シリーズコラム

【さんさん対談】 企業や人をつなぐプラットフォームを作り、循環型社会を実現

日本環境設計 岩元美智彦氏 × エコッツェリア協会 田口真司氏

3☓3Lab Futureの仕掛け人、田口真司氏が聞く対談シリーズ。今回は、リサイクル事業を手掛ける日本環境設計の創業者、岩元美智彦氏をゲストに迎え、公開型で対談が行われました。

日本環境設計では、衣類やプラスチック製品などをリサイクルする仕組みづくりをしてきました。古着からバイオエタノールを作る「BRING FUKU-FUKUプロジェクト」や、不要になったおもちゃや文具などをリサイクルする「BRING PLA-PLUS(プラプラ)プロジェクト」などの運営の他、新たなリサイクル技術の開発も行っています。

120万円の資金で始めたベンチャー企業が、10年で資本金(準備金も含め)が約15億円に達するまで成長。「リサイクルはビジネスにならない」というこれまでの通説を覆してきました。そんな実績が評価され、岩元氏は、日経ビジネスの「次代を創る100人」に選出されました。また、高いリサイクル技術と革新的な仕組みが世界的からも注目を集めており、多くの海外メディアにも取り上げられています。

「ゆくゆくはリサイクル事業を通じ、世界の地下資源の争奪紛争を無くしたい」と語る岩元氏。
それでは、リサイクルと地下資源争奪紛争には、どんなつながりがあるのか――。
そのビジョンとビジネスモデルについて、熱く語っていただきました。

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地下資源争奪紛争を終わらすのはお金や武器ではなく、消費者参加型の循環型社会を作ること

地下資源争奪紛争を終わらすのはお金や武器ではなく、消費者参加型の循環型社会を作ること

田口 まずは岩元さんが手掛けるリサイクル事業や理念についてご紹介いただければと思います。

岩元 私は昔から、『三つの柱』を持ってビジネスをしてきました。

まずは、『技術』です。地球の資源というのは、燃えるものと燃えないものの二つに分けられます。金、銀、銅、レアメタルといった燃えないものに対するリサイクル技術は進歩してきた半面、衣類やプラスチック、家庭ごみなどの燃えるものに対するリサイクル技術の開発はあまり行われてきませんでした。そこで私たちは、燃えるもののリサイクル技術を開発することにしました。注目したのは、元素や分子です。人間も、石油も、樹木も、炭素や水素、酸素といった元素等からできています。その元素や分子を循環させることで、あらゆるものを劣化させずに循環させることができます。

私たちは消費者がリサイクルしたいと思う服やプラスチックから技術開発を進めてきましたが、コンセプトは「モノを劣化させない」ということです。この考え方は現在、世界におけるリサイクル技術のスタンダードになりつつあります。古くなった服一着を、一着分の原料に変え、それを再び服にリサイクルする。つまり、一着の服が半永久的に使い続けられる。これが「劣化させないリサイクル」の技術です。

ただ、いくら優れた技術があっても、多くの人が参加してくれなければ、循環型社会はできません。技術に加えて必要な二番目の柱は『消費者参加型の仕組み』を作ることです。現在は、150を超える企業の協力を得ることができており、「パタゴニア」や「無印良品」の店舗などをはじめとして全国の数千か所に回収ボックスを設置し、どんどん洋服が集まっています。

なぜうまく洋服が集まるかといえば、三番目の柱として『エンターテイメント』の要素を取り入れているからです。リサイクルという言葉には、どこか"義務的"な響きがあります。個人的には「リサイクルしてください」というのは義務感を押し付けるもので、決して人の心には届かないと思っています。実際に、消費者皆さんに参加を促すのは難しいです。心を動かすために必要なのが、エンターテイメントなんです。イベントを仕掛け、そこに「楽しそうだから」という理由で来てもらう。ただし、参加するなら家にあるいらない古着やおもちゃを持ってくるようお願いする。このように消費者があまり意識せずリサイクル活動に参加できるのが理想的です。

岩元氏が言う"エンタメ"の最たるものが、実際にデロリアンを走らせてしまった「Go!デロリアン走行プロジェクト」かもしれない(同社サイト、特設サイトより)現在、世界中でつくられている衣料品の6割は石油由来のポリエステル原料でできています。日本国内でも年間およそ170万トンの繊維製品が廃棄され、そのうちおよそ8割が焼却もしくは埋立されています。ペットボトルなどのプラスチックも石油由来です。つまり、私たちの便利な生活は、石油によって支えられています。

