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【レポート】ラオスコーヒーの魅力と課題

【&さんさん】~ラオスの希少珈琲の民衆交易~「つくる人」「食べる人」がつながる 2018年6月21日(木)開催

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さまざまな職種業界の人々が集まる3×3Lab Future。そんな中から、たまたま東南アジアのある国に関係した人が集まって、自然発生的にシリーズイベントが始まったのが2017年11月のことでした。

その東南アジアの国とは、ラオス。

某小説家がエッセイを書いたり、2018年には成田からの直行便が開設予定だったりなど、「なんとなく気になる国」ラオス。ラオスに関わりの深い3×3Lab Futureの会員数名が中心となりイベント「ラオスに行きたくなる」シリーズを企画、2017年11月に「ラオスの食と文化を知ろう!」、2018年3月は「旅するラオス・女子旅編」を開催し、ラオス熱を高めてきました。

そして今回、シリーズ番外編としてやや趣を変えてアカデミックな香りをさせつつ6月21日に開催されたのが、「ラオスの希少珈琲の民衆交易~『つくる人』『食べる人』がつながる」です。ラオスでコーヒーが栽培されていることはあまり知られていません。しかし、ラオスで栽培される希少な品種「ティピカ」は、華やかな香りが特徴で、日本でも通(つう)の間では知られるようになりました。そんなラオスのコーヒーをテーマにした講演、講師はラオスコーヒーの輸入販売を手掛ける株式会社オルター・トレード・ジャパン(ATJ)の後藤翠氏、また、文化人類学の研究者で、ATJのアドバイザーでもある東洋大学社会学部准教授の箕曲在弘氏のお二人が務めました。講演の合間には、ラオスコーヒーのテイスティングも行われ、薫り高いイベントとなったのでした。

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People to People、顔の見える民衆交易

People to People、顔の見える民衆交易

後藤氏

後藤氏は学生時代に箕曲氏の薫陶を受けて卒業後にATJに入社、ラオスコーヒーのほか、インドネシアのカカオなども手がけています。後藤氏からは主にATJやその活動についての概要、ラオスコーヒーについてのアウトラインの解説がありました。箕曲氏は文化人類学の研究者であり、ラオスでは農家の家計調査などに取り組んでいます。フィールドワークも積極的に行っており、現地の状況、農家の実態などにも精通しています。氏からは、やや立ち入った詳細な情報や理論的な背景などの解説がありました。講演はお二人が交互に話し、時にはお互いに掛け合いのように補完しあいながら進みました。

簡単に言えば、ATJは、ラオスからコーヒーを適正な価格で仕入れ、生協などの販路を利用し、その価値を理解する人々に向けて販売しています。顔の見える関係から生まれる、People to People=PtoPの流通を実現。これを「民衆交易」とも呼んでいます。フェアトレードに似たコンセプト、システムですが、ルーツは古く、内容も一線を画したものになっています。

その違いの一つが、「収入の安定」の重視にあります。箕曲氏はラオスの農家の貧困の原因が、コーヒーの世界的な価格の乱高下によって、非常に不安定になっているところにあると指摘します。

「収入が不安定だから生活が安定しない。不安定な中で生きていく生活力はあるが、将来の予定を立てていくことができない。コーヒーを高く買い取るということよりも、買い取り価格を安定させることのほうが重要になる」(箕曲氏)

箕曲氏

コーヒーの世界的な市場価格は常に大きく乱高下している特徴があります。フェアトレードは「高く買い取ること」=価格を重視する傾向にありますが、しかし、それは必ずしも「収入の安定」を担保するものではないのです。

「フェアトレードを否定はしないが、フェアトレードだけでは拾いきれない問題があるのも確かなこと」と箕曲氏。フェアトレードの認証例が多い南米、アフリカでは、農家が商品作物とともに主食も耕作していることがほとんど。その一方で、東南アジアは商品作物のみで主食の生産ができていないという特殊な事情もあり、必ずしもフェアトレードがマッチしない環境です。

さらにいえば、「フェアトレードはアプライの時点でハードルがすごく高い」と後藤氏。

「認証機関に申請するために、文字は書けるか、計算ができるか、報告はできるか。報告のための客観的な実態把握ができるのか。申請に必要な資金の問題もある」(後藤氏)

そのため、ATJが行っているラオスのコーヒー事業は、独特の形を取っているのです。

ATJの事業とは

ラオスのコーヒーの収穫の様子(ATJのサイトより)©ATJ

そもそもATJがラオスコーヒーを扱い始めたのは2005年のことでした。コーヒーの生産支援を行っていた国際NGO「オクスファム」のオーストラリア支部の紹介を受けてラオスに入りましたが、本格的に取り組むようになったのは2009年からのこと。2008年に箕曲氏が、廃業寸前のパクソン郡(ラオス南部)のジャイ・コーヒー農民協同組合(JCFC)をATJのスタッフと引き合わせたことがきっかけでした。JCFCの生産者は長年コーヒーを生産していましたが、コーヒー価格の不安定さや、マネジャーの不正などの悪因が重なって運営が立ち行かなくなっていたのです。

JCFCとの取引開始に当たっては、ATJ創業者の堀田正彦氏が代表のウアン氏と面談しているそうです。二人の間に相通じるものがあったのか、コーヒーの買い取りだけではなく、組合の再建も含む大がかりなプロジェクト決まりました。後に箕曲氏に取引開始を伝えたメールの中で堀田氏は「国家に翻弄されない、強い農家として自立する意志が見えた」と語っていたそうです。

