三木光範(みき・みつのり)
1978年大阪市立大学大学院博士課程修了、工学博士。大阪府立大学工学部航空宇宙工学科助教授などを経て、1994年同志社大学教授。専門分野は最適化および知的システム。2007年には512台のパソコンを繋いで日本一の計算速度を達成。専門論文や著書は多いが、講談社現代新書「理系発想の文章術」や中経出版「頭が良くなる知的生産の技術」など一般書も。産経新聞「正論」執筆委員。2006年12月に知的オフィス環境コンソーシアムを設立、その会長でもある。
知的照明をご存じだろうか。働く人が「明るさ」と「色」を自由に調節する新しい照明だ。均一の明るさで白色の光に統一されていたオフィス空間の姿が、このアイデアで大きく変わる。そして、使用エネルギーも抑えられ、「低炭素化」につながる。「好きな環境を作り出し心地よく仕事ができれば、創造性のある仕事に結びつくでしょう」。発明者の同志社大学工学部の三木光範教授はこのシステムへの期待を述べた。「グリーンワークスタイル」に結びつく、未来の照明を紹介してみよう。
1. 明かりで自分の好きな環境を作る ?働く人が「選ぶ自由」を獲得
新丸ビルにある「エコッツエリア」で「知的照明」を体験できる。働く人それぞれが持つパソコンを操作すると、明るさや、色の白色度を好きなように変えられる。
知的照明はオフィスの常識に「コペルニクス的転換」をもたらすものです。一人ひとりが好きな明るさや色を選択しても、人工知能による自動調整によって、みんなの希望が最大限叶えられるのです。そして全体でみればエネルギーの節約もできるのです。自由な選択は、快適な仕事環境を作り出し、仕事をはかどらせるはずです。
これまでオフィスでは明るさを750ルクス* に一定にするべきとされてきました。これが働く人に適した照明とされたのです。ところが知的照明を取り入れた部屋では、働く人は曜日や時間によって照度を変えて仕事をするようになりました。しかも750ルクス以下に設定する人が多かったのです。

色でも好みは分かれました。これまで5000ケルビン(白色度を示す単位)が、オフィスに最適とされました。これはかなり白い色で、刺激が強いのです。知的照明の体験者には3000ケルビンの赤みの混じった暖かさを感じる色、4000ケルビンという中濃度の色を好む人もいました。人の色の好みは千差万別でした。これまでのオフィスは明るすぎ、そして白すぎで、過剰な刺激を働く人に与えていたとも言えます。
* 写真右上: 照度計のデータと連動するパソコン上の照明制御
* 写真右下: 温度計、ぺリメーター用温度検出器、知的証明システム照度センサ
* 「ルクス」: 照度の単位。太陽光の下では晴れで3万から10万ルクスの明るさがある。JIS基準ではオフィスの照度は750ルクスと定められている。ケルビンは色温度とも呼ばれる色を表す単位。5000ケルビンは白色で、3000ケルビンは赤みがかった暖色となる。外光では、曇りでは1万、晴れで5000ケルビン程度とされる。
利用者は自由に照明を調節して、自分の好みを探していく。同じ人であっても時間や体調、仕事内容など、状況に応じて選ぶ明るさや色は変わる。導入した現場では実際にどのように使っているのか、みてみよう。
利用者は時間によって照明を変えます。傾向として、朝は高照度・高色温度で、白が強い色合いにします。昼はそれよりも白色度を下げ、夜は低照度、暖色にする人が多いのです。照度と色を一日中同じにしている人はほとんどいません。利用者の選択は、生理的な要求に従ったものでしょう。朝は目覚めが必要ですから刺激を強くし、疲れるにつれて刺激を緩めるのです。現時点での実験結果では、多くの人が照度750ルクスを下回る設定を選択するために、通常の照明よりも3割程度、エネルギーの使用が減っています。
知的照明の考えは、冷暖房などの空調にも応用できます。働く人の席の近くに空気の吹き出し口を設けて自分の回りの温度を変え、人工知能により他の部分に影響を与えないようにするのです。これまでのオフィスは部屋全体を一律の温度にしようと試みていましたが、部屋の一部が冷えすぎたり、暑すぎたりということが頻繁に起こります。新しい空調は、温度の変化の調整で難しい面があってまだ研究の途中です。それでもエネルギー使用を3割以上減らすことは可能と考えています。
写真右: 知的照明システムの明かり
○知的照明の仕組み
知的照明とは照明装置が自分で照度を調整する仕組みだ。今回は丸の内の新丸ビル「エコッツエリア」にあるものを体験した。働く人はパソコンで自分の席の照度と色を変えられる。部屋は、普通のオフィスよりも暗く感じる。
照明器具は2つの情報を受け取り、自律的に照度を調整する。1つ目は働く人が選んだ明るさだ。2つ目は、働く人の前や、部屋の各所に置かれた照度計からの情報だ。それらの情報はネットワークを経由してすべての照明器具に送られる。それにより他の場所の明るさは一定にしながら、選択された明るさに近づけるように、複数の照明器具が明るさを自律的に調整する。また利用者が少ない場合に消費電力を抑えるプログラムも組み込んだ。






















