4. まちづくりとの連携で、エコの広がりを期待
―オフィスの提案による働き方の変化へ
コミュニケーション深化と新たな課題
このオフィスの交流スペース「ライブラリーコート」では、働く人が楽しみと仕事を両立させ、密接に交流している姿が見られる。「この前のミーティングありがとう」「この仕事のアイデア募集」などの伝言や、「役立つビジネス書を紹介します」などのお知らせの書かれたメモが貼られ、社員がお茶などを飲みながら談笑している。楽しみながら、コミュニケーションが深まり、仕事の効率が高まっている様子がうかがえる。
コミュニケーションの深化や社員の気付きは、放置していては行われない。このオフィスでは、社員が「運営」「コミュニケーション」「共通ルール」を検討するプロジェクトを定期的に開き、オフィスの運用や仕組みの在り方を検証している。
しかし先進的な工夫が織り込まれたオフィスにも、改善するべき課題はあるという。社員の大半は取り組みに賛同しているが、その熱意には個人ごとに当然差がある。「全員が動き出すきっかけとなるイベントを開催して、全員で盛り上げようとしています」(寺本さん)という取り組みをしている。
また何が最も効率的な働き方か、試行錯誤は続いている。研究や開発職は、フリーアドレスよりも固定席に座って集中して考え続けた方が、成果を得やすいという意見が社内にはあり、「まだ結論は出ていません」と、寺本さんは話す。
さらにコミュニケーションの質を深めようという議論もある。「『組織をオープンにすること』と『コミュニケーションの活性化』という取り組みの方向は、正しいと思います。その質を向上させ、社員の知恵を社内に広げ、ビジネスにどのように結びつけるのか。そして常にアイデアを生み出し続けるにはどうすればいいのか。仕掛け作りを今後は考えたいです」と、植田さんは課題を語った。
まちづくりとオフィスの連携による新しい働き方の提案へ
エコ商品、そしてこのオフィスで得た知識や経験、そして生み出した商品はビジネスの成果につながる可能性がある。厳しい経済情勢を前に、オフィス製品の刷新に消極的な企業が多い一方で、「良いものを長く使う」という考えから高品質のエコ商品を購入する動きもあるのだ。「間伐材を使った木のテーブル、環境配慮型の商品、知的照明などはお客さまの関心も高いので、今後に売り上げが増えることを期待しています」(寺本さん)という。
コクヨがこのオフィスで提案するような働き方は広がっていくのだろうか。「環境の保護と効率性の追求に反対する人はいませんから、その方向に進むでしょう。ですが広がりを加速させるには仕掛けが必要と思います」と、植田さんは予想した。オフィス備品を含めた「エコ商品減税」などの政府の支援、また企業や大学などの研究機関、自治体などとの連携で、新しい働き方が広がることを期待する。
「まちやビル作りのストーリーの中でオフィスを考えれば、新しい働き方が提案できる可能性があります。大手町、丸の内、有楽町では企業、行政、ビルオーナー地権者が連携して街を作る素晴らしい取り組みを行っています。このような動きの中に入りながら未来のオフィスのあり方を考えたいですね」(植田さん) 。
コクヨのオフィスを見ると、仕事の中でエコとクリエイティブは両立できることが分かる。それは空間や最新機材という「ハード」の導入を人々の気付きという「ソフト」面の変革に結び付けることで生まれ、会社の中と外との「良いコミュニケーション」の存在が前提となっていた。
やがて来る「グリーンワークスタイル」は、「エコライブオフィス」で見たような姿になるのかもしれない。それは楽しく、「ひらめき」や「ここちよさ」のある、楽しく希望に満ちたものになりそうだ。
* 続編記事:
実践する企業の現場2・日本興亜損保・制度づくりと運用がCO2を減らす―情報共有と意識変革
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取材協力: コクヨ株式会社 (新しいウィンドウが開きます)
ISHII's EYE今回の取材を終えて、編集記者からのヒトコト
シンクタンク・ソフィアバンク代表の田坂広志さんは著書『未来を予見する5つの法則』(光文社)の中で「古く懐かしいものが進化をして新しい形で登場してくる」という、ビジネス法則を指摘しています。「エコライブオフィス」を取材して、この言葉を思い出しました。最先端の設備に囲まれているのに、そこでの働き方がなぜか「懐かしい」のです。木陰で話し合ったり、植物を愛でたり、楽しそうにそして熱っぽく仕事を議論したりなどの光景がありました。働くことの意味とは「仲間と協力し、社会に良い影響を与え、そこから成長と達成の喜びを得ること」と、私は考えています。そうした姿を、最先端の設備を持つオフィスで見つけたことは、とても印象に残りました。
環境ジャーナリスト石井孝明(新しいウィンドウが開きます)






















