レポート

自動車の代替として自転車を活用する ――都市交通のエコ・スタイル

疋田智(自転車ツーキニスト)
by ジャーナリスト 田井中麻都佳

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疋田智

疋田智(ひきた・さとし)

1966年宮崎県生まれ。1989年、東京大学文学部美術藝術学科を卒業後、TBSに入社。現在は、TBSテレビ情報制作局情報センターでプロデューサーを務め、昼の情報番組「ひるおび」を担当。ほぼ毎日、自転車通勤をしていることから、自らを「自転車ツーキニスト」と名づけ、この言葉を広めた。都市のモビリティの一つとして、環境負荷低減を目的とした自転車活用を提唱し、NPO法人自転車活用推進研究会理事、学習院大学生涯学習センター非常勤講師を兼務。著書に、『自転車ツーキニスト』(光文社)、『自転車の安全鉄則』(朝日新書)、『自転車生活の愉しみ』(朝日文庫)、『天下を獲り損ねた男たち:続・日本史の旅は、自転車に限る!』(枻出版社)など多数。

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5. 自転車を取り入れたエコなまちの理想像とは?
――疋田さんが語る、大丸有の未来

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疋田: 理想を言えば、大丸有というのは東京の中心地なのだから、基本的に自動車を締め出し、ゆったりとした歩道を設け、車道を自転車と公共交通機関によって使用するのがいいと思います。もちろん、荷捌き用とか障害者用など、必要な車もありますから、その場合は、ステッカーをつけるなどして許可のある車だけ決められた時間帯に進入できるようにすればいい。

そもそも、「エコであれかし、車は通る」というのは矛盾した話なんですね。安全についてもまったく同じで、まちに人を呼び戻したいのであれば、車を締め出せば自然と人は戻ってくるものです。そのような例は、ドイツやオランダ、デンマークなどでは枚挙にいとまがなく、知らないのは日本人だけ、といっても過言ではありません。

もともと、日本は対GDP比で考えると、CO2 排出量がもっとも少ない、最優秀国なのです。つまり、1ドルのGDPを生み出すために排出されるCO2を算出して他国と比べた場合、もっとも少ない。にもかかわらず、海外の人たちは、日本のことをそうは見ていないと思います。

たとえば東京は、おそらく、エコシティとして知られるアムステルダムやコペンハーゲン、ハノーバーなどと同類ではなく、発展はしているけれど環境対応が遅れているバンコクや上海、ハノイなどと似た印象をもたれているのではないでしょうか。そう見られてしまうのは、やはり、自動車の交通量の多さに加え、エコな移動体がうまく生かされていない点にあります。一方、狭い歩道には、歩行者だけでなく車椅子の人も視覚障害者も押し込められている状況です。安全もエコも区分されず、確保されていないように映るわけですね。

省エネなどCO2 の排出削減に関して、日本の産業界は大変な努力をしてきました。ところが、運輸・交通と家庭に関しては、日本は努力の余地が大きすぎるといわざるを得ません。そこをなんとか解決し、なおかつ環境への貢献をアピールすることが重要だと思います。アピールという意味では、丸の内ほどうってつけの場所は他にありません。東京駅周辺には外国人就業者も多いし、旅行者も多い。彼らから見れば、丸の内=東京のイメージと言ってもいいでしょう。その東京の顔に、トランジットモール(バスや路面電車、LRTなどの公共交通機関に開放されている歩車共存道路)ができれば、これは画期的で、とてもカッコイイことだと思います。

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疋田氏は、都市の中心地の理想像としてトランジットモールを提唱する。しかし、実行に移していくためには、ハード面の制約だけでなく人々の意識を変えていく必要があるだろう。

疋田: まちづくりのヒントが、郊外のショッピングセンター増加にあります。地方都市の中心街では空洞化が進み、いわゆるシャッター通りになってしまっている場所が多く見受けられます。そうした場所では、郊外の大型のショッピングセンターへ利用客が流れているわけですが、なぜ、わざわざ不便な郊外まで行くのでしょうか。ある調査によれば、郊外ショッピングセンターのヘビーユーザーである若い主婦の答えで多かったのが、「施設内に入りさえすれば、子どもの手を離せるから」という理由でした。つまりそれが意味するところは、「車に轢かれないから」ということでしょう。郊外のショッピングセンターの方が、安心してショッピングが楽しめるということなんですね。

そのことからもわかるように、まちの中心部には自動車だけでなく、実は自転車も進入不可のエリアをつくるのが望ましい。たとえば、中心地の直径500mくらいは人しか入れない、直径5kmくらいのところには人と自転車しか入れない、自動車はそれ以外のところを走る、というのが理想的です。ここに、トランジットモールの結節なども加えていく。実際に、ドイツのミュンスターやハノーバーなどは、すでにそういう理想の都市が築かれています。大丸有でもエコと安全を両立したまちを築き、世界に大いにアピールしていただきたいと切に願っています。

取材協力: Tokyo Bike!!(新しいウィンドウが開きます)

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ときに絶妙なたとえ話を交えながら、軽妙な語り口で語ってくださった疋田さん。さすがはテレビ番組のプロデューサー。そのお話はいずれも、納得のいくものばかりで、「なるほど?」と頷きっぱなしの1時間半でした。自転車に乗る醍醐味は、エコに貢献できるのはもちろんのことですが、健康にもよく、何よりも、都市の地形を体感できることにあると疋田さんは言います。自転車に乗れば、必ず思わぬ発見がありますよ、という疋田さんの言葉に、思わずクロスバイクが欲しくなりました。

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