レポート

「エリアのCSR」の価値観 ――大丸有 環境ビジョンの果たす役割

野城智也(東京大学生産技術研究所所長 教授)
by ジャーナリスト 田井中麻都佳

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大丸有地区が、1000年先までいきいきとしたまちでありたいという思いのもと、持続可能な環境共生型のまちづくりを目指して掲げた「大丸有 環境ビジョン」。その公表から2年が経過した。環境ビジョンは何をもたらし、また、今後、何をもたらし続けるのか――。研究会座長の野城智也氏に、環境ビジョンの意義と今後の展望について聞く。

大丸有 環境ビジョンについて
http://www.ecozzeria.jp/csrreport/csr2009/vision/vision.html

野城智也(やしろ・ともなり)

東京大学生産技術研究所教授、所長/「大丸有 環境ビジョン研究会」座長

1957年東京生まれ。東京大学大学院工学系研究科建築科専攻博士課程修了(工学博士)。建設省建築研究所研究員、同住宅局住宅建設課係長、同建築研究所主任研究員、武蔵工業大学建築科助教授、東京大学大学院工学系研究科社会基盤工学助教授、同生産技術研究所助教授等を経て、現在、東京大学生産技術研究所教授、同所長。

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4. 多様性と交通システムの充実がカギ ―魅力ある環境共生都市をめざす

 「エリアのCSR」の価値観04

―今後さらに、持続可能な環境共生型のまちづくりの議論を活発にしていくためには、どのようなアイディアが考えられますか?

やはり情報発信が有効でしょう。この「丸の内地球環境新聞」も含め、さまざまなメディアを通じて議論を重ね、情報発信をしていけば、必ず応援団が出てくると信じています。

また、大丸有に隣接する地域を巻き込んでいくのも手でしょう。神田や銀座のように大手町とは空気の違う町に、大丸有エリア企業の社内ベンチャーのアンテナショップを置くとか、特区的な役割を担わせるなど。

というのは、大丸有のライバルは、ロンドンやニューヨーク、上海などの国際都市といえますが、それらの都市の魅力は、一言で言うならダイバーシティ=多様性にあるわけです。東京の多様性を支えているのは、大丸有であり、隣接する神田であり銀座であり、浅草であり、と考えると、むしろ大丸有だけに囲い込むことのほうがもったいない。多くの人に積極的に東京の多様な面を体験してもらい、結果的に大丸有のファンになってもらうのが理想的ではないでしょうか。効率的なオフィスをいくらつくったところで、インターナショナルスタンダードとしてのパフォーマンスは認められても、ダイバーシティなくして都市の魅力を創出することはできないと思います。

―隣接地域を巻き込むために、具体的にどのようなことができるでしょう?

第一に、交通システムの活用です。現在、大丸有地区を走っている丸の内シャトルを隣接地域まで走らせるとか、コミュニティサイクルの導入などが考えられるでしょう。

コミュニティサイクルについては、今年の10月から5カ所で乗り捨て可能なスポットを設け、運用が始まりますが、これなどは面白い試みですね。自転車で走ってみると、東京はじつに多様で魅力的なことがよくわかります。そもそも東京というのは、世界のメガシティの中では地下鉄網の発達により、交通に関してはもっとも環境効率のいい都市ですから、大丸有のような交通結節点となる都心地区には、さらにオフィスを集積させてもかまわない。むしろ、今後のコンパクトシティ化に対応するためにも都市機能をさらに集約させ、一方で公共交通機関をより充実させ、電気自動車の充電ポイント*2 を設けたり、オンデマンドバス*3 のシステムを整備したりするなどして、より効率的に移動できる多様な手段を設けることが望ましいと思います。

「エリアのCSR」の価値観05

このように、今後は交通とエネルギーといった具合に、複合的な課題を一つのストーリーにまとめる必要が出てくる。だからこそ、全体のビジョンを共有することが不可欠なのです。もっとも現状では、ビジョンに従わなかったからといって規制を受けるわけではないのですが、今後は、ビジョンに従わないことが、メンバーシップから外れるなど、結果として社会的な制裁を受けることになるくらいに、ビジョンが広く認知されていくことになればと思っています。そのためには、さらに多くの人たちにビジョンづくりに参加していただくことで、自分たちの環境ビジョンである、という実感を共有しながら、ともに考え、行動していければいいですね。

*2 充電ポイント

電気自動車用の充電設備がある場所。新丸ビルや丸の内鍛冶橋駐車場も含め、エリア各所のビル駐車場に充電器が設置されている。

*3オンデマンドバス
利用者の要望に応じて、基本のバス路線以外の経路を迂回するなど、希望の時間に利用者をピックアップする路線バスの運行形態。

MADOKA's EYE今回の取材を終えて、編集記者からのヒトコト

「いいことをしていると、必ず、賛同してくれる応援団がついてくると信じています。 ちょっとロマンチストすぎるかなぁ......」と、はにかみながら笑う野城先生。 理想を追い求めながらも、現実にできることと、できないことを冷静に見極め、 よりよい道を探ろうとされている野城先生の真摯な姿勢に、とても感銘を受けました。 取材を終え、東大・先端研の中庭で先生のお写真を撮影していると、 秋風に舞う無数のトンボの姿が??。 渋谷からほど近い場所にありながら、ちょっとした緑があるだけで、 動植物の生息域になるということ。 改めて、東京の多様な魅力を感じたひとときでした。

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