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【レポート】生産者と消費者がつながる新しいカタチ

第2回「大丸有フードイノベーション」プロジェクト 10月4日(水)開催

「厳しい意見が多かった。でも、それも望むところです。新しい販売戦略を考えるヒントをもらいました」――。大手町・丸の内・有楽町エリアで、食と農の課題に取り組むJA全中、農林中金、三菱地所、そしてエコッツェリア協会の4者が連携協定を締結し、その連携プロジェクトとして始まった「大丸有フードイノベーション」(DFI)。食の専門家(評価委員)とともに、感度の高い大丸有のオフィスワーカーに自慢の農産物、加工品を試食してもらい、その意見をその場で聞くというライブでリアルな、食エンターテインメントなイベントです。
第1弾レポート

その第2回は、評価委員へのプレゼン・試食を一般参加者も周りで聴講するスタイルに進化。一般参加者のリアルな声もふんだんに聞くことができる仕立てとなり、ポジティブな意見だけではなく、厳しい意見も続出。凹んでしまうかと思われた生産者たちでしたが、「それこそ聞きたかった意見!」と、DFIをバネにさらに展開を広げようと意欲を新たにする姿が見られました。

この日登場した生産者は小川農産物直売所・夕やけ農園(松丸融弘さん)(埼玉県)、みんなの農業/観光ぶどう園 百果苑(荻原慎介さん)(山梨県)、山万ユーカリファーム(千葉県)、JA柳川(福岡県)、JA十和田(青森県)の5者(発表順)。評価委員は前回同様、大丸有エリアの食農分野に関わる、以下の6氏です。上岡美保氏(東京農業大学国際食料情報学部食料環境経済学科准教授)、安倍憲昭氏(皇居外苑「楠公レストハウス」総料理長)、永島敏行氏(俳優、青空市場代表取締役)、薄井麻衣子氏(株式会社ビー・ワイ・オー営業本部HMR事業部営業企画部リーダー)、中村正明氏(6次産業化プランナー、東京農業大学客員研究員、関東学園大学教授、大丸有「食」「農」連携推進コーディネーター)、兼子恵子氏(フードプロデューサー)。

※この記事は「大丸有フードイノベーション」プロジェクトからの転載です。

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枝豆、ブドウのこだわりポイントは......――プレゼンテーション前半

枝豆、ブドウのこだわりポイントは......――プレゼンテーション前半

このDFIは、JA全中、農林中金、三菱地所、エコッツェリア協会の4者連携協定にもとづき今年7月にスタートした取り組みで、都市と地方、都市と農業の新しい関係性を模索し、"地方を盛り上げていく都市"としてのプレゼンスを図ろうというものでもあります。DFIのほかにも、「大手町マルシェ×JAまるしぇ」という合同マルシェを開催し、大丸有オフィスワーカーに広く情報と新鮮な農産物を届ける取り組みも行っていますが、このDFIはより深く鋭く生産者と都市生活者がクロスします。

毎回、全国各地から思いを秘めた生産者たちが集結し、3×3Lab Futureで自慢の生産物・加工品をプレゼンテーション、試食に供し、評価してもらうという趣旨。評価するのは、食の専門家の6名。レストランのシェフあり、食のバイヤーあり、6次産業化プランナーあり、多彩なプロが出展物を厳しく評価。また、前回分けていた専門家の評価会と一般向け試食会を合同で行うこととしました。専門家との質疑応答を聞いたあとで、一般からの感想の声も聞くことができるため、生産者にとってはかなりライブでビビッドな意見を聞くことができる結果となりました。

今回プレゼンに臨んだのは5者。会の運営コーディネートも担当する評価委員の中村正明氏が、「JAなど生産者周辺の"応援団"がいることが今回の特徴だったの」と話しているように、生産者だけではなく、その陰に日向に生産者を支える地域の人々も一緒に登壇したのが印象的でした。

左からJAさいたま中央小川農産部直売所所長の瀬上俊氏、夕やけ農園の松丸融弘氏、小川町環境農林課の上博英氏 ① 秋の枝豆(小川町の在来大豆)――小川農産物直売所(埼玉県)
「枝豆=夏」のイメージを覆す、在来種の枝豆を引っさげての登場です。「大豆の早取りのようなもの」というタイミングで収穫される枝豆は香りと甘みが強く、そのまま食べてもおいしいが、豆腐や味噌などの加工品でも活用されています。毎年秋になると開催される「えだまめ祭り」には、秋の枝豆のファンがこぞって集まるというほどで、知る人ぞ知る絶味の一品と言えるでしょう。

