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【大丸有】伝統芸能と大丸有のミックスアップで日本を見直そう

「国立劇場in丸の内」の楽しみ方とこれから

荒事の見得を実演してみせるゲストの坂東亀寿氏

異種コラボで広がる可能性

丸の内で伝統芸能を楽しんじゃおう――!? 新丸ビルという最先端オフィスビルに国立劇場が"出張"し、オフィスワーカーに伝統芸能の楽しみ方を教えてくれる特別イベント「国立劇場in丸の内」が、1月に当初の予定の3回を終えました。これは昨年11月から実施されてきたもので、第1回は能楽師の川口晃平氏をゲストに能楽を、第2回は文楽人形遣いの桐竹勘十郎氏をゲストに文楽を紹介しました。そして1月20日には、「歌舞伎はエンターテインメント」と題し、歌舞伎俳優の坂東亀寿氏をお招きしてのイベントが開催されました。

こうしてゲストの名前を並べてみると、改めて豪華なイベントであったなあと驚かされるわけですが、今回は、第3回の講座をレポートしながら、丸の内で伝統芸能を発信するという意欲的な取り組みについて考えます。

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知れば楽しい面白い。

知れば楽しい面白い。それが伝統芸能

大木氏の講義。画面は出雲の阿国「かぶき踊り」の図

国立劇場in丸の内は、基本的に2部構成になっています。前半は国立劇場のプロデューサーが講師を務め、テーマとなる芸能の概略や歴史を解説し、後半はゲストを招いて伝統芸能の裏側のアレコレを教えてくれるというもの。
第3回では、国立劇場の歌舞伎公演の制作を統括する大木晃弘氏が登壇し、初心者にも分かりやすく歌舞伎について教えてくれました。

ご存知の読者も多いと思いますが、歌舞伎の起源は、出雲の阿国という女性が始めた「かぶき踊り」に求められます。慶長年間に京都の北野神社で始まり、戦国の世の終わり、平和の到来という安堵感の中で、瞬く間に日本中に広まりました。最初は女性が男性の恰好をして踊る「女歌舞伎」でしたが、熱狂的に盛り上がったために客同士のいざこざが絶えず、やがて女歌舞伎は禁止され、成人前の男性が演じる「若衆歌舞伎」に転じました。こうしたいきさつを「今でいえばAKB48のようなもの」と、非常に分かりやすく解説してくれるのがなんとも面白いのです。

「AKBからもHKTやSKEのような派生グループが誕生しましたが、歌舞伎も同じように全国に広まりました。そしてまた、追っかけのファンがついてしまうのも、現代と同じようなものですね(笑)」

なるほど、伝統芸能というといかにも敷居が高く思われますが、その文化のありようは、今の日本とそれほど大きく違うものではないわけです。少し気楽に、肩肘張らずに伝統芸能に接してみよう、そんな気分にさせてくれる講義なのでした。

若衆歌舞伎もやがてまた禁じられ、成人男性のみで全ての役を演じる「野郎歌舞伎」になったことから、男性の俳優が女性の役を演じる「女方」というスタイルができあがったのですが、こうした歌舞伎の歴史だけではなく、国立劇場in丸の内が教えてくれたのは、歌舞伎という伝統芸能と現代を生きる我々との間が実は地続きだということでした。

かぶき踊りはやがて、「物まね狂言づくし」、つまり物語性、ドラマ性のある作品だけ上演するようお達しが出され、現在のスタイルへと変化しました。これが、現代まで続く「演技」「芝居」のありようを定義する起点にもなっています。また、「芝居」という言葉自体が現在の意味で使われるようになったのも、屋外に設置した舞台で歌舞伎が演じられ、人々に鑑賞されていたことに由来しています。このように、現代まで残る言葉やスタイルのルーツの多くが歌舞伎に端を発しているのです。

このほか、「荒事(あらごと)」「和事(わごと)」といった歌舞伎の演出の違いから、音楽のこと、国立劇場の舞台の仕組みなど、歌舞伎の見どころの解説に続き、後半のゲストトークへと移っていきます。

目の前で見ることの大切さ

女方の演技を見せる坂東亀寿氏(右)

この日のゲストは坂東亀寿氏。8代目坂東彦三郎の次男で、現在もっとも期待される若手俳優のひとりです。女方から荒事(豪快な演技)まで演じており、この日もさまざまな演技をその場で実演。登壇したときには「普段こんなにお客様に近いところへ素顔で出ることがないので緊張します」と会場の笑いを誘いました。

