イベント特別イベント・レポート

【レポート】未来づくりビジネス、大手町からはじまる

「未来予測ブリーフィング」第1回 6月3日(金)開催

共通認識づくりの最初の一歩

2015年度の第5回CSV経営サロン・セミナーで登壇した田中栄氏が代表を務める、株式会社アクアビット発行の『未来予測レポート』とは、その名の通り"社会の変化から将来を予測する"というものですが、同時に将来の会社やビジネスのあり方を考えるための"思考のフレームワーク"でもあります。最新版『未来予測2015-2030』では、"クラウドロニクス"を中心に据え、さまざまな社会の変化を描き出しています。日本の名だたる企業が軒並み導入しており、高い評価を受けています。

また、『未来予測レポート』導入企業を対象にした「未来予測コミュニティ」には、新ビジネス創発に燃えるギラギラとしたビジネスマンが集まりますが、参加前提条件が「未来予測レポートを十分に読み込んでいること」。どんな変化が起こるのか、そしてそれはどんな未来をもたらすのか。その共通理解をもとに新しいビジネスを興したいという人々が集まっています。

6月3日、3×3Lab Futureで開催されたビジネス創発コミュニティ「未来予測ブリーフィング」は、未来予測レポートを軸にしつつも、「未来予測コミュニティ」よりもハードルを下げ、「未来予測を知り、ビジネス創発のための仲間を作るところからスタート」しようというものです。東京、名古屋、京都での開催を予定しており、東京では6月3日を皮切りに来年3月までの全6回を予定しています。この日はエコッツェリア協会、アクアビットの呼びかけで集まった40社の参加者が未来予測の世界を体験しました。

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大丸有をイノベーションシティに

大丸有をイノベーションシティに

アクアビット・田中氏

そもそものきっかけは、昨年度のCSV経営サロンでした。2月のセミナー回のインプットトークにアクアビットの代表取締役、田中栄氏が登場し、未来予測の考え方と未来予測コミュニティの概要を講演。この時に、大丸有をイノベーションシティにするために「未来予測を軸にした勉強会をしたら良いのでは」と田中氏からの発案があり、この「未来予測ブリーフィング」につながっています。

「なぜ大丸有でやるのか。やらせてほしいと思ったのか。それは、日本の中心である東京、東京の中心である大丸有から、新しいビジネスが立ち上がる場所を作りたいと思ったから」で、具体的には「シリコンバレーのようにベンチャーが創発され、インベスター(投資家)の注目が集まる場所になる」ことと田中氏。「日本が豊かになるには、海外のお金を持った人が、お金を使いたいと思える街にすること。夢は1兆円規模のメガベンチャーを大丸有から生み出すこと」と語ります。そしてベンチャー企業の「WhatsApp」が190億ドルで買収された例を挙げて、「収益は高くなくても、将来性で時価総額が高くなるベンチャー企業」を生み出すことが重要であると指摘しました。

CSV経営サロンから引き続き本イベントにも企画から携わっているエコッツェリア協会の平本真樹氏は、同協会が「エコをまちづくりに活かしてきた」ことに触れ「今後さらに価値あるまちづくりに向けて、エリア内企業が連携を図る場を作り、イノベーションシティ構築の動きをアクセラレートしていきたい」と希望を語ります。大丸有に籍を置く企業が基本的なターゲットではありますが、「この街だけに留まるものではない。それ以外の企業にも参加してもらい、学んだことをこの3×3Lab Futureにどんどん蓄積していきたい」と、今後のブリーフィングへの参加も呼びかけました。

未来予測のアウトライン

主要概念のひとつ、クラウドロニクス

その後、ブリーフィングの第1回として、未来予測の全体像を捉えるために、田中氏から、『未来予測2015-2030』で語られている今後15年における3つのメガトレンドのレクチャーがありました。