この日の登壇者は、生産者を代表して有機農業に取り組んでいる「夕やけ農園」の松丸融弘氏、そして"応援団"として小川町環境農林課の上博英氏、JAさいたま中央小川農産部直売所所長を務める瀬上俊氏。町を挙げてのPRに熱弁を奮いました。

試食では「秋に枝豆......?」というとまどいにも似た雰囲気が会場に漂いましたが、食べてみてその空気も一変、「甘い」「香りがいい」という声が聞かれました。評価委員の質疑応答では「おいしい」と味に対する評価は高かったものの、やはりビールとセットなイメージを覆すために、売り方、PRの仕方についての質問や意見が寄せられました。つまりは「旬を外れているような印象をどう払拭するか」(楠公レストハウス・安部氏)が重要、との意見が多く出ました。青空市場・永島氏は山形に同様の秋枝豆「秘伝豆」があり、ひたし豆などのレシピ・食べ方とともに広まったことを紹介、「用途やレシピとともに売ることも大事では」とアドバイスしました。

試食で出されたシャインマスカットのほか、懇親会には房ごと干した干しぶどうも。写真下が観光ぶどう園 百果苑の荻原慎介氏 ②シャインマスカット――みんなの農業/観光ぶどう園 百果苑(山梨県)
会場の女性から「"農業者"というよりもクリエイターみたいでステキ」とあこがれの声が聞こえてきたのが、みんなの農業/観光ぶどう園 百果苑の荻原慎介氏。一大産地である山梨で20品目を越えるブドウを手がけ、通販を中心に直売のみで販売しているこだわりの農家です。「祖父が日本で最初にジベレリン(ブドウを種なし化するホルモン)の実用化に協力した」という、由緒正しいブドウ栽培農家であり、「自分も迷わず農家を継いだ」という荻原氏。86年生まれの東京農大出身者で結成された生産者グループの「ハチロク会」にも加盟しており、ハチロク会からの応援メンバーも駆けつけました。

シャインマスカットは1本の木に「通常100房付けるところを、90房くらい」にし、味とサイズをコントロール。「あまり大房にせずコンパクトにはするが、重さはしっかりある」ように作ります。試食した会場からは、ふつうなら皮ごと食べるためについて来る酸味や渋みが「ない」と驚きの声が。朝採りの房を和紙で包んですぐさま発送するというこだわりの販売で、しっかりと固定客を掴んでいるそうです。

質疑応答では、「生食用との割合は」「レストランへの卸は」「価格は」とかなり具体的な内容が交わされています。特に安部氏は房ごと作るという干しぶどうも高く評価しており、「高級菓子でそのまま使える」と話しています。

加工品に議論白熱!――プレゼンテーション後半

180mlで700円オーバーは確かに高いが、まさに液状化したトマト。写真下が山万ユーカリファーム販売部の伊藤和行氏 ③プレミアムトマトジュース――山万ユーカリファーム(千葉県)
「180ml 735円(税込)」という驚きの高価格で登場したのが山万ユーカリファームの「プレミアムトマトジュース」。「さすがにこれは私も高いとは思う」とプレゼンに立ったのは販売部の伊藤和行氏。「しかし、それだけおいしさには自信がある」とも話します。

同社は、千葉、神奈川で土地開発・まちづくりを手がける「山万」からのスピンアウト企業。千葉県佐倉市のニュータウン「ユーカリが丘」の開発の中から、管理型施設でのトマト栽培が始まり、高付加価値型製品開発で生み出されたのがこのトマトジュース。フルーツトマト「サンチェリープレミアム」「Mr浅野のけっさく」の2種をブレンドし、塩や砂糖を一切使わずに瓶詰めしています。

「甘いときで糖度が10~12くらい。季節によって、2つのトマトの配合は変える」そうで、今回試食に提供したのは、ややMr浅野のけっさく、が多めの割合なのだとか。180mlのジュースにおよそ180gのパック1.5~2倍のトマトを使用。180gの1パックトマトを540円で販売していることを考えると、735円という値段も決して高くはないか--。「いや、今はコストからの価格設定なのでこの値段。本来はもっと量産して下げられるようにしたい」と伊藤氏は話しています。

