高橋洋二(たかはし・ようじ)
東京都生まれ。工学博士。1967年東京大学工学部都市工学科卒業。同年建設省入省。1988年神奈川県都市計画課長、1989年東京海洋大学海洋工学部教授を経て2007年4月から現職。交通政策や地方公共団体の審議会の委員、座長を務める。企業が共同して大手町・丸の内・有楽町地区の街づくりに取り組む「大丸有地区・周辺地区環境交通推進協議会」では会長を務める。
4.人気の自転車を実験に導入~広がる未来の可能性
世界的に自転車の利用が注目されている。一人ひとりの移動ニーズに対応でき、環境負荷がほとんどなく、また健康にもよいためだ。そしてコスト面でも安い。大丸有の環境実験でも自転車の利用を工夫した。
実験では大丸有地区のホテル、三菱ビル(スカイバスのチケットカウンター)の4か所、さらに八重洲や六本木、恵比寿の外資系ホテルに、自転車を乗り降りできる、「マルチポート」と呼んでいる場所を作りました。自転車を、利用を開始した場所に戻す方式にすると、利用者にとって使い勝手が悪くなるため、その改善策として、ポートがあるどこでも乗降可能な方式としました。またどの乗り場に何台あるのかという台数把握や予約をコンピュータで管理できるようにしました。貸し出す自転車は、坂道などでも使えるように電動モーター付きです。
外国人も含めて観光客の利用者が多かったですね。そして私の予測よりも広い範囲を、自転車を使って移動することが分かりました。利用者は皇居の外縁を回り、千代田区内にとどまらずさまざまな名所を自転車で回っていました。恵比寿や六本木は東京駅の丸の内口から5キロほど離れていますが、それでも多くの人が使いました。また予想外にビジネス目的の利用も多くあったのです。無料で目的地の近くまで行けるためでしょう。自動車の代わりになる移動手段として、都市の自転車利用には大きな可能性があると思います。
大丸有地区では国から「環境モデル都市」に選ばれた千代田区と共同して、2010年に第2次の環境交通実験を行う。そこでは自転車の利用を千代田区全域に広げる予定だ。
引き続き調査をして車から自転車へのシフトをうながしたいと思います。第2次実験では利用者の行動を把握するために、GPSを自転車に取りつけることを考えています。可能なら、そのGPSで観光や道路情報を得られるようにしたいですね。自転車利用の先進国であるオランダやドイツでは自転車の通勤やレジャーへの利用が、「かっこいい」「健康によい」と受け止められています。
しかし自転車の普及には課題もあります。自転車の数が増えれば、既存の交通を妨げることになりかねませんし、違法駐輪も増えるかもしれません。自転車の絡む交通事故が増えてしまう可能性があります。そのために将来的には、自転車専用道や、自転車駐輪場の計画的な設置も考えなければなりません。大丸有地区、そして日本全国の都市で、今後の自転車利用が広がり、車を抑制する有効な手段になる可能性があります。





















