レポート

心地よさと創造性を両立させるオフィスの「知的照明」

三木光範(同志社大学工学部教授、知的オフィス環境コンソーシアム会長)
by ジャーナリスト 石井孝明

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三木光範(みき・みつのり)

1978年大阪市立大学大学院博士課程修了、工学博士。大阪府立大学工学部航空宇宙工学科助教授などを経て、1994年同志社大学教授。専門分野は最適化および知的システム。2007年には512台のパソコンを繋いで日本一の計算速度を達成。専門論文や著書は多いが、講談社現代新書「理系発想の文章術」や中経出版「頭が良くなる知的生産の技術」など一般書も。産経新聞「正論」執筆委員。2006年12月に知的オフィス環境コンソーシアムを設立、その会長でもある。

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4. 新しい働き方への提案?快適さの追求が創造性につながる

人間は生き物であるから、生理的なリズムに沿えば、楽に活動できるはずだ。知的照明は、新しい働き方のカギになるかもしれない。

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照明を上手に使い、心地よい働く環境を作ることを、私は提案します。午前中は、体の覚醒を行い、目覚めた後に集中するために、照度が高く白色の照明にして、短時間でできる集中力が必要な作業を行います。電話をかける、電子メールを打つなどの仕事です。夜は体が疲れているのでいたわることが必要です。そして落ち着いて物事を考えることに向きます。長期間の仕事の計画を練る企画書などを書くのに最適の時間でしょう。そのために低照度、また暖色の照明で、思索をする環境を作るのです。

会議で照明を利用することも考えられるでしょう。アイデア出しをする場合は低照度、低色温度にします。一方で連絡などてきぱきと済ませたい会議は高照度、高色温度にするのです。照明は、タイマーのように時間を知らせる方法としても使えるでしょう。例えば、前半のアイデア出しでは低照度に、議事をまとめる最後の10分間は高照度にする、などです。

知的照明を体験した人は、誰もが快適さを実感し、これまで自分の好みを反映していない環境で働いてきたことに気づいて驚きます。知らないうちに、自分の好みに合わない環境で、日本のオフィスワーカーは働いているのです。もっとわがままを言って、働く場で好みを取り入れ、仕事を楽しくしてはいかがでしょうか。

* 写真: 会議室の快適性追求に関する同志社大学の取組み
[上・中] 同志社大学 知的オフィス環境創造システム実験室(知的照明の実験等)
[下]  同志社大学 和風会議室(快適性の追求により創造性を促す)


個人の好みを考えず、一律に同じ商品を押し付けたのが、近代以降の経済の姿だったのかもしれない。三木教授は知的照明を新しい社会作りに結び付けたいと話す。

大手町、丸の内、有楽町地区で働く人は、「考えること」で成果を求められるホワイトカラーが大半でしょう。他の国や企業が真似できない創造的な発想をしなければなりません。それを生み出しやすくする方法の一つは、自分の働きやすい環境を作ることです。そのためにオフィスの均一環境を止め、自分好きな環境作りを始めてはいかがでしょうか。

「選べる」ことは、私たちの可能性を広げます。「自分の好きなように生きたい」というのは、人間に内在する本能です。選択肢がたくさんある社会は、暮らしやすく、自己実現をしやすいでしょう。

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私の理想とするのは、「みんなが好き勝手なことをしているのに、全体では調和の取れている社会」です。人工知能を使えば、そうしたことが可能になる場面はたくさんでてくるでしょう。知的照明は、自分に合った環境を作る方法の一つなのです。 皆さんも知的照明に関心を持っていただきたいです。そして自分の働き方を、明るさ、そして環境の面から見直してはいかがでしょうか。働きやすい環境を作ることが、「いい仕事」につながり、社会を豊かにしていくでしょう。

ISHII's EYE今回の取材を終えて、編集記者からのヒトコト

経済学者ミルトン・フリードマンの著書『選択の自由』を読んだことがあります。これは70年代に書かれ、自由市場の有効性を主張する本です。そこでは「選択の自由は人間の自己実現や幸福につながる」という主張が繰り返されていました。知的照明は、人工知能を利用した最先端の技術です。その発明者である三木先生と、フリードマンの考えは共通しており、とても印象に残りました。「自由と快適さを求める人間の本性に基づいた技術の進化は人を幸福にしていく」。こうした技術革新のあるべき姿を見ることができました。知的照明は私たちの選択肢を広げ、快適な生活と意義深い仕事を作る新しい技術となるでしょう。読者の皆さんとともに、この発明を注目し、応援していきたいと思います。
環境ジャーナリスト石井孝明(新しいウィンドウが開きます)

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