「料理でも使えるか? 飲食店でも使えるか?」というテーマがあったそうですが、「レストラン目線ではフレッシュトマトという選択肢になる」と安部氏。会場からも「もったいなくて料理には使えない」という声も。「料理に使わせるなら、料理に使うことでしか得られないメリットやポイントを出さないと」(安部氏)というアドバイスも。一方で、もっと量とパッケージを調整することでギフト向け製品になるのでは、というアドバイスもありました。

ハートのパッケージがかわいい「アマネロ」。写真下がJA柳川経済部経済企画課長の久保真寿男氏 ④アマネロ――JA柳川(福岡県)
今回、もっとも出色であり、会場も交えて侃々諤々の議論を巻き起こしたのがこの出展品。いちごの「あまおう」と、激辛唐辛子の「ハバネロ」をミックスした"新感覚調味料"「アマネロ」です。登壇したJA柳川の久保真寿男氏は、開発の経緯や味とともにパッケージへのこだわりなども紹介しました。

試食してみると、これはまさに新感覚! 香りは甘く酸味を感じさせ、ファーストインパクトは「いちご!」ですが、その後ろから辛さが湧き上がるギャップのインパクト。スイートチリソースに近いような気がしますが、それよりもさわやかで、辛さも後を引かない。試食ではバニラアイス、生春巻きの2つを提供。会場からは「アイスだと甘さが、生春巻きでは辛さが引き立つ、不思議な調味料」という声が聞かれました。

その後の質疑応答は賛否両論入り交じる議論となり、ネガティブな意見では「食べ方・使い方が分からない」「砂糖を使わずにいちごだけの甘さにしては」「パッケージが可愛すぎる」といったもの。肯定的、もしくはアドバイス的なものとしては「思ったより辛いので辛さが分かるパッケージのほうが良い」「パーティグッズ、合コンなどに使える」という声がありました。輸出の可能性を問う質問がありましたが、「東南アジアではもっと辛くしてくれ、という要望があり、要検討」という状態なのだとか。パッケージも含め、どの層を狙っていくのか、会場も交えて熱心に議論されていました。

きのこのソテーでにんにくを堪能。写真下、左が生産者の山田智史氏、右がJA十和田おいらせ常務理事の斗澤康広氏 ⑤プレミアムにんにく――JA十和田
最後に登壇したのが青森県十和田市の生産者・山田智史氏と、JA十和田おいらせの常務理事、斗澤康広氏。一大産地である青森の良質なにんにくを特殊な技術で加工した「プレミアムにんにく」を紹介。
このにんにくは、十和田おいらせミネラル野菜「TOM-VEGE(トム・ベジ)」の一つ。トム・ベジとは、健康な土づくりを通じて、ミネラル成分が豊富な野菜を指し、にんにくの他に、ごぼう、ねぎ、ながいも等があるそうです。

今回出展のプレミアムにんにくは、食べる際の食欲をそそる香り、味はそのままに、食べた後のあの嫌なにおいは出ないという触れ込み。収穫後のにんにくを、気化した没薬(ミルラ)の成分にさらすことで、食後のにおいの原因成分をカットできる特殊な技術で処理することで実現。国が認定する地域資源活用事業の枠組みを利用し、特殊技術を持つ広島県の企業と提携し開発したそうです。

試食ではプレミアムにんにくを香り付けに使った野菜のソテーを提供しましたが、料理自体はにんにくの香ばしいにおいでいっぱいで、「本当に臭いが出ないの?」と特に女性は疑心暗鬼といった面持ちです。実際、食後のにんにくのにおいが出るのは早くて1~2時間後、そして翌日ですから、実際の効果の程はすぐ確認できるものではないために、評価はまちまちでしたが、プレミアムにんにくを使った「にんにくパウダー」など、使い勝手の良い製品なども紹介され、評価委員をはじめ会場はかなり高いテンションになりました。質疑応答では「餃子を作って販売してはどうか」(永島氏)、「低臭をもっと分かりやすく謳えないのか」(安部氏)、「パウダーはパッケージもかわいくて使いたい」(ビー・ワイ・オー薄井氏)という声が聞かれました。生産者と応援団の二人三脚がうまく行っている例であったと言えるでしょう。

三者ともに「リアルな」手応え

アマネロの試食で盛り上がる一般参加者の様子

公開評価会の後は恒例の一般参加者と生産者が入り混じっての懇親会となりました。前回も一般参加者向けに簡単なプレゼンはあったものの、今回はプロ向けのプレゼン、そして評価の声を一般参加者も直接聞くことができ、「生産者のダイレクトな声を聞くことができて良かった」との感想の声があちこちから聞かれました。ある参加者は「生産者の人柄が分かる、非常に画期的な取り組みだと感じた」と評価。また、別の参加者は「(生産者の)やる気をひしひしと感じて日本の農業の未来を感じた」と熱気を感じたと話すとともに「大丸有のビジネスマンにとってもチャンスになるのでは」と都市側のメリットも指摘。

