高橋洋二(たかはし・ようじ)
東京都生まれ。工学博士。1967年東京大学工学部都市工学科卒業。同年建設省入省。1988年神奈川県都市計画課長、1989年東京海洋大学海洋工学部教授を経て2007年4月から現職。交通政策や地方公共団体の審議会の委員、座長を務める。企業が共同して大手町・丸の内・有楽町地区の街づくりに取り組む「大丸有地区・周辺地区環境交通推進協議会」では会長を務める。
3.未来交通のユニークな実験?電気自動車の共同使用の使い勝手は?
電気自動車は次世代の自動車として社会的に関心が高い。そして市販が始まるなど、身近な存在になりつつある。実験では、タクシーやカーシェアリングと電気自動車の融合を試みた。
現時点(2010年1月時点)で実験結果は集計中ですが、実際に自動車を動かし、利用したことで、有意義な情報が集まりました。電気自動車は将来有望な交通手段です。試乗をすれば分かりますが、振動も排気ガスもなくて、快適な乗り物です。普及には値段が下がる必要がありますが、量産に移ればこの問題も改善していくと期待されています*5。なお、充電をする場所が少ないというインフラ上の問題があります。そのために今回は大丸有地区と横浜みなとみらい地区(ランドマークタワー)、首都高速のサービスエリアに充電器を設置しました。
EVの利用者からは、乗り心地の快適さについて高い評価を得ています。従来の自動車に比べて静か過ぎるため、歩行者向けに何らかの接近サインが必要だ、という意見が出るほどです。クリアすべきハードルがいくつかありますが、他の交通手段に比べて、電気自動車は「環境にやさしい」と注目を集め、評判が高まる一方です。なお、大丸有地区を中心に電気自動車によるタクシー事業を企画し、新年1月から運行を始めることとなっています。EVの活用方法の将来の広がりに注目したいと考えています。
実験では、丸の内シャトルと連携する形で、これまでバス路線がなかった東京駅を一周するコミュニティーバス*6 を運行した。その動力として注目したのが、次世代エネルギーとして期待される水素燃料。水素燃料自動車はまだ一般向けに販売されていないが、無尽蔵に製造が可能なエネルギーである水素を燃料にするために、自動車などの新しいエネルギー源となることに期待されている。
バス路線のない場所にコミュニティーバスを導入することで、交通や人の動きがどのように変わるかを実験しました。これまで、銀座・八重洲地区と丸の内地区は、鉄道で分断されており、これらの地区を循環するバス路線がなかったのですが、その"ミッシング・リンク"を埋めたのです。新たなバス路線を導入して、人々が車を使わないですむように誘導することを狙いました。
水素燃料バスは、東京都市大学のサポートを受けました。このバスは静かで、乗り心地がよいと評価が高かったですね。ただし、このバスが走っていることをご存じの人が少なかったためか、利用者が予想より少なかったのは残念です。新しいことを行う場合に、いかにPRが重要か、ということを改めて感じました。一方、運用に問題はありませんでした。水素燃料自動車、またバスについても、交通を変えるポテンシャルを持っているという点に期待しています。
*5 大丸有地区・周辺地区環境交通第1次社会実験
2009年9月から10月にかけて大丸有地区とその周辺地域で行われた実験。09年1月に国から環境モデル都市に選定された千代田区、国土交通省、東京都、そして同地区の企業などからなる大丸日本では、いくつかの自動車会社が一般向けの電気自動車の販売を始めた。その価格は約460万円で、車体の大きさが同等のガソリンエンジンの軽自動車の価格100万円と比べるとまだ高額だ。各メーカーは「近年中に200万円台まで下げたい」という意向を表明している。
(写真上:三菱自動車の電気自動車「i-MiEV」)
*6 コミュニティーバスとは従来の商業バス路線が通っていないところに、自治体などが支援して運行するバス。交通手段の少ない地点や観光拠点を回るものなど目的はさまざまだが、商業バス路線の撤退が広がるなかで、全国で導入されるようになった。
(写真下:大丸有地区・周辺地区環境交通第1次社会実験で使用された、水素を燃料に利用したコミュニティーバス)





















