過去のアーカイブ過去のニュース

ランドスケープデザイナー大西瞳さんの「自然と人をつなげる仕掛けづくり」とは?−自然環境情報ひろば 丸の内さえずり館「暮らしの中で、自然とつながる99の方法」展開催中

saezuri_99_1.JPG

現在、自然環境情報ひろば 丸の内さえずり館(新有楽町ビル)では「暮らしの中で、自然とつながる99の方法」展(協力:NPO法人 樹木・環境ネットワーク協会)を開催中です。まちで暮らしていると忘れてしまいがちな自然とのかかわりを、衣食住のアイテム、暮らしの知恵・風習など様々な手法で取り戻すヒントになるモノ、コトを展示しています。1月23日(水)、ランドスケープデザイナーの大西瞳さんを講師に迎え、「自然と人をつなげる仕掛けづくり」と題した、関連セミナーが行われました。その模様をレポートします!
丸の内さえずり館

ランドスケープデザインとは

一般には、景観、外構設計を指します。要するに、建物の周りや、公園、道、お庭等、建物以外をデザインするという意ですが、大西さんが所属する会社mindscapeでは、その名のとおり心象風景までデザインしようと"自然と人をつなげる仕掛けづくり"を意識し、公共空間の設計、まちづくり、個人邸のお庭から、イベント、ワークショップ、プロダクトデザインまでと幅広い分野で活動されています。
mindscape

saezuri_99_2.jpg

大西さんは、原っぱが残る大阪と京都の境目の新興住宅地で、まちの自然に親しんで生まれ育ち、南国土佐で「美しい川で泳ぎ、小学生と一緒に鮎を捕獲し、その場で焼いて食べる」ような野生的な大学時代を過ごしていたにも関わらず、大都会、東京で空間デザイナーとして、就職しました。

「企業の空間デザインの仕事を10年程していましたが、植物と関わる仕事がしたいと思い、独立しました。私の考えるランドスケープデザインは、環境問題やエコロジーという難しい視点からではなく、まずは屋外がどれだけ気持ちが良いかを感じてもらう仕掛けを考える事から始まります。植物と触れて楽しい、外にいることが気持ちいいと思う人が多くなれば、自然にそういう場が増えて行くと思う。一人が植木鉢をひとつ増やすだけでもまちの緑化になります。更に発想を変えれば、狭い東京なんかだと、緑化したビルの屋上を繋げれば、そこに動物なんかが住み着き始めたりして、車の通らない空中の場所。そして、地上にはいつものまちがあるという2層のレイヤーができ、狭い東京も広くなる?!というような妄想を抱いてみたりします」

そんな大西さんのデザインの発想のもととなるのは植物や生き物。旅先などでのたくさんの写真がエピソードとともに紹介されました。

saezuri_99_5.jpg

「マダガスカルは、島国なので、特殊な動物、植物が多く育っています。特にバオパブの木は、枝が根っこみたいですよね?こういうものだと思い込んでいたものも、逆の発想をしても成り立つ事もあるという気づきになります」(写真左)

「フランスの公共の公園には一角に畑があり、公園に来がてら、畑の手入れをしたり、家から新聞折込みチラシを持って来て、ベンチ吟味した後、買い物に行ったり、家の延長空間として、自然に使われています」(写真左下)

「イギリスの『チャールズ・ジェンクスのポートラック・ハウス』は個人住宅のお庭ですが、1年に1度一般に開放されます。日本で美しい芝生と言えば、立ち入り禁止の場所だったり、お金のかけて維持しているゴルフ場やサッカー場。もちろん管理することは必要ですが、芝生の使い方が全然違いますね」(写真右下)

saezuri_99_6.JPG saezuri_99_7.JPG

「昔の日本の生け垣は、葉っぱが利用できたり、実が食べられたり、花が咲いたりと、人間の役に立つ植物が使われていました。暮らしに寄り添うという原点に返って考えてみてもいいんじゃないか、デザインってこういうものじゃないかなと思うんです」