ATJのJCFCとの活動は、具体的には以下のような活動を柱としています。

ひとつは「話し合いで買い取り価格を決定する」ということ。従来、コーヒーの買い取り価格は「FOB」で決められるのが一般的でした。Free On Board、つまり輸出のために船に積み込まれた時に価格が決定し、そこまでの運賃等が差し引かれたうえで、最後に生産者からの買い取り価格が決定する方式です。乱高下して価格が不安定なうえに、中抜きと買いたたきがされやすい環境でした。

「これを逆に、生産者から買い取るときに価格を決める。それも生産者にもきちんと考えてもらって、話し合って決める。高く買い取れるうえに、生産者もコーヒーのマネジメントについて考えるようになるし、汚職も防止できる」(箕曲氏)

2つ目は「コーヒーの代金を収穫の前後で分けて支払う」ということ。収穫前の雨期に50%、収穫後に残りの50%。それまで収入は収穫後の1回だけ、つまり年に1回だけのために収穫前には地主から借金してしまうなど、貧困スパイラルの一因となっていました。しかし、50%ずつ分けて支払う、それだけでも収入の不安定さを大きく抑制できるのです。

コーヒーの市場価格の乱高下の様子。当日のプレゼン資料より抜粋

「貯金の習慣が定着していないためなかなか難しいが、50%ずつ分けるだけで借金する人が減り、一定の効果が得られている」(後藤氏)

「通常途上国の農村では牛・豚などの家畜を貯蓄の代わりにするが、この地域では家畜が病気になりやすく、それも難しい状況があったが、50%ずつ渡すと貯蓄ができた格好になり、生活も安定しやすい」(箕曲氏)

3、4点目は、組合立て直しのための資金の積み立てです。組合運営のための「JCFC運営プレミアム」、組合員の緊急時に対応するための「社会開発プレミアム」の2種類を運営しており、ようやく資金運営が順調になってきたところだそうです。

「もともとお金の扱いに慣れていない人たちなので、いきなり運用することは当然無理。今になってようやく自分たちだけで資金の運営ができるようになってきた」(箕曲氏)

ATJは、30年前のフィリピン・ネグロス島での食糧危機への人道支援をきっかけに発足していますが、ネグロス島の現地生産者が自分たちだけでフェアトレードやオーガニックの認証の申請ができるようになったのも長年の蓄積があってのこと。生産地の自立とは一朝一夕にできるものではないのでしょう。

ローストの違いを堪能、新しいネットワーク

講演は前後半に分けて行われており、そのインターミッションでラオスコーヒーの試飲を行っています。「コーヒー種の違いでの飲み比べは何度もやったが、これは初めて」と後藤氏が説明したのは、アジアでは希少なティピカ種の焙煎違いの飲み比べです。

「ハイロースト」は浅めの焙煎で、香りが出やすく、甘みを感じられる味になります。「シティロースト」は深く煎るもので、コーヒーらしい苦みとコクを楽しむ味。試飲では、ラオスの女性・障害者支援に取り組むNPOアジアの障害者活動を支援する会(ADDP)から、ラオスで作るクッキーをご提供いただき、併せて楽しみました。

試飲した参加者は「味」「香り」など5項目の評価シートで採点し、その感想をテーブルごと話し合いました。それぞれの自己紹介、なぜ今日参加したのか、ラオスに関わるバックボーンなども語り合ったうえでのセッションとなり、和気藹々と楽しげな雰囲気です。コーヒーにはお酒とは違った打ち解け方をさせる力があるのかもしれません。参加者は、ラオスに関わる仕事をしている人、ラオス在住経験のある人、コーヒーが好きな人、新興国の農業に興味のある人など、「ラオス」「コーヒー」をキーワードに多彩な面々が集まっており、新たなネットワーキングもできたようでした。

今回の参加者は3×3 Labo Futureが初めてという人が多いのも印象的でした。ある学生の参加者は「フードビジネスに興味があって来た」と話しています。エシカルな情報をチェックしている中で、エコッツェリアのサイトにたどり着き、このイベントを知ったそうです。
「ビジネス的な面だけでなく、国際経済の状況やサステナビリティについて知ることができて勉強になった。コーヒーもおいしかったし、ラオスにも行きたくなった」(学生の参加者)

また、別の参加者はラオスに縁があり、その関係で来場。こちらも3×3 Labo Futureは初。「ラオスコーヒーの現状が垣間見えて良かった」と言いつつ、フェアトレードに興味もあったことから、「現状のPtoPの『交易』で、どんな苦労があるのか、どんな活路があるのか。具体的な話も聞きたかった」とも期待を話していました。

ラオスという国、コーヒーというテーマのおかげなのか、いつもとはちょっと違ったしっとりとした雰囲気で終わった今回。ラオスシリーズは今後も続く予定とのことなので、今後のラオス関連のイベントにぜひご期待ください。

今回コーヒーを淹れてくれたのは、インカレサークル「フェアトレードドリップパックプロジェクト」(ドリプロ)のメンバー。左から鈴木美穂さん(東海大3年)、浅子莉菜さん(上智大学3年)、小山勇太さん(中央大3年)。このサークルは箕曲氏が学生時代に立ち上げたもので、ラオスのコーヒーをフェアに扱い、製品開発やカフェの運営なども行っている。フェアトレードに興味のある人、国際経済に興味のある人、コーヒーに興味のある人など、さまざまなメンバーが集まっているという。この3名は9月にラオスにスタディツアーに行く予定だという。
ドリプロのコーヒーはネットでも買えます:https://ft-drippack-project.jimdo.com/shop/


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