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持続可能な浜の再生に向けて 「三陸水産業・漁村・漁港復興に向けた産学官連携支援プロジェクト」 第1回

2012年1月 5日 | post by 千田良仁

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東京大学では多くの震災復興プロジェクトが立ち上がっている。その中でも復興が遅れているといわれている水産業・漁村を対象としたプロジェクトが、「三陸水産業・漁村・漁港復興に向けた産学官連携支援プロジェクト」である。現在、東京大学大気海洋研究所のあった大槌町赤浜地区や三陸海岸のいくつかの地区を対象として活動を進めている、復興への取り組みを3回にわたってレポートする。



地元住民の手により復興計画案を策定

岩手県大槌町赤浜地区。960人の住民のうち93人が犠牲となった。流されずに残った漁船はわずか7隻。漁港は地盤沈下等の壊滅的打撃を受け、機能しない状況が続いている。ここにあった東京大学大気海洋研究所も大きな被害を受けた。

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「14.5mもの防潮堤をつくってしまったら海の様子も蓬莱島も見えなくなる」
「海が見えなくなるなんて想像がつかない」
「漁港と住宅地が物理的に分断されてしまう」
「今回の規模の津波でも浸水しない安全な高台に集落を移転したほうがいい」
「地盤高14.5m以上の高台にすべての居住地を確保したい」
「お年寄りが多いので高台に集合住宅をつくってはどうか」



これは、9月に大槌町赤浜地区の住民の皆さんに集まってもらった時に出された意見である。東京大学のまちづくりプロジェクトチームの作成した地区の立体模型を見ながら、まちづくりの議論が進められた。

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赤浜地区では復興を自分たちで考えようと、8月に生産関係団体、商工労働関係、PTA、婦人会、地元組織の代表が集まり「赤浜の復興を考える会」を立ち上げ、地区供養祭や住民アンケートを行うなど、早くから新しいまちづくりを協議してきた。10月にはこれらの意見を集約した「赤浜地区の震災復興計画案」を作成した。計画案は、岩手県が提示する14.5mの防潮堤の再建案は採らず、代わりに地盤高14.5m以上の高台への住宅地移転、山を切り開いての宅地造成、津波で乗り上げた観光船の復元モニュメントを中心とした被災地の公園化、宅地前に擁壁を造るなどの12項目を提案している。その後、町が主導する「地域復興協議会」が町内10 地域で立ち上がり、「大槌町震災復興計画」の作成に取り組み始めたが、赤浜地区ではこの住民自らの手でつくった震災復興計画案をほぼ踏襲する形で計画が決まりそうである。


被災地のニーズと支援をマッチング

国や市町村、専門家等が復興へのビジョンを掲げ、またそれに向け「ひと・もの・かね」を支援する数多くのプログラムが検討・実施されている。そこでの課題は、現場のニーズを集約し、それらを短期、中期、長期に分類した上で、可能な支援策を実施すること。その際に特に重要なのは、専門的視点から被災地で必要となるニーズと支援対策をうまく仲介・マッチングさせて、有効かつ効率的な支援を達成することである。

このような状況を踏まえてこのプロジェクトでは、現地のヒアリング調査を実施し、現地のニーズを把握した。その上で、出てきたニーズに応じて、農学生命科学研究科の教員を中心に漁船の手配、漁場の瓦礫処理、市場・流通・加工機能の整備等の情報提供、コーディネートを行っている。また、海洋アライアンスの講義履修生等から募集したボランティアスタッフを、基礎的な研修を行った上で現地に派遣し、特任教員の活動補助を含めた地元への支援などを行っている。さらに、水質の調査について必要に応じ現地の水産試験場等と協力して実施するなど、研究機関と専門的知識を学んでいる学生のネットワークを活用してプロジェクトを進めている。


現地から多くのアイデアが生まれる

赤浜地区の漁師さんから、多くの現場の意見を聞くことができた。

「鮭は戻ってきていて、獲ることができれば儲けもあがる。でも、鮭の定置網はまだ再開していないし、船で獲る刺し網漁は県の規定により禁止されている」
「漁業が町で本格的に復興するには3~5年かかるだろう。高齢化が進んでいて、どれだけの漁師が漁を続けることができるのだろうか」
「震災前と同じ状況に戻っても漁業で食べていくのは難しい。漁業をテーマに地区に都市部住民などの観光客を呼び込む仕組みをつくりたい」
「魚やワカメを加工した商品を開発し、加工施設をつくって地域の雇用を確保する」

これらの意見から解決しなければならない課題が明らかになってきた。漁師さんや現地に入った学生から「刺し網漁の実施に向けた交渉」「都市農村交流機能をもつ番屋構想」などのアイデアが生まれてきている。このように現場のニーズから復興に向けたアイデアを生み出し、それを専門性やネットワークを持つ外部の人材が実現させる、その仕組みづくりのサポートを引き続き行っていく。漁業の復興においても、個人と組織(漁協)、行政と地域コミュニティでそれぞれの思惑が異なり、結果として身動きがとれなくなることもある。この硬直状況を打破するのも外部の人材の大きな役割だ。息の長い取り組みとなるが、継続的に外部の人材が支援できる体制を構築するためにも、まずは小さな成功体験を生み出していきたい。

東京大学大学院農学生命科学研究科の復興支援プロジェクト

千田良仁(せんだ・よしひと)
東京大学海洋アライアンス特任講師、株式会社アミタ持続可能経済研究所 アソシエイト・フェロー。専門は水産経済学、地域開発論。全国各地で地域に眠っている地域資源を発掘、可視化し、これらの地域資源を地域内外の「ひと・もの・かね」をコーディネートすることによって、地域に「生業(なりわい)」を創出し、地域主導で内発型の持続可能な地域活性化の構築を支援するさまざまな活動を展開している。地域再生マネージャー(中津川市、三好市)、総務省「地域人材ネット」登録専門家、食農連携コーディネーター。香川県出身。

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