レポート

制度づくりと運用がCO2を減らす――情報共有と意識変革

実践する企業の現場2・日本興亜損保
by ジャーナリスト 石井孝明

  • 印刷する
  • 感想メール(メーラーが起動します)
  • この記事をTwitterに投稿

前へ 1 2 3 次へ

2. 効果的な行動を生む正確な情報
?自社を分析し、CO2策定の独自基準を作る

自らができることに環境問題を落とし込む

report100405_02_04.jpg

保険会社は生産設備を持たず、CO2をそれほど排出しない。しかし日本興亜損保はその削減に、なぜ熱心に取り組むのだろうか。「業界の置かれた状況と、社会貢献を考えたことが取り組みのきっかけです」と、経営企画部の嶋田さんは説明した。

CO2の排出増加を一因とする温暖化の進行によって、異常気象の増加が懸念されている。自然災害の増加は保険会社の支払いが増えることになるため、それを止める活動が必要になる。

さらに同社は社会に貢献することを企業の目標にかかげ、自社のビジネスを通じて環境保全に力を入れることを表明している。その一環として、同社は2008年に「エコ・ファースト企業」に認定された。この制度は企業が環境大臣に自らの環境保全に関する取り組みを約束してそれを実行する制度だ。この中で同社は社業を通じたCO2など温室効果ガス削減を約束しており、その具体化に取り組んでいる。

report100405_02_02.jpg

温暖化問題への対応では、金融・保険業ではヨーロッパの企業の先進的な活動が目覚ましい。同社は人を派遣して事例を調べ、自社でできることを考えた。ヨーロッパでは「カーボンニュートラル宣言」をする会社が増えている。そこで同社もカーボンニュートラルを実行することにした。「みせかけやごまかしをなくし、やるからには徹底してやろうというと、部内で考えました」と、嶋田さんは振り返る。

そのために会社の設備を更新した。各拠点でWEB会議システムを導入し、社員が出張をしなくても仕事が進むようにした。また自社の保有ビルには省エネ設備を設置した。さらに2008年に東京・日本橋に竣工した本社ビルでは、屋上緑化や、中央部を吹き抜けにして自然換気を行うなど、エネルギーを節約する工夫を凝らした。しかし「働く人の行動がなければ、CO2は大きく減らせません」(嶋田さん)。そこで社員が動く仕組み作りを行った。

温室効果ガスの排出量を正確に把握

report100405_02_03.jpg

企業がCO2などの温室効果ガスの排出量を計測する場合に、統一した基準は日本でも世界でもない。大規模ビルや工場などでのエネルギー使用と、それに伴う温室効果ガスの発生について、日本では省エネ法が規制している。たいていの企業は、このエネルギー使用量を自社の排出分として公表している。環境省はカーボンオフセットなどの算定方法を公表しており、排出を考える対象範囲(バウンダリ)について「できるだけ広く取ることが望ましい」としている。しかし企業活動全般を算定する基準は存在しない。

そこで同社は自社で基準を独自に作り出して、CO2の排出を計るという、国内の企業では類例の少ない取り組みを行った。「見せかけをなくし徹底的に削減しよう、そしてCO2の見える化が行動の前に必要と考えたためです」(嶋田さん)。

オフィスでのエネルギー使用以外に、自社の営業活動に伴う社員の移動、印刷物、廃棄物など対象を広げた。(図表)出張の航空機、鉄道、社有車、宅配便の利用などを調べ、排出量を推計し、社内で議論を重ねた。そして環境省などとも協議した。社員一人ひとりの動きを追ってCO2の排出量を調べていては、大変な手間がかかる。そのためにサンプルを抽出して交通費からエネルギーの使用量とCO2排出量を算出する方法を編み出した。

report100405_02_01.jpg

その結果、オフィスでのエネルギーを使ったことによるCO2の排出量は半分ほどにすぎなかった。06年度で営業活動にともなう移動が全排出量の16%、紙や印刷が13%もあったのだ。こうした分野での削減行動も呼び掛けた。すると全体では08年度で11.1%も減った。オフィスは同13.6%減った。他の分野でも、営業活動にともなう移動が10%減、紙・印刷が16.9%減となった。広い範囲で無駄をなくすことが、CO2の排出とコストをともに下げる結果につながった。


日本興亜損保が定めるCO2排出量の各基準と削減達成状況

日本興亜損保のCO2排出総量合計 2006年度 5万2355トン
08年度削減率実績 11.1%減(06年度総量比)

▼オフィス(06年度 総排出量割合:約51%)
対象 : 電力、ガス、灯油、水道などの光熱費
削減量: 2008年度実績 13.6%減 2012年度目標 23%減
※ 実績及び目標数値に関しては、06年度排出量比

▼営業・出張・赴任(06年度 総排出量割合:15%)
対象 : 社有車や事業活動に使った乗り物の使用によるCO2の排出
削減量: 10.0%減(08年度実績) 23%減(12年度目標)
▼紙・印刷 (06年度 総排出量割合:13%)
対象 : 使用した紙が原料から紙になるまで、そして印刷でかかった排出
削減量: 16.9%減(08年度実績) 30%減(12年度目標)
▼物流 (06年度 総排出量割合:11%)
対象 : 顧客への保険証書発送の郵便・宅配便の利用による排出
削減量: 5.6%増(08年度実績) 7%増(12年度目標)
▼廃棄物 (06年度 総排出量割合:6%)
対象 : 事業にともなう産業廃棄物や一般廃棄物の焼却による排出
削減量: 12.3%減(08年度実績) 15%減(12年度目標)
▼通勤 (06年度 総排出量割合:3%)
対象 : 社員の毎日の通勤に伴う交通利用による排出
削減量: 1.1%増(08年度実績) 4%減(12年度目標)
▼社外利用 (06年度 総排出量割合:1%)
対象 : 社外に設置されたサーバー、株主総会など社業にかかわるイベントの参加者の移動による排出
削減量: 5.9%減(08年度実績) 11%減(12年度目標)


出典:CO2排出量算定基準にかかる日本興亜損保資料をもとに作成

前へ 1 2 3 次へ

  • 印刷する
  • 感想メール(メーラーが起動します)
  • この記事をTwitterに投稿
 

このページのトップへ

MUSUBI TIMES
メルマガ登録
  • 「大丸有エコまちづくり解体新書」
  • 「都市ECOみらい会議」
  • 「グリーンワークスタイル」
  • 「2050年のまなざし」

写真で見る ニュース エコなニュースを 写真でチェック。

  • 「インターン生がみる大丸有」 その1~JAビル スカイガーデン
  • 【大丸有トリビア vol.5】フランク永井「有楽町で逢いましょう」は誰と誰との合言葉?
  • 【丸善松丸本舗BookNavi】本を贈ること、それは思いをつなげること。ワークショップ『はじめての、本の贈りもの術』体験レポート
  • 【大丸有トリビア vol.4】広くて開放的なMARUCUBE、1辺は何メートル?
  • ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2011、5/2に震災復興支援スペシャルコンサートを開催。無料コンサートや子どもたちに楽器を贈る活動も
  • 俳優・「青空市場」代表の永島敏行さんインタビュー(映像メッセージあり) -「青空市場 x 丸の内マルシェ」のその先
  • 100万人の隣人と繋がろう!「ちよだボランティアウィーク」開催
  • 2011年は国際森林年!有楽町に「きこりん」がやってくる。森の魅力を伝える3D映像ドームも
  • エコカー率100%のスマートシティも夢じゃない!この10月、エコなタクシー専用乗り場が新丸ビル前に出現

詳細ページへ

映像ニュース