足立直樹(あだち・なおき)
1965年生まれ。株式会社レスポンスアビリティ代表取締役。東京大学理学部・同大学院卒、理学博士。国立環境研究所、マレーシア森林研究所を経て、コンサルタントとして独立。「2025年を創る会社」を掲げ、多くの先進企業に対してコンサルティングを提供。日本生態学会常任委員、環境省生物多様性企業活動ガイドライン検討会委員
2. 命の姿から学ぶ「変わり続ける」大切さ
まちが発展するには、生き物のように変わり続けることが必要です。生き物は自分の子孫をなるべく多く残すために、進化や環境への適応を合理的に行います。同様に「まちが持続可能になるために、何をすればよいのか」というテーマで理想を掲げ、それを目指すことが、まちを生物同様に持続可能な姿に導くでしょう。生き物は個体としては死により必ず消滅します。しかし遺伝子は子孫へと引き継がれ、存続するのです。また、個体の中でも細胞レベルではつねに入れ替わるのは、人間でも他の生物でも変わりません。まちの成長においても、そこに住む人や存在するモノは変わっても、新陳代謝を適切に繰り返すことで、まちの機能は存続できるはずです。
また、まちの発展の方向を探る際にも、生き物がつくりあげている生態系から多くのことが学べます。私が大丸有地区の取り組みで感銘を受けるのは環境ビジョンなどのガイドラインを地権者などステークホルダーが集まって作り上げ、それに基づいてまちを運営している点です。生物の世界にも、関わりあいが複雑にあり、直接的な利害関係者だけでなく、周囲とも配慮、協調しあう関係が構築されています。大丸有エリアでのガイドライン策定や運営は、こうした自然界のあり方に沿うものだと感じています。

生物に関する書籍でいっぱいの足立氏の書棚
皇居では毎年多くの渡り鳥が見られる
さらにまちの魅力を高める方法についても、生き物から学べるヒントがあります。生き物はつながりの連鎖の中で、必ず複数の役割を持っています。役割を何重にも持つ生き物は大切な存在になります。まちもさまざまな役割を持つことで魅力が増すのです。
日本の都市は高度経済成長の中で単機能化と効率化が進みました。これとは逆にオフィス空間だけではなく街路樹や公園が整備されて、文化イベントや商業でにぎわうようになった大丸有地区は、多機能化へと向かっていて、そのために魅力が増しているように思います。ただ、各スペースを見るとまだまだ単機能にとどまっています。生き物の世界の成功例を学び、オフィス空間をビジネス以外にも、緑地を憩いの場以外にも、道路を自動車交通以外にも使うという視点が広がっていくことを期待します。
さらにもう一つ別の役割も挙げておくと、この地区はもともと皇居、そして日本の玄関の一つである東京駅に隣接した「日本の顔」という役割があります。そして日本経済の中心地でもあります。この役割を再確認し、それを深めることが、都市、として大丸有には必要なのではないでしょうか。




















