猪尾愛隆(いのお・よしたか)
「もっと自由な音楽を」という想いで設立された、音楽ファンドを運営するミュージックセキュリティーズ(株)取締役。大学院卒業後、(株)博報堂に入社。2005年に退社の後、同社証券化事業部担当として現職に。現在では、音楽に加え、飲食店や酒蔵、農業、スポーツ、途上国のマイクロファイナンスなど多様な分野の最前線で戦う事業者に必要な資金を個人が出資できる「セキュリテ」を運営中。東京都出身。
http://www.musicsecurities.com/
小松俊昭(こまつ・としあき)
金沢工業大学研究支援機構 産学連携室コーディネーター、合同会社「家守公室」代表。日本開発銀行ならびに日本政策投資銀行でロス勤務、地方開発部、交通・生活部、北陸支店勤務などを歴任した後、金沢工業大学へ出向。2006年に日本政策投資銀行を退職して現職に。地方の歴史や文化に根付いた、地域資源を生かす「地域資源活用型産学連携」プロジェクトの実現を目指して、さまざまな活動を展開している。大丸有「都市の食」ビジョン検討会座長。埼玉県出身。
http://www.llc-yamori.jp/index.html
曽根原久司(そねはら・ひさし)
大学卒業後、金融機関をはじめとする企業経営コンサルタントを経てNPO法人えがおつなげて代表理事に。地域共生型の市民ネットワーク社会づくりを目指して、まちづくりや環境保全、保健・医療、自然教育など広範な事業に取り組み、2009年には関東ツーリズム大学を立ち上げる。内閣府地域活性化伝道師。長野県出身。
http://www.npo-egao.net/
古田秘馬(ふるた・ひま)
プロジェクトデザイナー、株式会社umari 代表。慶応大学中退。1999年にノンフィクション本「若き挑戦者たち」を出版。2000年渡米、NYにてコンサルティング会社を設立。2002年より東京に戻り、山梨県・八ヶ岳南麓の「日本一の朝プロジェクト」、大丸有の「丸の内朝大学」など、数多くの地域のプロデュース・企業ブランディングなどを手がける。2009年農業実験レストラン「六本木農園」を開店。東京都出身。
http://www.umari.jp/
持続可能な都市づくりを進めていく上で、周辺地域との連携や協力は欠かせない。大丸有は、大手町・丸の内・有楽町地区再開発計画推進協議会が2007年に策定した環境ビジョン「未来へつなぐまちづくり」が掲げる「他の地域に支えられていることへの、責任を果たすまち」という理念に基づき、他地域との連携によるまちづくりに取り組んできた。新丸ビルが利用している再生可能エネルギーは、青森県と北海道から送られてくる100%生グリーン電力だ。しかし、2011年3月に発生した東日本大震災により、東北・関東地方は大きな被害を受けた。都市と地方が共生しながら持続的に発展していくことを可能にする新たなコミュニティとは? 「3.11以降」という視点から見たときに大丸有に必要なものは何か? さまざまな分野で都市と地方をつなぐ取り組みを続ける4人の担い手たちに語ってもらった。
1. 都市と地方の新たなつながりが生まれている
東日本大震災に伴う食料や電力不足を経験して、都市に住み、働く者は周辺地域にどれだけ頼っていたかを痛感した。一方、学び、ファンド、農業、トラストなど、新たな切り口で都市と地方をつなげようとする取り組みが始まっている。
■ 朝大学の受講者が被災地支援、ファンドによる資金調達の取り組みも
古田: 丸の内朝大学には、これまでにのべ3,500人ほどの受講者がいます。朝の出勤前に仕事に直接関係のないことをわざわざ学ぼうという人だけに、テンションが高くて人生を楽しもうという志向の人々が多い印象です。会社でやや浮いている人が多いのかもしれません(笑)。自宅でも職場でもない第三の場所を「サードプレイス」と呼びますが、私たちは朝大学を、仕事のしがらみでもプライベートのつながりでもない第三の集まりと位置づけて「サードコミュミティ」と呼んでいます。最近はより深く、そして連続して学んでもらえるように、朝の時間帯を有効に生かすことに加えて「都市と地方」という視点を入れ込むようにしています。

コミュニティアクション for 東日本大震災の一環として開催されたミーティング
