レポート

「パッケージ型インフラ海外展開」と環境共生型都市

~都市のショーケースとしての大丸有の役割
町田史隆 内閣官房 国家戦略室 政策企画調査官
野城智也 東京大学生産技術研究所教授
by ジャーナリスト 田井中麻都佳

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町田史隆

町田史隆(まちだ・ふみたか)

1969年横浜生まれ。1992年、日本輸出入銀行(現日本政策金融公庫国際協力銀行)に入行。ロンドン駐在員、ハーバード大学研究員、アジア大洋州ファイナンス部調査役(東アジア担当)、インベストメントバンキング部参事役、シンガポール首席駐在員等を歴任。2009年より現職。前職のシンガポール首席駐在員では、アジア地域における日本企業の輸出・海外投資・海外インフラプロジェクト等のほか、ファンド・出資・証券化等を所掌。日本経済新聞「経済教室」への寄稿(2006年5月)等あり。

野城智也

野城智也(やしろ・ともなり)

東京大学生産技術研究所教授、所長/「大丸有 環境ビジョン研究会」座長 1957年東京生まれ。東京大学大学院工学系研究科建築科専攻博士課程修了(工学博士)。建設省建築研究所研究員、同住宅局住宅建設課係長、同建築研究所主任研究員、武蔵工業大学建築科助教授、東京大学大学院工学系研究科社会基盤工学助教授、同生産技術研究所助教授等を経て、現在、東京大学生産技術研究所教授、同所長。

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2. 求められるのはインテグレーションの力
―大丸有を都市のショーケースとして活用する

野城: 私たちエンジニアも同様の問題意識をもって、深刻に受け止めているのですが、正直申し上げると、戦略が現実とかけ離れていて、美辞麗句を並べているように感じるところがあります。というのも、日本にはパッケージ化を進める上で必要な、リスクの内容や評価を契約の専門家に伝えつつ交渉ができる人材が圧倒的に不足しているので、その育成が急務だということを言い続けているのですが、その声は中央の方々に届く前に途切れてしまうんですね。そのために結局は海外の国家的大規模プロジェクトで大失敗してしまうということが出てきてしまうのだと思います。

町田: おっしゃる通り、特に全体としてどうやって儲けていくのかという視点が重要だと思います。特にポリティカル・リスクの評価や対応については政府部門からのサポートが必要ですし、環境リスクや採算性リスクなど専門性が必要な分野については、関係者を交えて議論・確認する枠組みが必要だということで、早急に基盤整備を進めているところです。

野城: 銀行など金融機関・投資家から見えるリスクと、技術者から見えるリスクは違うわけで、それらを併せたリスクにちゃんと対応していくことが重要ですね。甘い言葉を並べるだけで通用するほど世界は甘くありません。日本の弱みを補完するための能力構築や連携に対してしかるべき投資をしていくことが重要です。私たちはもう一度、地べたに這いつくばって、マイナーリーグからメジャーリーグに這い上がっていくような、ひたむきな気持ちがなければならないのに、皆が昔の成功体験に縛られて、自分たちのやり方を変えようとしないのは大いに問題だと思います。もっと知恵を絞らなければ。

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たとえば、環境共生型都市づくりをパッケージ化して海外に売っていく場合、自分たちの提案や能力をきちんとプレゼンテーションしていくことも重要だと思います。いくら日本の企業が、こんなにいい環境技術がありますよと言ったところで、実物や実例がなければ海外に売り込むのは難しい。その場合に、その環境ショーケースとして、大丸有を活用することができるのではないかという話があります。

町田: 海外でプロジェクトをやるときには、実績を問われる部分が大きいので、大丸有をショーケースに、というのは非常にいい提案だと思います。ただ、単に実績を見せるだけではだめで、他国の実績や長所、短所を吸い上げて、集約していくことが必要だと考えています。

たとえばシンガポールの取り組みなどはとても参考になります。まず、マレーシアからの分離独立後の国づくり、まちづくりに関して、東京23区ほどの面積の国土を、どういう経緯で開発をしてきたのか、またどういう想いでつくりあげてきたのか、ということを経済開発庁の幹部クラス全員が一人ひとり自分の言葉で語れます。シンガポールでは、この政府部門における知の集積を活用しようと、政府系のコンサル会社としてシンガポール・コーポレーション・エンタープライズという組織をつくり、ここを窓口として国家間プロジェクトを進めています。

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環境共生型都市といっても実に多様なまちづくりが考えられます。エコを目指した環境都市なのか、環境と健康を組み合わせた高齢化に対応したような都市なのか、IT産業や研究者が集うナレッジ都市なのか、あるいは医療ツーリズムなども含めた観光都市なのか、コンセプトはいろいろですよね。シンガポールは、その窓口機関を通じ、そういった相手方のニーズをきちんと汲み取るとともに、まちづくりのコンセプト固めから関与します。そして、そのソリューションとして、シンガポール企業の参画を促しながら、必要な技術・設備などを上手くインテグレートしていくのです。また、まちづくりはいわば不動産ビジネス。不動産会社が主導して参画しているところも特徴的で、1社で受注しきれない場合は複数社で協力し合いながらリスクシェアをしています。水や蒸気、電力といったもの単体で受注するのではなく、不動産をコアにしたビジネスモデルを構築してオールインで儲けようという。彼らは、どこで利益を出すのか、きちんと青図が描けているんですね。特にこの点は日本に欠けている要素だと痛感しています。すなわち、シンガポールは、相手国のニーズ把握、コンセプト作り、システム・インテグレーション、利益を生み出すビジネスモデルといった一連の形を持っているのです。

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