自然と人とのつながりを仕掛けるプロジェクト

次に、大西さんが実際に手がける"自然と人をつなげる仕掛けづくり"のプロジェクトがいくつか紹介されました。

「green supermarket*」の「ファームリゾート計画」「植育プロジェクト」(新潟県)

saezuri_99_8.jpg

「『食育』と並び『植育』も注目されていますが、mindscapeらしいものがなにかできないかと企画したのが、新潟県で進行中の宿泊施設付き、貸し農園のプロジェクト。楽しくなくちゃと思い、丸い畑にしてみました。「身の周りのものは植物からできている」をコンセプトに、種から植物を育て、色んなものに変化させていくワークショップも実施中。
特に食べ物が絡むと、多くの人に関わってもらえるますね。一般には、この春オープン予定です」
green supermarket

NPO南房総リパブリック

saezuri_99_9.JPG

「首都圏から近く、温暖で湿潤な南房総ですが、どんどん過疎化が進み、空き家も目立っています。そこをなんとかしようと、南房総の魅力を発信できないかと建築家や編集者、農家さんたちの仲間10人ちょっとでNPOを立ち上げました。活動の一つですが、1シーズンに1回、地域の人も巻き込んでちょっと"ディープ"な里山学校を開催したりしています。子どものみならず、大人が熱中するイベントです」
南房総リパブリック

洗足カフェ

saezuri_99_10.jpg

「南房総の野菜は味が濃くてとっても美味しい、農家さんを支援できないかと立ち上げたのが、洗足カフェ。実は洗足もお年寄りのまちと化してきていて、最近は子ども連れのファミリーが少し増えたものの、若い人がおらず、カフェというカフェもなく、人の集まるにぎわいがない。そこで日替わりオーナーのコミュニティカフェという形で、運営しています」
オープンして1年3ヶ月、現在日替わりカフェのオーナー募集中とのこと!
洗足カフェ

リバサイ・プロジェクト

「自宅近くの大田区の多摩川のリバーサイドが、生物がそこそこ多様であることを発見。カニやエビがとれるほか、最近はサケやアユまで。渋谷から15〜20分と近くて、自然体験しようとわざわざ遠くまで出かける必要はないんです。行くだけで植物に興味を持つきっかけになる。もっと知ってほしいので、ここでも里山学校のようなものを実施できないか検討中です」

saezuri_99_20.jpg©Akira Uchiyama

ここで多摩川で収穫したという朝採れの雑草のような大根が登場。野生の大根は、生薬としての効能も期待されているそうですが、一味食べたところ風味豊かな新鮮な大根、しばらくすると辛い!非常に辛かったです!

東京で自然とつながるのに必要なことは"めざとさ"

「東京のまちなかで自然とつながるヒントは"めざとさ"。めざとく見てみるといろいろなものがありますよ。ふきのとう、むかご、つくし、よもぎなんかは意外とどこにでも見つけられます。丸の内エリアであれば日比谷公園、やはり土の面積が多いところはいいですね。あとお薦めなのは、中央分離帯。人が歩く場所ではないので、実はいろんな植物が見られ、変化に富んでいて面白いですよ」
日比谷公園

saezuri_99_4.JPG

丸の内さえずり館の展示では、自然とつながる99のヒントが紹介されていますが、100番目は自分で見つけてみてくださいねという意図とのこと。来館者は最後の1個のヒントを自分で見つけて、紙の葉っぱに書き、木に飾ります。なかなかオリジナリティに富んだ、興味深いアイデアがたくさんぶらさがっていましたよ。

展示に立ち寄るだけでも、自然とのつながりを感じられそうです!会期は2月27日(水)まで。2月13日(水)、26日(火)にも関連セミナーが予定されています。お時間あえばぜひご参加ください。
丸の内さえずり館企画展示