上勝町で、34種類にもおよぶごみ分別で「ゼロウェイスト」に取り組んだ経歴の持ち主ですが、ごみ問題に取り組んだそもそものきっかけは、大学時代に「新聞記者になりたくて」香川県豊島の廃棄物問題に関わったこと。その時に島の人から「なんで第三者的立場なんだ?」と問いかけられたことをきっかけに、「自分自身の問題として」ごみを考えるようになったそうです。ちなみに豊島は廃棄自動車等の産業廃棄物の不法投棄が問題になりましたが、1970年代後半に不法投棄が始まり、1990年代に経営者が逮捕されるまでにもたらされた土壌汚染は、700億円の公費を投じて処理に当たるも、2016年現在も解消・解決しておらず「最初の処理方法を間違えると、その回復のためにこんなにも膨大な時間とお金がかかる」と話しています。

松岡氏また、ごみの問題を歴史的に見ると「都市化で問題化する」と指摘。「ちょっと前までの日本でも、ごみは庭先で燃やしていたものだった。都市化が進むとごみを燃やすこともできず、その辺に捨てておくこともできず、居住地の外へ運ぼう、というのが最初の対応策だった」と松岡氏。日本の場合、江戸時代に顕著に問題化しましたが、トルコやインドネシアでは、今まさにその問題が進行中であり、トルコではイスタンブールから離れた黒海沿岸が巨大なごみ捨て場になっていると写真も紹介しました。

また、経済成長とともにごみの量が増加することも指摘。日本では1950年~1960年代に「ごみ戦争」が東京で起きました。ごみの質も大きく変化します。紙類、生ごみ、プラスチックごみの増加などがそれです。松岡氏は京都市の収集ごみの質の変化を例に上げ、1950年からの50年で、紙類がおよそ8倍の33.8%、生ごみ類が約1.8倍の38.2%、プラスチック類は0.1%から13.9%に上昇していることを示しました。

こうしたごみの変化に対して日本が取った施策は「ごみは燃やして容積を減らしましょうだった」と松岡氏。「かつては日本国内に、世界の2/3に当たる1700基に上る焼却場があった」。これは日本の国土が狭いため、焼却で減容化することが目的で、「アメリカなどの土地のある国では必要がなかった」施策でもあったそう。しかし、その後「ダイオキシンの問題が発生し、燃やせないとなった。じゃあどうしよう、と始まったのがリサイクルだった」のです。

日本は環境意識が低いとも言われますが、世界的に見るとリサイクルのための分別数は多いようです。「アメリカでは先進的な地域でも、担当者は『ファンタスティックスリー』と誇っているが、3種類の分別しかしていない。一方の日本では平均11~15種類の分別をしており、ビン・缶類は9割以上、プラごみは75%以上回収している」。しかし、「処理費用が高く、全国で年間700億円の税金が投入されている。できるだけお金がかからない処理方法が期待される」のも現状なのです。

また、今回のワークのための「20年後に向けた論点」として、①ごみを持っていく先がないという問題は継続するか ②焼却処理場の更新時期の到来 という2点を挙げています。①については、現在の東京都の処理場残余量は一人あたり1.8立方メートルであり、今後も間違いなく続くだろうとしています。また②については、更新に当たって、地域住民の反対運動が起こることを懸念しています。

さらに詳細な個別の論点として、①高齢者の増加=ごみ分別の困難増加 ②減装の可能性 ③食品ロスの課題を挙げました。特に③の食品ロスは「もっとも対策が遅れている問題で、リサイクル、リユースも難しい」。しかし、「成分分析をすると、食べ残しは16%で、買ってそのまま捨てているのが22%もあることが分かっている。工夫すれば減らせるのではないか」と提起して締めくくりました。

広範なごみ問題にアイデアは出るか

その後休憩を挟んで、本格的なワークに取り組みました。まず最初に各テーブルごとにフリーテーマでアイデア出しと議論、その後に「作り手」「売り手」「買い手」の3つの立場に分かれ、それぞれの立場で有効なリデュース方法を考えるワークへと移ります。この分担は、必ずしも本当にその立場でなくてもよく、「その立場で考えてみたい」というスタンスでもOKというものでした。

後半のテーマワークは40分以上に渡って行われました。各テーブルに学生も参加していることもあり、多様な視点が入った議論は熱が入り、さまざまなアイデアが出されているようでした。しかし一方で、ごみの問題は「作り手」「売り手」「買い手」に別れたとはいえ、非常に広範な内容を含むものであり、多種多様なアイデアが出はするものの、絞り込み、落とし込んでいくことに苦労しているグループも多いようでした。

長い議論の後、各テーブルから学生が代表して話し合われた内容を全体シェアしました。「売り手」のテーブルでは、「コミュニティを強化することが減装につながるのでは」とし、リターナブル容器の充実やその管理システム、共通冷蔵庫付きマンションの開発などを発案。「作り手」のグループは「外食産業の強化」によって減装できるのではと提案し、「買い手」のテーブルからは、「ライフスタイルの変化、教育がこれからの課題なのでは」という内容が提示されていました。

今後も3×3Lab Futureでごみを考える

ワークの後、懇親会が行われていますが、「食品リサイクルループ認証」を取得している「中部有機リサイクル」が扱う野菜、肉を使った料理が提供されました。これは、食品残渣を肥料化し、その肥料を用いた食品生産をする制度で、世界的にも珍しく、評価も高いものだそう。

イベント後の取材に答えて、ごみじゃぱん事務局長の小島理沙氏は「思ったよりも突拍子もないアイデアが出てこなかったという感触はあるが、ごみ問題を自分事にしてもらえたと思う。大丸有のリソースを生かして、次回はさらに多彩な人材、アイデアマンが集まってほしい」と語りました。また、11期生幹事の森川氏は「企業の人との交流で、学生だけでは思いつかないアイデアや考えを教えてもらえた」と、企業を交えたワークが非常に大きな成果を上げたと語っています。

石川教授は、乾杯の挨拶で「ワークショップが成功したかどうかは雰囲気で分かるが、今回は、皆が乗り出すように議論しており、言うまでもなく成功だった」と話し、次回以降も3×3Lab Futureで開催できればと期待を語っています。また、3×3Lab Futureについては「今後さらに大丸有エリアの企業人の参加に期待したい」としつつ、会場のスタッフィングや運営の確かさについて触れ、「運営をお任せすることが出来て、こちらは内容に集中できた。こんなに素晴らしいことはない。実にハッピーだった」と大絶賛でした。

繰り返しになりますが、ごみ問題は社会の問題そのものです。今後も企業、大学、NPOが連携した、ごみじゃぱんのようなごみ問題への取り組みが、3×3Lab Futureで展開されることに期待したいと思います。


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