そして、その石油等の地下資源争奪をめぐって、世界では紛争が起きています。現在の戦争やテロの7~8割は石油をはじめとした地下資源が原因であるとされています。それを終わらせるのは、お金ではなく、武器でもない、消費者参加型の循環型社会を作ること。私たちが作ってきた仕組みが世界規模で動き出し、みんなが気軽に参加するようになれば、世界がよりよくなる。それを目指して世界中に仲間を募っているところです。

田口 これだけのグランドデザインを描きつつ、やっていることは一人ひとりに刺さる内容なんですね。ビジョンの壮大さと活動の身近さのバランスがいいことが、岩元さんの大きな特徴、そして魅力になっていると感じます。

ばらばらだったプレイヤーをつなげる努力を地道に重ねてきた

田口 循環型社会というのは、未来の世界のキーワードになると思いますが、その実現のためにもっとも必要なことはなんでしょう。

岩元 大事なのは、循環型社会を作るための基準を設けることです。今までは、大企業も中小企業も、自治体も県も国も、それぞれの「こうあるべき」という思想に基づいてリサイクルを行ってきた。これではいつまでたっても循環型社会にはなりませんでした。ひとつの企業、ひとつの組織としては正しい基準であっても、社会全体から見たら不都合であれば意味がないのです。パソコンのOSなどが典型例ですが、ひとつのプラットフォーム、基準を作れば可能性が無限に広がります。そのように、循環型社会を作るための基準を打ち立てるべく、企業や行政とずっと議論を続けてきました。

田口 同業他社や異業種の会社が一堂に会して一つの目的へ、というのは、絵こそ描けますけれど、実際にそうした仕組みを作れたという話は聞いたことがありません。

岩元 はい、今まで世界中になかったと思います。

田口 貴社の協賛企業には、ライバル関係にあるところも数多く見受けられますね。当然、ここまでの協力を取り付けるのに大変なご苦労があったかと......

岩元 一社一社、担当者に話をして、活動について賛同いただくことの繰り返しでした。納得してもらえるまで毎日通ったり、数時間も電話でしゃべったり、数年もかけて説得したり......。こつこつ地道にやってきました。仲間が欠けると、仕組みが完成せず、次のステージには進めない。仕組みというのはそういうものです。現在、国内では数百社の会社、海外でも多くの企業とお付き合いしていますが、基本的に調整の繰り返しです。話して、調整して、話して、調整して。調整が仕組みの原点になりますから当然なのですが、なかなかみんな一筋縄ではいかなくて(笑)。でもようやくばらばらだった企業がつながって、結果的に消費者がより参加しやすい環境ができてきました。

田口 資本主義下において活動を広げていくには、経済的な面も考慮せねばなりません。よく、環境と経済は両立するか、という議論がありますが、そのあたりはいかがでしょう。

岩元 両立すると考えています。GDP(国内総生産)の約60%は個人消費であり、その中に環境改善プログラムを組み込めばいいのです。EcoFriendlyというメッセージを発信し、石油を使わず地上資源だけでできたリサイクル製品を作る。それに共感した消費者が地上資源を使用した製品を買うほど、経済がまわり、燃焼の際に出るCO2が減らせ、ゆくゆくは戦争やテロを無くせる未来がくるかもしれない。こうした流れは実際にできつつあり、地上資源だけを使った製品が世界中で開発されています。私たちのリサイクル事業においても、商品を出すことが最後のピースでした。リサイクル工場でざらめのような原料(ペレット)ができただけでは、土木資材などにしか使えず、コンビニや雑貨店では売れません。身近な商品にすることで初めて、大きな消費の輪の中に組み込むことができたのです。品質がいい、値段も適正、そしてコンセプトが正しい。こうした製品が今後どんどん出てくると思いますよ。

リサイクルで「石油に勝つ」ことが重要

田口 そもそも、リサイクルに興味を持ったのはいつでしたか?子どものころから、ごみを捨てることが大嫌いだったとか(笑)

岩元 それはないですね(笑)。もう20数年前ですが、容器包装リサイクル法という法律ができたときに、初めて環境に携わりました。当時はサラリーマンでしたが、法律という基準ができたら一気にいろいろなプレーヤーが参画したのを見て、基準作りのおもしろさを実感しました。当時、日本のリサイクルというのは一方通行で、Aを工場に持っていけばBができるというところで終了。再び市場に出て、それを買って、さらにリサイクルに出して、というようにぐるっと回っていませんでした。そこに大きな違和感を持ったとともに、あらたな市場を作れるのではないか、勝負してみたいという思いを持ったのが最初です。

田口 それで2007年に会社を設立されました。ちなみに我々エコッツェリア協会ができたのも2007年ですから、なんだか縁を感じます。10年前から見ると、ずいぶん目標に近づいているでしょうが、今の課題はなんですか?

