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【レポート】エコッツェリア総会――地方と都市の関係強化へ

人と人、地方と中央を結ぶ新しい地平へ 6月17日(金)開催

6月17日、3×3Lab Futureでエコッツェリア会員総会、会員向けシンポジウムが開催されました。会員に昨年度までの実績とともに、今年度の協会の姿勢、方向性を示すためのもので、シンポジウムのテーマは「地方創生と都心の役割」。ゲストには、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局次長の伊藤明子氏、農事組合法人 和郷園代表理事の木内博一氏、WILLER ALLIANCE代表取締役の村瀬茂高氏の3氏を迎えての開催。前半は3氏からのショートプレゼンを行い、後半はエコッツェリア協会伊藤滋理事長をコーディネーターにパネルディスカッションも行い、地方創生における都市の役割について理解を深めました。

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多すぎる農家、遠ざかる都市――和郷園 木内氏

多すぎる農家、遠ざかる都市――和郷園 木内氏

和郷園・木内氏3氏のプレゼンでは、まずそれぞれの取り組みの紹介がありました。
和郷園の木内氏からは、同社が農業組合法人として100軒の農家が稲作、花卉、畜産等複合的な農業に取り組み、共通の"和郷園ブランド"を展開していることを説明。複合的に展開しているのは、稲作から出るワラ、畜産から出る糞尿などそれぞれの"余剰物"を堆肥や農業資材として活用する循環型農業を行っているためです。また、農業を「素材生産業と認識し」、無添加のお弁当、冷凍野菜などの食品加工業で、消費者に直接リーチする事業にも取り組んでいます。

木内氏が指摘するのは「農家の数が多すぎるのではないか」という点です。「全国の農家は約170万棟で10兆円の生産高だが、実際は10万棟で8兆円くらい生産している。これを2万棟で8兆円生産ができれば、地方雇用も創出し、産業として成立するのではないか」。そして他産業と比較すると農業は「2~3割は原価割れしており、そこに補助金が使われている格好で、つまるところ農水省の補助金は消費者に行っている」と疑問を提示します。

これは農業の体質の問題だけでなく、消費者側の問題でもある。そのため、飲食店従事者、一般消費者対象の農業リゾートサービスのほか、不動産業にも着手し、大規模マンションにコミュニティカフェを作り農産物の販売をするなど、コミュニケーションに比重を置いたBtoC事業にも力を入れるようになったそうです。「いずれ物流が自由化されれば、BtoCのあり方も変わるはず」と木内氏は予言します。都市の果たすべき役割はそんなところにありそうです。

エモーションを揺さぶるのは「人」――WILLER ALLIANCE 村瀬氏

WILLER ALLIANCE・村瀬氏WILLER ALLIANCEの村瀬氏からは、同社が目指すバリューイノベーションと、それに伴う事業展開についての解説がありました。
同社は、基本的には「地方と都市をつなぐローコストキャリアの全国ネットワークを構築」することに取り組んでおり、バス事業者のネットワーク・プラットフォームの「WILLER EXPRESS」の展開、地方の鉄道事業なども行っています。ミッションは「世界中の人の移動にバリューイノベーションを起こすこと」で、バリューイノベーションとは「世界中の移動を、簡単便利に安心して利用できる仕組み創ること」、「ユーザーが移動先で偶然ではなく、何故かエモーションが起きること」であるとしています。

特に後者の実現には、「人」が大切だと村瀬氏は考えています。「地方のいろんな資産を発掘する人、地方で頑張っている人をつないでエモーションを起こしたい」。その実現のために人材育成、ビジネススタートのプラットフォーム提供、観光客を送り込むという3つの段階を想定しており、今は第1フェーズの人材育成に力を入れている格好。事業運営する京都丹後鉄道では「丹鉄ビジネススクール」をスタート、ビジネスアウトする人にはファンドも組成する。現地の産物を使った「レストランバス」を発案、新潟市で運行を開始していますが、このバスも人材育成ツールとして機能しているそうです。

ビジネス化支援の第2フェーズでは、"商売道具"を提供するほか、地域のアクティビティをデーターベース化するほか、販路開拓の支援なども行う予定です。第3フェーズの「人を送り込む」では、都市圏、一部の観光地に集中している観光客を各地へ移送するシステムを目指します。「丸の内には多くの人が集まるが、そんな集積する人、客の空き時間を、地方へつなげることができたら面白い。今後10年かけて、第3フェーズの実現へと導くことができたら」と村瀬氏は語ります。

地方にマッチした「創生」を――内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局 伊藤氏

内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局・伊藤氏内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局の伊藤氏からは、「地方創生」の現在の概要が語られました。それによると、「地方創生」は叫ばれつつも、「東京の一人勝ち」の状態が続いており、「地方の中核都市に求められる(人材の)ダム機能が機能していない」そうです。しかし、なればこそ、「地方に伸びしろはある」と指摘します。「生産性が低いからGDPが低いが、逆にITの導入などで伸びる可能性がある。今"ダメ"と言われる分野でこそ地方創生を考えるべきでは」。