最初に大木氏が「もっとも歌舞伎らしいもの」として水を向けたのが荒事の見得。「子どもの心で演じるのがコツ」と亀寿氏。ツケ(見得や俳優の動作に合わせて2本の木の棒を板に打ちつけること)はありませんでしたが、大木氏の合いの手で、本物の歌舞伎俳優に目の前で見得を実演してもらい、参加者も思わずハッとさせられたようでした。
また、和事(柔らかい演技)では、「つっころばし」という「押したらころんでしまうような」役柄について説明。また女方のしぐさを実演し、「体を小さく見せる演技で、女性がやると本当にかわいらしく見えます。ぜひ皆さんもご一緒に」と指導しながら見せてくれます。女性読者のためにそのコツを記すと、
「ひざを曲げて、貝殻骨(肩甲骨)を寄せ、肩を下げてなで肩にし、首をちょいと傾げてかわいらしくたもとを引き寄せる」。 男女を問わずかわいらしさを追求したい方には(?)、ぜひとも日常に応用してほしい内容でした。

また、踊りで使われる扇の「要(かなめ)返し」という技や、「一声、二顔、三姿」と言われるくらい重要視される「声」を、実際の歌舞伎のセリフを言ってもらいながら聴くなど、ファンであれば垂涎、初心者にとってはちょっとしたカルチャーショックになるような内容が続きました。

歌舞伎の舞台裏とは

また、実演ばかりではなく、歌舞伎の舞台裏の話も興味深いものでした。

例えば、公演前に稽古する時間は実はほとんどないということ。
「新作だと1週間くらいですが、既存の作品なら、合わせ稽古だけだから4日くらいで、多くても5日」だそうで、正月公演では「初日まで2日しかなかった」のだそう。そのため、歌舞伎には「3日御定法」というのがあり、初日から3日目までは演出を固める期間として観客も認めているとか。メイクでは「眉が一番大事」で、うまく描けないと「テンションが下がる」こともあるのだそう。うまく描くためにちょいちょいと描き足そうとすると「チョコチョコするな!と先輩から怒られる」なんて話も。かつらは非常に重いものもあり、伊達兵庫(最高位の花魁の髪型)にいたっては20kgほどもあり、「気を抜くと、首がカコンとイッて」しまいそうになるという話が笑いを誘いましたが、「何十年も続けていると、そのうち首の骨がすり減ってヘルニアになってしまう」と聞かされると、歌舞伎も命がけであるのだなあと、また神妙な気持ちになるのでした。

筆者個人としては、亀寿氏の稽古が「覚えていないくらい小さいころから始まっていた」という話が大変興味深く感じられました。
「最初は3歳くらいから日本舞踊を始めますが、遊びの延長のようなもので、それが稽古の始まり。先生の教え方も、子どもの頃は甘いけど、歳を重ねていくとどんどん厳しくなっていくわけですが(笑)」
これは、世阿弥が『風姿花伝』で、能の教えはじめを「風度し出ださんかかりを、うち任せて、心のままに、せさすべし」と書いているのとまったく同じです。伝統の力とはすばらしいもので、これが日本の文化の美しさなのだろうと感じたのでした。こういうことを知る機会はそれほど多くはありません。国立劇場in丸の内ならではのことではないでしょうか。

これからも続く「国立劇場in丸の内」

講義の後は、亀寿氏が参加者からの質問に答えたほか、抽選で参加者にプレゼントが当たるなど、ちょっとしたお楽しみもありました。最後に亀寿氏から、「歌舞伎は、一度足を運んでもらうまでにとても時間がかかる。かつらでも衣裳でも音楽でも、なんでもいいから一つとっかかりを見つけて、見に来ていただけるとうれしいです」と来場者へのメッセージ。

終了後、参加者に感想を聞いたところ、「素顔の歌舞伎役者を間近で見られたのがうれしい」という声がとても多かったのが印象的でした。歌舞伎を見たことがなく、たまたま丸の内でこのイベントがあることを知って来たという30代の女性は、「歌舞伎俳優の独特な顔つき、雰囲気がすごく良かった。肌がすごくきれいだったのが印象的(笑)。(歌舞伎を)見に行きたくなりました」と話していました。

国立劇場 in丸の内の広報を担当する日本芸術文化振興会の市川恵氏は、「これまでの3回の開催で手ごたえを感じており、今後も『国立劇場in丸の内』を継続したい」と話しています。
「現代は娯楽の範囲が広く、伝統芸能を選択することは少ないと思いますが、こうした機会をきっかけに、伝統芸能って思いのほか楽しいものなんだな、気楽に行ってみようかなと思ってもらえればうれしい。今後も丸の内で働く方々に向けたイベントを企画していきます」

東京オリンピック・パラリンピックも遠い話ではなく、「海外から見た日本」を、私たち一人ひとりが意識しなければならない時期に来ています。そんな中で、伝統芸能は大きなコンテンツのひとつになるでしょう。次回の開催には、ぜひ皆さんもお越しになってはいかがでしょうか。


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