まず、そもそもなぜ未来予測が今必要なのかという認識をシェア。これは「中長期戦略立案、ビジョン構築のための共通認識を持つため」の情報の集積であるとともに、「今どうなのか」「今後どうなるのか」を理解するためのもの。この共通認識は、社内だけではなく、会社、業界の枠組みを越えて持つ必要があると田中氏は語ります。何故か。それは「どの業界でも、自分たちの仕事をしているだけでは10年保たないという状況」になっているからです。50歳を迎える田中氏が社会人になったころは、「"大企業に入っておけば安心だ"と誰もが言っていた」。しかし、蓋を開けてみれば、そんな人々が今やリストラの憂き目にあう。「日本を支えてきた企業が軒並み"10年保たない"とつぶやく、そんな時代」。だからこそ、未来予測をベースに集う異・多業種の仲間が必要なのです。

未来予測レポートを出すだけで終わりではなく、未来予測コミュニティというビジネス創発コミュニティを作り、本当にビジネス創発するまでが"未来予測"の本当の姿。実際、昨年は未来予測コミュニティから新ビジネスがローンチしており、今後さらに発表される予定だそうです。

「このブリーフィングも目指すところは同じ」と田中氏。違うのは仲間をこれから作りたい人、未来予測のエントリーユーザーが対象である点だけ。今回解説された3つのメガトレンドは、未来予測を理解するための基本的なおおよそのアウトラインとなります。

メガトレンド①――クラウドコンピューティング

音声認識ソフトの性能を実演してみせる田中氏

もっとも重要なメガトレンドが、ひとつ目の「クラウドコンピューティング」です。未来予測では、クラウドコンピューティングを主軸にした産業構造を「クラウドロニクス」と呼び、今後のビジネスの主流になると説いています。

その本質は、エンドユーザーが「デバイスではなく、システムを使う」ようになること。高速なブロードバンドを前提に、今やデバイスを通してスパコン(データセンター)を直接利用する世界になっています。ICTはPCを中心にした世界でしたが、クラウドロニクスは、IoTの世界であると換言することもできるかもしれません。

ここでの大きな変化は「"20世紀型"のプロダクト概念が崩壊し、新しいプロダクトが生まれる」ことと、「エージェント(AI+音声ユーザーインターフェイス)の重要度が増す」ことの2つです。テレビ、電話がスマホに収斂したように、クラウドロニクスによって既存の製品概念が崩れ、新しい製品群が誕生する可能性があります。また、AIについて「日本人はAIがまだまだ夢物語みたいな世界に思っているが、クラウドコンピューティングのどまんなかにある」と田中氏。IBMのワトソン、アップルのSiri、マイクロソフトのコルタナなどのエージェントは、センサ技術と集積されたビッグデータを背景に、「次世代のコンピューティングそのもの」になると言われています。その先には、言語バリアのない世界が広がっているかもしれず、また、働き方、暮らし方も大きく変わっている可能性もあると田中氏は指摘します。

メガトレンド②――ライフイノベーション

食料分野で話題に上ったアクアバウンティのサイト

2つ目のメガトレンド「ライフイノベーション」は、ゲノム解析を背景に、医療・食料分野で大きな変化が起こることを大胆に予測しています。

医療分野では、疾患の原因遺伝子が現在までで6000個発見され、エピジェネティック(DNAの配列変化によらない遺伝子発現)な作用については解明されてはいないものの「根治が可能になる」「予防医学がリアルになる」可能性が極めて高いと予測します。また、創薬が「化学」から「バイオ」に変わり、薬効は高いが薬価も高い製品によって、医療格差が増大する可能性があることを指摘。この動きは未来ではなく、現在すでに起こりつつあるもので、アメリカでは自己破産の6割が「医療破産」であることを紹介し、この流れがいずれ日本にも到来することになる、と予言しました。

食料分野においては、アクアバウンティ社の遺伝子組み換え鮭「GMサーモン」が、昨年11月にFDAの認可を受けた例や、今後さらに遺伝子操作された鶏などが市場に出回る可能性を指摘しています。

メガトレンド③――サステナビリティ

国際連合(UN)「World Population Prospects: The 2012 Revision」(2015年以降は中位予測)および国連人口基金東京事務所ホームページ掲載図を基に筆者(田中氏)作成)

3つ目のメガトレンドが「サステナビリティ」です。サステナビリティは「持続可能性」と訳され、環境問題やCSRとリンクした、なんとなくふんわりと優しいイメージを持つ言葉として日本では定着していますが、田中氏は未来予測でいうサステナビリティとは「足りないこと」であると定義します。「この先は、"足りないこと"が新しいビジネスの前提になる」というのです。