評価委員にとっても公開型の開催はメリットがあったようです。薄井氏は「一般の声を聞けるのは、販売に携わる人間にとってはとても参考になった」と話しています。薄井氏は、第1回DFIに参加した産品を社で扱うことも検討していることも明かし、DFIが単なるショーケースではなく、ビジネスとしての可能性があることも高く評価しています。

翻って生産者にとってはどのようなメリットがあったのでしょうか。

小川町から来た松丸氏は「こんなディープな交流があるとは思っていなかった」と驚いた様子ですが、当初の目的である「秋の枝豆を知ってもらう、認知拡大する」はある程度果たせたと満足した様子。と同時に、「この枝豆は外に出したことがなかったので、こんな反応があるのかと、値段(会場では安すぎる、もっと高くていいと評価された)も含め、とても参考になった」と話し、今後都内への流通開拓を考えたい旨を語りました。

なかなかにシビアな意見が寄せられたJA柳川のアマネロは、逆に「厳しい意見をいただけて、次のステップの手がかりが得られた」と意欲を見せています。販路も徐々に開拓はしているものの、売上は横ばいでリピーターの獲得にまで至っていない現状。「そろそろ次の改定で、パッケージや味の方向性をかためなければならないと思っていた。自分たちで考えていただけではいい考えは浮かばない。今日の意見をヒントに、新しい手を考えたい」(久保氏)。

生産者それぞれが抱いてきた目的を果たすとともに、想像もしていなかった成果を得ることができた会となったようです。また、一般参加者のみならず、評価委員にとっても得るものがあり、DFIはまさに三方一両得のイベントとして成長しつつあります。

生産者-消費者の交流の新基軸がここに?

会場の一般参加者の感想を聞く中村氏(右)

DFI全体もコーディネートする評価委員の中村氏は、今回の公開形式での開催を「生産者、評価委員、一般参加者の間で良いキャッチボールができた。生産者にとっても良い意見を聞くことができたのでは」と手応えを感じている様子。また、キャッチボールの中で、小川町の枝豆のように地元が想像している以上に都市部では高い評価が得られたこと、逆に厳しい意見が寄せられた商品があったことについて、「地方と都市がつながって価値を生む新しい関係性の可能性を感じた」とも話しています。

評価委員の評価シート、一般参加者からのアンケートの結果は独自の手法でまとめられ、生産者にフィードバックされ、その後のテストマーケやブランディングなどにも大丸有の関係者が協力していくことになりますが、第1回DFIの生産者にはフィードバック済み。第2回DFIの結果もいずれ返されることになりますが、産地ツアーの企画構想も含め、今後さらに都市と地方をつなぐ新しい仕組みづくりを構築していくとしています。「JA、農林中金、三菱地所、エコッツェリア協会の4社が持つネットワークのうえに新しい仕組みを作り、食農を通じたこれまでにない地方活性化と都市のあり方を生み出すことができるのでは」(中村氏)。

永島氏もマルシェを手がけてきた経験から「(消費者から)生の評価を受けることが生産者にとって一番意味がある」としつつ、同時に「消費者にも生産の現場を伝え、消費者も変わらなければ日本の農業は変わらない」と話しています。マルシェで売り買いするばかりでなく、より深く生産者と消費者が交流する現場がここにはあります。思い返せば生産者と消費者の距離を縮めようと国を挙げて始まった「マルシェ・ジャポン」がスタートしてから、8年の月日が流れています。その成果・関係性の新しいカタチが、ここにあるのかもしれません。

評価委員。上段左から上岡美保氏(東京農業大学・国際食料情報学部 食料環境経済学科 准教授)、安倍憲昭氏(楠公レストハウス総料理長)、永島敏行氏(俳優、青空市場代表取締役)。下段左から薄井麻衣子氏(株式会社ビー・ワイ・オー 営業本部HMR事業部営業企画部リーダー)、中村正明氏(6次産業化プランナー、東京農業大学客員研究員、関東学園大学教授、大丸有「食」「農」連携推進コーディネーター)、兼子恵子氏(フードプロデューサー)


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