金子衛(かねこ・まもる)
社団法人日本ビルヂング協会連合会事務局次長。会員(ビルオーナー)より、土地政策、建築行政、税制などについての意見・要望をまとめ、国・地方自治体などに対して、政策の提言・要望活動を行っている。地球温暖化対策についても「オフィスビル分野における低炭素社会実行計画」を策定し、中小ビルを含めた省CO2対策の啓発を進めている。2008年より現職。山形県出身。
hhttp://www.birukyo.or.jp/index.html
加山勉(かやま・つとむ)
三菱電機株式会社 営業本部 事業推進部 法人営業第一グループ担当部長。入社後、同社長崎製作所に赴任し、情報システムの設計業務を担当。1983年から3年間HMTConsort社出向、香港・シンガポール地下鉄建設における環境制御システムプロジェクトのマネージャを務める。帰国後、鉄道情報システムにおける技術管理を担当し、現在は「ビルまるごと省エネ」の拡販や「スマートシティ」実現への総合技術窓口として従事。和歌山県出身。
http://www.mitsubishielectric.co.jp/
高見牧人(たかみ・まきと)
経済産業省 資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部 省エネルギー対策課長。通商産業省に入省後、リサイクル推進課、化学物質管理課、大臣官房政策審議室、経済協力課、秘書課等で勤務。2007年7月から2010年7月まで、新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)ワシントン事務所長を務める。2010年7月より現職。東京都出身。
http://www.enecho.meti.go.jp/
野崎麻子(のざき・あさこ)
有限責任監査法人トーマツ エンタープライズリスクサービス ディレクター。公認会計士。監査、金融インダストリー部門を経て、温室効果ガスの検証や環境・CSR関連の業務に従事。社内では、丸の内オフィスのCSR活動推進の事務局として活動、データの取りまとめ等も担当。カーボンオフセット認証制度運営委員会委員。新潟県出身。
http://www.tohmatsu.com/view/ja_JP/jp/companies/audit/index.htm
三木光範(みき・みつのり)
同志社大学理工学部教授。大阪市立大学大学院博士課程卒業後、金沢工業大学工学部助教授、大阪府立大学工学部助教授などを経て、1994年より現職。IEEE、情報処理学会、人工知能学会、システム制御情報学会、日本機械学会、計算工学会、知的オフィス環境コンソーシアム会長。経済産業省産業技術審議会委員など。専門分野は最適設計、並列処理、システム工学、照明システム。兵庫県出身。
http://mikilab.doshisha.ac.jp/index.html
2011年からは、大幅な供給量の不足に伴う、大節電時代に突入した。これまで、官民ともに取り組んできた省エネ、省CO2対策は、エネルギー供給の最適化と、使用の最適化を図るスマートグリットの考えかたによって解決できそうなレベルまで到達していた。分散最適化によって、知的生産性や快適性を損なうことなく省エネが可能という発想が崩れかかっている。不足する供給量を補うには、ある程度の生産性や利便性を欠くこともやむをえない、という環境下になりそうである。一方で分散最適化の技術革新は一層の進展を見せている。電力絶対量が不足する時代に、快適性と省エネを両立する術はあるのだろうか。その技術と知恵を語り合ってもらった。
* この記事は、エコッツェリア協会にて2011年5月26日に実施された、ステークホルダーズ・ミーティングの内容をまとめたものです。
1. 大節電時代の対応
高見: 3月11日の東日本大震災以降、福島原発被災の影響による電力供給量の不足に伴い、3月は計画停電にご協力いただきました。4月に入って暖かくなり需給バランスも落ち着いてきたので、計画停電の必要は少なくなりましたが、引き続き節電のお願いをしています。同時に3月末くらいから夏の対策検討に入っています。5月13日には夏期の電力需給対策をまとめましたが、そこで打ち出したのが夏場の15%の節電です。これは、大口の電力需要家(500kW以上)だけでなく、小口の需要家にご家庭も含めたすべての契約者にお願いするというものです。とくに東電管内で14,000くらいある大口需要家に対しては、今年の夏場は電気事業法27条に基づく使用制限という形で、電力需要の削減をやっていかざるをえないと考えています。
経済産業省資源エネルギー庁
