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【大丸有】丸の内ヘルスケアラウンジ――"ヘルスケアポータル"の行方

大丸有企業のCSR、CSV (2)

丸の内のど真ん中で"健康"

新丸ビルの9階に「丸の内ヘルスケアラウンジ」が開設したのが2015年3月。まもなく1年を迎えようとしています。オフィスビルのど真ん中のヘルスケアステーションとして、開設時にはマスコミをにぎわしました。増加の一途をたどる医療費、特に今後東京で深刻化するであろう高齢化など、ヘルスケアは国を挙げて取り組むべき課題として認知され、さまざまな施策が打ち出されている中、丸の内ヘルスケアラウンジには、行政からも、民間各社からも熱い注目が寄せられています。

運営するのは日本駐車場開発株式会社。都市部のビル附置駐車場のサブリースや運営管理を行うという、ヘルスケアからはやや遠い企業が、社会貢献型の新しいビジネススキームに着手して行っているもので、非常に珍しいケースと言えるでしょう。大丸有に籍を置く企業の社会貢献活動を追うシリーズの第2回として、丸の内ヘルスケアラウンジの実績とこれからについて探ってみたいと思います。

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「分かる」「始める」「続ける」

「分かる」「始める」「続ける」

丸の内ヘルスケアラウンジとは、Understand=「分かる」、Begin=「始める」、Continue=「続ける」をコンセプトに、オフィスワーカーの健康を促進することを目的としています。登録制となっており、最初に「分かる」プロセスとして検査を受けることになっています。

「分かる」とは自分の健康状態を知ること。検査項目は血液検査(健康診断で扱う20項目程度のもの)、、血圧、ストレスチェック、体組成測定に加え、健康に関する意識調査(アンケート)も行います。
「始める」では、その検査に基づいた運動プログラム、食事指導、施術プランなどが提供されます。中でも"おすすめ"とされているのが、ここでしか受けられないユニークなメニュー。例えば、管理栄養士とヨガインストラクターの資格を持つ山本奈津子氏による「東洋医学体質診断に基づくパーソナル食事カウンセリング」、メディカルトレーナーの三戸一氏による加圧トレーニング、骨盤矯正と体幹トレーニングをミックスさせた「美コアデトックス」、炭酸ミストを使った「ソーダストレッチ」等があります。そして「続ける」では、ユーザーの継続性を高めるためのサポートやカウンセリングを行うのです。

これらメニューに、パートナー企業が参画しています。計測機器では、オムロン。運動メニューではアディダス、リーボック、Realbody31等、食事関連ではベネフィットワン、タニタ、大地を守る会など、多数の企業が「健康」「ヘルスケア」をビジネスフィールドにすべく、参入してきています。いわば、丸の内ヘルスケアラウンジが、テストマーケットの現場になっていると見ることもできるでしょう。

課題は「不健康な人」

丸の内ヘルスケアラウンジ店長・阿部氏現在、会員は約1600名超。毎月200名ペースで登録数が上昇しており、おおむね好調と言えそうです。内訳で見てみると、30~40代が中心で男性比率がやや高いそう。「大丸有(丸の内、大手町、有楽町)のオフィスワーカー構成比率とほぼ同じなのでは」と丸の内ヘルスケアラウンジ店長の阿部真太郎氏は推測しています。上は80代まで、大丸有エリアに限らず遠方からの入会者もいるそうです。

これまで運営してきて気づいたことは「健康意識の高い利用者が圧倒的であること」と阿部氏。ヘルスケア産業でこれからアプローチしたいのは、健康意識が低く不健康な人ですが、そういう人に限って、こういうラウンジには来ないもの。巷間のヘルスケア産業と同様の構造的問題がここにもあります。「健康意識の低い人の行動変容をいかにして促すか。そこが一番難しい」。