岩元 仕組みづくりは思った以上によくできたと感じています。ここからさらに拡大するには、リサイクルでできる原料で「石油に勝つ」ことが必須です。現在は、品質としては石油と同じレベルの原料ができますが、価格が若干、石油より高くなっています。しかしこれは将来、商用プラントを建てれば石油と同じ価格まで下げられるという証明がなされており、当面はそのプラント建設を目指します。

田口 未来を語る上でのひとつのキーワードは子どもだと思いますが、いかがですか。

岩元 はい。イベントも子ども中心に楽しいことをやっています。参加するにあたっていらない服かおもちゃを持って来てもらっており、子どもたちにとっては「リサイクル=楽しいこと」になっていると感じます。これがどんどん広がっていけば、30年後くらいにはリサイクルという意識、言葉自体がなくなるかもしれませんね。

田口 非常に興味深いお話でした。きれいごとで「環境をよくしよう」といっても意味はなく、実際に基準やベースを作っていかなければ世の中は動かないというのが、本日の大きなメッセージであったように思います。

日本は今や世界有数の「資源大国」である

今回の対談では、終了後に参加者も加わったディスカッションがありました。

参加者は3~4人のグループに分かれ、感想を話し合いました。そしてグループごとに、岩元氏に対する意見や質問をまとめた上で、ディスカッションに臨みました。

あるグループからは「初めて協賛を得た企業の"説得物語"が聞きたい」というリクエストが出ました。岩元さんは「第一号は良品計画さんですね」と懐かしそうに語りました。

岩元 当時、良品計画さんにはいろいろなリサイクル提案が来ていたそうですが、うちの話を聞いて、やってもいいと言ってくれました。神奈川県の50店舗のうち、半分にリサイクルボックスを設置、もう半分はそのまま、という実験をしたら、リサイクルを入れた店舗のほうが、4%ほど売り上げが伸びました。これで、ただ「環境にいいからお願いします」ではなく、「経済的にもプラスになります、リサイクルで売り上げに貢献できます」と言えるようになったことは大きな追い風でした。

自らも紙とプラスチックの複合容器のリサイクルに係わってきたという参加者の方からは、「1着の服から同じ1着分の原料を作るようなほぼ100%リサイクルの技術はできるのか」というやや専門的な質問が飛びました。岩元氏は自信を持って「できる」と回答。

岩元 現に、手が届くところまで来ています。私たちのリサイクルは、原子の循環です。繊維やプラスチックといったモノではとらえずに、そこにどんな元素がどれだけ入っているかに注目します。そして理論上、原子というのは形が変わるだけで失われることはありませんから、100%リサイクルも不可能ではないと言えるかもしれません。ちなみに現在では、資源大国の基準が、「地下資源埋蔵量」から「技術大国」になったと言われています。その文脈では、技術力の高い日本は世界有数の資源大国なのです。

その後も、環境や資源、リサイクルに関する熱い意見が交換され、議論は白熱しました。岩元さんの指摘やアドバイスに、参加者は時折大きくうなずいたり、はっとした表情をしたりしていましたから、それぞれにとって実りの多いディスカッションになったようです。

最後に、田口氏からの総評がありました。

田口 我々はどうしても概念に走りがちで、「がまんしてでも社会にいいことをやろう、環境を考えよう」となってしまうことも多くありました。しかし今日のお話であったように、普段からやっている経済活動の中に環境を組み入れ、「こちらを選べばもっと楽しいよ」というメッセージの発し方をするのが、世の中を動かすことにつながると感じました。まずは仕組みをつくり、そこから社会を変えていく......。我々としても学ぶことは非常にたくさんありました。勉強になるお話を、ありがとうございました。

会場は本日一番の大きな拍手で包まれ、公開対談は終了となりました。

岩元 美智彦(いわもと・みちひこ)
日本環境設計 代表取締役社長

1964年鹿児島県生まれ。北九州市立大学卒業後、繊維商社に就職。営業マンとして勤務していた1995年、容器包装リサイクル法の制定を機に繊維リサイクルに深く携わる。2007年1月、現取締役社長の髙尾正樹とともに日本環境設計を設立。資源が循環する社会づくりを目指し、リサイクルの技術開発だけではなく、メーカーや小売店など多業種の企業とともにリサイクルの統一化に取り組む。2015年アショカフェローに選出。2016年には、日経ビジネスの「次代を創る100人」のトップに選出。著書『「捨てない未来」はこのビジネスから生まれる』(ダイヤモンド社)。

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