それは「爆発的な人口増加」からドミノ式に起きる水・食料・資源の欠乏がリアルになるということ。2030年には人口ボーナス期に入るインドが「もう1つの中国」になり、2050年には世界総人口は97億に達します。ここに経済成長がミックスされると「頭数以上にいろいろな物の消費が増え」、「お金を出せば資源が買えた時代」は終わりを告げるのです。 また、エネルギー使用量は、2000年比で1.8倍になることはほぼ確実で、将来に向けて「エネルギーをどう確保するか、エネルギーの安全保障が重要な課題になる」と田中氏。ちなみにシェールガスでは「エネルギー問題は解決しない」そう。それは掘るために大量の水が必要だからであり、世界的な水不足が深刻化する現代、そして未来においてはまったく現実的ではないのです。

こうした「不足」が新しいビジネスが生まれる現場になると田中氏は指摘します。資源の欠如から、車はガソリン車からEVへとスタンダードが変わりつつあるように、新しい産業構造の基軸が世界各地で生まれつつあるのです。

「素顔」を見るワークショップ

途中2回の休憩をはさみながら、濃密なインプットトークとなりました。Q&Aでも非常に鋭い質問が飛び交っています。中には田中氏が敢えて今日語らず「次回以降に言及しようと思っていた」という内容に踏み込むものもあり、「次回以降にご期待を」と言葉を継ぐ姿も。

インプットの後はテーブルごとにワークを行いました。テーマはテーブルごとに3つのメガトレンドの1つを割り振られています。しかし、話し合う内容の詳細には特に設定されておらず、各テーブルで自由に話し合う格好となりました。テーブルを覗くとポジティブなものもあればネガティブなものも入り混じり、一様ではありません。

このフリーなワークのやり方について、アクアビットの根田氏は「敢えてフリーにした」と話しています。「今日ここでのアウトプット(具体的な成果)は求めていない。まずこのブリーフィングに"どんな人がいるのか"を肌で感じるところから始めたい」。確かにテーブルワークで話す人の姿を見ると、その人がメガトレンドのキーワードをどう感じ、どうレスポンスしているのかが見て取れます。会社を背負っての発言かもしれないし、個人としての発言かもしれません。しかし、フリーテーマのためか言葉の端々から、その人の"素顔"が如実ににじみ出ます。表面上のお付き合いだけではない、本気のビジネスアライアンスを組むには、まず相手を知らなければ始まらない。エコッツェリアやアクアビットが掲げる本物の「人脈」を作るとはこういうことなのだと得心のいくワークショップでした。

時間が押したこともあり、30分ほどで全体シェアへ移りましたが、そこでシェアされた内容もさまざまで、実にバリエーションに富み、興味深いものでした。例えばあるテーブルでは、クラウドをテーマに新しいビジネスの可能性を語り合いましたが、別のグループではビジネスではなく、社会変化について話し合いました。また、別のテーブルでは、将来の食料危機と生命倫理という幅の広い、形而上学的な内容を話し合ったそうです。テーブルワークの後は、会場で懇親会も行われ、お酒も入ったフランクな雰囲気の中、さらに交流を深めていたようでした。

大丸有がイノベーション拠点になるために

本ブリーフィングが、CSV経営サロンを起点にしており、大丸有のイノベーションシティ構想を目指すものであるため、今後さらに大丸有に籍をおく企業の参画が期待されています。今回参加している中には、エコッツェリア協会の会員企業の姿も見られました。その何社かに今回のブリーフィングの感触を聞いてみました。

「今回参加している中で、IoT(での事業展開)に困っている企業が多かったが、それはうちも同様。今後メガトレンドが進行する中で、どう取り組んでいけば良いのか、具体的な意見交換ができてよかった」と話すのは、メーカー大手からの参加者。関西にも拠点のある企業のため、「東京開催、京都開催、どちらで参加するか悩んでいるが、継続して参加したい」。また、今後については、「いろいろ話せる"安心"を保証してもらえれば、さらに具体的な内容に踏み込めるのではないか。大きなことではなく、費用をかけずに小さなことからビジネスアウトさせ、エコシステム構築に向けた一歩を踏み出せれば」と期待を語ります。「他企業とのオープンイノベーション」というと聞こえはいいですが、現実はNDAを交わさなければ一歩も先に進めないシビアな世界も存在するわけで、その辺の安全の担保が課題のひとつになるかもしれません。

