レポート

都市の魅力と環境の両立へ
――「未来の交通」を探そう

高橋洋二(日本大学総合科学研究所教授)
by ジャーナリスト 石井孝明

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高橋洋二(たかはし・ようじ)

東京都生まれ。工学博士。1967年東京大学工学部都市工学科卒業。同年建設省入省。1988年神奈川県都市計画課長、1989年東京海洋大学海洋工学部教授を経て2007年4月から現職。交通政策や地方公共団体の審議会の委員、座長を務める。企業が共同して大手町・丸の内・有楽町地区の街づくりに取り組む「大丸有地区・周辺地区環境交通推進協議会」では会長を務める。

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2.未来を見据えた交通実験?その目的と内容

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大丸有地区では、09年秋から環境交通の実験が行われた*4。「電気自動車タクシー」「カーシェアリング」「地区内水素燃料シャトルバス」「コミュニティサイクル」など、先進的な交通の取り組みを行い、体験者の意見を集めている。高橋教授は、この実験の立案から、実施と分析まで深くかかわった。この狙いはどのようなものか。

「車をコントロールする」ことが、現代の街づくりと交通対策の主な課題です。自動車はとても便利な乗り物ですが、増えすぎると渋滞など都市機能を麻痺させ、排気ガスや発する熱で環境の悪化やヒートアイランド現象を引き起こします。今回の実験では、まず移動手段を「共同化」して、この街を一人ひとりが車を使わずに移動できるようにしました。車の数を減らすことにつながるためです。バス、共同タクシー、自転車など、車以外の手段を使いやすい形で街の交通に取り入れて、人々が車以外の手段で移動できるようにしました。

今はあらゆる面での交通対策で、環境問題への配慮が重要な要素として考えられています。ここ数年の社会全体の地球環境問題への高まりの中で、自動車に起因する割合をいかに減らすか、が重視されるようになっています。環境負荷を減らすための街の取り組みが社会から高く評価されるようになりました。今回の実験では環境負荷の低い電気自動車、水素自動車をはじめ、世界で関心が高まっている自転車も取り入れて社会実験を行いました。

都市間競争の時代に、街のブランド力の高まりは、経済的な価値につながる。この実験ではビジネスとの結びつきも配慮したという。

「車を使わない」「環境に配慮する」という二つの目的を進めるとともに、街の機能も損ねてはいけません。実験では、街の快適さと利便性を追求して、街の魅力を高める配慮もしました。これが実験の第3番目の目的です。

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しかし、実験によってすぐに街の交通を大きく変えることはできません。将来、この実験を発展させた新しい交通形態を実現していくための情報を収集したいと考えています。そして今回のような、補助金や一部の有志による支援だけでは、事業として継続させていくのに限界があります。

実験を通じて、さまざまな交通政策の導入手法と客観的な評価を行うことは、大丸有地区はもちろん、今後の日本の交通政策を策定していく上で重要なことです。実際に実施してみないと、問題点が浮かび上がってきませんから、貴重な経験となります。大丸有地区は東京の「顔」、日本の「顔」ですから、大丸有地区で得られた知見や成果は、社会全体に広く認知されることになります。全国に対して、新しい交通システム・交通形態が大丸有で生まれつつあることを、社会により広く知らせることになります。今回、国土交通省と千代田区から支援をいただきましたが、行政も大丸有地区の存在感と影響力の大きさに期待していると思います。

*4 大丸有地区・周辺地区環境交通第1次社会実験
2009年9月から10月にかけて大丸有地区とその周辺地域で行われた実験。09年1月に国から環境モデル都市に選定された千代田区、国土交通省、東京都、そして同地区の企業などからなる大丸有協議会等が協力して、「大丸有地区・周辺地区環境交通推進協議会」が実施した。
?電気自動車(EV)タクシー利用実験、?EVカーシェアリング利用実験、?EV急速充電器利用実験、?地区内水素燃料シャトルバスの運行実験、?地区内外連携のコミュニティサイクルの利用実験という5つがテーマになった。?では、EVをタクシーに用いて地区内近距離移動に利用した。?では、ビル内就業者の営業用として地下にEV一台を常駐させ、予約制で希望者が利用した。?では応募者が東京?横浜間のEV走行と充電体験を行った。さらに?では既存のバス路線が走っていない東京駅八重洲口?大手町?丸の内間に、次世代のエネルギーとして注目される水素燃料駆動のコミュニティーバスを15分に1本の間隔で運行した。また?においてはマルチポート型(乗り捨て型)のレンタサイクルシステムを導入し、応募した一般の方々が体験利用をした。このポートは六本木、恵比寿にも設置した。

大丸有地区コミュニティサイクル社会実験
2009年秋には、大丸有で環境省の補助を受けたコミュニティサイクル社会実験も行われた(期間:10月1日?11月30日、実施機関:JTB首都圏)。大丸有エリア内の丸の内仲通りを中心とした地域に自転車ポートが5箇所(新丸ビル前等)設けられ、事前登録して専用のICカードを使って借り、30分無料(超えた場合は10分100円)で利用できるというもの。どのポートでも返却できる。決済はICカードで行う。10月1日のキックオフイベントは、丸の内オアゾにて田島一成環境副大臣、石川雅己千代田区長、メルビン駐日デンマーク大使等が参列して行われ、小学生がコミュニティサイクルを体験した。

丸の内地球環境新聞ニュース:
お昼休みはウキウキ サイクリング♪ コミュニティサイクルでメタボ解消!(新しいウィンドウが開きます)

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