大丸有地区が、1000年先までいきいきとしたまちでありたいという思いのもと、持続可能な環境共生型のまちづくりを目指して掲げた「大丸有 環境ビジョン」。その公表から2年が経過した。環境ビジョンは何をもたらし、また、今後、何をもたらし続けるのか――。研究会座長の野城智也氏に、環境ビジョンの意義と今後の展望について聞く。
大丸有 環境ビジョンについて
http://www.ecozzeria.jp/csrreport/csr2009/vision/vision.html
野城智也(やしろ・ともなり)
東京大学生産技術研究所教授、所長/「大丸有 環境ビジョン研究会」座長
1957年東京生まれ。東京大学大学院工学系研究科建築科専攻博士課程修了(工学博士)。建設省建築研究所研究員、同住宅局住宅建設課係長、同建築研究所主任研究員、武蔵工業大学建築科助教授、東京大学大学院工学系研究科社会基盤工学助教授、同生産技術研究所助教授等を経て、現在、東京大学生産技術研究所教授、同所長。
3. 単体から街区、そして外部地域へ
―エネルギー事業を通して環境コミュニティを育む
―環境対策の包括的な取り組みが可能になると、具体的にどういった点が変わってくると思われますか?
従来、環境問題解決のために精神主義的に我慢を強いられてきたことも、快適に変えていくことができるでしょう。たとえばビル間での「熱融通」を含む街区単位での取り組みや排熱利用、モニタリングに基づいたきめ細かな制御を活用することにより、一律に冷房を28℃に設定して皆が暑い思いをしたり、照明を消して気持ちを暗くしたりすることなく、快適さを保ちながらCO2 を減らすことが可能になります。環境センサーを活用したモニタリングによって、何が科学的に効果的で、何が精神主義的な行動なのか、ということが明らかにすることができるのです。
たとえば、大丸有で行っている「打ち水プロジェクト」は、実際に気温を下げる効果はそれほど大きくないけれど、地域の意識を高めるうえでは重要な役割を果たしています。ところが、これが暴走して、つねにビルの壁面に水を流しておく、ということになると、かえってエネルギーを使いかねません。屋上緑化も、意識やアメニティを高めるという意味では非常に有意義ですが、残念ながら、屋根面積の少ない大丸有地区では、ヒートアイランド現象をすべて解消するほどまでには効果はない。当然、都心の大丸有地区にメガソーラー発電施設をつくるのも現実的ではありません。
むしろ例えば、大丸有地区と提携した地方の都市にメガソーラー施設をつくり、その電力をやり取りしたほうがいい。メガソーラー事業を証券化し、小口化商品化することで個人の出資者を募るなどして、大丸有コミュニティ全体として共同実施*1 するというのも一つの考え方です。大丸有の人たちがグリーン電力を買って、大丸有を支えている他の地域に貢献する――これは、ビジョンで掲げた、「他の地域に支えられていることへの、責任を果たすまち」を実現するものでもあります。
―エネルギー供給側の分散電源をうまくマネジメントし、需要側がそれを無駄なく使うことができれば、スマートグリッドが実現できますね。
ええ。ただし、再生可能エネルギーというのは変動が大きく、扱いにくいものですから、全体の系統に負荷をかけないように、できるだけ地場で消費するのが望ましいのです。先ほど申し上げた、地域間のエネルギーのやり取りは、むしろヴァーチャルでかまいません。
重要なのは、エネルギー需給を核にして、環境コミュニティを創出することにある。たとえば、提携地域の物品を大丸有で売るとか、丸の内朝大学の地方研修施設やグリーンツーリズムの場として交流を深めるなど、メガソーラー事業を通じて、エネルギー問題だけでなく、さまざまな取り組みへと拡げていくことができればと思います。
*1 共同実施
複数の国や地域が、技術や資金を持ち寄り、共同で事業に取り組み、全体として温室効果ガス削減に貢献すること。削減できた排出量を、それぞれの国や地域の削減分として再分配できる。




