また、会員企業の大手建設会社からの参加者は、まず「同じ悩みを持つ同業企業と出会えたことがうれしい」とし、「建設業界においても、イノベーション創発のための仕組み、仕掛けといったソフト部分が求められることが多くなっている」ことを明かし、「そこへ向けて大いに刺激をもらう機会になった」と感想を語っています。今後、本ブリーフィングにほしいのは「人と人をつなぐ仕組み」。「お見合いを勧めてくる親戚のおばさんみたいに、参加者の悩みを聞くと、この人が良いよ、と教えて引きあわせてくれるような人。いわば"大丸有の母"」。いずれも不確実な未来に向き合うための刺激を大いに受け、同時に今後のアクションに対して期待できるという前向きな感想と言えるでしょう。

エコッツェリア協会・平本氏

「非常に高い熱量があり、これからのアクションに期待できそう。偶発性を高めるために、この会場以外の"オフライン"でのつながりにも期待したい。参加企業には、ぜひ積極的に持ちネタ、悩み、課題などを持ちこんできてほしい」とエコッツェリア協会の平本氏。

また、参加者同士を"つなぐ"機能について、各テーブルでのワークショップに加わったファシリテーターを「使ってほしい」と話しています。10名ほどのファシリテーターは、今後もすべての開催で同席し、ファシリテーションのほか、さまざまなアドバイスなどもするそう。しかもそういうことが「好きな人」が揃っているというのが心強い点。ここには、3×3Lab Futureの個人会員の姿も。
「仕事としてやっていただく以上に、もともとコーディネートしたり、つないで新しい仕掛けをすることが好きな人たちで、モチベーションも高い」(平本氏)。まさに先述の"お見合いおばさん"のような役割をしてくれるのが、このファシリテーターたちなのでしょう。
「大丸有、エコッツェリアの会員企業の、新事業開発の部署の人たちにぜひ参加してほしい。そして何かひとつ、まずはひとつ、小さくてもいいので、ビジネスアウトを目指すチームがここから生まれてくれれば」と平本氏は期待を語っています。

インプットは刺激的で、単なるセミナーや勉強会以上のレベルと密度。そして、そこで得られる交流は、本当の「人脈」となってビジネスに役立てることができる。現状を打破したい企業の方には格好のフィールドになるのではないでしょうか。

【未来予測ブリーフィング 第1回 参加企業】※40社 順不同 発表に準ず
株式会社ニチレイフーズ
株式会社ペッパーフードサービス
三井住友建設株式会社
株式会社リコー
森永製菓株式会社
富士通株式会社
中野区議会
綜研化学株式会社
伊藤忠商事株式会社
半導体産業人協会
福島工業株式会社
東京ガス株式会社
オムロンヘルスケア株式会社
ウインテスト株式会社
株式会社竹中工務店
有限会社ドクターホームズ
アトミクス株式会社
大日本印刷株式会社
第一生命保険株式会社
株式会社トーメンエレクトロニクス三菱ガス化学株式会社
キリン株式会社
株式会社第一生命経済研究所
日産自動車株式会社
オムロン株式会社
有限責任あずさ監査法人
株式会社All Nippon Entertainment Works
ダイキン工業株式会社
株式会社シンリョウ
トレンドマイクロ株式会社
東洋ビジネスエンジニアリング株式会社
株式会社デンソー
株式会社本田技研研究所
ボッシュ株式会社
マイクロソフト ディベロップメント株式会社
株式会社ジェムコ日本経営
ウシオ電機株式会社
株式会社アミューズクリエイト
ブレインセラーズ・ドットコム株式会社
田中貴金属工業株式会社

【今後の東京での開催予定】
第1回  6月3日(金)終了
《追加》 7月12日(火)
第2回  8月24日(水)
《追加》 8月31日(水)
第3回  10月7日(金)
《追加》 10月21日(金)
第4回  12月9日(金)
《追加》 12月16日(金)
第5回  2月10日(金)
《追加》 2月17日(金)
第6回  3月3日(金)
《追加》 3月17日(金)


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