温泉、ニッポン再発見、地域プロデューサーなど多様なクラスに共通するコンセプトは、さまざまな地域の人から信頼してもらえるコミュニティを育ててること、そして地域の価値を再評価して新しいコンテンツを生み出す場にしていくことです。そのためにはその場所に行くだけではなく、まず生産者に丸の内に来ていただき、地域について学んで、そして訪問して再会し、体験・体感するという手順を踏むことが大事です。このプロセスを経ることで参加意欲が高まっていく人が増えていきます。さらに朝大学では、東日本大震災が発生して間もなく「コミュニティアクション for 東日本大震災」をスタートしました。これは、受講者やOB・OGの方たちが被災地を「自分たちの場所」であると反応して行動に移したものです。
丸の内朝大学
丸の内朝大学 コミュニティアクション for 東日本大震災
猪尾: 古田さんが「学び」を通じて都市と地方をつないでいるとすれば、ミュージックセキュリティーズのキーワードは「お金」です。初めは、CD制作などの費用を個人のファンから集めることで、アーティストがもっと自由な音楽づくりができる環境を生み出そうと、2001年に音楽ファンドを立ち上げた、アーティストを応援するためのファンドです。その後、酒蔵や料理人、農家などを個人的に応援したいファンがいるのではないかと考えて、ファンドがお手伝いする対象を音楽以外にも広げました。今では約110本のファンドがあり、14業種、約50の事業者の方々に利用していただいています。
4月には当社が運営する資本市場をベースに、「セキュリテ被災地応援ファンド」が立ち上がりました。被災地では、これまでよい仕事をしてきた方々がすべてを失った上に、資金繰りが苦しくて仕事や生活を再建できない状況が続いています。私たちは、現在までに気仙沼市などで合計6社のファンドを募集しています。どこも工場が全壊するなど震災により大きな被害を受けた企業ばかりです。出資者からお預かりしたお金の半分を返却無用の応援金としてお渡しし、半分をファンド資金として出資する仕組みです。被災地復興の重要な要素となる事業の再建資金を、1口1万円で個人の方から広く、早く、直接集めようという取り組みです。
私が被災地でお会いしファンドを利用していただいている会社の方が、「出資いただくということは、出資者の方一人ひとりと、復興するという約束をしている気がします。いいプレッシャーです」とおっしゃっていました。皆さんが、一人ひとりが出資してくださることによって、再建に必要なお金だけでなく、復興への勇気や元気も与えられているのだ、と感じています。その会社では海鮮丼を出す食堂をつくる予定で、出資者には復興したあかつきに海鮮丼を1万円で食べ放題という特典があり、数年後に食べに行く楽しみが生まれます。それを期待して待っていただくことで気持ちがつながり続けるのだと思います。
ミュージックセキュリティーズ(株)
■ 社員が耕作放棄地で育てた酒米が純米酒に

純米酒「丸の内」は、協働による「空と土プロジェクト」の成果の一つ
曽根原: 私は、バブル絶頂期に東京で経営コンサルタントの仕事をしていましたが、バブル崩壊のインパクトが強く、不良債権の処理や産業と雇用の空洞化など日本の先行きがさまざまなレベルで不透明になりました。食料、木材、エネルギーなど日本の総合的自給率も下がる一方で、地域共生型の市民ネットワーク社会をつくる必要があると考えて、今のNPOを立ち上げたのです。
この「丸の内」という純米酒は、三菱地所グループと連携して2008年から続けている空と土プロジェクトの成果です。都市と農村が交流しながら、それぞれが抱える課題を認識してともに活性化を目指すプロジェクトで、北杜市にある耕作放棄地だった棚田を同社社員の皆さんに開墾していただき、野菜やお米をつくってきました。2010年度は酒米をつくって山梨県内の蔵元「萬屋醸造店」が仕込んで商品となりました。現在、新丸ビルなどの飲食店舗で取り扱ってもらっています。
NPO法人えがおつなげて
空と土プロジェクト
小松: 私は大学を卒業してから25年間ほど日本政策投資銀行で働き、金沢転勤を機に退職して現在は金沢工大で産学連携のコーディネートをしています。今の仕事についたきっかけは、20年ほど前の米国駐在時にシリコンバレーのカフェに通ううち、新しいものを生み出すのには「場の持つ力」が重要だと気づいたためです。
今年の春からは大学院生として、都市と農村の関係性について、不動産やお金などの資産をいかに分かち合うかという視点から学んでいます。不動産については、英国発祥の「信託」という考え方があります。教会など信頼する相手に不動産などの財産を寄贈し、託された人は収益を上げて返す、いわゆるトラストと呼ばれる仕組みです。被災地では津波にのまれるなど無価値に近い状況になった資産に対して、将来に向けた価値付けを行わなくてはならないため、トラストの仕組みを生かせないかと考えています。
金沢工業大学産学連携機構