金子: 東電管内における大口需要家である事務所ビルの電力消費量のうち53.6%を日本ビルヂング協会連合会の会員が占めています。連合会の責任は大きいと認識しています。これまでの省エネ・省CO2は、オフィスワーカーの利便性、快適性、知的生産性の向上を図りながら環境効率を高めるというものでしたが、今回の節電は質が異なります。緊急時の電力使用量を制限するためには、利便性、快適性、知的生産性を一時的に下げる場合もあるというものです。連合会では緊急対応方針をまとめて、会員企業に対して説明会を実施しています。
方針をまとめている中で、照明に関して気になるデータが見つかりました。労働安全衛生規則では精密な作業をするうえでの必要な照度は300ルクス以上と定められていますが、照明学会の調査によると、オフィスビル事業者はJIS基準に準拠して設計照度を500?800ルクスにしていることが多いのです。しかもこれは設計照度であり、実測照度は800?1,000ルクス以上になるビルが多いことも明らかになっています。つまりオフィスの照度はもともと明るすぎるのではないかということなんです。
社団法人日本ビルヂング協会連合会
三木: オフィスの照度はこれまですべて一律でした。私が研究を進めている知的照明システムは、一人ひとりの健康状態や仕事の内容に応じて、個人ごとの最適な照度と最適な色温度を提供するというものです。5年くらい前から基礎研究段階に入り、3年くらい前から東京都内の7ヵ所で実証実験を開始しています。利便性、快適性、知的生産性は人それぞれ異なります。照明によるエネルギー消費の抑制については、個人差を考慮していなかった照明のあり方を見直すことで可能になると考えています。
同志社大学理工学部知的システムデザイン研究室
金子: 東電管内の事務所ビルに限りますと、オフィスの机上照度750ルクスを350ルクスにするだけで、国の目標値である15%削減という目標値はある程度達成できてしまうということが、オフィスビル総研本田氏の講演会資料からも分かります。
明るすぎるニッポンのオフィス照明1/2削減で快適空間をつくる手法(本田広昭氏講演会資料:PDF)
三木: 3年くらい前までは、私が学会で知的照明についての研究結果を発表すると大変なブーイングを浴びたものでした。「そんな暗いところで仕事をしたら目が悪くなる」と言うんですね。しかし、最近では私たちの実験結果から500ルクス、あるいは300ルクスでも快適に仕事ができるという認識が広がりつつあります。そんなときに今回の電力不足となり、オフィスでは照度を下げざるをえなくなった。そこで実際に下げてみたら、300ルクスでも問題なく執務ができることがわかった。そういう意味では、現在のオフィス照明の状況は私たちの研究結果を裏づけるものになっています。
金子: 私ども連合会では照明だけでなく、冷房設定温度や換気の基準についても見直しが必要だと思っています。節電緊急行動計画の策定を会員企業に要請するにあたり、数値目標のイメージを提示しています。共用部はビル事業者が照明を間引きしたり、冷房設定温度を高くする、あるいは一時的に冷房を停止するという思い切った措置によって20%カットができる。専用部では照度を下げるなどのテナント努力で10%、輪番休業とか夏季休暇の長期化などの取り組みによって2?4%の上乗せが可能で、専用部で12?14%の削減余地がある。これを共用部と専用部の比率で掛けて割り戻すと、だいたい15%の削減が可能になる計算です。
高見: 国としても、工場のように間引いたら生産が滞ってしまうところには間引くのではなく、輪番休業などの対策をお願いしています。またオフィスも含めてですが、平日のピークを分散させるために、1日の中でも、日中の操業を早朝や夜間にずらして昼のピークを避けることも含めてご協力をお願いしています。
野崎: 当社は、ビルは所有していないのですべてテナント入居となります。500kW以上の大口契約者になるビルにも入居しています。当初は25%削減の指導のもとで計画を立案しようとしていましたが、25%はかなり厳しい数字でした。金子さん、高見さんがおっしゃる業務のシフトが業種的にとてもやりにくいというのがその理由です。サービス業ですので、お客さまに合わせなければなりません。どうすれば達成できるのか苦慮していたところ、目標値が15%になりまして、何とか見通しが立った状況です。
有限責任監査法人トーマツ
加山: 当社の節電は、三木先生の知的照明のように洗練されたものではなく、手動でバンバン落としていくという乱暴なやり方です(笑)。照明は間引きではなくスイッチで元から切っています。トイレも暗くなりましたが、これはこれで一つのスタイルとして"あり"だと思っていますが、大きな問題があります。それは、自分たちの節電への取り組みによって、電力消費量がどれだけ減ったのかがわからないということです。リアルタイムで細かく成果を把握できる電力消費動向の「見える化」が次のテーマです。
三菱電機株式会社



