また、地方創生の駆動力として高齢者や女性の活躍を示唆するが、「地方によってどういう人にどうやって働いてもらうのか、地域性を考慮すると良い」と指摘します。例えば、都市部では、女性の有業率が20代後半から30代にかけて子育てで離れるために減少する「M字カーブ」となるが、地方ではM字になりにくい。日本海側では女性の管理職が少ないなど、地域地域で望ましいとされる働き方が異なることを踏まえてアプローチするようアドバイス。

また、"危機感"に濃淡があることに危惧も示しています。「ちょっとした"田舎"や地方都市だと、そこそこ人もいるし、とりあえずなんとかなっている。そういうところは危機感が薄く、対応も全然違っている」。いわゆる"茹でがえる"のように、いつの間にかゆだって二進も三進も行かなくなるパターンでしょう。

そのうえで、地方の魅力として「手付かずの地域資源があり、周回遅れのトップランナーになれる」「一人ひとりの存在感が大きい」などの要素を挙げ、地方の今後の活躍に期待を寄せています。また、東京ができることとしては、クラウドファンディングのほか、サテライトオフィスなどのクラウドワーク、都市部と農村が交流する仕組みなどに取り組んでほしいと呼びかけました。

厳しい現状を打破するのは「強さ」か「意思」か

後半のパネルディスカッションは、理事長の伊藤氏からの質問を起点に熱心な議論が交わされました。

まず農業の問題について、伊藤氏は全国で3700万人いる地主が壁となって自由な農業参入を阻んでいると指摘。そのうえで、企業の参入障壁や課題が何かと木内氏に問いかけました。木内氏は、農業組合法人として土地を購入したほうがスムーズに行ったこと、大手流通企業が農業参入したものの、農業単体での収益が上がっていないことを紹介し、問題の本質を「農産物が安すぎること」であると指摘しています。「大根1本100円で農家が得る利益は43円。水産業はもっとひどく、サンマ1匹100円で利益はたったの17円」に過ぎない現状。「小売の末端でデフレが起き、農産物価格が極端に低くなる。オーバーストアともいうべき現象が起きており、作る方も売る方も疲弊しきっている」。和郷園は、この状況を変えるためにいわば強い農業を地方で構築しようとしているわけです。目指すところは、「地方創生」ではなく、世界市場。「日本の農業は、消費ベースで考えると100兆円産業。ここまでやってきたビジネスモデルをパッケージ化すれば、世界でも100兆円のビジネスになる」。

エコッツェリア理事長・伊藤氏WILLER ALLIANCEの村瀬氏とは、旅行、インバウンド、交通をキーワードにした議論が交わされました。伊藤氏は現在の訪日客2000万人を2020年までに4000万人に増やそうとするインバウンド施策について「地方にちゃんと(お金が)落ちるのか?」と疑問を提示します。現在の訪日客のほとんどが、東京、京都などの主だった観光ポイントを周りお土産を大量に買って帰るという現状がある中で、国が主導するインバウンドは本当に地方へ送客することができるのか。これに対し村瀬氏は「地方の弱点は交通」で、大量送客は確かに「難しい」。しかし、「少数でも、本当にその地に価値を見いだす人が集まるのが理想ではないか」とし、ネットの情報発信が役に立つと指摘します。村瀬氏が考える地方創生とは、「地方が儲かること」ではありますが、同時に「こうありたい未来、10年後を思い描いて、そこからバックキャストした事業に取り組んでいる」。WILLER ALLIANCEという社名が、そんな意思を物語っています。「will(意思)」を持った「er(人々)」の「alliance(同盟)」。

もともと同社はネットマーケティング、ソフトウェア開発を行う企業でした。高速バス市場に潜在的なニーズがあることに気づいた同社では、オンライン予約のシステムを提供し始めましたが、「市場を大きくするために、システムは無料で配布」したそう。「結局、市場で儲けるためには、市場が拡大しなければならず、参入障壁は作らず、参入者を拡大していかなければ」と、村瀬氏は理想を大きく持つことが大切だと語りました。

この他にも、地方創生における都市の役割にとどまらず、企業人として、生活者として考えるべきことの多い充実した議論になり、参加者も満足したようでした。

今年度はさらに地方へコミット

この後、エコッツェリア協会の昨年の実績報告があり、地方自治体に深くコミットした活動に取り組んだことを紹介、ここを土台に、今年度はさらに地方と都市をつなぐための活動を拡大していくこと発表されました。そのために制定された、新たな3つのステートメントも発表され、会員企業のネットワークを活用した大丸有の「イノベーションシティ」化を目指すこと、また、3×3Lab Futureの個人会員のネットワーキングが、新しいイノベーションシーズを生み出す可能性があることなど、将来に向けての希望も語られました。 エコッツェリア協会がこの数年で蓄積してきた地方とのコネクション、東京の企業人、企業というリソースが、今年は結びついて化学反応を起こすことが期待できそうです。

その後の懇親会では、和郷園の協力のもと、新潟で運用中のレストランバスの料理長・比嘉氏が腕を振るい、新鮮な素材をたっぷり使った料理が振る舞われた


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