レポート

大丸有の「緑」と「アート」は、まちびとにどう効くか

「1000年つづくまち」にむけて都市機能に欠かせない緑、そしてアート
by 山下柚実

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鈴木誠司

鈴木誠司(すずき・さとし)

株式会社日比谷アメニス取締役 
1961年神奈川生まれ。1984年に株式会社日比谷花壇に入社。日比谷花壇グループの室内緑化専門会社である株式会社インテリアスケープ(現株式会社グリーバル)を経て株式会社日比谷アメニスへ。営業本部、総合経営企画室などを兼任し2010年より現職。


恵良隆二

恵良隆二(えら・りゅうじ)

三菱地所株式会社 美術館室長
1951年生まれ。緑地学ならびにランドスケープ・エコロジーを学んだ後、三菱地所株式会社に入社。設計業務を経て、横浜みなとみらい21、丸の内再構築の開発業務に従事し、2005年より丸の内の活性化・街ブランド推進を担当し、現在は三菱一号館美術館の運営に取り組んでいる。

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2. 統一化した緑化を進める「まち」

――「大丸有」では中庭や壁面・屋上の緑化を積極的に進め、街路樹等もずいぶん整ってきましたが、このまちの緑化をどのようにご覧になっていますか。また、まちの緑化はどうあるべきだとお考えでしょうか

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仲通りの並木道

恵良: 人々の働き方は今、労働集約型から知識集約型へとシフトしてきています。さらに「知識創造」へと進化していくにつれて、人と人とのコミュニケーションはますます大切になってくる。そうした時代に、精神や身体に良い効能や影響を与える「まちの緑のあり方」を考える必要があります。
たとえば、仲通りの並木。あの通りはバスなどの大型車両が通るわけではないのに、他の通りと同じ方法で剪定することが正しいのかどうか。問い直しました。たしかに、一般的な剪定方法で並木を整える方が、管理はしやすいでしょう。しかし、それでは目に入る緑の量「緑視量」が減ってしまう。本当にそれで良いのか。仲通りには、緑が上へと拡がりながら樹幹を形成するような樹木を植えて、なおかつ、できるだけ剪定しないほうが、「緑視量」は増えるわけです。樹幹ができると夏には木陰ができ、そこにベンチを置けば、心地良い空間が生まれる。街路を単に「通行する空間」としてではなく、「快適に過ごす場所」としてとらえるなら、並木の剪定方法を少し変えるだけでも、このようにいろいろな可能性が広がっていきます。人にとってより心地良い場所にすることができるんですね。
今ビルの屋上には、デザインを生かした「庭」が生まれていますし、屋上を農業生産の場にすることだってありうる。鳥や昆虫がやってくるビオトープやエコトープにもなりうる。都市に集う人々に喜ばれるインフラストラクチャーとしての緑のあり方は、まだまだ多彩に広がっていくと思います。

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壁面緑化:仲通りのガーデニングショー(2006)

鈴木: おっしゃるように、場所によって緑のデザインは大きく変わるべきだと思います。これまで日本では、街路樹はいわばファニチャー的なものとして扱われ、どこでも同じような風景ができてしまう傾向があったと思います。また、税収入が潤沢にあった頃は、国や各自治体などが音頭をとって緑を増やしていく流れがありました。日本人一人あたりの公園面積は9.1?ほど。それを13?まで増やしていく方向が示された時期があったのですが、いったん経済が悪化し税収が減ると、そうした動きはぱたっと止まってしまって、民間にお任せとなる。緑というものを「都市に不可欠な要素」としてとらえるのではなく、ちょっとしたお飾り・演出物として扱っている現実が、見えてきます。
屋上緑化壁面緑化の技術に関しては、日本が世界一と言っていい。そうした優れた技術を持っているのですが、海外に比べ日本の都市では緑の使い方が上手とは言えませんよね。一人あたりの公園面積も、ニューヨークは24?、パリは15?程度ある。街路樹も、ヨーロッパなどではファニチャーとして扱うのではなく、生き物として共存しているので、姿・形がきれいなんです。生き物として付き合えば、おのずと管理の仕方も違ってくるし、長期的な視野にたった計画もつくられていくはずです。
街路樹についてもう一つの問題は、縦割りの管理体制でしょう。国道は国、県道は県、市道は市、民間は民間と、管理体制が統一できていない。設計する時のデザインもばらばら。これでは非効率的だし、エリア全体の「景観」にとってもまとまりが生まれない。しかし、ここ「大丸有」は統一的な緑化が進められている。その意味でも、貴重なエリアだと思います。

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恵良: 「大丸有」の緑について考えてみると、純粋な自然環境と、都市化してきた環境、その両極の軸のどこにポジショニングするか、がポイントだと思います。
まず、江戸城周辺の歴史の中で育まれてきた、このエリア固有の自然・植生について、きちんと踏まえる必要があるでしょう。また、地理的に俯瞰すれば、このエリアには皇居という巨大な緑があり、東へ2kmもいけば東京湾と隅田川という水辺がある。西には新宿御苑が、北には上野公園がある。東京は「緑のかたまりの間に都市がある」わけです。その緑のかたまりをつなげば、緑のコリドー(回廊)ができる。あるいは、江戸時代の大名屋敷の区画に沿って、公開空地(建築基準法に基づいて設けられたオープンスペース)に「エコトープ」をつくる、といったこともありえるかもしれない。日本橋川の上を「エコ・コリドー」として、「水際の緑化空間」を水路とともにつくっていくことも、可能かもしれない。
「ビオトープ」という生物的空間に、地域的・地質的な要素を加えると、その場所ならではの「エコトープ」になります。その「エコトープ」の間を、昆虫や鳥が行き来すれば、この道がまさに「エコ・コリドー」になるんですね。
自然科学・生態学的なネットワークの上に、人が歩いて楽しむという「ヒューマンスケール」の緑化空間ができていく。「大丸有」は、そうした両立や連携が可能なエリアなんです。

鈴木: そうしたネットワークの構想は、今、国の施策でもとりあげられていますね。水と緑のネットワークの再生は、都市計画にとっても大切だと思います。緑は、人にとって心地良いだけではなく、防災(安心・安全)の拠点にもなるし延焼防止の役割も果たし、都市の安全に役立つはずですから。ただし、都市は地価が高いので、民間に任せておくだけでは、公共的な取り組みはなかなか出てこない。やはり、リーダーシップが必要ですね。その意味で、「大丸有」のように、「まち」を統一的に整備していく事例が見えてきたことの意味は大きいと思いますよ。

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