そこで丸の内ヘルスケアラウンジで取り組んでいるのが、経済産業省の「健康寿命延伸産業創出推進事業」に採択された各種キャンペーンです。

健康意識の低い人を巻き込むには

カラダ改善コンテストの募集告知サイトより

10月はチームで健康管理を"競う"「カラダ改善コンテスト」の参加チームを募集。健康意識の高いインフルエンサーが、周囲の健康意識の低い人を誘ってチームを組み、11月~12月の約2カ月間、ダイエットを中心とした体調・健康管理を行うというもの。12チーム88名が参加しています。11月は、不健康がもたらすさまざまな弊害を伝える、「危機感をあおる」イベントを開催。12月には、「かっこいい」を切り口に健康啓発するイベントを開催するなど、さまざまなアプローチ方法を試行しているとのこと。ある調査では、ちょっとした運動やダイエットで得られた「健康実感」を感じることが、継続的な健康管理を始めるきっかけになるという結果も出ています。つまり、"最初の一歩"をどうやって踏み出させるか。丸の内ヘルスケアラウンジの取り組みは、その点非常に参考になると言ってよいでしょう。
ちなみにこのカラダ改善コンテストは第2弾が開催されるそうです。応募期間は1月20日~1月31日までなので気になった方は応募してみてはいかがでしょう。

また、入会時に取得する意識調査では、その人の価値観タイプも分かるようになっており、例えば「社交的なインフルエンサー」と診断された人を通じて、周囲の人の健康意識が啓発される傾向も見られるそうです。定量化された価値観診断を不健康な人を巻き込むために、使うケースは非常に稀。効果測定等の結果が出れば面白いデータになりそうです。

健康意識アンケートや価値観診断はタブレットを使って行う。数分で回答できる

時代とともに歩む企業のあり方

オフィスワーカーの健康課題に取り組む丸の内ヘルスケアラウンジですが、その運営は日本駐車場開発です。なぜ、駐車場の管理、運営をする企業が異なった事業ドメインに着手したのでしょうか。

「100の子会社、100人の社長を創出し、社会へ送り出すことが、日本駐車場開発のミッションだから」と阿部氏は説明します。「やりたいことを立ち上げてビジネス化する、社長直轄の部署があり、そこで今後は何が伸びるのか、社会的に意義があるのかを検討しています」。これまで、カーシェアリング事業、スキー場再生事業、教育事業などに参入してきましたが、今後「農業事業」「環境事業」などにも注目しており、「健康事業」もそのひとつだったということ。

そして、大丸有エリアのオフィスワーカーの健康増進に向けた動きが活性化したことも大きな後押しとなりました。「当社は、スペースの高付加価値型の運営に実績があること、また、有人管理など人の有用なオペレーションでも高い評価を受けていた」ことも理由となり、丸の内ヘルスケアラウンジを設立する運びとなりました。

ビジネスモデル構築とパートナー探しが鍵

まもなく1年を迎えようとしている丸の内ヘルスケアラウンジ。今後の展開はどのように考えているのでしょうか。

まずポイントになるのはビジネスモデル。現状としては、個人への有料コンテンツ販売、パートナー企業へのプロモーション支援などがありますが、「1年近くやってきたことで、運営のポイントが見えてきた。今は再設計の段階」と阿部氏。コンシューマー向けのBtoC型で行くなら、今後水平展開を拡大し、スケールメリットを図る必要があります。一方で「法人を対象にしたモデルも見えてきた」ということもあり、どのようなビジネスモデルを構築するかが今後の議論となります。

また、もうひとつのポイントのパートナー企業については、「既存のパートナー企業を大切にしつつも、新しい提携先を探していきたい」と意欲的。運動・食事・施術のメニューパートナーだけでなく、物販メニューもあり、メーカーとの提携も積極的に取り組んでいます。ヘルスケア産業が活性化している今、「さまざまな企業と連携して、可能性を模索していきたい」という意向。丸の内でも健康への取り組みが盛んですが、「まるのうち保健室、丸の内朝大学など、提携してみたい周囲の取り組みはたくさんある」と阿部氏は話しています。

もっと参加を

ヘルスケア産業に取り組む企業のみならず、丸の内のように地域全体で取り組む事例も多く見られるようになってきました。丸の内ヘルスケアラウンジは、大丸有におけるヘルスケア産業の中心的拠点となる可能性を秘めているとも言えそうです。そのためには、もっと多くの人の参加はもとより、健康商材、メニューを持つ各企業の参入が必須であることは言うまでもありません。丸の内ヘルスケアラウンジの動き、今後も注目です。


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