レポート

生命誌から地球環境問題を問い直す ―生命を基盤にしたまちと時代を築く

中村桂子(JT生命誌研究館館長)
by ジャーナリスト 田井中麻都佳

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nakamura

中村桂子(なかむら・けいこ)

1936年生まれ。東京大学大学院理学系研究科生物化学専攻博士課程修了。理学博士。国立予防衛生研究所を経て、三菱化学生命科学研究所入所。早稲田大学人間科学部教授、JT生命誌研究館副館長、東京大学先端科学技術研究センター客員教授、大阪大学連携大学院教授などを経て、現職。最近の著書に、『生命誌の世界』(日本放送出版協会)、『「生きもの」感覚で生きる』(講談社)、『ゲノムが語る生命-新しい知の創出』(集英社新書)、『「子ども力」を信じて、伸ばす』(三笠書房)など、著書多数。

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3. 自然は区別できない一つのものである
――生命を基盤にした時代をふたたび

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人間は自然の中で生き物として誕生し、自然から食べ物などの恵みを受けて生きてきました。その結果、あらゆる物に霊の存在を感じる「アニミズム」が生まれます。いわゆる自然信仰です。

ギリシャ時代になり、プラトンがイデア論を説き理性が生まれ、ギリシャ神話の中で世界の始まりや神々の誕生、人間の誕生が語られ、新たなに「神」が生まれました。さらに中世ヨーロッパではキリスト教の浸透により、神は絶対的な存在となり、人間は神によって特別な存在として認められ、自然の支配者としての地位を与えられるのです。そして近代を経て現代に至ると、科学は神を殺してしまう。人間がすべてを司り、自然を支配して、人工物をつくり出すようになってきたというわけです。科学技術文明の時代であり、私たちはここにいます。

科学技術文明の中での自然は、3種類あります。?は暑さや寒さなど、私たちが暮らすうえで面倒くさいと思う自然。この自然を技術で制御して、快適さを手に入れてきました。?地震や津波や台風など、現代の私たちの技術をもってしてもどうにもコントロールできない恐ろしい自然です。そして?は、私たちの目を楽しませる美しい自然。

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このなかで、科学・技術の発展の大きな原動力となったのが、?の面倒な自然の制御といえます。確かに、快適に暮らせるようになったことは素晴らしいことです。ところが、この面倒な自然をコントロールしてきたことが、恐ろしい自然をより恐ろしくしているのではないか、という危惧が生まれてきました。恐ろしい自然がより恐ろしくなっているのかどうか、もしなっているとしたらその原因は何か、についてははっきり解明されていませんが、最近は実際に、気象の荒れ方が激しい気がします。もしかすると、それは私たちが山ほどCO2を排出した結果かもしれません。さらに、愛すべき美しい自然が壊れ始めていることは、ご存知の通りです。

ここで生物学者として声を大にして言いたいのは、自然は一つだということです。現代文明は、自然を三つに区別できるかのようにして見てきたけれど、地球環境問題を解決するためには、自然は一つであると認識し直すことが不可欠です。そして、今一度、生命を基盤にする時代をつくるしかないと考えるのです。自然は一つであり、人間は自然の中に含まれていることを認識した上で暮らしやすさを求め、そのための新しい技術を生み出して生きていくということを意味しています。このように価値観を変えない限りは、CO2 削減や生物多様性を口にしても、本質的な解決策にはならないというのが私の考えです。

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